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会計ニュース2003年06月16日 ニュースで話題の税効果会計って何?(2003年6月16日号・№023) ニュース特集 「かんたん」説例で「しっかり」理解!!

ニュース特集

「かんたん」説例で「しっかり」理解!!
ニュースで話題の税効果会計って何?


 最近、ニュースで繰延税金資産という言葉を耳にする機会が増えました。りそな銀行に公的資金が注入されることになった背景に、繰延税金資産の回収可能性が焦点となっていたことは周知のとおりです。今回の特集では、注目を集め始めた繰延税金資産にフォーカスし、個別財務諸表を前提に税効果会計を解説します。


税効果会計って何?
 税効果会計は、企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(「法人税等」)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続です(「税効果会計に係る会計基準」前文より)。
 なんだか難しそうですが、まずは税効果会計を適用した場合と適用しない場合を具体例で比較することで直感的に理解してみましょう。
 


×1年:A社貸付金100に対して有税で貸倒引当金繰入50
税引前当期純利益100 課税所得150(申告調整事項は、A社貸付金100に対する有 税の貸倒引当金繰入超過額50のみ) 法人税等60(税率は40%)
×2年:期中、A社が破産の申立てをした。
税引前当期純利益100 課税所得50(申告調整事項は、前期加算したA社貸付金に対す る有税の貸倒引当金50の戻入益認容=減算のみ) 法人税等20(税率は40%)


 いかがですか?税効果会計を適用しないと、税引前利益と法人税等の額の対応がちぐはぐな印象があります。これは企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点に相違があることが原因です。一方、税効果会計を適用すると、税引前利益と法人税等の額がすっきりと対応しています。すっきりとした対応は、法人税等調整額による調整の結果可能になったといえます。
 では、どのようにして法人税等調整額を計算するのでしょうか? まずは、税効果会計の仕組みから見ていきましょう。


税効果会計の仕組み
2つのアプローチ
 税効果会計には2つのアプローチがあります。繰延法と資産負債法です。P/Lから導き出すか(繰延法)、B/Sから導き出すか(資産負債法)の発想の違いといえます。わが国では資産負債法が採用されています。

資産負債法の考え方
 資産負債法では会計上のB/Sと税務上のB/Sとの差額(ずれ)に税効果を認識します(右図)。この「ずれ」のことを税効果会計では一時差異といいます。
 なお、一時差異は、将来の課税所得を増やす(加算)のか、又は、減らす(減算)のかの違いにより、将来加算一時差異と将来減算一時差異とにわかれます。前ぺージの貸倒引当金の有税引当は、将来、法人税の貸倒れの要件を満たした時に課税所得を減らす(減算)するため、将来減算一時差異に該当します。

将来減算一時差異の例:貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金(未払賞与)、繰越欠損金
将来加算一時差異の例:固定資産圧縮積立金、その他の有価証券評価差額

MEMO なお、交際費の損金不算入額、受取配当金の益金不算入額などは、会計上のB/Sと税務上のB/Sとの差額を生じませんので、一時差異には該当しません。よって、税効果は認識しません。



税効果会計の仕訳
 前ページの例を用いて、会計上の売掛金と税務上の売掛金の「ずれ」を具体的に見てみましょう。

 このずれは将来(結果的には×2年でした)において減算されることで解消されるため、×1年において繰延税金資産を計上します。金額は「ずれ」の金額(50)に税率(40%)を乗じます。仕訳は次のようになります。
繰延税金資産20/法人税等調整額20

 なお、「ずれ」の解消時に逆仕訳となります(実際は繰延税金資産の期首と期末で比較した増減額につき調整の仕訳をおこします)。
MEMO 仮に、将来加算一時差異の場合、繰延税金「資産」ではなく繰延税金「負債」を認識します。その場合、仕訳は次のようになります。
法人税等調整額 XX / 繰延税金負債 XX
なお、繰延税金負債の期首と期末で比較した増減額につき調整の仕訳をおこします。


繰延税金資産の回収可能性(資産性)
 さて、繰延税金資産を計上するためには、一つ条件があります。それは、計上した繰延税金資産が本当に将来の課税所得を減算(=回収)するのか否かをチェックする必要がある、というもの。これが、繰延税金資産の回収可能性の問題です。
 将来の課税所得が十分に見込まれれば、繰延税金資産の資産性に問題はありません。しかし、将来の課税所得が十分でなければ、それは減算する対象がないことを意味します。そのようなものに貸借対照表能力を認める訳にはいきません。

