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解説記事2022年07月04日 税制改正解説 令和4年度における納税環境整備に関する改正について(1)(2022年7月4日号・№937)

税制改正解説
令和4年度における納税環境整備に関する改正について(1)
 畑尾傑人

はじめに

 令和4年度税制改正では、成長と分配の好循環の実現、積極的な賃上げの促進等の観点から、個人所得課税、資産課税、法人課税、消費課税、国際課税、納税環境整備等について所要の措置が講じられた。
 このうち納税環境整備については、税理士制度の見直しを行うとともに、記帳水準の向上に資するための過少申告加算税等の加重措置の整備、財産債務調書制度等の見直しを行う等の措置が講じられている。
 以下では、これらの法令改正の主な内容について説明することとする。

一 税理士制度の見直し

Ⅰ 改正の背景等

 税理士制度については、前回の大幅な改正(平成26年)から8年が経過している。この間、令和3年度与党税制改正大綱(令和2年12月10日 自由民主党・公明党)において、税理士制度の見直しに向け、検討を進めることとされたこと等を踏まえ、日本税理士会連合会は、令和3年6月に「税理士法に関する改正要望書」を取りまとめ、財務省主税局及び国税庁に提出している。
 こうしたことを背景に、今回、関係者との調整等を経て、コロナ後の新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、税理士制度の見直しを行うこととされ、具体的には、税理士の業務におけるICT化等の推進を通じた納税義務者の利便の向上等の努力規定の創設や税理士試験の会計学科目における受験資格の要件の撤廃、税理士法人が行うことのできる業務の範囲の拡充等の措置を講ずることとされた。
 以下では、税理士制度の見直しの内容について説明することとする。

Ⅱ ICT化とウィズコロナ時代への対応

1 税理士の業務における電子化等の推進を通じた納税義務者の利便の向上等の努力規定の創設
(1)制度の内容

 経済社会のICT化の進展に伴い、税理士の業務の環境や納税環境の電子化といった税理士・税理士法人を取り巻く状況が変化してきており、税理士・税理士法人は、税務に関する専門家として納税義務者の信頼に応えていくため、このような状況の変化に的確に対応することが求められている。加えて、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)第16条において、「事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自ら積極的にデジタル社会の形成の推進に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するデジタル社会の形成に関する施策に協力するよう努めるものとする」とされている。
 また、税理士関与分に係る電子申告利用率は、令和2年度決算分の法人税申告数ベースで9割超となっているなど、既に一定の水準に達しているが、令和3年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」においては、行政手続のオンライン利用を促進する観点から、「税理士が代理申告を行う場合の利用率100%に向け、電子申告の積極的な利用を通じて事業者利便の向上等を図ることの法制化を含め、デジタル化に向けて税理士の果たすべき役割を検討し、必要な措置を講ずる」ことについて「当面、必要な措置について令和3年中に結論を得る」こととされている。
 今回の改正においては、このような状況を踏まえ、税理士・税理士法人が取り組むべき方向性を明確にするため、「税理士及び税理士法人は、税理士業務及び税理士業務の付随業務を行うに当たっては、税理士業務及び税理士業務に付随して行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務における電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)の積極的な利用(税理士の業務の電子化の推進)その他の取組を通じて、納税義務者の利便の向上及びこれらの業務の改善進歩を図るよう努めるものとする」努力規定が創設された(税理士法2の3、48の16)。
 上記の税理士の業務の電子化の推進は、例えば、e-Taxの利用等を通じた税理士・税理士法人と国税当局との間の税務手続の電子化のほか、電子メールやWeb会議システムの活用による税理士・税理士法人と顧客との間の税務相談や書類のやり取り、税理士事務所内部における事務についての電子化等が考えられる。
(2)適用関係
 上記(1)の制度は、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1)。

2 税理士会の会則及び日本税理士会連合会の会則の絶対的記載事項の整備
(1)改正前の制度の概要

① 税理士会の会則に記載しなければならない事項(絶対的記載事項)
  税理士は、税理士会を設立しようとするときは、会則を定め、その会則について財務大臣の認可を受けなければならないこととされている(税理士法49の2①)。
  上記の税理士会の会則には、次の事項を記載しなければならないこととされていた(旧税理士法49の2②)。
イ 名称及び事務所の所在地
ロ 入会及び退会に関する規定
ハ 役員に関する規定
ニ 会議に関する規定
ホ 税理士の品位保持に関する規定
ヘ 会員の研修に関する規定
ト 会員の業務に関する紛議の調停に関する規定
チ 税理士業務に係る使用人その他の従業者に対する監督に関する規定
リ 委嘱者の経済的理由により無償又は著しく低い報酬で行う税理士業務に関する規定
ヌ 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定
ル 会費に関する規定
ヲ 庶務及び会計に関する規定
  また、税理士会の会則の変更(一定の重要な事項に係るものに限る。)は、財務大臣の認可を受けなければならないこととされている(税理士法49の2③)。上記の「一定の重要な事項」とは、上記ニからヌまでに掲げる事項をいう(旧税理士令7の2①)。
② 日本税理士会連合会の会則に記載しなければならない事項(絶対的記載事項)
  税理士会は、日本税理士会連合会を設立しようとするときは、会則を定め、その会則について財務大臣の認可を受けなければならないこととされている(税理士法49の15、49の2①)。
  日本税理士会連合会の会則には、次の事項を記載しなければならないこととされていた(旧税理士法49の14①)。
イ 名称及び事務所の所在地
ロ 役員に関する規定
ハ 会議に関する規定
ニ 税理士の品位保持に関する規定
ホ 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定
ヘ 会費に関する規定
ト 庶務及び会計に関する規定
チ 税理士の登録に関する規定
リ 資格審査会に関する規定
ヌ 税理士及び税理士法人が作成すべき税理士業務に関する帳簿及びその記載に関する規定
ル 税理士会の会員の研修に関する規定
ヲ 委嘱者の経済的理由により無償又は著しく低い報酬で行う税理士業務の実施の基準に関する規定
  また、日本税理士会連合会の会則の変更(一定の重要な事項に係るものに限る。)は、財務大臣の認可を受けなければならないこととされている(税理士法49の14②)。上記の「一定の重要な事項」とは、上記ハからホまで、チ及びヌからヲまでに掲げる事項をいう(税理士法49の14②、旧税理士令11の2①)。
(2)改正の内容
 上記1(1)の「税理士の業務における電子化等の推進を通じた納税義務者の利便の向上等」の取組が進展するようにする観点から、上記(1)①の税理士会の会則の絶対的記載事項及び上記(1)②の日本税理士会連合会の会則の絶対的記載事項に、「税理士業務及びその付随業務において電磁的方法により行う事務に関する規定」が追加された(税理士法49の2②八、49の14①一)。
 併せて、税理士会の会則及び日本税理士会連合会の会則の変更について財務大臣の認可が必要な重要な事項に、「税理士業務及びその付随業務において電磁的方法により行う事務に関する規定」が追加された(税理士令7の2①、11の2①)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和5年4月1日から施行される(改正法附則1四ハ、改正税理士令等附則①)。

