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税務・会計2013年01月08日 消費税増税の前に 確認しておくべき契約書の消費税条項 執筆者:中村知己

1.消費税条項の規定はどうなっていますか?

 2012年12月衆院選での自民党圧勝により,民主党政権下でのいわゆる三党合意に基づく消費税増税の行方が注目されています。現実に消費税増税が行われた場合,契約書において消費税につきどのような記載をしているかによって影響が異なることがありますので,増税前に一度手元の契約書をチェックしておくことをお勧めします。
 例えば,駐車場の賃貸借契約において,賃料月額を「3万1500円(消費税等含む)」と記載していた場合と,「3万円に消費税等相当額を加えた額」と記載していた場合とでは,契約期間の途中で消費税が増税された場合に貸主の受領できる金額が異なってくる可能性があります。
 前者の「3万1500円(消費税等含む)」との記載の場合,文言上,確定金額である3万1500円の中に消費税等の額も含まれていると解釈できるので,消費税が増税したとしても賃料額は3万1500円のまま変わらないとされる可能性があります。例えば,消費税及び地方消費税の税率が5%から8%に引き上げられたとすると,増税前には「3万円+消費税等1500円=3万1500円」であったものが,増税後には「2万9167円+消費税等2333円=3万1500円」となることになります。すなわち,増税分833円は実質的に貸主が負担することになってしまいます。
 これに対し,後者の「3万円に消費税等相当額を加えた額」との記載の場合,消費税等が増額となればその分支払額は増額されることになるので,税率が5%から8%になった前述の例で言えば,増税前には「3万円+消費税等1500円=3万1500円」であったものが,増税後には「3万円+消費税等2400円=3万2400円」となります。すなわち,増税分900円は借主が負担することになります。
 後者のような記載方法はいわゆる総額表示義務に反するのでは,との懸念もあるかと思いますが,総額表示義務は,不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合に課される義務であり(消費税法63条の2),主に広告や値札等での記載が想定されています。そのため,特定の者との間で締結する契約書においては,総額表示義務はなく,後者のような記載方法も可能です。ただし,「3万円に消費税等相当額を加えた額」との記載だと,実際の支払額が明記されず,借主において分かりにくいという事実上の問題もあります。そのため,賃料月額を「3万円に消費税等相当額1500円を加えた合計3万1500円」とした上で,別に「税法の改正により消費税等の税率が変動した場合には,改正以降における上記消費税等相当額は変動後の税率により計算する。」旨の条項を入れておくことが適切でしょう。

2.侮れない印紙税額

 なお,契約書に消費税分をどのように記載するかによって,当該契約書に貼付する印紙税額に影響が出る場合もあります。
 例えば,請負契約書は印紙税法上の課税文書(第2号文書)に該当するため,契約書に記載された契約金額に応じて印紙を貼付する必要がありますが,請負代金額を「1050万円(消費税等含む)」と記載した場合と,「1050万円(うち消費税等相当額50万円)」と記載した場合とでは,貼付すべき印紙の額が異なります。
 前者の「1050万円(消費税等含む)」との記載の場合には,契約金額と消費税及び地方消費税とが区分記載されていないので,記載金額は消費税等の額を含めた1050万円となり,2万円の印紙を貼付する必要が生じます。
 一方,後者の「1050万円(うち消費税等相当額50万円)」との記載の場合,契約金額と消費税及び地方消費税とが区分記載されており,契約金額が1000万円,消費税等相当額が50万円ということが明らかですので,記載金額は1000万円となり,印紙は1万円で足りることになります。

 消費税増税の影響についても,印紙税額についても,契約1件あたりの差はそう大きなものでなかったとしても,同様の契約書を多数作成していれば,その影響は甚大なものとなる可能性がありますので,普段から契約書の記載方法とそれが税務に与える影響について注意を払っておく必要があります。

(2012年12月執筆)

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