 なお、「将来において減算しうるに十分な課税所得が見込めるか否か」は、次の3つの要件のうちいずれかを満たしてるか否かで判断します(日本公認会計士協会「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」)。
(1)収益力に基づく課税所得の十分性
 将来減算一時差異の解消年度や繰越欠損金の繰越期間に課税所得が発生する可能性が高いと見込まれること
(2)タックスプランニングの存在
 将来減算一時差異の解消年度や繰越欠損金の繰越期間に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等、課税所得を発生させるようなタックスプランニングが存在すること
(3)将来加算一時差異の十分性
 将来減算一時差異の解消年度や繰越欠損金の繰越期間に、将来加算一時差異の解消が見込まれること
 以上をまとめると、次のステップで繰延税金資産を計上することになります。

MEMO 本3月期決算の特色として、金融機関をはじめ事業会社においても、繰延税金資産の回収可能性の判断につき、監査人の対応が厳格化したことが指摘されています。繰延税金資産の回収可能性の判断は毎期毎期見直す必要があります。これを受け、りそな銀行やフジタでは繰延税金資産の回収可能性に疑義が生じたため、これまで計上していた額の一部を取崩すこととなりました。


繰延税金資産・負債のB/S表示
 繰延税金資産・負債は、これらに関連した資産・負債の流動・固定分類に従い表示されます。例えば、流動資産の売掛金に対する貸倒引当金を有税で積み立てた場合、流動資産の繰延税金資産となります。減価償却費の損金算入限度超過額に関する繰延税金資産は固定資産とします。
 なお、流動資産に属する繰延税金資産と流動負債に属する繰延税金負債は相殺の上、B/S表示されます。また、固定資産に属する繰延税金資産と固定負債に属する繰延税金負債も相殺の上、B/S表示されます(ただし、土地再評価法に基づく再評価にかかる繰延税金資産・負債は別掲されます)。

税効果会計における「税」とは?
 税効果会計における「税」とは、所得をベースに課税する税金、すなわち法人税、住民税、事業税を指します。地方税法の改正により、法人事業税に外形標準課税が導入されましたが、付加価値割や資本割については、所得をベースに課税しているわけではないので、税効果会計における「税」には該当しません。
 繰延税金資産・負債の計算に用いられる税率(法定実効税率)は次の計算により算定します。
法定実効税率 =
法人税率×(1+住民税率)+事業税率

1+事業税率

 このように複雑な式となった理由は①住民税率が法人税を課税標準としており、かつ、②事業税が支払事業年度の課税所得の計算の際に損金に算入されるためです。
 さて、資産負債法によるアプローチの場合、税率に変更があれば注意が必要となります。すなわち、いままでの繰延税金資産・負債は古い税率で計算されたものなので、会計上のB/Sと税務上のB/Sとの差額(ずれ)につき新しい税率で税効果を認識し直す必要があります。なお、税率は一時差異の解消時点の税率を用います。


一口解説
法人事業税の軽減が減益要因となるのはなぜ?

 地方税法の改正により、法人事業税に外形標準課税が導入され、2004年4月1日以後に開始する事業年度から軽減された新税率が適用されます。そこで、3月決算の場合2004年3月期に解消が見込まれる一時差異は改正前の税率に基づく法定実効税率で計算し、2005年3月期以降に解消が見込まれる一時差異は、所得割に係る改正後の税率を下に算定した法定実効税率で計算することになります。なお、通常の会社は、繰延税金負債ではなく繰延税金資産を計上していますので、法定実効税率の低下は、減益要因となります。次の設例でそれを確認してみましょう。

 税引前利益は100、課税所得は200とする。2005年3月期に解消が見込まれる将来減算一時差異100。旧法定実効税率は40%、新法定実効税率は39%。
 
旧税率だと…
新税率だと…
 

税引前利益
100
100
法人税等 80 80
法人税等調整額△40
40
△39
41
 

税引後利益
60
59

2003年3月期のP/Lは、新税率の適用により、税引後利益が1減少します。

税効果資本って何?
 新聞等で「銀行の税効果資本」というフレーズをよく目にします。このような書き方をすると、自己資本の一項目に税効果資本という項目があるかのような誤解を招きかねません。税効果資本とは、税効果会計の適用により結果的にかさ上げされた未処分利益のことです。
 有税の貸倒引当を増やすと、(借方)繰延税金資産(貸方)法人税等調整額という仕訳を通じて、未処分利益が増加します。銀行の自己資本比率の算定において、繰延税金資産の計上によりかさ上げされた未処分利益(税効果資本)は、現在のところ上限なく中核的資本に算入されます。銀行によっては自己資本の多くを税効果資本に依存しているところもあります。過度に税効果資本に依存している銀行は危ない銀行といえます。現在、金融庁の金融審議会内のワーキンググループ等において、自己資本比率規制における繰延税金資産の算入の適正化につき検討が行われています。
 なお、自己資本比率規制と繰延税金資産の回収可能性の問題は別論であることに注意が必要です。

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