3 税理士会の設立総会等の招集通知及び欠席者の議決権の行使の電子化
(1)改正前の制度の概要

① 税理士会の設立
  税理士会を設立する場合の手続は、次によることとされている(旧税理士令7)。
イ 税理士が税理士会を設立しようとするときは、その設立しようとする税理士会の会員となるべき税理士5人以上が設立委員となり、会則を定め、設立総会の議を経て、その会則について財務大臣の認可を受けるための申請書を、国税庁長官を経由して、財務大臣に提出しなければならないこととされている(税理士令7①)。この申請書には、会則のほか、会員となるべき税理士の名簿及び設立総会の議事録を添付しなければならないこととされている(税理士令7⑥)。
ロ 設立委員が設立総会を招集しようとするときは、その日時及び場所並びに会議の目的となる事項を、会日より2週間前までに、会員となるべき税理士に書面で通知するとともに、国税庁長官に報告しなければならないこととされていた(旧税理士令7②)。
ハ 設立総会の議決は、会員となるべき税理士の2分の1以上が出席し、その出席者の3分の2以上の多数によらなければならないこととされている(税理士令7③)。
ニ 会員となるべき税理士で設立総会に出席することができないものは、あらかじめ会議の目的となる事項について賛否の意見を明らかにした書面をもって出席者に委任して、その議決権を行使することができることとされていた(旧税理士令7④)。
(注)上記ニにより議決権を行使する者は、設立総会に出席したものとみなされる(税理士令7⑤)。
② 税理士会の総会
  税理士会は、重要な意思決定を行うためには総会の決議による必要があり、この総会には、定期総会と臨時総会の2種類がある。定期総会は、税理士会が毎年開かなければならないこととされ、臨時総会は、税理士会が必要と認める場合には、開くことができることとされている(税理士法49の8①②)。
イ 総会の議決事項
  税理士会の会則の変更、予算及び決算は、総会の議決を経なければならないこととされている(税理士法49の8③)。
ロ 総会の招集
  税理士会は、総会を招集しようとするときは、その日時及び場所並びに会議の目的となる事項を、会日より2週間前までに、その税理士会の会則で定めるところにより、会員である税理士に書面で通知しなければならないこととされていた(旧税理士令8)。
ハ 総会の議事
  税理士会の総会の議事は、会員の2分の1以上の者が出席し、その出席者の過半数で決するものとされ、可否同数のときは、議長の決するところによることとされている(税理士令9①)。ただし、会則の変更につき議決する場合には、会員である税理士の2分の1以上の者が出席し、その出席者の3分の2以上の多数によらなければならないこととされている(税理士令9②)。
  会員である税理士で総会に出席することができないものは、あらかじめ会議の目的となる事項について賛否の意見を明らかにした書面をもって出席者に委任して、その議決権を行使することができることとされている(税理士令9③、7④)。
③ 日本税理士会連合会の総会
  日本税理士会連合会の総会については、上記②の税理士会の総会の規定が準用されており、日本税理士会連合会の総会の議決事項、総会の招集及び総会の議事は、税理士会の総会と同様とされている(税理士法49の15、49の8③、税理士令12②、8、9①〜③、7④⑤)。
  ただし、日本税理士会連合会の会員は全国の税理士会であり、各税理士会の中には税理士を多数有している税理士会もあれば、比較的少数の税理士会もあるため、総会における会員の議決権については、日本税理士会連合会の会則で、日本税理士会連合会の会員たる税理士会の会員である税理士の数に応じたものとすることができることとされている(税理士令12①)。
(2)改正の内容
 経済社会のICT化の進展を踏まえ、税理士会の設立総会並びに税理士会及び日本税理士会連合会の総会の手続について、次のとおり見直しが行われた。
① 税理士会の設立総会等の招集通知の電子化
  税理士会の設立総会並びに税理士会及び日本税理士会連合会の総会の招集通知について、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)により通知することができることとされた(税理士令7②、8、12②)。
② 税理士会の設立総会等における欠席者の議決権の行使の委任の電子化
  税理士会の設立総会並びに税理士会及び日本税理士会連合会の総会における欠席者の議決権について、あらかじめ会議の目的となる事項につき賛否を明らかにした電磁的記録をもって出席者に委任することにより行使することができることとされた(税理士令7④、9③、12②)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正税理士令等附則①ただし書)。

4 税理士名簿等の作成方法の明確化
(1)改正前の制度の概要

① 税理士名簿の作成
  税理士となる資格を有する者が、税理士となるには、税理士名簿に一定の事項の登録を受けなければならないこととされている(税理士法18)。この税理士名簿は、日本税理士会連合会に備えることとされ、税理士名簿への登録は、日本税理士会連合会が行うこととされている(税理士法19①②)。
  日本税理士会連合会は、電子計算機(電子計算機による方法に準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる機器を含む。以下同じ。)の操作により、税理士名簿を磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができることとされていた(旧税理士法19③、旧税理士規則9②)。
② 税理士及び税理士法人が作成すべき税理士業務に関する帳簿
  税理士及び税理士法人は、税理士業務に関して帳簿を作成し、委嘱者別に、かつ、一件ごとに、税務代理、税務書類の作成又は税務相談の内容及びそのてん末を記載しなければならないこととされている(税理士法41①、旧税理士法48の16)。また、税理士及び税理士法人は、電子計算機の操作により、その帳簿を磁気ディスクをもって調製することができることとされていた(旧税理士法41③、48の16、旧税理士規則19)
③ 税理士法人の名簿の作成
  税理士法人は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地を含む区域に設立されている税理士会を経由して、日本税理士会連合会に届け出なければならないこととされている(税理士法48の10①)。
  日本税理士会連合会は、税理士法人の名簿を作成し、その名簿を常に整備しておくとともに、国税庁長官の求めに応じ、これを遅滞なく提出しなければならないこととされている(税理士法48の10②、税理士規則22②)。また、日本税理士会連合会は、電子計算機の操作により、税理士法人の名簿を磁気ディスクをもって調製することができることとされていた(旧税理士法48の10③、旧税理士規則22③)。
④ 税理士法人が作成すべき会計帳簿
  税理士法人は、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならないこととされている(税理士法48の21①、会社法615①)。また、この会計帳簿は、書面又は電磁的記録(磁気ディスクをもって調製するファイルに情報を記録したものに限る。)をもって作成をしなければならないこととされていた(旧税理士規則22の2②)。
(2)改正の内容
 経済社会のICT化の進展を踏まえ、上記(1)①の税理士名簿、上記(1)②の税理士業務に関する帳簿及び上記(1)③の税理士法人の名簿について、電磁的記録をもって作成することができることとされ(税理士法19③、41③、48の10③、48の16、税理士規則9②、19、22③)、磁気ディスク以外の記録媒体やクラウドサービス等を利用することをもって作成することができることが明確化された。
 また、上記(1)④の税理士法人が作成すべき会計帳簿に係る電磁的記録についても、「磁気ディスクをもって調製するファイルに情報を記録したものに限る」という制限が撤廃されている(税理士規則22の2②)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1、改正税理士規則附則)。

