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解説記事2007年09月24日 【制度解説】 「四半期報告制度」に係る政府令整備の要点(2007年9月24日号・№228)

実務解説
「四半期報告制度」に係る政府令整備の要点

 金融庁総務企画局企業開示課企業開示調整官 谷口義幸
 金融庁総務企画局企業開示課課長補佐 柳川俊成

Ⅰ はじめに

 金融商品取引法制における開示制度の整備の一環として、四半期報告制度が導入されることとなった(開示制度の全体的な整備状況について、谷口義幸「金融商品取引法制の施行に向けた企業内容等の開示に係る政府令整備の要点」本誌227号13頁参照)。
 この四半期報告制度を実施するための政令および内閣府令の整備として、平成19年8月3日に公布された「証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(平成19年政令第233号)により証券取引法施行令が改正された(題名は「金融商品取引法施行令」(以下「金商法施行令」という)に改正される)。
 また、内閣府令については、8月10日に「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(平成19年内閣府令第63号。以下「四半期財規」という)および「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(平成19年内閣府令第64号。以下「四半期連結財規」という)の新設府令が公布され、そして、8月15日に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成19年内閣府令第65号。以下「改正府令」という)により企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という)が改正された。
 本稿では、これらの政令および内閣府令の整備の要点について解説する(規制および政令における主要点について、参照)。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的見解であることをお断りしておく。


Ⅱ 四半期報告制度の概要
 四半期報告制度については、金融審議会金融分科会第一部会報告「投資サービス法(仮称)に向けて」(平成17年12月22日)において「証券取引所に上場され、流動性の高い流通市場をもつ投資商品については、市場で頻繁に価格が変動することから、より頻繁に、かつ、密度の濃い投資情報の提供が求められる。このため、上場企業については、他の開示企業に先立ち、四半期報告制度の導入や財務報告に係る内部統制に関する制度の一層の整備を図っていくことが適当と考えられる」と提言されたこと、また、証券取引所の自主ルールによる四半期開示では、その情報に虚偽がある場合でも罰則や課徴金の対象とならないため、法律に基づく制度とすべきとの指摘があること等を受け、金融商品取引法(以下「金商法」という)において導入することとされた。

1.対象会社  四半期報告制度の対象会社は、「有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の政令で定めるもの」(金商法24条の4の7第1項)と規定されている。
 具体的には、次の①から⑤の有価証券を上場または店頭登録している発行会社(以下「上場会社等」という)と規定された(金商法施行令4条の2の10第1項)。
 ① 株券
 ② 優先出資証券
 ③ 外国の者が発行者である①または②の有価証券の性質を有するもの
 ④ 有価証券信託受益証券(注1)で①から③までの有価証券を受託有価証券(注1)とするもの
 ⑤ 預託証券で①から③までの有価証券に係る権利を表示するもの
 なお、有価証券報告書(特定有価証券に係るものを除く)を提出しなければならない会社については、上場会社等以外の会社であっても、任意に四半期報告書を提出することができる(金商法24の4の7第2項)。
 一方、金商法24条の4の7第3項は、特定有価証券に係る有価証券報告書の提出会社のうち政令で定めるものに四半期報告制度を適用するための準用規定であるが、政令は定められていないため、特定有価証券に係る有価証券報告書の提出会社には四半期報告制度は適用されない。
(注1)有価証券を信託財産とする受益証券発行信託の受益証券(金商法2条1項14号に掲げる有価証券)であって、当該信託財産である有価証券(「受託有価証券」という(金商法施行令2条の3第3号))に係る権利の内容が受益権の内容に含まれる旨等が信託行為において定められているものをいう(金商法施行令2条の3第3号)。

2.提出義務  対象会社の事業年度が3月を超える場合、当該事業年度の期間を3月ごとに区分した各期間ごとに四半期報告書の提出が義務付けられる(事業年度における最後の期間については、四半期報告書の提出は不要である(金商法施行令4条の2の10第2項))。
 また、半期報告制度は四半期報告書提出会社には適用されないため(金商法24条の5第1項)、第2四半期については、半期報告書ではなく、第2四半期報告書の提出が義務付けられる。

