解説記事2021年01月25日 令和2年分所得税確定申告のチェックポイント 令和2年分所得税確定申告のチェックポイント(2021年1月25日号・№867)
会計事務所のための
令和2年分所得税確定申告のチェックポイント
令和2年分所得税の確定申告が2月16日からスタートする。令和2年度税制改正では、配偶者居住権に関する措置や、相続開始年の年分の国外財産調書について、相続等により取得した国外財産を除外することができるなどの見直しが行われている。本稿では、令和2年分の所得税の確定申告から適用される主な改正事項の概要を紹介する。
絶対注意!! 令和2年分所得税の改正事項
▶所得控除関係
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | ひとり親控除(所法81) | 居住者がひとり親(現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない一定の者のうち、次に掲げる要件を満たすものをいう。以下同じ。)に該当する場合には、ひとり親控除として、その者のその年分の総所得金額等から35万円を控除する。 イ その者と生計を一にする子(他の者の同一生計配偶者又は扶養親族とされている者を除き、その年分の総所得金額等の合計額が48万円以下のものに限る。)を有すること。 ロ 合計所得金額が500万円以下であること。 ハ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる次に掲げる者がいないこと。 (イ)その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者の住民票に世帯主との続柄 が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされた者 (ロ)その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされているときのその世帯主 |
■ | 寡婦控除(所法80) | 次の見直しを行った上で、従前の寡婦(寡夫)控除を上記のひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組するとともに、寡婦控除の特例(旧措法41の17)が廃止された。 ① 扶養親族を有する寡婦についても、上記ロの要件を追加する。 ② 上記ハの要件を追加する。 |
■ | 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除(措法41の18の3) | 特例の対象となる寄附金の範囲に、国立大学法人、大学共同利用機関法人、公立大学法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構(その運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき一定の要件を満たすものに限る)に対する寄附金のうち学生又は不安定な雇用状態にある研究者に対するこれらの者が行う研究への助成又は研究者としての能力の向上のための事業に充てられることが確実である一定のものが加えられた。 |
■ | 電子情報処理組織による申請等(オン化省令5) |
電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)による令和2年分以後の所得税の準確定申告を行う場合において、準確定申告書に記載すべき事項と併せて申告書確認情報(電子署名及び電子証明書を送信する相続人(以下「申請等相続人」)以外の相続人がその準確定申告書に記載すべき事項を確認したことを証する電磁的記録をいう)を送信する場合には、その申請等相続人以外の相続人の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととされた。 |
■ | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法33)等 |
次の措置が講じられた。 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する土地収用法の特例の規定に基づいて資産が収用され、補償金を取得する場合を適用対象に追加する。 |
▶事業所得等関係
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 貸倒引当金制度(所法52) |
貸倒引当金の対象となる金銭債権から債券に表示されるべき権利が除外された。 |
■ | 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除制度(措法10) |
特別試験研究の対象となる国の指定を受けた医薬品等に関する試験研究に、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所からの助成金の交付を受けて行われる特定用途医薬品等に関する試験研究が加えられた。 |
■ | 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(措法10の2) |
適用対象者の範囲に、エネルギーの使用の合理化等に関する法律に規定する認定管理統括事業者及び管理関係事業者(これらの者が同法に規定する特定連鎖化事業者である場合のその連鎖化事業の加盟者を含む)を加えるとともに、償却割合を20%(改正前:30%)に引き下げた。 |
■ | 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度(措法10の5) |
次のとおり見直しを行った上、適用期限が2年延長された。 ① 「給与等支給額が比較給与等支給額以上であること」との要件を廃止する。 ② 地方事業所基準雇用者数に係る措置における税額控除限度額について、対象雇用者数から非特定新規雇用者数を除外した上、基準雇用者割合にかかわらず、次の金額の合計額とされた。 イ 30万円(移転型事業にあっては50万円)に、地方事業所基準雇用者数(基準雇用者数を上限とする。以下同じ。)のうち特定新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額 ロ 20万円(移転型事業にあっては40万円)に、地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数を控除した数を乗じて計算した金額 ③ 地方事業所特別基準雇用者数に係る措置における地方事業所特別税額控除限度額を、40万円(改正前:30万円)に、地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額(特定業務施設が準地方活力向上地域内にある場合には30万円(改正前:20万円)に、その特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額)に引き上げた。 |
■ | 認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設(措法10の5の4の2) |
