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解説記事2019年12月09日 SCOPE 税理士法人に対する懲戒請求、信用棄損に該当するか(2019年12月9日号・№814)

税理士でない職員に税理士業務など
税理士法人に対する懲戒請求、信用棄損に該当するか


 税理士法人に対する懲戒請求が信用棄損に該当するか否かが争われた裁判で、東京地裁(髙橋玄裁判官)は7月18日、懲戒事由は税理士でない者に税理士業務を行わせてはならないとする税理士法48条の15に明らかに違反するなど、法律上の根拠を欠くものではないとし、違法な懲戒請求として不法行為を構成しないとの判断を示し、税理士法人の主張を斥けた。

懲戒請求が制度趣旨に照らし相当性を欠く場合に不法行為を構成

 本件は、税理士法人である原告が、弁護士法人である被告に対し、被告が原告と顧問契約を締結していた会社を代理して原告に対する懲戒請求をしたことが不法行為に当たると主張して、信用毀損による200万円の損害賠償等を求めた事案である(参照)。

 弁護士法人(被告)は、税理士法人(原告)が税理士でない職員(X)を雇用した上、会社の担当税理士として税理士業務に当たらせ、これにより顧問先の会社から報酬を得ていた行為は非税理士の助長禁止(税理士法48条の15)に違反するなどとし(参照)、懲戒請求を国税局に対して提出していた。

【表】懲戒事由

① X(原告である税理士法人の職員)は、法人税確定申告書を偽造した上、これらを銀行の担当者に提出して行使した。この行為は有印私文書偽造及び同行使に当たり、原告においても税理士法48条の16において準用する同法37条(信用失墜行為の禁止)に違反する。
② 原告は、税理士でないXを雇用した上、本件会社の担当税理士として日常的に税理士業務に当たらせ、又は原告の名称を使用させ、これにより本件会社等の顧問先から報酬を得ていた。この行為は税理士法48条の15(非税理士の助長禁止)に違反する。
③ 原告は、本件会社並びにその関連会社との間でそれぞれ税理士顧問契約を締結していたが、各契約の解除後も、本件会社らの再三にわたる申入れにもかかわらず、顧問料の口座自動引落しを停止する措置をとらず、顧問料を取得し続けた。本件会社らに対し、過払となった顧問料合計130万円を返還したが、なお81万6,800円が未払のままとなっている。このような原告の対応は、税理士法48条の16において準用する同法37条(信用失墜行為の禁止)に違反する。

 税理士法人(原告)は、弁護士法人(被告)は懲戒請求に当たって原告の信用を著しく毀損する結果を招く可能性も含め慎重に検討すべきであったところ、原告代表者が本件求釈明を受け取っていない可能性を想定せず、最終的な原告の意思を確認することもないまま本件懲戒請求をしたのであるから、専門家として求められる誠実義務に違反したというべきであり、原告に対する不法行為責任を免れないなどと主張していた。
懲戒事由の根拠について調査義務
 東京地裁は、税理士法では税理士法人について処分の事由があると認めたときは、広く一般の人々に対し懲戒請求を認めているが(税理士法47条3項)、その一方では懲戒請求を受けた税理士法人は根拠のない請求により信用等を不当に侵害されるおそれがあるため、懲戒請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査及び検討をすべき義務を負うべきであるとした。その上で最高裁判決(平成19年4月24日)を引用し、懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が税理士法の定める懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときは、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当であるとした。
 本件についてみると、東京地裁は、懲戒事由②は、税理士でない者に税理士業務を行わせてはならないとする税理士法48条の15に明らかに違反することになるとし、懲戒事由①及び③についても、原告の職員が有印私文書偽造及び同行使という犯罪行為に及んでいたり、原告が過払顧問料の返還になかなか応じなかったりするというものであり、本件会社ないし被告において、これらが税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないとする税理士法37条に違反すると考えたとしても、全く法律上の根拠を欠くということはできないとした。したがって、本件懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くと認めることはできず、また、税理士法の定める懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認めることもできないから、違法な懲戒請求として不法行為を構成するということはできないとの判断を示した。
被懲戒者の意思確認は必要なし
 なお、原告は、被告の不注意により、原告の意思を確認することもなく突如として本件懲戒請求に及んだことが専門家としての誠実義務に違反すると主張するが、東京地裁は、懲戒請求は被懲戒者に対する確定的な不利益処分を伴うものではなく、懲戒請求に伴い被懲戒者に生じ得る事実上の不利益を踏まえても、懲戒請求者において事前に被懲戒者の意思を確認する理由はないと指摘している。

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