3.開示内容  四半期報告書の記載内容は、密度の濃い投資情報を提供する観点から半期報告書の記載項目を基本としているが、一方で、四半期報告の迅速性・適時性の要請等を考慮しつつ、工夫されたものとなっている。
 具体的な記載内容については、開示府令に新設した四半期報告書の様式(内国会社については第4号の3様式(以下「様式」という)、外国会社については第9号の3様式)において定められている。
 記載内容のポイントは次のとおりである。
① 「経理の状況」における財務諸表については、基本的に四半期連結財務諸表(四半期連結貸借対照表、四半期連結損益計算書および四半期連結キャッシュ・フロー計算書)のみとされた(様式・記載上の注意(22))。
 四半期連結財務諸表の作成対象期間は、その種類ごとに次のように定められている(様式・記載上の注意(22)・(27))。
 イ 四半期連結貸借対照表
  a 当四半期連結会計期間(注2)
  b 前連結会計年度(要約連結貸借対照表)
 ロ 四半期連結損益計算書
  a 当四半期連結会計期間/前年同四半期連結会計期間(当四半期連結会計期間が第1四半期連結会計期間である場合は、これらの記載は不要)
  b 当四半期連結累計期間(注3)/前年同四半期連結累計期間 
 ハ 四半期連結キャッシュ・フロー計算書
  ・ 当四半期連結累計期間/前年同四半期連結累計期間 
② 「財政状態及び経営成績の分析」(様式・記載上の注意(11))を新設し、このなかで「業績等の概要」「対処すべき課題」および「研究開発活動」についてまとめて記載する(様式・記載上の注意(11))。「主要な設備の状況」および「設備の新設、除却等の計画等」を「設備の状況」に集約する(様式・記載上の注意(12))。
③ 「大株主の状況」については、基本的に第2四半期報告書においてのみ記載する(様式・記載上の注意(17))。
④ 「事業の内容」「関係会社の状況」「従業員の状況の詳細」「経営上の重要な契約等」および「設備の状況」については、当四半期会計期間に重要な変更等があった場合に記載する(様式・記載上の注意(6)等)。
(注2)「四半期連結会計期間」とは、四半期の3月間をいう(開示府令1条22号の3(四半期財規3条5号))。
(注3)「四半期連結累計期間」とは、当該連結会計年度の期首から当該四半期連結会計期間の末日までの間をいう(四半期財規3条7号)。

4.特定事業会社  次の①のイからホに掲げる事業(以下「特定事業」という)を行う会社(以下「特定事業会社」という)については、単体の半期ベースで自己資本比率に係る規制等を受けることとされているが(注4)、単体の半期ベースの財務情報についても投資情報として重要であると考えられることから、特定事業会社の第2四半期報告書(注5)については、四半期連結財務諸表の記載に代えて、②のイからハに掲げる財務情報を記載することとした(金商法24条の4の7第1項、開示府令17の6第2項、様式・記載上の注意(32))。
① 特定事業
 イ 銀行業
 ロ 銀行持株会社の業務に係る事業
 ハ 保険業および少額短期保険業
 ニ 保険持株会社(当該保険持株会社の最近事業年度に係る有価証券報告書における子会社である保険会社および少額短期保険業者の株式の価額の合計額が当該保険持株会社の総資産の額の50%を超えるものに限る)および少額短期保険持株会社(当該少額短期保険持株会社の最近事業年度に係る有価証券報告書における子会社である少額短期保険業者の株式の価額の合計額が当該少額短期保険持株会社の総資産の額の50%を超えるものに限る)の業務
 ホ 信用金庫法に定める全国を地区とする信用金庫連合会(信金中央金庫)の業務の係る事業
② 財務情報
 イ 中間連結財務諸表(当中間連結会計期間および前中間連結会計期間に係るもの)
 中間連結貸借対照表、中間連結損益計算書、中間連結株主資本等変動計算書および中間連結キャッシュ・フロー計算書を記載する。
 ロ 中間財務諸表(当中間会計期間および前中間会計期間に係るもの)
 中間貸借対照表、中間損益計算書、中間株主資本等変動計算書および中間キャッシュ・フロー計算書(中間連結キャッシュ・フロー計算書を作成している場合を除く)を記載する。
 ハ 「経理の状況」の「その他」
 第2四半期連結会計期間および前年同四半期連結会計期間に係る損益の状況を四半期連結損益計算書(四半期連結財務諸表を作成していない場合は、第2四半期会計期間および前年同四半期会計期間に係る損益の状況を四半期損益計算書)の形式で記載する。
(注4)①のニの事業を行う会社(保険持株会社等)は自己資本比率規制の対象ではないが、自己資本比率規制の対象である保険子会社の財政状態、経営成績等の影響を強く受ける場合には、保険持株会社についても、単体の半期ベースの財務諸表を記載することとした。
(注5)第1・第3四半期報告書については、原則、他の会社と同様の記載内容となる。ただし、第3四半期報告書についてのみ、「経理の状況」の「その他」に第3四半期連結会計期間および前年同四半期連結会計期間に係る損益の状況を四半期連結損益計算書(四半期連結財務諸表を作成していない場合は、第2四半期会計期間および前年同四半期会計期間に係る損益の状況を四半期損益計算書)の形式で記載することとされた(様式・記載上の注意(26)d、(31)d)。