青色申告書を提出する個人で特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律に規定する認定導入事業者であるものが、同法の施行の日(令和2年8月31日)から令和4年3月31日までの間に、その個人の認定導入計画に記載された機械その他の減価償却資産(認定導入計画に従って実施される特定高度情報通信技術活用システムの導入の用に供するためのものであることその他の要件を満たす一定のものに限る)の取得等をして、その個人の事業の用に供した場合には、その取得価額の30%相当額の特別償却とその取得価額の15%相当額の所得税額の特別控除との選択適用ができることとされた。ただし、所得税額の特別控除額については、その年分の調整前事業所得税額の20%相当額が限度とされる。 |
■ | 特定設備等の特別償却制度(措法11) |
再生可能エネルギー発電設備等の償却割合が14%(改正前:20%)に引き下げられた上、その適用期限が1年延長された。 この改正は、個人が令和2年4月1日以後に取得等をする特定設備等について適用される。 |
■ | 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例(措法25) |
適用対象となる売却の範囲に、令和2年6月21日以後に農林水産大臣の認定を受けた地方卸売市場において行う売却が加えられた上、適用期限が3年延長された。 |
■ | 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例制度(措法28の2) |
特例の対象者を中小事業者で青色申告書を提出するもののうち常時使用する従業員の数が500人以下の個人とする見直しを行った上、適用期限が2年延長された。 この改正は、個人が令和2年4月1日以後に取得等をする少額減価償却資産について適用される。 |
■ | 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(措法10の4の2) |
適用期限が2年延長された。 |
■ | 倉庫用建物等の割増償却制度(措法15) |
適用期限が2年延長された。 |
■ | 農業経営基盤強化準備金制度(措法24の2) |
適用期限が1年延長された。 |
■ | 革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(旧措法10の5の5) |
所要の経過措置が講じられた上、廃止された。 |
■ | 耐震基準適合建物等の特別償却制度(旧措法11の2) |
所要の経過措置が講じられた上、廃止された。 |
■ | 企業主導型保育施設用資産の割増償却制度(旧措法13の3) |
所要の経過措置が講じられた上、廃止された。 |
■ | 金属鉱業等鉱害防止準備金制度(旧措法20) |
適用期限の到来をもって廃止された。 |
■ | 減価償却資産の範囲(所令6) |
無形固定資産として樹木採取権が加えられた。 |
▶金融・証券税制
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)(措法9の8、37の14) |
① 非課税累積投資契約に係る非課税措置(つみたての勘定設定期間を令和24年12月31日まで5年延長する。 ② 特定非課税累積投資契約に係る非課税措置を次のように創設し、現行の非課税累積投資契約に係る非課税措置(つみたてNISA)と選択して適用できることとする。 イ 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者等が、当該非課税口座に特定累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に支払を受けるべき当該特定累積投資勘定に係る公社債投資信託以外の証券投資信託(その受益権が金融商品取引所に上場等がされているもの又はその設定に係る受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。以下「公募等株式投資信託」という)の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払の取扱者であるものに限る)については、所得税を課さない。 ロ 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者等が、当該非課税口座に特定累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に当該特定累積投資勘定に係る公募等株式投資信託の受益権の特定非課税累積投資契約に基づく譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税を課さない。また、当該公募等株式投資信託の受益権の譲渡等による損失金額は、所得税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。 ハ 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者等が、当該非課税口座に特定非課税管理勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に支払を受けるべき当該特定非課税管理勘定に係る上場株式等の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払の取扱者であるものに限る)については、所得税を課さない。 ニ 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者等が、当該非課税口座に特定非課税管理勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に当該特定非課税管理勘定に係る上場株式等の特定非課税累積投資契約に基づく譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税を課さない。また、当該上場株式等の譲渡等による損失金額は、所得税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。 |
■ | 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等(措法37の11の3等) |
特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、上場株式等以外の株式等につき、取得請求権付株式の請求権の行使等により取得する上場株式等で、その取得する上場株式等の全てをその取得の日に受け入れるもの等を加える。 |
■ | 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等(措法37の13)及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等(措法37の13の2) |
適用対象となる特定株式の範囲に、内国法人のうちその設立の日以後10年を経過していない中小企業者に該当する一定の株式会社により発行される株式で、第一種少額電子募集取扱業務を行う者(経済産業大臣の認定を受けたものに限る)が行う当該業務により取得されるものが追加された。 この改正は、個人が令和2年4月1日以後に払込みにより取得をする特定株式について適用される。 |