5 税務代理の範囲の明確化
(1)改正前の制度の概要

 税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とすることとされている(税理士法2①)。
① 税務代理
  税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含む。以下同じ。)に対する申告等又はその申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること。
② 税務書類の作成
  申告書等を作成すること。
③ 税務相談
  税務官公署に対する申告等、上記①の主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること。
 税理士は、上記①の税務代理をする場合には、その権限を有することを証する書面(税務代理権限証書)を税務官公署に提出しなければならないこととされている(税理士法30、税理士規則15、旧税理士規則第8号様式)。
(2)改正の内容
 税理士・税理士法人は、上記(1)①の税務代理を業として行うことができるが、税務代理の範囲に、税務官公署から納税者(委嘱者)に対して送付される書類の受領を代理することが含まれるかどうかが、不明確な状況となっていた。その結果、税務官公署から納税者(委嘱者)に対して送付される書類を、税理士・税理士法人が納税者(委嘱者)に代理して受領する場合には、税務代理権限証書とは別に委任状を作成して、税務官公署に提出するといった実務も見られたところである。
 今回の改正においては、こうした状況に対応し、納税者(委嘱者)及び税理士・税理士法人の実務における利便性向上や事務の簡素化の観点から、次のとおり、税務代理の範囲の明確化及び税務代理権限証書の様式の見直しが行われた。
① 税務代理の範囲の明確化
  税務官公署から納税者(委嘱者)に対して送付される書類のうち上記(1)①の税務官公署に対してする主張又は陳述の前提となるものについて、税務代理権限証書に記載された税理士又は税理士法人が代理して受領することができることが、法令解釈通達上明確化された(税理士法基本通達2−3)。
② 税務代理権限証書の様式の見直し
  税務代理権限証書の様式について、上記①の税務代理の範囲の明確化に伴い、「税務代理の対象となる書類の受領に関する事項」欄が設けられ、税務官公署から納税者(委嘱者)に対して送付される書類の受領について税務代理を委任する場合には、その書類の名称を記載することとされた(税理士規則第8号様式)。
  また、税務代理権限証書に係る法令解釈通達上の様式について、納税者(委嘱者)及び税理士の実務における利便性向上や事務の簡素化の観点から、次の見直しが行われた(税理士法関係様式通達別添1、別添2)。
イ 税務代理に該当しない行為を委任する場合の委任状の記載欄が設けられた。
ロ 税務代理権限証書に記載した税務代理の委任が終了した場合に、その旨を税務官公署に通知するための様式が新たに設けられた。
(注)上記のほか、税務代理権限証書の様式について、税務調査の終了の際の手続(更正決定等をすべきと認められない旨の通知、調査結果の説明、修正申告等の勧奨時における説明等:通法74の11⑤)が税務代理権限証書に記載した税理士又は税理士法人に対して行われることの同意の欄が設けられた(税理士規則第8号様式、税理士法関係様式通達別添1)。
(3)適用関係
① 上記(2)①の通達改正は、令和4年4月1日から適用されている(令和4年3月31日改正税理士法基本通達)。
② 上記(2)②の改正は、令和6年4月1日から施行される(改正税理士規則附則二)。

6 税理士事務所の設置規制等の見直し
(1)改正前の制度の概要

① 税理士事務所の設置規制
  税理士(税理士法人の社員及び所属税理士を除く。)及び税理士法人は、税理士業務を行うための事務所(以下「税理士事務所」という。)を設けなければならないこととされている(税理士法40①、税理士規則18)。
  また、税理士(税理士法人の社員及び所属税理士を除く。)は、税理士事務所を2以上設けてはならないこととされている(税理士法40③、税理士規則18)。
  上記の「税理士事務所」とは、具体的には、継続的に税理士業務を執行する場所をいい、その該当性の判定は、「外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実」によることとされていた(旧税理士法基本通達40−1)。
② 税理士及び税理士法人の使用人等に対する監督義務
  税理士及び税理士法人は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者(以下「使用人等」という。)を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないようその使用人等を監督しなければならないこととされている(税理士法41の2、旧税理士法48の16)。
(2)改正の内容
① 税理士事務所の設置規制の見直し
  上記(1)①の「税理士は、税理士事務所を2以上設けてはならないこと」とされている趣旨は、税理士の業務活動の本拠としてこれを1か所に限定することが法律関係を明確にする上で便宜であること、個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制し、これにより税理士以外の者が税理士業務を営むことを防止することにある。
  他方で、税理士事務所の該当性の判定は「設備の状況、使用人の有無」といった事実によっても行われていたため、業務の場所や形態にとらわれない柔軟な働き方(例えば、自宅や税理士事務所以外の作業場(いわゆるサテライトオフィス)の設置等)を阻害しているおそれがあるという課題があった。
  今回の改正においては、こうした課題に対応し、税理士の業務のICT化や働き方の多様化を推進する観点から、上記の趣旨を維持しつつ、法令解釈通達等の見直しが行われた。
  具体的には、税理士事務所は、税理士業務の本拠をいうこととされ、その該当性の判定は、「設備の状況、使用人の有無」といった事実ではなく、「外部に対する表示」に係る客観的事実によることとされた(税理士法基本通達40−1)。
② 税理士及び税理士法人の使用人等に対する監督の方法の明確化
  従来は、「設備の状況、使用人の有無」といった事実によっても税理士事務所の該当性の判定がされていたことにより、使用人等は、税理士及び税理士法人の社員が業務を行う場所と同じ場所でその事務を行うこととなり、その結果として、税理士でない使用人等が税理士業務を行うこと等が抑止されていた面があると考えられる。
  上記①の見直しにより、使用人等は、税理士及び税理士法人の社員が業務を行う場所と異なる場所で事務を行うことが可能となることから、使用人等による税理士業務の抑止に当たっては、使用者である税理士及び税理士法人による監督が適切に行われることが重要であると考えられる。
  今回の改正においては、こうしたことを踏まえ、税理士の使用人等に対する監督義務は、税理士及びその使用人等が事務を行う場所によって異なることはなく、対面による監督を行うことができない場合でも、情報通信技術を利用する方法などにより適切に監督が行われているときには、その監督義務が果たされていると判断されることが、法令解釈通達上明確化された(税理士法基本通達41の2−1)。
(3)適用関係
 上記(2)の通達改正は、令和5年4月1日から適用される(令和4年3月31日改正税理士法基本通達)。

Ⅲ 多様な人材の確保(税理士試験の受験資格の要件の緩和)

1 改正前の制度の概要
 次のいずれかに該当する者は、税理士試験を受験することができることとされていた(旧税理士法5①)。
(1)職歴による受験資格を有する者
 次に掲げる事務又は業務に従事した期間が通算して2年以上になる者(旧税理士法5①一、税理士令5)
① 税務官公署における事務又はその他の官公署における国税若しくは地方税に関する事務
② 行政機関における会計検査等に関する特定の行政事務
③ 銀行等における貸付け等に関する事務
④ 法人等の会計に関する事務
⑤ 税理士、弁護士、公認会計士等の業務の補助の事務
⑥ 弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士又は不動産鑑定士の業務
(2)学識による受験資格を有する者
 学校教育法の規定による大学若しくは高等専門学校を卒業した者でこれらの学校において法律学又は経済学を修めたもの又は同法の規定により大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者で一定の学校において法律学又は経済学を修めたもの(旧税理士法5①二)
(3)司法修習生となる資格を得た者(旧税理士法5①三)
 司法試験に合格して、司法修習生となる資格を得た者
(4)公認会計士試験の短答式試験の合格者
 公認会計士試験の短答式による試験に合格した者又は公認会計士試験を免除された者(公認会計士試験の試験科目の全部について試験を免除された者を含む。)(旧税理士法5①四)
(5)国税審議会が認定した者
 国税審議会が法律学又は経済学に関し上記(2)から(4)までに掲げる者と同等以上の学力を有するものと認定した者(旧税理士法5①五)