5.提出期限  四半期報告書の提出期限は、各四半期終了後45日以内とされた(金商法24条の4の7第1項、金商法施行令4条の2の10第3項)。
 また、特定事業会社については、第1・第3四半期報告書の提出期限は45日以内に、第2四半期報告書については60日以内に提出しなければならないと規定された(金商法24条の4の7第1項、金商法施行令4条の2の10第4項)。

6.その他  四半期報告書を提出した会社は、有価証券届出書および有価証券報告書の「経理の状況」の「その他」に、最近連結会計年度(有価証券報告書の場合は、当連結会計年度)における第1から第4までの四半期連結会計期間に係る次の①から④の項目(四半期連結財務諸表を作成していない場合は、四半期会計期間に係る次の①から④の項目)の金額を記載しなければならないこととされた(開示府令第2号様式・記載上の注意(60)c・(68)d、第3号様式・記載上の注意(39)b・(47)b)。
① 売上高
② 税金等調整前四半期純利益金額または税金等調整前四半期純損失金額(税引前四半期純利益金額または税引前四半期純損失金額)
③ 四半期純利益金額または四半期純損失金額
④ 1株当たり四半期純利益金額または1株当たり四半期純損失金額

Ⅲ 四半期財務諸表の作成方法(四半期財規の概要)
 四半期報告書に掲載される四半期財務諸表に関し、作成基準については、平成19年3月に企業会計基準委員会(ASBJ)から「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という)および「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」、また、両者を合わせて「四半期会計基準等」という)が公表されている。
 また、監査証明の基準については、同年3月に企業会計審議会が「四半期レビュー基準の設定に関する意見書」(以下「意見書」という)を取りまとめ、公表している。
 一方、金融庁では、四半期財務諸表の制度化に関する内閣府令として四半期財規および四半期連結財規を新設し、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」(以下「監査証明府令」という)の改正を行った。

1.構  成  四半期会計基準等では、四半期連結財務諸表の作成基準と四半期個別財務諸表の作成基準を設けている。こうしたことから、規則についても、年度・中間と同様に、四半期連結財規と四半期財規をそれぞれ整備した。
 四半期財規は原則として四半期報告書提出会社のうち連結財務諸表を作成していない会社に適用されることになる。四半期財規の構成は6つの章からなり、おおむね「中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「中間財規」という)の場合と同じであるが、四半期会計基準等では株主資本等変動計算書の開示は求められておらず、著しい変動があった場合の注記事項とされたことから、中間において株主資本等変動計算書の注記事項とされていた項目等と合わせ第5章「株主資本等に関する注記」として独立した章とした。