■ | 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例(措法41の19) |
① 適用対象となる特定新規株式の範囲に、次に掲げる株式を追加する。 イ 内国法人のうちその設立の日以後5年を経過していない中小企業者に該当する一定の株式会社により発行される株式で、投資事業有限責任組合(経済産業大臣の認定を受けたものに限る)に係る投資事業有限責任組合契約に従って取得されるもの。 ロ 内国法人のうちその設立の日以後5年を経過していない中小企業者に該当する一定の株式会社により発行される株式で、第一種少額電子募集取扱業務を行う者(経済産業大臣の認定を受けたものに限る)が行う当該業務により取得されるもの。 ② 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。 ③ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。 上記①の改正は、令和2年4月1日以後に払込みにより取得する特定新規株式について適用される。 |
■ | 先物取引に係る雑所得等の課税の特例(措法41の14)及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除(措法41の15) |
適用対象から、暗号資産に係るデリバティブ取引の差金等決済に係る雑所得等を除外することとされた。 |
■ | 先物取引の差金等決済に係る支払調書の特例(措法41の15の2)等 |
① 先物取引の差金等決済に係る支払調書の特例の適用対象となる差金等決済の範囲から、先物取引の差金等決済で令和2年5月1日以後に行われる暗号資産デリバティブ取引の差金等決済を除外する。 ② 令和2年5月1日から同年12月31日までの間に行われる暗号資産デリバティブ取引の差金等決済については、先物取引に関する支払調書の提出及び先物取引の差金等決済をする者の告知を要しないこととされた。 |
■ | 譲渡制限付株式の価額等(所令84等) |
特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の交付を受けた個人が譲渡についての制限が解除された日前に死亡した場合において、当該個人の死亡の時に発行法人等が無償で取得することとなる事由に該当しないことが確定している当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式については、当該個人の死亡の日における価額を当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の経済的な利益の価額及び取得価額とする。 この改正は、令和2年4月1日以後に個人が死亡する場合に適用される。 |
▶住宅・土地税制
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2) |
令和2年4月1日以後に行う、次に掲げる譲渡を適用対象から除外した上、その適用期限が3年延長された。 ① 都市再生特別措置法に規定する認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者に対する土地等の譲渡 ② 都市計画区域内において行われる一団の宅地の造成(都市計画法に規定する一定の開発許可又は土地区画整理法に規定する一定の認可を受けて行われるものであること等の要件を満たすものに限る)を行う者に対する土地等の譲渡 |
■ | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等(措法33、33の2、33の4) |
適用対象に、配偶者居住権の目的となっている建物又は配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等(以下「居住建物等」という)が収用等をされたことに伴い配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を当該配偶者居住権に基づき使用する権利(以下これらを「配偶者居住権等」という)が令和2年4月1日以後に消滅等をし、一定の補償金等を取得する場合が加えられた。 |
■ | 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例(措法33の3) |
適用対象に、第一種市街地再開発事業等が施行された場合において、配偶者居住権の目的となっている建物に係る権利変換により施設建築物の一部等についての配偶者居住権を取得する権利を取得したときが加えられた。 |
■ | 贈与等により取得した資産の取得費等(所法60) |
配偶者居住権等に関し、次の措置が講じられた。 ① 相続等により取得した居住建物等を令和2年4月1日以後に譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上控除する居住建物等の取得費は、その建物に配偶者居住権が設定されていないとしたならば居住建物等を譲渡した時においてその取得費の額として計算される金額から、居住建物等を譲渡した時において配偶者居住権等が消滅したとしたならば下記②により配偶者居住権等の取得費とされる金額を控除する。 ② 配偶者居住権等が令和2年4月1日以後に消滅した場合における譲渡所得の金額の計算については、相続等により配偶者居住権等を取得した時において、その時に居住建物等を譲渡したとしたならば居住建物等の取得費の額として計算される金額のうちその時における配偶者居住権等の価額に相当する金額に対応する部分の金額として一定の計算をした金額により配偶者居住権等を取得したものとし、当該金額から配偶者居住権の存続する期間を基礎として一定の計算をした金額を控除した金額をもって配偶者居住権等の取得費とする。 ③ 配偶者居住権等が令和2年4月1日以後に消滅(配偶者居住権等を取得した時に居住建物等を譲渡したとしたならば当該居住建物等を取得した日とされる日以後5年を経過する日後の消滅に限る)をしたことによる所得は、長期譲渡所得とする。 |
■ | 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度の創設(措法35の3) |
個人が、都市計画区域内にある土地基本法に規定する低未利用土地又は当該低未利用土地の上に存する権利(以下「低未利用土地等」という)で、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡(特別の関係がある者に対してするもの及びその対価(その譲渡とともにした当該低未利用土地の上にある資産の譲渡の対価を含む)の額が500万円を超えるものを除く)を令和2年7月1日から令和4年12月31日までの間にした場合(その譲渡の後に当該低未利用土地等の利用がされる場合に限る)には、その年中の低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額から100万円(当該長期譲渡所得の金額が100万円に満たない場合には、当該長期譲渡所得の金額)を控除することができることとされた。 ただし、本特例の適用を受けようとする低未利用土地等と一筆であった土地からその年の前年又は前々年に分筆された土地等の譲渡をその前年又は前々年中にした場合において、その者がその譲渡につき本特例の適用を受けているときは、当該低未利用土地等について本特例は適用されない。 |