2 改正の内容
 従来は、例えば、大学1・2年次の学生や、大学3年次以上の学生であっても法律学又は経済学に属する科目を1科目も履修していない学生は、基本的には、その学識により税理士試験の受験資格を満たすことができなかった。
 また、経済社会の多様化に伴い、税理士の活動領域が拡大していることに鑑みれば、税理士には、法律学や経済学にとどまらず、広く社会に関する基礎的素養が求められてきていると考えられる。
 なお、特に若年層の受験者においては、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税のうち受験者の選択する3科目)より先に会計学に属する科目(会計学のうち簿記論及び財務諸表論の2科目)を受験する傾向が見られるところである。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、税理士試験の受験者の減少に対処するとともに、若年層をはじめとした多様な人材の確保を図る観点から、税理士試験の受験資格の要件が次のとおり緩和された。
(1)会計学に属する科目の受験資格の要件の撤廃
 会計学に属する科目(会計学のうち簿記論及び財務諸表論の2科目)について行う税理士試験の受験資格の要件は、撤廃された(税理士法5①)。
(2)学識による受験資格の要件の緩和
 上記1(2)の学識による受験資格を有する者について、その受験資格の要件を満たそうとする場合に修める必要がある科目の範囲が、社会科学に属する科目(改正前:法律学又は経済学)に緩和された(税理士法5①二)。
 また、この改正に伴い、上記1(5)の国税審議会が認定した者について、社会科学に属する科目(改正前:法律学又は経済学)に関し上記1(2)から(4)までに掲げる者と同等以上の学力を有するものと認定した者とされた(税理士法5①五)。
(3)その他の改正
 上記(1)及び(2)の改正のほか、「税理士試験受験願書」に添付すべき写真について、大きさ以外の制限が撤廃されるとともに、「沖縄税理士法の規定により税理士資格を有することとなる者が受講する税法に関する講習の受講申請書」に添付すべき写真について、旅券(パスポート)規格の写真を添付することができるよう、所要の整備が行われた(税理士規則第2号様式、沖縄税特省令別紙様式第1)。

3 適用関係
(1)上記2(1)及び(2)の改正は、令和5年4月1日から施行され(改正法附則1四ハ、改正税理士規則附則一)、令和5年度(第73回(予定))の税理士試験から適用される。
(2)上記2(3)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正税理士規則附則、改正沖縄税特省令附則)。

Ⅳ 税理士に対する信頼の向上を図るための環境整備

1 懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等
(1)改正前の制度の概要

 税理士に対する懲戒処分及びこれに関連する制度は、次のとおりとされている。
① 懲戒処分の種類
  税理士法は、税理士に対する懲戒処分として、次の3種類を規定している(税理士法44)。
イ 戒告
ロ 2年以内の税理士業務の停止
ハ 税理士業務の禁止
② 懲戒処分の事由
  懲戒処分の事由は、次のとおりとされている。
イ 脱税相談等をした場合の懲戒
  財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は税理士法第36条(脱税相談等の禁止)の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができることとされている(税理士法45①)。
  また、財務大臣は、税理士が、相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は税理士法第36条(脱税相談等の禁止)の規定に違反する行為をしたときは、戒告又は2年以内の税理士業務の停止の処分をすることができることとされている(税理士法45②)。
ロ 一般の懲戒
  財務大臣は、上記イに該当する場合を除くほか、税理士が、税理士法第33条の2第1項若しくは第2項(計算事項、審査事項等を記載した書面の添付)の規定により添付する書面に虚偽の記載をしたとき、又は税理士法若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは、戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができることとされている(税理士法46)。
③ 懲戒処分の手続
  税理士に対する懲戒処分については、次の手続により行うこととされている。
イ 聴聞又は弁明の機会の付与
  行政手続法において、行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、名宛人の資格又は地位を直接に剥奪する等の不利益処分をしようとするときは聴聞により、それ以外のときは弁明の機会の付与により、その不利益処分の名宛人となるべき者について、意見陳述のための手続を執らなければならないこととされている(行政手続法13①)。
  上記の行政手続法の規定により、財務大臣は、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める意見陳述のための手続を執らなければならないこととなる。
(イ)税理士業務の禁止の処分を行う場合……聴聞
(ロ)戒告又は2年以内の税理士業務の停止の処分を行う場合……弁明の機会の付与
ロ 登録抹消の制限
  日本税理士会連合会は、税理士が懲戒の手続に付された場合においては、その手続が結了するまでは、その税理士の登録の抹消をすることができないこととされている(税理士法47の2)。
ハ 国税審議会の議決
  財務大臣は、税理士の懲戒処分をしようとするときは、国税審議会に諮り、その議決に基づいてしなければならないこととされている(税理士法47④前段)。また、その懲戒処分に係る審査請求について、裁決をしようとするときも、同様とされている(税理士法47④後段)。
  国税審議会には、税理士分科会の委員のほか、懲戒処分について審査する懲戒審査委員が置かれ、その審査を経て、国税審議会が懲戒処分について議決を行うことになる(旧国税審議会令2④、6③⑦、国税審議会令8①〜③)。
ニ 懲戒処分の通知
  財務大臣は、税理士の懲戒処分をするときは、その理由を付記した書面により、その旨をその税理士に通知しなければならないこととされている(税理士法47⑤)。
ホ 官報公告
  財務大臣は、懲戒処分をしたときは、遅滞なくその旨を官報をもって公告しなければならないこととされている(旧税理士法48)。
ヘ 調査の申出等
(イ)地方公共団体の長は、税理士について、地方税に関し懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その税理士の氏名及び税理士事務所又は税理士法人の事務所の所在地並びにその行為又は事実を通知するものとされている(税理士法47①)。
(ロ)税理士会は、その会員について、懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その会員の氏名及び税理士事務所又は税理士法人の事務所の所在地並びにその行為又は事実を通知しなければならないこととされている(税理士法47②)。
(ハ)何人も、税理士について、懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その税理士の氏名及びその行為又は事実を通知し、適当な措置をとるべきことを求めることができることとされている(税理士法47③)。
④ 欠格条項
  次のいずれか(欠格条項)に該当する者は、税理士となる資格を有しないこととされている(旧税理士法4)。
イ 未成年者
ロ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ハ 国税若しくは地方税に関する法令又は税理士法の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないもの
ニ 国税若しくは地方税に関する法令若しくは税理士法の規定により罰金の刑に処せられた者又は国税通則法、関税法(とん税法及び特別とん税法において準用する場合を含む。)若しくは地方税法の規定により通告処分を受けた者で、それぞれその刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの
ホ 国税又は地方税に関する法令及び税理士法以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
ヘ 懲戒処分により税理士業務を行うことを禁止された者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
ト 国家公務員法、国会職員法又は地方公務員法の規定により懲戒免職の処分を受け、その処分を受けた日から3年を経過しない者
チ 国家公務員法若しくは国会職員法の規定による懲戒免職の処分を受けるべき行為をしたと認められたことにより退職手当支給制限等処分を受けた者又は地方公務員法の規定による懲戒免職の処分を受けるべき行為をしたと認められたことにより退職手当支給制限等処分に相当する処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの
リ 弁護士法若しくは外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律、公認会計士法、弁理士法、司法書士法、行政書士法、社会保険労務士法又は不動産の鑑定評価に関する法律の規定による懲戒処分により、弁護士会からの除名、公認会計士の登録の抹消、弁理士、司法書士若しくは行政書士の業務の禁止、社会保険労務士の失格処分又は不動産鑑定士の登録の消除の処分を受けた者でこれらの処分を受けた日から3年を経過しないもの(これらの法律の規定により再び業務を営むことができることとなった者を除く。)
ヌ 税理士の登録を拒否された者のうち税理士法第22条第4項(登録に関する決定)の規定に該当する者又は同法第25条第1項第1号(登録の取消し)の規定により税理士の登録を取り消された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの
⑤ 登録拒否事由
  次のいずれかに該当する者は、税理士の登録を受けることができないこととされている(旧税理士法24)。
イ 懲戒処分により、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士若しくは社会保険労務士の業務を停止された者又は鑑定評価等業務を行うことを禁止された不動産鑑定士で、現にその処分を受けているもの
ロ 報酬のある公職(国会又は地方公共団体の議会の議員の職、非常勤の職その他一定の公職を除く。)に就いている者
ハ 不正に国税又は地方税の賦課又は徴収を免れ、若しくは免れようとし、又は免れさせ、若しくは免れさせようとした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの
ニ 不正に国税又は地方税の還付を受け、若しくは受けようとし、又は受けさせ、若しくは受けさせようとした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの
ホ 国税若しくは地方税又は会計に関する事務について刑罰法令に触れる行為をした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの
ヘ 次のいずれかに該当し、税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者
(イ)心身に故障があるとき。
(ロ)上記④ハからヌまでのいずれかに該当していた者がこれらの欠格期間を経過して登録の申請をしたとき。
ト 税理士の信用又は品位を害するおそれがある者その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者
(2)改正の内容
 上記(1)②のとおり、財務大臣は、税理士が、故意又は相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をした場合又は脱税相談をした場合等には、懲戒処分(戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止)をすることができることとされている(税理士法45①②、46)。
 他方で、上記のような税理士法違反行為をした税理士に対する懲戒処分は、「現職の税理士」のみが対象となるため、税理士法違反行為をした税理士が、懲戒の手続に付される前に税理士業務を廃止して税理士登録の抹消を受けることにより懲戒処分を免れること、いわゆる「懲戒処分逃れ」が可能になっているといった課題があった。
 今回の改正においては、このような課題を踏まえ、納税者が不測の損害を被ることを防止し、税理士業務の適正な運営を確保する観点から、財務大臣は、税理士であった期間内(在職期間内)に税理士法違反行為をした税理士であった者に対して、懲戒処分を受けるべきであったことについての決定をすることができることとされるとともに、その決定を受けた者について、懲戒処分に準じた措置が講じられた。
 具体的には、次のとおりである。
① 懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設
  財務大臣は、税理士であった者につき税理士であった期間内に懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、その税理士であった者が懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をすることができることとされた(税理士法48①前段)。
  この場合において、財務大臣は、その税理士であった者が受けるべきであった懲戒処分の種類(その懲戒処分が2年以内の税理士業務の停止の処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならないこととされている(税理士法48①後段)。
② 懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の手続
イ 聴聞又は弁明の機会の付与
  財務大臣は、税理士であった者につき税理士であった期間内に懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めた場合において、懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をするときは、懲戒処分の手続と同様に、行政手続法の規定による意見陳述のための手続を執らなければならないことになる(行政手続法13①:上記(1)③イ参照)。
ロ 国税審議会の議決
  財務大臣は、税理士であった者に対し懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をしようとするときは、国税審議会に諮り、その議決に基づいてしなければならないこととされた(税理士法48③、47④前段)。また、その懲戒処分を受けるべきであったことについての決定に係る審査請求について、裁決をしようとするときも、同様とされている(税理士法48③、47④後段)。
ハ 懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の通知
  財務大臣は、税理士であった者に対し懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をするときは、その理由を付記した書面により、その旨をその税理士であった者に通知しなければならないこととされた(税理士法48③、47⑤)。
ニ 日本税理士会連合会への通知
  財務大臣は、税理士であった者に対して、懲戒処分を受けるべきであったことについての決定に係る上記イの聴聞又は弁明の機会の付与について行政手続法上の通知を発した場合には、その旨を日本税理士会連合会に通知しなければならないこととされた(税理士規則14の4)。
ホ 官報公告
  財務大臣は、懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をしたときは、遅滞なくその旨を官報をもって公告しなければならないこととされた(税理士法48③、47の4)。
ヘ 調査の申出等
  上記(1)③ヘの調査の申出等について、懲戒処分と同様に、次の措置が講じられた(税理士法48②、47①〜③)。
(イ)地方公共団体の長は、税理士であった者について、地方税に関し懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その税理士であった者の氏名及びその税理士であった者の事務所の所在地並びにその行為又は事実を通知するものとされた。
(ロ)税理士会は、その会員であった者(税理士であった者)について、懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その会員であった者の氏名及びその会員であった者の事務所の所在地並びにその行為又は事実を通知しなければならないこととされた。
(ハ)何人も、税理士であった者について、懲戒処分の事由となる行為又は事実があると認めたときは、財務大臣に対し、その税理士であった者の氏名及びその行為又は事実を通知し、適当な措置をとるべきことを求めることができることとされた。
③ 欠格条項の見直し
  上記(1)④の欠格条項に、税理士業務の禁止の処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、その決定を受けた日から3年を経過しないものが追加された(税理士法4七)。
④ 登録拒否事由の見直し
  上記(1)⑤の登録拒否事由に、2年以内の税理士業務の停止の処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、税理士業務を停止すべき期間を経過しないものが追加された(税理士法24六)。
⑤ 国税審議会令の改正
  国税審議会(懲戒審査委員)が行う審査の範囲に、懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の審査が追加された(国税審議会令2④)。また、この改正に伴い、国税審議会に置かれている「懲戒審査委員」の名称が「懲戒等審査委員」に改められた(国税審議会令2④等)。
(注)他の士業資格等の欠格事由等の改正
(3)適用関係
① 上記(2)①及び②の改正は、令和5年4月1日以後の懲戒処分の事由となる行為又は事実について適用される(改正法附則70②)。
② 上記(2)③から⑤までの改正は、令和5年4月1日から施行される(改正法附則1四ハ、改正税理士令等附則①)。