2.総  則  定義等のほか、四半期財務諸表において求められる注記事項の多くは第1章「総則」において定められている。
 「規則の適用」(1条)では、有価証券届出書や四半期報告書に掲載される財務計算に関する書類のうち四半期財務諸表の用語、様式および作成方法についてはこの規則の第1章から第5章までに定めるところによることを規定している。
 ここで、銀行、保険会社等の特定事業会社の第2四半期の報告については、中間財務諸表および中間連結財務諸表が掲載されることになることから、今回、中間財規および中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「中間連結財規」という)を改正し、これらの規則の「規則の適用」(1条)が適用されることになる。
 「四半期財務諸表作成の一般原則」(4条)では、中間財務諸表等規則の中間財務諸表作成の一般原則に挙げられている「会計処理原則の継続適用」および「表示方法の継続適用」のほかに「年度の会計処理原則への準拠」を規定している。
 その例外として、四半期会計基準では適時性の観点から簡便的な会計処理が認められており、これを採用した場合には注記が必要とされている(四半期会計基準25項(5))。
 四半期財規では、「簡便な会計処理に関する注記」(6条)の規定を定めており、簡便な会計処理を適用した場合にはその旨およびその内容の注記が必要である。なお、簡便な会計処理の方法については、一般債権の貸倒見積高の算定方法や原価差異の配賦方法等の四半期適用指針に掲げられている方法が該当することになるが、これらについては、ガイドラインにおいて例示をする予定である。
 四半期会計基準では、四半期特有の会計処理として、原価差異の繰延処理、後入先出法における売上原価修正および税金費用の計算が示されているが、当該処理を採用した場合に必要とされる注記については「四半期財務諸表の作成に特有な会計処理に関する注記」(7条)でその旨および内容を注記することを定めている。
 「四半期財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の変更に関する記載」(5条)のうち、1項1号は、従来の会計方針の変更に関する記載の規定である。
 四半期会計基準では、これに加えて第2四半期以降に自発的に会計処理の原則および手続を変更した場合の注記、さらに、前事業年度に自発的に重要な会計処理の原則および手続を変更した場合における翌事業年度の四半期における注記が求められており、それぞれ2項および3項に規定を置いている。
 「有価証券に関する注記」(9条)および「デリバティブに関する注記」(10条)については、適時性の要請を踏まえ、会社の事業運営において重要なものとなっており、かつ、前事業年度末に比して著しい変動が認められる場合に注記が必要としている。第2章の「担保資産に関する注記」(41条)についても同様である。この場合の「著しい変動」については、企業の業種や規模によって判断は異なるものと考えられること等から、特段、数値による判断基準は設けていない。
 「ストック・オプションに関する注記」(14条)では、四半期独自の規定として、条件変更を行った場合に、その変更内容の注記を求めている。
 「パーチェス法を適用した場合の注記」(15条)、「持分プーリング法を適用した場合の注記」(16条)、「共通支配下の取引等の注記」(17条)および「共同支配企業の形成の注記」(18条)は、中間では財規の規定を準用して年度と同様の取扱いとなっているが、四半期では年度・中間より簡略化したものとなっている。
 「パーチェス法を適用した場合の注記で、当事業年度開始の日で企業結合が完了したと仮定した場合の、四半期累計期間に係る四半期損益計算書への影響の概算額」は、業績の推移を把握するための参考情報であるとともに、監査の実施が困難であることから、監査対象外とされている(後述Ⅳ2参照)。
 当該影響の概算額の注記(15条1項9号)について、監査証明を受けていない場合には、その旨の記載が必要である(財規15条5項)。なお、その概算額の算定について規則等に具体的な規定は定めていないが、年度と同様の方法(財規8条の17第5項)によることが考えられる。
 「継続企業の前提に関する注記」(21条)では、四半期貸借対照表日において、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合に、「当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応」の注記を求めている。
 当該「経営者の対応」に関しては、対象期間について、意見書のいわゆる前文で、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象または状況が新たに発生した場合または前事業年度末から大きな変化があった場合に、少なくとも、四半期会計期間末から1年間、それ以外は事業年度末までの対応を記載することが求められている。
 一方で、その記載内容については、四半期では経営計画の策定まで求めることが困難な場合も考えられることから、四半期会計基準では、重要な疑義を解消する経営計画がない場合でも継続企業を前提として財務諸表を作成することが合理的と判断した理由を記載することが考えられるとされている(四半期会計基準60項)。これらの内容については、ガイドラインで明示することを予定している。