■ | 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2、36の5) |
適用期限が2年延長された。 |
■ | 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等(措法41、41の19の4) |
次の措置が講じられた。 ① 住宅の取得等をした家屋(以下「新規住宅」という)をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産の譲渡をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができないこととする。 イ 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 ロ 居住用財産の譲渡所得の特別控除 ハ 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例 ニ 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例 ② 認定住宅をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に認定住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産の譲渡をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、認定住宅について認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができないこととする。 イ 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 ロ 居住用財産の譲渡所得の特別控除 |
■ | 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)及び特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5の2) |
適用期限が2年延長された。 |
■ | 特定の事業用資産の買換えの場合等の譲渡所得の課税の特例(措法37等) |
次のとおり見直しを行った上、その適用期限が3年(過疎地域の外から内への買換え及び次の④に係る買換えについては令和3年3月31日まで)延長された。 ① 既成市街地等の内から外への買換えについて、譲渡資産から工場等が相当程度集積している区域内にある建物又はその敷地の用に供されている土地等を除外する。 ② 航空機騒音障害区域の内から外への買換えについて、譲渡資産が次の区域内にある場合の課税の繰延割合を70%(改正前:80%)に引き下げる。 イ 令和2年4月1日前に特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法に規定する航空機騒音障害防止特別地区又は公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に規定する第二種区域となった区域 ロ 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に規定する第二種区域 ③ 都市再生特別措置法に規定する都市機能誘導区域の外から内への買換えについて、適用対象から除外する。 ④ 防災再開発促進地区内にある土地等の買換えについて、建築基準法に規定する耐火建築物又は準耐火建築物を建築するために譲渡をされるものであることとする譲渡資産に係る要件における耐火建築物又は準耐火建築物の範囲に耐火建築物又は準耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物で一定のものを加える。 ⑤ 船舶から船舶への買換えについて、次の見直しを行う。 イ 譲渡資産となる船舶のうち建設業又はひき船業用のものにおける進水の日から譲渡の日までの期間の上限を35年(改正前:40年)に引き下げる。 ロ 買換資産となる船舶のうち海洋運輸業又は沿海運輸業の用に供されるものにおける進水の日から取得の日までの期間の上限を法定耐用年数とする。 ⑥ 短期所有の土地等の譲渡について特例を適用できることとする措置を3年延長する。 上記①、②、④及び⑤の改正は、令和2年4月1日以後に資産の譲渡をし、かつ、同日以後に買換資産の取得をする場合におけるその譲渡について適用される。 |
■ | 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例(措法28の4) |
適用停止措置の期限が3年延長された。 |
■ | 山林所得に係る森林計画特別控除(措法30の2) |
適用期限が2年延長された。 |
▶国税通則法等
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 国外財産調書及び財産債務調書の提出制度(国外送金法5、6の2) |
① 相続の開始の日の属する年(以下「相続開始年」という)の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する相続人は、相続開始年の年分の国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産(以下「相続国外財産」という)を除外したところにより、提出することができることとする。この場合において、国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額からその相続国外財産の価額の合計額を除外して判定する。 (注)財産債務調書における相続又は遺贈により取得した財産又は債務についても同様とされる。 ② 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象から、次に掲げる場合を除外する。 イ その年の12月31日において相続国外財産を有する者(その価額の合計額が提出基準額を超える国外財産(相続国外財産を除く)を有する者を除く)の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合 ロ その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく国外財産調書に記載すべき相続国外財産についての記載がない場合(記載不備の場合を含む) (注)財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置についても、同様の改正が行われている。 ③ 国外財産に係る所得税に関し修正申告等がある者が、その修正申告等があった日前に、国税庁等の当該職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類(その電磁的記録を含む)又はその写しの提示等を求められた場合において、その提示等を求められた日から60日を超えない範囲内においてその提示等の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示等をしなかったとき(その者の責めに帰すべき事由がない場合を除く)における加算税の軽減措置又は加重措置の適用については、次のとおりとする。 イ その国外財産に係る加算税の軽減措置は、適用しない。 ロ その国外財産に係る加算税の加重措置は、加算する割合を10%(適用前加算割合:5%)とする。ただし、上記②イ又はロに該当する場合には、その加算する割合は5%(適用前加算割合:なし)とする。 |
