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一般2026年09月17日 突然の通知「50万円を支払え」、詐欺かと思いきや…ひょっとしてあの動画のせい?  放置すれば刑事告訴の恐れも 「便利なソフト」の落とし穴 提供:共同通信社

 東京都に住む自営業の40代男性は、インターネットで得た情報を参考に「ビットトレント」と呼ばれるファイル共有ソフトでアダルト動画をダウンロードするようになった。
 使い方は簡単。パソコンにソフトをインストールし、就寝前に動画のダウンロードを開始し、朝起きたら停止する。これだけで、大量のアダルト動画を無料で見られた。
 しかし今年5月、自宅に郵便が届く。裁判所からの発送らしいが、心当たりがない。
 中を見ると、「発信者情報の開示命令が裁判所で出された」という内容。男性の氏名や住所、電話番号といった情報が開示されたと告げている。
 約20日後、今度は映像制作会社の弁護士名義で郵便が届いた。50万円を振り込むよう求められており、応じなければ「民事および刑事の法的措置を取ることを検討する」―。
 アダルト動画のダウンロードで、著作権侵害として示談金を請求され、トラブルになる事例が相次いでいる。詐欺だろうと思い込んで放置すると刑事告訴される可能性がある。ただ、専門家は「焦って高額請求に応じるのは得策ではない」。もしそうなったら、どうすればいいのか。(共同通信=広川隆秀)

 ▽最初は詐欺かと
 男性は突然の知らせに驚がくしたという。
 「最初は詐欺かと思った」
 ただ、記載内容を調べると、正規のものにしか思えない。さらに侵害された権利の欄には「送信可能化権、公衆送信権」と書いてある。ファイル共有ソフトでアダルト動画を無料視聴したことだろう、と思い当たった。
 「とりあえず本当だという前提で対応しよう。弁護士に相談した方が確実だ」
 男性はネットの口コミで見つけた法律事務所に連絡した。担当した弁護士はこう説明した。
 「急いで50万円を振り込む必要はない」
 発端がアダルト動画だっただけに、男性は家族に打ち明けられないでいた。
 「仕事しながら頭にちらつくこともあった」
 日常生活にも支障が出たというが、弁護士が代理人として間に入ってくれたので、今は普通の生活を送れている。現在は、減額交渉を続けてくれている。
 「放っておかずに相談してよかった」
 ただ、ある程度の違法性を認識していたのも事実で、後悔の念は尽きない。
 「やめておけばよかった。今後はもう使わないようにします」

 ▽「ウィニー」で一気に普及
 男性が使った「ビットトレント」などのファイル共有ソフトは、不特定多数の利用者間でデータを分散させて保有することで、動画や音楽などの大容量ファイルを素早く送受信できる特徴がある。サーバーを介さずに複数の利用者のパソコンを接続し、ファイルをやりとりする通信技術「Peer to Peer」が用いられることが多かった。
 中でも、元東大助手(故人)が開発して2002年に無料公開した「ウィニー」が多くの支持を集め、ファイル共有ソフトは一気に普及。ただ、利用者はダウンロードと同時に動画の一部をアップロードする仕組みになっており、意図しないまま「違法な投稿者」となる場合がある。

 ▽増える開示請求、95%超がアダルト動画
 ところで今回の場合、男性はどうやって特定されたのか。
 類似の訴訟記録などによると、映像制作会社は数年前から検出システムを導入していた。ファイル共有ソフトで著作権を侵害した利用者のIPアドレスを特定し、氏名や住所の開示を求める裁判手続きを取るようになった。開示命令が出た後は、示談金や損害賠償を求める、という手順だ。
 突然の支払い請求を巡るトラブルは後を絶たず、総務省はファイル共有ソフトの安易な使用を控えるよう注意喚起している。
 東京地裁によると、著作権などを扱う知的財産部への発信者情報開示命令の申し立ては増加傾向で、2023年は814件、24年は2454件、25年は5320件。総務省の調査によると、24年に大手プロバイダーなどに届いた開示請求のうち、95・6%がアダルト動画の著作権侵害を理由とするものだった。

 ▽「ソフトを使っている時点で確信犯」
 映像制作会社など多くの著作権者側の代理人を務める戸田泉弁護士は、ビットトレントなどのファイル共有ソフトを使い、違法に動画を視聴するのは絶対に避けるべきだと警告する。
 「そもそもビットトレントを使うには、インストールして設定してと一定の知識が必要。使っているというだけで確信犯とも言えるため、悪質性が高いとみなされるケースが多い」
 インターネット上では、著作権侵害に当たるとして示談金を求められた場合の対応として、時効が来るから郵便を無視すればよいとの解説も少なくないとし、注意喚起する。
 「決してそんなことはない。無視されると対応のしようがなくなるため、権利者の依頼を受けてやむを得ず刑事告訴に至る場合もあり、実際に何件もやっている」
 さらに次のように求めた。「権利者にとっては潜在的な顧客という面もあり、訴訟や刑事手続きといった強制的な手続きを必ずしも望んでいるわけではない。誠実な態度といった考慮すべき事情があれば、減額に応じることもあり得る」

 ▽支払っても解決しないケースも
 冒頭の男性を含め、これまで千人以上から相談を受けてきた笹浪靖史弁護士。請求が増えている背景を分析してみせた。
 「制作会社側で一連の請求を大規模に行う業務フローが完成し、相当の収益になっている」
 注意しなければならない点として、支払いに1回応じたとしても、それだけで解決する保証がないことを指摘する。理由は、ほとんどの人が不特定多数の動画をダウンロードしてしまっており、別の作品分や他の制作会社からの請求が続くためだ。
 笹浪弁護士は強調する。「1本当たりの請求額も高く、行為と責任が釣り合っていない。司法が賠償額の適切な基準を示すべきだ」

(2026/09/17)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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