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紛争・賠償2014年04月09日 トラブル解決に向けての心得3か条 執筆者:中村知己

(その1) 冷静に解決のゴールを設定する

 我々が何らかのトラブルに巻き込まれた場合,怒りや無念といった感情が生じるのは当然のことです。つい感情的になり,トラブルの相手方を怒鳴り散らしてしまうこともあるでしょう。逆に自分がトラブルを引き起こした場合でも,相手方からの追及の仕方に腹を立て,声を荒げて反論してしまうこともあるかもしれません。
 しかしながら,いつまでも感情に任せて行動するだけでは,トラブルの解決には至りません。時間を逆戻りさせることができない以上,当事者双方とも既に起きてしまったことは事実として一旦受け入れて,どのように解決するかという点に意を用いることが大事です。今後どのようにすればトラブルによって生じたマイナスを回復できるのか,さらにはマイナスをプラスに転じることができるのか,ということを冷静に検討するよう心がけましょう。
 客観的状況を冷静に分析することで,自分がどれだけ有利(あるいは不利)な立場なのかを見極めることができれば,それに基づき考え得る最高の結果と最悪の結果とを予測することができるでしょう。そして,想定される結果の範囲内において,どこまでなら自分が納得のいく結果なのかについても十分に検討しておきましょう。自分が何を求めているのかを明確に意識することが必要です。

(その2) 相手の要望にも配慮してゴールへの道筋を想定する

 自分の要求を声高に繰り返すだけでは,紛争は解決に向かいません。相手が何を望み,どこまで妥協できるのかを,相手の立場に立って考えることも重要です。そうすることで,自分がこの主張をしたら相手はあの主張をしてくるだろう,相手がこの要望を出してきたら自分はこの条件を入れてもらおう,といった交渉の流れがある程度予測できるようになり,実際の交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
 自分が求めるものを意識するとともに相手方の要望にも配慮して,目指すべきゴールに向けてどのように交渉を進めていくのか,解決までの道筋をあらかじめ検討しておくことが重要です。昨今よく耳にするようになった,いわゆる「ロードマップ」を作るということです。

(その3) 合意文書を作成する

 そして,最も重要なことは,合意した内容を文書にして残しておくということです。
 トラブルの解決について合意が成立した場合,仮に口約束しかなかったとしても,法律上は和解契約(民695)が成立し,相互に約束を守る義務が生じます。約束した内容を実行しなければ,債務不履行による損害賠償義務を負います(民415)。
 しかしながら,現実に約束が実行されなかった場合に強制的に約束の内容を実現させようとすれば,最終的には民事訴訟を提起して勝訴判決を獲得し,強制執行までする必要があります。このとき,口約束しかなかったとすると,そもそも合意があったのかなかったのか,合意があったとして具体的な合意内容はどのようなものだったのかについて,客観的な証拠がなく,「言った・言わない」の水掛け論になってしまいます。民事訴訟において,合意の成立及びその内容は,原則として原告が立証しなければならないため,どちらとも判断がつかないという場合には原告の請求は認められません。そうなると,トラブルの解決に合意したものの,結局は合意を実行させる手段がないということになりかねません。
 そのため,合意内容を合意書,示談書といった文書にして残しておくことが何よりも重要なのです。

(2014年3月執筆)

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