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律における主な措置
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 給付金の非課税(新型コロナ税特法4) |
市町村又は特別区から給付される次の給付金について、所得税を課さないこととされた。 ① 家計への支援の観点から給付される令和2年度の一般会計補正予算(第1号における特別定額給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金。 ② 令和2年3月分又は4月分の児童手当(児童手当法に規定する児童手当をいう)の支給を受ける者のうち、一定の者に対して給付される令和2年度の一般会計補正予算(第1号における子育て世帯臨時特別給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金。 |
■ | 指定行事の中止等により生じた権利を放棄した場合の寄附金控除又は所得税額の特別控除の特例制度の創設(新型コロナ税特法5) |
個人が、令和2年2月1日から令和3年12月31日までの期間において、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により中止若しくは延期又はその規模の縮小を行った文化芸術又はスポーツに関する行事で一定のものの入場料金等払戻請求権の全部又は一部を放棄した場合には、その放棄をした部分の払戻請求権相当額の合計額(当該合計額が20万円を超える場合には、20万円)について、寄附金控除(所法78)又は公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除(措法41の18の3)の適用ができることとされた。 |
■ | 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(新型コロナ税特法6) |
(1)住宅の取得等で特別特定取得に該当するものをした個人が、特別特定取得をした家屋を、令和2年12月31日までにその者の居住の用に供することができなかった場合において、次に掲げる要件を満たすときは、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除期間の特例(措法41)を適用できることとする。 ① 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、特別特定取得をした家屋を令和2年12月31日までにその者の居住の用に供することができなかったこと ② 上記①の家屋の特別特定取得に係る契約が、次に掲げる住宅の取得等の区分に応じそれぞれ次に定める日までに締結されていること イ 居住用家屋の新築又は認定住宅の新築 令和2年9月30日 ロ 居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは既存住宅の取得、一定の居住の用に供する家屋の増改築等又は認定住宅で建築後使用されたことのないものの取得 令和2年11月30日 ③ 上記①の家屋を令和3年1月1日から同年12月31日までの間にその者の居住の用に供すること (2)既存住宅の取得をし、かつ、当該既存住宅をその者の居住の用に供する前に当該既存住宅の増改築等をした個人が、当該既存住宅をその取得の日から6月以内にその者の居住の用に供することができなかった場合において、次に掲げる要件を満たすときは、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41)を適用できることとする。 ① 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、既存住宅をその取得の日から6月以内にその者の居住の用に供することができなかったこと ② 上記①の既存住宅につき行う増改築等に係る契約が、当該既存住宅の取得をした日から5月を経過する日又は新型コロナ税特法の施行の日(令和2年4月30日)から2月を経過する日のいずれか遅い日までに締結されていること ③ 上記①の既存住宅の増改築等の日から6月以内に当該既存住宅をその者の居住の用に供すること (注)要耐震改修住宅の取得をし、一定の日までに耐震改修に係る契約を締結している個人が、当該要耐震改修住宅をその取得の日から6月以内にその者の居住の用に供することができなかった場合についても、同様の措置が講じられている。 |
令和元年度の改正事項のうち、令和2年分の所得税から適用される主なもの
▶金融・証券税制
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 分配時調整外国税相当額控除(所法93、165の5の3) |
所得税の額から控除する集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額の計算方法等の見直しが行われた。 |
■ | 信託財産に係る利子等の課税の特例(所法176、180の2) |
集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収税額から控除することとされているその集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び外国所得税の額の計算については、その集団投資信託の収益から収益調整金のみに係るものを除いて行うこととされたほか、所要の措置が講じられた。 |
■ | 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例(措法9の3の2) |
支払の取扱者が交付をする集団投資信託の収益の分配に係る上場株式等の配当等に係る源泉徴収税額から控除することとされているその集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び外国所得税の額のうちその集団投資信託の収益の分配に対応する部分の金額の計算については、その集団投資信託の収益から収益調整金のみに係るものを除いて行うこととされたほか、所要の措置が講じられた。 |
▶その他の所得税関係
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 源泉控除対象配偶者に係る控除の適用(所法186の2、190)及び配偶者特別控除(所法83の2) |
