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解説記事2018年04月09日 【ニュース特集】 軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細判明(2018年4月9日号・№734)

ニュース特集
小売業や飲食店業は簡易インボイスも可
軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細判明

 所得税法等の一部を改正する法律が3月31日に公布され、同時に関係政省令も公布された。このうち、消費税法施行令等の一部を改正する政令等では、これまで規定されていなかった適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)に関する整備が行われている。平成35年10月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等について適用される。

政省令公布で軽減税率と同時にインボイスへのシステム対応が可能
 平成28年度税制改正では軽減税率制度とともに適格請求書等保存方式が導入されることに決まった。その後導入時期については、消費税率の引上げ延期に伴い平成35年10月1日からとされることになったが、適格請求書等保存方式の政令事項等は未整備であったため、平成30年度税制改正で措置されることになったもの。事業者サイドからの要望で軽減税率制度の実施に向けたシステム対応の際に適格請求書等保存方式への対応も行いたいとのニーズを踏まえた結果である。これによりシステム対応の二重投資といった負担を避けることができる。
名称や登録番号が国税庁HPで検索可能  軽減税率制度導入に当たっては適格請求書発行事業者制度が創設され、平成35年10月1日以降は、原則として仕入側は「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」を保存しなければ仕入税額控除が認められなくなる。
 適格請求書発行事業者とは、適格請求書等を交付することができる事業者として登録を受けた者。同事業者については、①氏名又は名称及び登録番号、②登録年月日、③法人にあっては、本店又は主たる事務所の所在地、④特定国外事業者以外の国外事業者にあっては、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所等の所在地が適格請求書発行事業者登録簿に登載され、これらの登載事項は国税庁のホームページに掲載される(改正消令70の5)。取引先の事業者は適格請求書発行事業者であるか否か、国税庁のホームページを検索することにより調べることが可能になる。
出張旅費や通勤手当は帳簿のみで可  適格請求書等保存方式の導入後は、適格請求書等を“保存”することが仕入税額控除の要件となる。ただし、適格請求書等の交付を受けることが難しい取引については、帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる(改正消令49、改正消規15の4)。
 具体的には、①船舶、バス又は鉄道による旅客の運送として行われるもの(3万円未満のものに限る)、②入場券等が使用の際に回収されるもの、③古物営業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける古物等、④質屋を営む者が適格請求書発行事業者でない者から所有権を取得する質物、⑤宅地建物取引業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける建物、⑥再生資源卸売業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける再生資源又は再生部品、⑦自動販売機により行われるもの(3万円未満のものに限る)、⑧郵便切手類のみを対価とする郵便サービス、⑨従業員等に対して支給する通常必要な出張旅費等及び通勤手当とされている。
農水産品などはインボイス交付の必要なし  また、適格請求書等の交付が困難なものとして交付義務を免除する取引が規定されている(改正消令70の9、改正消規26の6)。
 具体的には、①船舶、バス又は鉄道による旅客の運送として行われるもの(3万円未満のものに限る)、②卸売市場、農業協同組合、漁業協同組合、森林組合等が委託を受けて行う一定の農林水産品の譲渡、③自動販売機により行われるもの(3万円未満のものに限る)、④郵便切手類のみを対価とする郵便サービスが規定されている。
適格簡易請求書も電子レシートに対応  そのほか、不特定多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業については、実務負担に配慮し、「適格請求書」に代えて「適格簡易請求書」を交付することができることとした。具体的には、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業等とされている(改正消令70の11)。なお、適格簡易請求書は適格請求書に比べて一部記載事項が簡略化されている(図表1参照)。

【図表1】適格請求書及び適格簡易請求書の記載事項
適格請求書 適格簡易請求書
・適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
・課税資産の譲渡等を行った年月日
・課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該
課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡である
場合には、その旨)
・課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率
の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
・消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
・適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
・課税資産の譲渡等を行った年月日
・課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該
課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡である
場合には、その旨)
・課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率
の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
・消費税額等又は適用税率

 また、平成30年度税制改正では、適格請求書に加えて適格簡易請求書についても電子化が認められることになった。政府においてレシートの電子化促進のためのフォーマットの統一などの環境整備が行われる方向となっており、今後、電子レシート(図表2参照)がコンビニエンスストア等の小売業者を中心に普及していくことが予想されているからだ。
 なお、提供した電磁的記録については、提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存することとされている(改正消令70の13)。
「積上げ計算」と「割戻し計算」の選択  納付税額の計算については、適格請求書等保存方式の導入に伴い、①適用税率ごとの取引総額に110分の10、108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」及び②適格請求書等に記載のある消費税額の「積上げ計算」のいずれかの方法を選択することができる(改正消令46、図表3参照)。ただし、売上税額について「積上げ計算」している場合は、端数処理による益税を防止する観点から仕入税額も「積上げ計算」をすることが求められる。

【図表3】納付税額の計算(例)
① 割戻し計算
10%対象:22,000円×10/110=2,000円
 8%対象:21,600円×8/108=1,600円
              (合計)3,600円 ② 積上げ計算
2,000円+1,600円=3,600円

農林水産業(食用)のみなし仕入率は80%に引上げ
 そのほか、平成31年10月1日に消費税率が10%へ引き上げられることに伴い、簡易課税制度の一部が見直される(改正消令57)。
 具体的には、平成31年10月1日から農林水産業(飲食料品の譲渡を行う部分に限る)を第2種事業とし、そのみなし仕入率は現行の70%から80%に引き上げられる(図表4参照)。農林水産業については、売上が軽減税率の8%となるが、仕入に関しては種子や農薬、農耕機具など、その大半が標準税率(10%)となっている。現行のみなし仕入率のままだと、仕入税額が過小に算出されるおそれがあるため、軽減税率制度の導入に併せて見直されるものである。

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