2 税理士等に対する監督上の措置の見直し
(1)改正前の制度の概要

① 税理士又は税理士法人に対する報告の徴取、質問又は検査の権限
  国税庁長官は、税理士業務の適正な運営を確保するため必要があるときは、税理士若しくは税理士法人から報告を徴し、又は当該職員をして税理士若しくは税理士法人に質問し、若しくはその業務に関する帳簿書類を検査させることができることとされている(税理士法55①)。ただし、この報告の徴取、質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないこととされている(旧税理士法55②)。
② 事務の委任
  国税庁長官は、上記①の権限に関する事務を国税局長又は税務署長に取り扱わせることができるが、この場合には、その旨を告示しなければならないこととされている(旧税理士法57)。
③ 当該職員の証票携帯
  当該職員が上記①の権限を行使する場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならないこととされている(旧税理士令15)。
④ 罰則
  上記①の権限の行使に対して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、質問に答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処することとされている(旧税理士法62)。
  また、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、上記の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、上記の罰金刑を科することとされている(旧税理士法63)。
(2)改正の内容
① 税理士であった者に対する報告の徴取、質問又は検査の権限の整備
  上記1(2)①の懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設に伴い、国税庁長官は、懲戒処分を受けるべきであったことについての決定のため必要があるときは、税理士であった者から報告を徴し、又は当該職員をして税理士であった者に質問し、若しくはその業務に関する帳簿書類を検査させることができることとされた(税理士法55②)。ただし、この報告の徴取、質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないこととされている(税理士法55③)。
② 関係人等への協力要請規定の創設
  従来は、財務省設置法に基づく「税理士業務の適正な運営の確保」という任務(財務省設置法19)を達成するため、必要な範囲において、関係人や官公署に対して、その協力を得て情報収集が行われていたが、こうした関係人や官公署の協力を得て行う情報収集については、その根拠となる法令上の明文の規定を欠いている状況にあることを理由として、協力を要請してもこれに応じてもらえない事例も生じていたところである。
  今回の改正においては、このような課題に対応するため、国税庁長官は、税理士法の規定に違反する行為又は事実があると思料するときその他税理士業務の適正な運営を確保するため必要があるときは、関係人又は官公署に対し、当該職員をして、必要な帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めさせることができることとされた(税理士法56)。
③ 上記①及び②の見直しに伴う事務の委任規定の整備
  国税庁長官は、上記①又は②の権限に関する事務を国税局長又は税務署長に取り扱わせることができることとされるとともに、その旨を告示しなければならないこととされた(税理士法57①)。
④ 上記①及び②の見直しに伴う当該職員が証票携帯をすべき場合の整備
  当該職員は、次に掲げる場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならないこととされた(税理士令15二・三)。
イ 上記①により当該職員が税理士であった者に質問し、又はその業務に関する帳簿書類を検査する場合
ロ 上記②により当該職員が関係人又は官公署に対して協力要請に関する職務の執行をする場合
⑤ 上記①の見直しに伴う罰則規定の整備
  上記①の権限の行使に対して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、質問に答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処することとされた(税理士法62二、63)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和5年4月1日から施行される(改正法附則1四ハ、改正税理士令等附則①)。