① 給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととされた。 ② 居住者の配偶者が、給与等や公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者に係る控除の適用を受けている場合(その配偶者がその年分の所得税につき、年末調整をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合又は確定申告書の提出をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く)には、その居住者は、その年分の所得税の確定申告において配偶者特別控除の適用ができないこととされた。 |
■ | 公的年金等に係る源泉徴収(所法203の3、203の6、所令319の5、319の6) |
① 国内において公的年金等の支払を受ける居住者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書(以下「扶養親族等申告書」という)の提出をしなかった場合の源泉徴収税額は、公的年金等の金額から公的年金等控除及び基礎控除に対応する控除の月割額(その月割額が最低保障額に満たない場合には、最低保障額)にその公的年金等の金額に係る月数を乗じて計算した金額を控除した残額に、5.105%の税率を乗じて計算する。 ② 扶養親族等申告書については、公的年金等の支払を受ける者の押印に代えて、その者の自署によることができることとされた。 ③ 扶養親族等申告書の記載事項から、同一生計配偶者又は扶養親族のうちに、同居特別障害者、その他の特別障害者又は特別障害者以外の障害者がある場合のその人数を除外することとされた。 (注)扶養親族等申告書の提出をすることができないものは見直しの対象から除かれる。 |
平成30年度の改正事項のうち、令和2年分の所得税から適用される主なもの
確認 | 改正項目 | 内 容 |
■ | 給与所得控除(所法28) |
給与所得控除額を一律10万円引き下げ、その上限額が適用される給与等の収入金額が850万円(改正前:1,000万円)とされるとともに、その上限額を195万円(改正前:220万円)に引き下げることとされた。この結果、給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じてそれぞれ次のとおりとなる。 また、この改正に伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表及び年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表について所要の措置が講じられた。 |
■ | 公的年金等控除(所法35、措法41の15の3等) |
公的年金等控除額を一律10万円(公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が、1,000万円を超え2,000万円以下である場合は20万円、2,000万円を超える場合は30万円)引き下げることとされ、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額について、上限を設けることとされた。この結果、公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額及び公的年金等の収入金額に応じてそれぞれ次のとおりとなる。 また、この改正に伴い、非居住者の公的年金等について、分離課税の対象となる金額等の算定における控除額計算の基礎となる額を、65歳未満の者については5万円(改正前:6万円)に、65歳以上の者については9万5千円(改正前:10万円)に、それぞれ引き下げることとされた。 |
■ | 基礎控除(所法86等) |
基礎控除について、控除額を一律10万円引き上げるとともに、合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされた。この結果、基礎控除額は、個人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなる。 また、この改正に伴い、年末調整において基礎控除の適用を受ける場合に合計所得金額の見積額を申告する等の所要の措置が講じられた。 |
■ | 扶養親族等の範囲(所法2) |
① 勤労学生の合計所得金額要件を75万円以下(改正前:65万円以下)に引き上げる。 ② 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下(改正前:38万円以下)に引き上げる。 ③ 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件を95万円以下(改正前:85万円以下)に引き上げる。 |
■ | 配偶者特別控除(所法83の2) |
対象となる配偶者の合計所得金額要件を48万円超133万円以下(改正前:38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引き上げることとされた。 |
■ | 特定支出控除(所法57の2) |
特定支出の範囲に、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費等で通常要する支出を加えるとともに、特定支出の範囲に含まれている単身赴任者の帰宅旅費について、1か月に4往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃した上、帰宅のために通常要する自動車等を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金の額を加えることとされた。 |
■ | 青色申告特別控除(措法25の2) |
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額を55万円(改正前:65万円)に引き下げる一方、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすものに係る青色申告特別控除の控除額を65万円とすることとされた。 ① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより「電磁的記録の備付け及び保存」又は「電磁的記録の備付け及びその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存」を行っていること。 ② その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。 |
■ | 所得金額調整控除(措法41の3の3) |
① その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を、給与所得の金額から控除する。 ② その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除する(措法41の3の3②⑤)。 ③ 上記①の所得金額調整控除は年末調整において適用できることとする。 ④ 公的年金等に係る確定申告不要制度における公的年金等に係る雑所得以外の所得金額を算定する場合には、上記②の所得金額調整控除額を給与所得の金額から控除する。 |
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