税務ニュース2023年03月24日 指揮監督のみ行う場合の建設PE認定は(2023年3月27日号・№972) 法人税法と租税条約の不一致に課税当局は「個別判断」との見解

  • 外国法人が国内の建設工事現場で指揮監督の役務の提供のみを行う場合、それが租税条約の適用を考慮した上で恒久的施設(建設PE)を構成するか否かについて、課税当局は「個別事案ごとの判断になる」とのスタンス。

 外国法人が国内の建設工事現場で指揮監督の役務の提供のみを行う場合、そのサービス提供が「建設PE」を構成するかを検討することになるが、最大の論点となるのが、租税条約との関係だ。法人税法2条12の19ロでは、建設PEは「外国法人の国内にある建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供を行う場所(略)」として、「指揮監督の役務の提供」を含む概念として規定されている。しかし、例えば日米や日英の租税条約(いずれも5条3項)では、建設と据付は建設PEに含まれているが、「指揮監督の役務の提供」という文言はない。一方で、日豪租税条約(5条3項・4項)のように、指揮監督の役務の提供もPEに該当すると追加的に規定しているものもある。このような、法人税法と各租税条約の記載の違いが実務に混乱を招いている。この点について、租税条約上、指揮監督の役務の提供が明示的に含まれていない場合は、建設PEの判定から除外してよいと考える実務家もいる。反対に、建設PEに関して本文に「指揮監督の役務の提供」という用語が含まれないOECDモデル租税条約の5条3項についてのコンメンタリー50項に「On-site planning and supervision of the erection of a building are covered by paragraph」と記載がある点を考慮し、租税条約に明示がない場合も、指揮監督の役務の提供は建設PEの判定対象となると考える実務家もいる。
 そこで本誌が課税当局に取材したところ、課税当局は「指揮監督のみの場合が建設PEに含まれるのか含まれないのかは、個別事案ごとの判断になる」とのスタンスをとっている。それぞれの条約における建設PEが、たとえ「指揮監督の役務の提供」という文言がなくともそれを含めていると考えるべきなのかどうかは、「一律には言えない」とした。また、前述のOECDモデル租税条約コンメンタリーについては、「各国と個別に締結した租税条約全般に関する解釈を汎用的に拘束し得るものとは必ずしもいえない」との考えが示された。指揮監督の役務の提供のみを提供する場合の建設PE認定は一元的に判断できないことが確認されたわけだが、実際に顧問先から照会を受けている税理士等は何らかの助言を迫られるだけに、課税当局による見解が待たれるところだ。

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