3 懲戒処分等の除斥期間の創設
(1)改正前の制度の概要

 税理士に対する懲戒処分及び税理士法人の違法行為等についての処分については、次のとおりとされている。
① 税理士に対する懲戒処分
  税理士に対する懲戒処分の詳細については、上記1(1)①及び②をご参照ください。
② 税理士法人の違法行為等についての処分
  財務大臣は、税理士法人が、税理士法等に違反し、又は運営が著しく不当と認められるときは、その税理士法人に対し、戒告し、若しくは2年以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命じ、又は解散を命ずることができることとされている(税理士法48の20①)。
(注)税理士に対する懲戒処分及び税理士法人の違法行為等についての処分については、除斥期間は設けられていなかった。他方で、弁護士法上の弁護士・弁護士法人に対する懲戒や司法書士法上の司法書士・司法書士法人に対する懲戒処分については、除斥期間が設けられている(弁護士法63、司法書士法50の2)。
(2)改正の内容
 税理士及び税理士法人の法的安定性を確保する等の観点から、上記(1)①の税理士に対する懲戒処分及び上記(1)②の税理士法人の違法行為等についての処分並びに上記1(2)①の懲戒処分を受けるべきであったことについての決定について、除斥期間が創設された。
 具体的には、財務大臣は、税理士の懲戒の事由又は税理士法人の違法行為等があったときから10年を経過したときは、税理士に対する懲戒の手続若しくは税理士法人の違法行為等についての処分の手続又は税理士であった者に対する懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の手続を開始することができないこととされた(税理士法47の3、48②、48の20②)。
(注1)通知弁護士に対する懲戒処分及び通知弁護士法人等の違法行為についての処分についても、上記の除斥期間の対象となる(税理士法51②④)。
(注2)上記の「税理士の懲戒の事由又は税理士法人の違法行為等があったとき」とは、懲戒の事由に該当する税理士法違反行為が終了した時点をいう(税理士法基本通達47の3−1)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和5年4月1日以後の懲戒の事由となる行為若しくは事実又は税理士法人の違法行為等について適用される(改正法附則70②③)。

Ⅴ その他

1 税理士法人制度の見直し
(1)改正前の制度の概要

① 税理士法人の業務の範囲
  税理士法人は、税理士業務を行うほか、定款で定めるところにより、税理士業務の付随業務その他これに準ずる業務として一定の業務の全部又は一部を行うことができることとされている(旧税理士法48の5)。
② 税理士法人の社員の資格
  税理士法人の社員は、税理士でなければならず、また、税理士業務の停止の処分を受けた税理士でその停止の期間を経過しない者等は、税理士法人の社員となることができないこととされている(税理士法48の4)。
③ 税理士法人の社員の法定脱退事由
  税理士法人の社員は、次に掲げる理由によって脱退することとされていた(旧税理士法48の17)。
イ 税理士の登録の抹消
ロ 定款に定める理由の発生
ハ 総社員の同意
ニ 除名
(2)改正の内容
① 税理士法人の業務の範囲の拡充
  税理士法人は、税理士業務を組織的に行うことを目的として設立される法人であることから、税理士法人が行うことができる業務は、税理士業務、その付随業務及び上記(1)①の「一定の業務」に限定されている。他方で、税理士(個人)は、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されているものを除き、その専門的知見を活用して、例えば、成年後見業務や租税教育その他知識の普及等の業務を行うことが可能である。そのため、税理士法人の社員が成年後見業務や租税教育その他知識の普及等の業務を行うためには、税理士(個人)として活動する必要があった。
  今回の改正においては、このような状況を踏まえ、税理士法人の社員がこうした業務に関わりやすくする観点から、税理士法人の業務の範囲に、次に掲げる業務が追加された(税理士法48の5、税理士規則21二・三)。
イ 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
ロ 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発の業務
② 税理士法人の社員の法定脱退事由の整備
  上記(1)②のとおり、税理士法人の社員が税理士業務の停止の処分を受けた場合等には、税理士法人の社員の資格を有しないこととなり、税理士法人の社員は税理士法人から脱退すべきものと解されているが、法令上、税理士法人の社員の法定脱退事由として、「税理士法人の社員が税理士業務の停止の処分を受けたこと」等が明文化されていなかった。
  今回の改正においては、この取扱いを明確化するため、上記(1)③の税理士法人の社員の法定脱退事由に、次に掲げる事由が追加された(税理士法48の17)。
イ 他の士業法上の懲戒処分により、業務の停止等がされた場合又は税理士が報酬のある公職に就いた場合の税理士の業務の停止の規定(税理士法43)に該当することとなったこと
ロ 2年以内の税理士業務の停止の処分を受けたこと
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和4年4月1日から施行されている(改正法附則1、改正税理士規則附則)。

2 税理士が申告書に添付することができる計算事項、審査事項等を記載した書面に関する様式の整備
(1)改正前の制度の概要

① 計算事項等記載書面の添付
  税理士又は税理士法人は、申告納税方式の国税又は申告納付若しくは申告納入の方法による地方税の課税標準等を記載した申告書を作成したときは、その申告書の作成に関する計算事項等を記載した書面(以下「計算事項等記載書面」という。)をその申告書に添付することができることとされている(税理士法33の2①、旧税理士規則第9号様式)。
② 審査事項等記載書面の添付
  税理士又は税理士法人は、上記①の申告書で他人の作成したものにつき相談を受けてこれを審査した場合において、その申告書が租税に関する法令の規定に従って作成されていると認めたときは、その申告書に関する審査事項等を記載した書面(以下「審査事項等記載書面」という。)をその申告書に添付することができることとされている(税理士法33の2②、旧税理士規則第10号様式)。
(2)改正の内容
 計算事項等記載書面及び審査事項等記載書面は、一部の税目によっては、必ずしも使い勝手がよいものとはなっていないという課題があった。
 今回の改正においては、こうした課題に対応する観点から、計算事項等記載書面及び審査事項等記載書面について、必要があるときは、税目に応じてこれらの様式の各欄の記載事項を変更することができることとされた(税理士規則第9号様式、第10号様式)。
 また、法令解釈通達上の様式に、新たに相続税の申告書又は贈与税の申告書に添付するための計算事項等記載書面及び審査事項等記載書面の様式が設けられた(税理士法関係様式通達別添5、別添6)。
(注)上記のほか、計算事項等記載書面及び審査事項等記載書面の名称が、それぞれ「申告書の作成に関する計算事項等記載書面」及び「申告書に関する審査事項等記載書面」と改められる等の税理士の実務を踏まえた様式の見直しが行われた。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和6年4月1日から施行される(改正税理士規則附則二、令和4年3月31日改正税理士法関係様式通達)。