3.四半期財務諸表(四半期貸借対照表、四半期損益計算書、四半期キャッシュ・フロー計算書)  第2章から第4章までは、四半期財務諸表の記載方法について定めている。
 資産・負債・資本の分類・区分記載および科目表示、収益、費用等の区分記載は、おおむね中間財務諸表の場合と同じである。ただし、四半期会計基準では、開示の適時性の要請を踏まえ、中間作成基準だけでなく、35日以内での開示を義務付けている米国SEC規則での取扱いを参考にして、主要な項目について独立掲記したうえで、その他の科目は集約して記載できることとされていることから、同基準には、区分掲記等の具体的な規定は定められていないが、米国SEC規則での取扱い等を参考に、区分掲記の数値基準を定めるとともに、たな卸資産の表示科目等を定めている。
 具体的には、中間財規では、中間貸借対照表について資産の総額または負債および資本の総額の100分の5超の場合に区分掲記すべきとされているのに対し、四半期貸借対照表では100分の10超または区分掲記が適切な場合としている(30条ほか)。
 また、中間損益計算書について販売費および一般管理費等の合計額の100分の10超の場合に区分掲記すべきとされているのに対し、四半期損益計算書では100分の20超または区分掲記が適切な場合としている(61条ほか)。
 科目の分類についても、中間財規では、資本の部は、資本剰余金、利益剰余金をさらに区分表示することが求められているのに対し、四半期財規では、こうした区分表示は求めていない(49条)。また、たな卸資産については、商品、製品、半製品、原材料および仕掛品の科目表示を求める等の相違がある(30条)。
 四半期財務諸表は第1号様式から第5号様式により提出することになる。四半期損益計算書については、四半期累計期間(期首からの累計期間)に係るもの(第2号様式)および四半期会計期間(3か月の期間)に係るもの(第3号様式)の2種類の提出が必要となる。
 四半期キャッシュ・フロー計算書については、四半期累計期間に係る情報を第4号様式または第5号様式により提出することになる(74条)。
 同様式は記載上の注意で利害関係者の判断を誤らせないと求められる範囲内で、様式を集約して記載することができることとしている(様式・記載上の注意1)。また、「小計」の記載は省略することができることとしている(様式・記載上の注意5)。
 注記事項では、偶発債務の注記(46条)と手形割引高および裏書譲渡高の注記(47条)を定めている。これらについては、ASBJでの検討を踏まえ、いずれも重要性が乏しいものについては、注記を省略することができることとしている。

4.株主資本等に関する注記  第5章「株主資本等に関する注記」では、中間において株主資本等変動計算書の項目とされていたものをまとめている。
 「発行済株式に関する注記」(78条)、「自己株式に関する注記」(79条)、「新株予約権等に関する注記」(80条)については、年度・中間で求められていた変動数、変動事由の概要等の記載が求められておらず、記載内容は簡略化されている。
 株主資本の金額に、前事業年度末に比して著しい変動があった場合には、主な変動事由を注記しなければならない(82条)。四半期適用指針では、この場合の変動事由として、新株の発行または自己株式の処分、剰余金の配当等が挙げられているが(四半期適用指針64項)、これらについては、ガイドラインで例示をする予定である。

5.外国会社の財務書類  外国会社についても、上場会社または店頭登録会社であれば、国内会社と同様、四半期報告書の提出が義務付けられており(金融商品取引法24条の4の7第1項)、第6章「外国会社の財務書類」では、外国会社の四半期報告書に掲載される四半期財務書類の作成方法を定めている。
 年度・中間と同様に、特に公益または投資者保護に欠けるところがないと認められる限り、原則としてその外国会社の本国基準によるとする本国基準の基本的な考え方に基づいて必要な事項を定めている。
 なお、83条1項でいう四半期財務書類には、四半期の連結に係るものもすべて含まれることになる。

