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解説記事2023年10月30日 SCOPE 四半期特有の会計処理、中間会計基準等に採用へ(2023年10月30日号・№1001)

開示の迅速性から一定の簡便的な取扱いも容認
四半期特有の会計処理、中間会計基準等に採用へ


 企業会計基準委員会(ASBJ)は、四半期報告書廃止後の半期報告書の基準となる「(仮称)中間会計基準等」の開発を行っているが、現行の四半期会計基準等で認められている原価差異の繰延処理やみなし取得日の取扱いについては、「(仮称)中間会計基準等」でも認める方向だ。また、簡便的な会計処理として認められている「一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理」については、前年度からの著しい変動がない場合に前年度末の決算において算定した基準等を四半期決算で使用することができる取扱いを認めることとしている。

原価差異の繰延処理を廃止した場合には一定の影響あり

 企業会計基準委員会は、四半期報告書廃止後の半期報告書の基準となる「(仮称)中間会計基準等」の開発を行っている。同会計基準等は、現行の第2四半期の会計処理等を踏襲し、四半期会計期間等の用語を中間会計期間等に置き換えることとしているが(本誌999号14頁参照)、単純な用語の置き換えが難しい四半期特有の会計処理や四半期の簡便的な取扱いなどは別途検討が必要になる。
 まずは原価差異の繰延処理だ。四半期会計基準では、四半期特有の会計処理として、原価差異の繰延処理を認めているが、中間財務諸表作成基準では、その改訂時に恣意的な判断の介入の余地が大きい等の理由から削除されており、今回、「(仮称)中間会計基準等」において認めるかが論点となる。
 この点、企業会計基準委員会は、直近1年の四半期報告書では22社が原価差異の繰延処理を採用しており、中間財務諸表作成基準と同様に原価差異の繰延処理を廃止することにした場合には一定の影響があると考えられるとし、現行の四半期会計基準の会計処理及び取扱いを踏襲し、「(仮称)中間会計基準等」においても、原価差異の繰延処理を認める方向となっている。
みなし取得日の取扱いも適用可能に
 みなし取得日の取扱いも容認する。四半期会計基準では、「四半期連結財務諸表を作成するにあたり、支配獲得日、株式の取得日又は売却日等が子会社の四半期会計期間の末日以外の日である場合には、当該日の前後いずれかの四半期会計期間の末日等に支配獲得、株式取得又は売却等が行われたものとみなして処理することができる」(第16項)としており、子会社の四半期決算日をみなし取得日とすることが認められている。しかし、四半期報告書制度が廃止されることから、金融商品取引法上廃止される四半期決算日を、「(仮称)中間会計基準等」においてみなし取得日として認めるかどうかが論点となる。
 この点、企業会計基準委員会は、子会社の資産及び負債は、原則として支配獲得日に時価評価して連結することとしており(連結会計基準第20項)、みなし取得日の取扱いは容認規定としていることから、金融商品取引法において四半期決算が廃止されても、年度又は中間会計期間より支配獲得日に近い特定の期日に決算が行われる場合には、当該決算日をみなし取得日とすることが否定されるものではないとしている。このため、前述した現行の四半期会計基準第16項の規定を「子会社の支配獲得日等が子会社の中間会計期間の末日以外の日である場合に、当該日の前後いずれかの決算日に支配獲得等が行われたものとみなして処理することができる。この決算日には、中間会計期間末日又は、中間会計期間の期間内で適切に決算が行われた日を含む」に変更する方向となっている。

前四半期の貸倒実績率等を用いた簡便法は廃止

 また、四半期財務諸表については、年度の財務諸表や中間財務諸表よりも開示の迅速性が求められるため、多くの簡便的な会計処理が定められており、これらも見直しの検討対象となっている。
 例えば、一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理については、金融商品取引法改正法案では四半期報告書制度が廃止されるため、前四半期の決算において算定した基準等を中間会計期間において使用することは、決算日以外の期中の特定の日において算定した貸倒実績率等を使用することは適切ではないと考えられている。しかし、「(仮称)中間会計基準等」に基づく中間財務諸表は、中間作成基準等に基づく中間財務諸表より開示の迅速性が求められることから、企業会計基準委員会では、前年度からの著しい変動がない場合に前年度末の決算において算定した基準等を四半期決算で使用することができる取扱い(四半期適用指針第3項(1))は引き続き簡便的な処理として認めることとし、前四半期の貸倒実績率等を用いた簡便法(四半期適用指針第3項(2))は廃止するとしている。
未実現損益の消去も前年度決算の比較のみ可
 未実現損益の消去における簡便的な会計処理についても同様だ。同会計処理は、前年度又は前四半期から取引状況に大きな変化がないと認められる場合に、前年度又は前四半期の決算において使用した損益率を四半期決算で使用できるとする取扱いだが(四半期適用指針第30項)、こちらについても中間財務諸表より開示の迅速性が求められることから、前年度の決算との比較に基づく簡便的な取扱いは認めることとし、直前の四半期会計期間で使用した損益率や合理的な予算制度に基づいて算定された損益率を使用する簡便的な取扱いについては廃止することとしている。
四半期切放し法は廃止も経過措置容認へ
 そのほか、現行の四半期会計適用指針では、有価証券の減損処理又は棚卸資産の簿価切下げに係る方法として、四半期切放し法と四半期洗替え法の選択適用が認められているが、「(仮称)中間会計基準等」においては、簡便的な会計処理として中間切放し法と中間洗替え法を定めることとしている。
 なお、四半期切放し法を採用しているかどうかは、四半期報告書では開示されておらず、同法を廃止した場合の影響を把握することが難しいため、公開草案においては、変更の影響について意見募集し、重要な影響がある場合には、現行の処理を一定期間認める経過措置を定めるなどの対応を行う方向だ。

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