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解説記事2022年04月25日 SCOPE タックスアンサーでは未解決 NFTアート販売巡る課税の論点(2022年4月25日号・№928)

原著作権者の所得区分は現状「個別判断」
タックスアンサーでは未解決 NFTアート販売巡る課税の論点


 国税庁は4月1日付でタックスアンサーに「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」(本誌926号24頁参照、以下「タックスアンサー」)を追加したが、実務家間では、原著作権者が著作権を自身に留保したままデジタルアートをNFT化して販売した場合の取扱いを巡り疑問が生じている。この点について本誌が課税当局に取材したところ、そのNFTアートの販売がどのような内容の取引なのか、個々の契約に応じた判断が必要になるとのことであり、さらに今回の取材を通じ、個人である原著作権者によるNFTアートの販売に関する新たな論点も把握された。本稿ではNFTアート販売を巡る課税上の論点をレポートする。

課税当局はNFT自体を一つの「資産」と捉えている可能性

 NFTとは「Non-Fungible Token」の略で、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれる。一つひとつのトークンが固有・唯一無二であるという性質から、デジタルアート等の希少性・個別性の高いものをNFT化して取引を可能にするといったケースをはじめ、様々な分野での利用が期待されている。
 タックスアンサーでは、役務提供などによりNFTを取得した場合と、NFTを譲渡した場合の取扱いを整理している。このうちNFTを譲渡した場合の所得区分は、雑所得、事業所得または譲渡所得のいずれかに分類されることになるが、譲渡所得に区分されるのは、NFTが「譲渡所得の基因となる資産に該当する場合」(その所得が譲渡したNFTのキャピタル・ゲインと認められる場合)に限定される。
 NFTアートは、一般的にはマーケットプレイスと呼ばれるプラットフォームで取引が行われるが、著作権に関する取扱いはプラットフォームごとに様々で、原著作権者がデジタルアートをNFT化して発行したトークンを他者に販売したとしても、そのデジタルアートの著作権自体は原著作権者に留保される旨が利用規約等で定められているケースも多く、必ずしも購入者にデジタルアートの著作権までNFTとともに移転するわけではないようだ。実務家の間では、このような場合、NFTとして取引されるデジタルアートの著作権に着目すると、著作権の譲渡が発生しておらず、著作権を留保したままで行われる原著作権者によるNFTの販売は、実際には譲渡ではなく一種の「利用許諾」ということになり、タックスアンサーに示された所得区分の基準とは異なる判断が必要なのではないか、また、利用規約等で購入者に許可されたデジタルアート(著作物)の利用に関する権利の内容によっては、原著作権者が受領する対価は著作権の使用料に該当するのではないか、との疑問が生じている。
 そこで、「著作権は原著作権者に留保されるという利用規約が存在するプラットフォーム上で、原著作権者がNFT化されたデジタルアートを他者に販売した場合」という事例について、原著作権者の所得税法上の取扱いを本誌が課税当局に取材したところ、そのNFTアートの販売がどのような内容の取引なのか、個々の契約に応じて判断が必要となり、現時点では一義的な回答は困難とのことだった。
 ただし、課税当局からは、それがトークンの譲渡であれば、NFT化されたデジタルアートを利用できる「権利」の譲渡であり、譲渡が発生しているのではないかというコメントや、逆にNFTの販売という行為がトークンの譲渡ではなく、権利の設定の対価である場合は、設定される権利の内容次第では使用料になる可能性もあるという旨のコメントを得ている。これらのコメントを踏まえると、課税当局はNFT自体を著作権とは別個の「資産」と捉え、そのNFTについて譲渡が発生しているとの見解を有しているようにも推測される。しかし、タックスアンサーによれば、NFTという資産の譲渡があったとしても、それが譲渡所得と扱われるためには、「譲渡所得の基因となる資産に該当する」のか否かという論点の検討が別途必要となる。この論点は、過去、課税当局による暗号資産に関する国会答弁(参考参照)でも取り上げられたが、暗号資産の譲渡については、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、譲渡所得とは扱われないという結論となっている。

【参考】第198回国会参議院財政金融委員会第3号平成31年3月14日(抄)

145・並木稔
○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。
  今おっしゃいましたところの譲渡所得の起因となる資産とは、一般的にその経済的価値が認められて取引の対象とされまして、増加益が生じるような全ての資産が含まれるものと解されているところでございますけれども、その増加益が資産の価値の増加益とは異なる性質を持つ資産については譲渡所得の起因となる資産には該当しないというふうに考えております。
  御指摘のいわゆる暗号資産については、先ほど申し述べたところでございますけれども、資金決済法上、対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されておりますし、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられていることから、外国通貨と同様に、その譲渡益等は資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものであると考えております。
  したがいまして、国税当局としては、いわゆる暗号資産の譲渡による所得は一般的に譲渡所得には該当せず、雑所得に該当するものと取り扱っているところでございまして、いわゆる暗号資産は譲渡所得の起因となる資産には該当しないものと考えております。(以下省略)

著作権の使用料に該当すれば別の問題が発生
 一方、NFTの販売対価が著作権の使用料に該当する場合にも、税務上の論点が追加で発生することになる。まず、対価を受領する原著作権者側に生じる論点としては、所得税法2条1項23号に規定される変動所得の定義の中には著作権の使用料も含まれていることから、変動所得の平均課税(所得税法90条)の適用可否が問題となる。一方の支払者側では、著作権の使用料が、支払先が居住者の場合は所得税法204条1項1号、非居住者の場合は161条1項11号ロにそれぞれ該当することが想定されるため、源泉徴収義務の有無の問題が生じることになる。

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