6.四半期連結財規における主な差異  四半期連結財務諸表の記載方法等については、基本的に四半期財務諸表等規則に定める個別の財務諸表におけるそれが基礎となっている。以下では、四半期連結財規において、四半期財務諸表と異なる主な箇所について説明する。
(1)四半期連結財務諸表作成のための重要な事項等の変更に関する記載  四半期会計基準では、連結の範囲に関する事項その他四半期連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項を開示することは求められていないことから、中間における「連結の範囲等に関する記載」(中間連結財規10条)に相当する規定はない。
 これらの事項については、変更を行った場合にその旨および変更の理由の記載が必要である(四半期連結財規10条)。
(2)セグメント情報の注記  事業の種類別セグメント情報、所在地別セグメント情報および海外売上高の注記(四半期連結財規15条)の具体的な内容は、様式の記載上の注意に委ねられている。
 四半期独自の規定として、四半期会計期間と期首からの累計期間の情報、事業の種類別セグメント情報に係るセグメント資産別金額に著しい変動があった場合、その概要の注記が必要である(四半期連結財規・様式第1号・記載上の注意12)。

7.実施時期等  四半期財務諸表等規則および四半期連結財務諸表規則は、証券取引法等の一部を改正する法律の施行の日から施行され、四半期財務諸表および四半期連結財務諸表への適用は、平成20年4月1日以後開始する事業年度および連結会計年度からされることになる。
 したがって、適用初年度においては、前事業年度および前連結会計年度に係る四半期財務諸表および四半期連結財務諸表の記載は要しない。

Ⅳ 監査証明府令の改正関係  金融商品取引法上、四半期財務諸表および四半期連結財務諸表には公認会計士または監査法人による監査証明が必要とされ(金融商品取引法193条の2第1項)、当該監査には新たに四半期レビューが導入されることになる。
 これらに伴い、監査証明府令の所要の改正を行った。

1.監査証明を受けなければならない財務計算に関する書類の範囲  監査証明府令1条は、監査証明を受けなければならない書類の範囲を規定しているが、四半期報告制度の導入に伴い、四半期財務諸表および四半期連結財務諸表を対象に追加した(監査証明府令1条2号、5号、9号、11号)。
 また、特定事業会社の第2四半期の報告書に掲載される財務諸表として、中間財務諸表および中間連結財務諸表を追加している(10号、12号)。

2.パーチェス法を適用した場合の注記の取扱い  パーチェス法を適用した場合の注記のうち、「(期中に行われた)企業結合が事業年度開始の日に完了したと仮定した場合の当事業年度の損益計算書に及ぼす影響の概算額」は、業績の推移を把握するための参考情報であるとともに、監査の実施が困難であることから、監査対象外とされている。
 四半期においても当該注記(四半期財規15条1項9号、四半期連結財規20条1項8号)を監査対象外とした(1条)。

3.監査証明の手続  四半期財務諸表または四半期連結財務諸表の監査証明(四半期レビュー)は実施した公認会計士または監査法人の四半期レビュー報告書により行う旨を追加した(3条)。

4.監査報告書等の記載事項  四半期レビュー報告書の記載事項を追加した。記載事項は四半期レビュー基準の報告基準に定められた次の①から④までの4項目および⑤の明示すべき利害関係である(4条)。
① 四半期レビューの対象
② 実施した四半期レビューの概要
③ 結論
④ 追記情報
⑤ 公認会計士法25条2項の規定により明示すべき利害関係

5.監査概要書の提出  四半期レビューは金融商品取引法上の監査証明であり、実施した公認会計士または監査法人は年度・中間の監査と同様に、監査概要書の提出が必要と考えられることから、新たに「四半期レビュー概要書」(第4号様式)を設け、提出を求めることとした。
 当該概要書は、四半期レビュー報告書の作成日の翌月の末日までに提出する必要がある(5条)。
 なお、特定事業会社の第2四半期の監査証明については、中間監査概要書(第2号様式)を提出することになるので留意が必要である。

6.実施時期  平成20年4月1日以後開始する事業年度および連結会計年度に係る監査証明に適用される。
(たにぐち・よしゆき/やながわ・としなり)

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