二 記帳水準の向上に資するための過少申告加算税等の加重措置の整備

1 改正前の制度の概要
 申告納税方式による国税については、納税申告が納税義務を確定させる重要な意義を有することから、その申告の適正性を担保するため、行政制裁として過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税の制度が設けられている(通法65、66、68)。これらの各加算税の概要は、次のとおりである。
(1)過少申告加算税の概要
 期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正(以下「修正申告等」という。)があったときは、納税者に対し、その修正申告等に基づいて納付すべき税額に10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課すこととされている(旧通法65①②)。ただし、修正申告書の提出が、調査通知以後、かつ、調査による更正を予知してされたものでない場合には、その申告に基づいて納付すべき税額に5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課すこととされている(旧通法65①②)。なお、その修正申告書の提出が調査による更正を予知してされたものでない場合において、調査通知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税を課されないこととされており(旧通法65⑤)、これは、申告納税制度の普及を図るため、自発的な修正申告を奨励することを目的とするものであるとされている。
(2)無申告加算税の概要
 期限後申告書の提出若しくは決定があった場合又はその期限後申告書の提出若しくは決定があった後に修正申告書の提出若しくは更正があった場合には、納税者に対し、その期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定(以下「期限後申告等」という。)に基づいて納付すべき税額に15%(納税額が50万円を超える部分は20%)の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課すこととされている(旧通法66①②)。ただし、期限後申告書又は修正申告書の提出が、調査通知以後、かつ、調査による更正又は決定を予知してされたものでない場合には、その申告に基づいて納付すべき税額に10%(納税額が50万円を超える部分は15%)の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課すこととされている(旧通法66①②)。なお、その期限後申告書又は修正申告書の提出が調査による更正又は決定を予知してされたものでない場合において、調査通知がある前に行われたものであるときは、その申告に基づいて納付すべき税額に係る無申告加算税の額は、その税額に5%の割合を乗じて計算した金額とされ、通常の場合よりも軽減することとされており(旧通法66⑥)、この趣旨は、上記(1)の過少申告加算税が課されない措置と同様である。
(3)重加算税の概要
① 過少申告加算税に代えて課される場合の重加算税
  過少申告加算税が課される場合(調査による更正を予知しないでされた申告による場合を除く。)において、納税者がその国税の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽・仮装して納税申告書を提出していたときは、納税者に対し、過少申告加算税に代えて計算の基礎となるべき税額に35%の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課すこととされている(通法68①)。
② 無申告加算税に代えて課される場合の重加算税
  無申告加算税が課される場合(調査による更正又は決定を予知しないでされた申告による場合等を除く。)において、納税者がその国税の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽・仮装して法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、納税者に対し、無申告加算税に代えて計算の基礎となるべき税額に40%の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課すこととされている(旧通法68②)。

