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解説記事2023年04月03日 SCOPE キャッシュレス決済端末のレンタル節税が税務調査で否認(2023年4月3日号・№973)

税制改正前の申告も要注意
キャッシュレス決済端末のレンタル節税が税務調査で否認


 令和4年度税制改正では、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度及び一括償却資産の損金算入制度について、対象となる資産から貸付けの用に供した資産が除外されることになった。いわゆる“ドローン節税”をシャットアウトするものだ(本誌910号参照)。令和4年4月1日以後に取得等するものから適用されており、現在は同節税スキームを利用することはできない。しかし、同様の節税スキームについては、税制改正が行われる前の過去の申告分が税務調査で否認されているケースがある。本誌が入手した裁決事例では、キャッシュレス決済端末を大量に取得し、決済サービスを企画運営する法人に同端末をレンタルすることで生じる所得は事業所得であるとし、一括償却資産の損金算入制度を適用したものの税務調査で否認され、その後の審査請求でも納税者の請求が棄却されているので留意したい。

令和4年度税制改正で“ドローン節税”はシャットアウトも

 ドローン節税とは、本業とは関係のないドローンを大量に購入し、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等のメリットを享受しつつ、ドローンなどを貸し付けることによって、複数年度にわたってレンタル料を収受するという損金と益金の計上時期の相違を利用した節税スキームのこと。ドローン以外にも建設用足場やLED照明などを利用した節税スキームが見受けられていた。しかし、令和4年度税制改正では、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等について、対象となる資産から貸付けの用に供した資産が除外されることになり、これらの節税スキームは封じ込まれることになった。
 同改正は、令和4年4月1日以後に取得等するものから適用されているため、現在は、これらの節税スキームは利用することができない。ただ、同様の節税スキームについては、税制改正が行われる前の過去の申告分が税務調査で否認されているケースがある。以下、本誌が入手した裁決事例(大裁(所)令3−45)についてみてみることにしよう。

審判所、自己の計算と危険において独立して営まれているとはいえず

 本件は、税理士及び公認会計士である請求人がキャッシュレス決済端末の取得費を同端末のレンタルに係る必要経費として事業所得を計算し確定申告書を提出したところ、原処分庁が端末のレンタルにより生じる所得は事業所得に該当せず、端末の取得費を必要経費にできないとして更正処分を行ったことから、請求人がその取消しを求めた事案である。
端末50台を490万円で購入後にレンタル
 請求人は、キャッシュレス決済サービスを企画運営する法人から同決済サービスを利用するためのタブレット端末50台を490万円(1台当たり98,000円)で購入し、その端末を企画運営法人にレンタルし、レンタル料を受け取っていた。一方、企画運営法人は決済サービスの利用店舗にタブレット端末を無償で貸与し、店舗から利用額に応じた決済手数料を得るとともに、端末の修理及びメンテナンス業務等を無料で行っていた(図表1参照)。

収益獲得の最終的な判断権限が必要
 審判所は、ある経済的行為が「対価を得て継続的に行なう事業」(所令63条)によるものといえるかについては、事業所得がその判断基準として、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得としていることを踏まえ、当該行為及び所得の態様等を考察して判断すべきとした。そして、本件レンタルが請求人の計算と危険において独立して営まれているというためには、請求人が本件レンタルの業務遂行上の重要な事項である収益をいかに獲得するかについて最終的な判断権限を有することが必要とした。
 本件について審判所は、端末の設置場所の開拓及び営業並びにその後の端末の保守管理及び運営など、粗利益の増減に影響を及ぼすべき業務上の判断権限は、すべて決済サービスを企画運営する法人が属するグループが有していたと指摘。本件レンタルは、請求人の計算と危険において独立して営まれているものであるとはいえないことから、「対価を得て継続的に行なう事業」とはいえず、このような業務から生じる所得は事業所得には該当しないことから、端末の取得費は必要経費に算入することはできないとの判断を示した。

【図表2】当事者の主な主張

原処分庁 請求人
 端末の取得費は、次のとおり、レンタルが事業所得を生じる事業に該当しないことから、事業所得の金額の計算において必要経費として控除できない。
・本件レンタルは、有償性を有するものの、請求人が本件レンタル料を1回しか受け取っていないことからすれば、営利性及び反復継続性はない。
・本件レンタルは、その契約期間中、業務のすべてがキャッシュレス決済サービスを企画運営する法人に一任されており、同社が端末の転貸先の決定や業務遂行に必要な判断を行い、端末の維持管理費用や賠償責任等の危険を負担していた。
 端末の取得費は、次のとおり、レンタルが事業所得を生じる事業に該当することから、事業所得の金額の計算において必要経費として控除できる。
・本件レンタルは、端末を一定期間レンタルし、その対価として本件レンタル料を得るものであり、営利性・有償性及び反復継続性が認められる。
・本件レンタルは、請求人が決済サービス及びレンタルの内容を考慮し、その実施と端末の購入台数の決定という最も重要な経営判断を行った上で開始したものであり、請求人の危険と計算による企画遂行性がある。

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