2 改正の内容
 適正な記帳については、正確な記録・事後検証可能性が確保されていることで、税務調査や会計監査への対応に係る事業者側の事務負担や時間、当局側の執行コストを共に最小化することが可能となる一方、信頼性のある記帳がない場合には、その取引実態を確認するための反面調査等の追加的な対応が必要になる場合もある。また、記帳や帳簿保存義務を果たさなくても、その記帳や帳簿保存が不十分であることのみでは「隠蔽・仮装」の事実に該当しないことから重加算税の賦課が困難となる場合もあり、記帳義務不履行に対する不利益が少ない中で記帳の動機に乏しい場合も存在することなどの問題が指摘されていた。
 この点については、国税通則法の制定に関する答申(昭和36年7月税制調査会第二次答申)においても、「(前略)これら記帳状況等が千差万別とみられる状態のもとでは、上記のような隠ぺい又は仮装の証明がすべての場合において実質上画一的にされることを期待するのは行政運営上困難であり、極端な場合には故意に記帳をしないか又は記帳を著しく不完全にして、隠ぺい又は仮装の証明を実際上不可能にする場合等その証明がされる場合よりもかえつて悪質な場合もあり得よう。このように、過少申告加算税又は無申告加算税を課される場合において、納税者の責任の程度に軽重の差がある反面、重加算税制度の適用について行政上限界のあることを考えるときは、過少申告加算税又は無申告加算税の課税率について、申告内容の程度のいかんにかかわらず、これを一律の課税率にとどめておくことは問題があると認められるので、この点については、今後なお検討すべきである。」とされており、国税通則法制定時からの課題とされてきた。
 こうした課題等を踏まえ、政府税制調査会においては、複式簿記の普及・一般化、正確な記録及びトレーサビリティが確保された会計帳簿の普及・一般化、帳簿不保存・記帳不備への対応等の記帳水準向上や適正申告を図るための対応についての議論が行われており、同調査会の下に外部有識者も交えて設置された「納税環境整備に関する専門家会合」における議論については、「納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告(令和3年11月19日政府税制調査会資料)」として、総会への報告が行われた。その中では、これまでの税務調査の過程で把握されている適正な記帳等が行われていない事例等に対して、記帳義務不履行を是正するための担保措置の必要性について指摘がされている。
 また、同報告においては、帳簿不保存・記帳不備への対応について、「適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握にかかる執行コストが多大で、ペナルティ適用上の立証も困難。また、記帳義務不履行に対する不利益がない中で、記帳の動機に乏しい場合も存在。記帳義務及び申告義務を適正に履行する納税者との公平性に鑑み、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対して適正化を促す措置の検討を行う。」との今後の議論の方向性が示されている。
 今回の改正においては、こうした政府税制調査会における議論を通じた指摘や記帳の状況などに関する税務執行上の課題を踏まえ、記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務を適正に履行しない納税者に課される過少申告加算税及び無申告加算税の加重措置を整備することとされた。
 以下では、この見直しの内容について、説明することとする。
(1)記帳水準の向上に資するための過少申告加算税等の加重措置の概要
 記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保し、帳簿の不保存や記載不備について未然に抑止するため、記帳義務を適正に履行しない納税者に課される過少申告加算税又は無申告加算税の額について、その記帳義務の履行の程度に応じてその額を加重する措置が整備された。これは、全体の納税義務者に占める帳簿の不保存・記載不備の事業者の割合は僅少であるものの、そういった一部の者について所得把握を十分に行えない不公平についても配意されたものである。
 具体的には、納税者が、一定の帳簿(その電磁的記録を含む。)に記載すべき事項等に関しその修正申告等又は期限後申告等があった時前に、国税庁、国税局又は税務署の当該職員(以下「当該職員」という。)からその帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき(その納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)の過少申告加算税の額又は無申告加算税の額は、通常課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額にその修正申告等又は期限後申告等に係る納付すべき税額(その帳簿に記載すべき事項等に係るもの以外の事実に基づく税額を控除した税額に限る。)の10%(次の②に掲げる場合に該当する場合には、5%)に相当する金額を加算した金額とすることとされた(通法65④、66④)。
① 当該職員にその帳簿の提示若しくは提出をしなかった場合又は当該職員にその提示若しくは提出がされたその帳簿に記載すべき事項等のうち、納税申告書の作成の基礎となる重要なものとして一定の事項(以下「特定事項」という。)の記載等が著しく不十分である場合として一定の場合
② 当該職員にその提示又は提出がされたその帳簿に記載すべき事項等のうち、特定事項の記載等が不十分である場合として一定の場合(上記①に掲げる場合を除く。)
(注1)上記の「特定事項」とは、売上げ(業務に係る収入を含む。以下同じ。)をいうこととされている(通規11の2②)。これは、例えば所得については、日々の記帳段階ではその具体的な額を予見することが困難である点、経費については通常、税額を圧縮するものであることから収入に比して事業者の自主的な記帳が期待できるほか、その計上にあたっては、減価償却費用の計算や資本的支出に該当するかどうかの判断など、一定水準以上の税・会計の知識が必要となる点などを踏まえつつ、税務当局における執行可能性にも配意し、本措置の適用要件である上記①又は②に掲げる場合に該当するかどうかの判断にあたっては、売上げを用いることとしたものである。なお、事業者ごとの会計リテラシーの違い等に配慮する観点から、売上げに含まれない収入金額(損益計算書上の営業外収益、特別損益に係る収入等の営業に直接関係のないもの)については、対象外とされている。
(注2)上記の「特定事項」については、「帳簿に記載すべき事項等」であることが前提とされていることから、例えば、消費税法上の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿については、その帳簿に記載すべき事項に含まれない国外において行った資産の譲渡等(不課税取引)に係る売上げは、特定事項に含まれないこととなる。
(2)本措置の適用対象となる記載等が不十分の判断
 上記(1)①の「特定事項の記載等が著しく不十分である場合」とは、特定事項の金額の記載等が、帳簿に記載等すべき特定事項の金額の2分の1に満たない場合をいい(通法65④、66④、通規11の2③⑤)、上記(1)②の「特定事項の記載等が不十分である場合」とは、特定事項の金額の記載等が、帳簿に記載等すべき特定事項の金額の3分の2に満たない場合をいうこととされている(通法65④、66④、通規11の2④⑥)。
 これは、本措置を実効的なものとしていくためには、納税者による意図しない記帳漏れや記帳誤りについて、本措置を機械的に適用するのではなく、記帳指導により適正記帳に誘導することも重要であると考えられるが、そのような意図しない記帳漏れや記帳誤りとは言い難い一定の悪質性が観念される水準として「帳簿に記載等すべき特定事項の金額の3分の2に満たない場合」を本措置の適用対象となる「記載等が不十分である場合」としたものである。なお、「帳簿に記載等すべき特定事項の金額の2分の1に満たない場合」については、その売上げの過半が記帳されておらず、その悪質性は更に高いものと考えられることから、納税者が帳簿の提示又は提出をしなかった場合(作成及び保存をしなかった場合)と同視し得る程度の悪質性を有する「記載等が著しく不十分である場合」として、一段高い加重措置を適用することとされている。
 なお、上記(1)①又は②に掲げる場合に該当する場合であっても、納税者の責めに帰すべき事由がない場合については、本措置の適用はない(通法65④、66④)。
(3)本措置の適用対象となる帳簿
 本措置の対象となる「一定の帳簿」とは、所得税、法人税又は消費税(輸入に係る消費税を除く。以下同じ。)に係る修正申告等又は期限後申告等の基因となる事項に係る次の帳簿のうち、特定事項に関する調査について必要があると認められるものとされている(通法65④、66④、通規11の2①)。
① 所得税法上の青色申告者(取引内容を正規の簿記の原則に従って記録している者に限る。)が備付け及び保存をしなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳(所規58①)
② 所得税法上の青色申告者のうち上記①以外の者が備付け及び保存をしなければならないこととされる一定の簡易な記録の方法及び記載事項によることができる帳簿(所規56①ただし書)
③ 所得税法において上記①及び②以外の者が備付け及び保存をしなければならないこととされる帳簿(所規102①)
④ 法人税法上の青色申告法人が備付け及び保存をしなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳(法規54)
⑤ 法人税法において上記④以外の法人が備付け及び保存をしなければならないこととされる帳簿(法規66①)
⑥ 消費税法上の事業者が備付け及び保存をしなければならないこととされる次の帳簿
イ 課税仕入れの税額の控除に係る帳簿(消法30⑦⑧一)
ロ 特定課税仕入れの税額の控除に係る帳簿(消法30⑦⑧二)
ハ 売上対価の返還等に係る帳簿(消法38②)
ニ 特定課税仕入れの対価の返還等に係る帳簿 (消法38の2②)
ホ 資産の譲渡等又は課税仕入れに関する事項の記録に係る帳簿(消法58)
(注1)修正申告等又は期限後申告等の基因となる事項(所得金額等の申告漏れ) については、その申告漏れとなっている所得金額等について備付け及び保存義務がある帳簿に関して生じたものとされているため、帳簿の備付け及び保存義務がある所得金額等(所得税については、不動産所得、事業所得又は山林所得、法人税・消費税については全ての所得金額等)の申告漏れが対象となる。なお、所得税の所得控除(保険料控除、扶養控除等)の適用誤りによる申告漏れについては、帳簿に関して生じたものではないため、対象外となるものと考えられる。
(注2)上記の帳簿については、「特定事項に関する調査について必要があると認められるもの」とされているため、例えば、上記②の帳簿については特定事項が記載されている現金出納帳や売掛帳等が、上記③の帳簿については特定事項が記載されている売上帳等が、それぞれ該当するものと考えられるが、具体的には、納税者の個々の記帳状況等を踏まえ、総合的に判断することになるものと考えられる。
(注3)上記⑥の帳簿については、所得税法・法人税法の上記①〜⑤の帳簿と異なり、総勘定元帳や仕訳帳といった帳簿の種類ではなく、課税仕入れの相手方の氏名又は名称や課税仕入れを行った年月日等の記載事項の内容により特定がされている。消費税について、事業者は、総勘定元帳や仕訳帳といった所得税又は法人税の申告の基礎となる帳簿に、消費税法上の各種の帳簿(上記⑥イ〜ホ)の記載事項を補完記載した上で保存している場合が多いことを踏まえ、上記⑥の帳簿の全体を位置付けているが、実際に本措置の対象となるのは、特定事項に関する調査について必要があると認められるものに限られることとなる。
(4)本措置の適用対象となる本税額
 上記(1)の修正申告等又は期限後申告等がその帳簿に記載すべき事項等に係る事実(申告漏れ)のみに基づくものである場合には、本措置の計算対象となる「過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額」は、その「修正申告等又は期限後申告等により納付すべき本税額」となる(通法65④、66④)。
 なお、「帳簿に記載すべき事項等に係るもの以外の事実」があるときは、「修正申告等又は期限後申告等により納付すべき本税額」(全体)から、その「帳簿に記載すべき事項等に係るもの以外の事実」のみに基づいて修正申告等又は期限後申告等があったものと仮定計算した場合に算出される本税額を控除した税額となる(通法65④、66④、通令27①⑥)。
(注1)上記(2)のとおり、本措置の適用の有無については、特定事項の金額の記載等により判断することとなるが、帳簿に記載すべき事項等に係る事実(申告漏れ)については、特定事項のみに限られるものではなく、上記(3)の帳簿に関連する全ての帳簿に記載すべき事項等に基因する申告漏れの所得全体が対象となる。例えば、売上げ(特定事項)の金額の記載等が、帳簿に記載等すべき売上げの金額の3分の2に満たないため、本措置の適用がある場合において、この売上げの過少計上の他、経費帳に経費の過大計上がある場合には、その経費の過大計上に基因する部分も含めて、本措置の適用対象となる本税額となり得ることとなる。
(注2)過少申告加算税又は無申告加算税に代えて重加算税を課す場合において、その過少申告加算税又は無申告加算税について加算すべき金額があるときは、その重加算税の額の計算の基礎となるべき税額に相当する金額をその過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額から控除して計算するものとした場合における過少申告加算税又は無申告加算税以外の部分に代え、重加算税を課するものとされている(通令27の3)。つまり、重加算税は、まず本措置により加重された過少申告加算税又は無申告加算税に代えて課されることとなる。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される(改正法附則20②)。したがって、例えば、通常、所得税については令和5年分から、法人税については10月決算法人の場合には令和5年10月決算期分から、それぞれ適用される場面が生じ得ることとなる。

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