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解説記事2020年02月17日 ニュース特集 デジタル課税「第1の柱」が大枠合意(2020年2月17日号・№823)

ニュース特集
クラウド、ソフト、家電、携帯、生活品、レストラン・ホテルなど対象に
デジタル課税「第1の柱」が大枠合意


 BEPSプロジェクト包摂的枠組は1月31日(金)、デジタル課税に関するステートメントを公表した。
 今回のステートメントにおいて最も注目されるのは、「第1の柱」の対象ビジネスがOECDが昨秋に示した事務局案よりも明確化されている点だ。事務局案段階では単に「消費者向けビジネス」とされていた対象ビジネスに、今回、「自動化されたデジタルサービス」が追加され、オンライン検索エンジン、ソーシャルメディアプラットフォーム、オンライン仲介プラットフォーム、デジタルコンテンツの配信、オンラインゲーム、クラウドコンピューティング役務、オンライン広告役務が例示された。また、「消費者向けビジネス」は、「一般に消費者に販売されるタイプの財又は役務からの収入を生み出すビジネス」をカバーすることとされ、商標登録された消費者向け製品に係るライセンスの権利から得られる収入を生み出すビジネス及びフランチャイズ・モデルのように消費者ブランド(及び商業上のノウハウ)のライセンスにより収入を生み出す事業も対象とする。具体的には、ソフトウェア、家電用品、携帯電話、衣服、生活品、化粧品、贅沢品、ブランド飲食料品、フランチャイズ・モデル(レストラン・ホテル)、自動車が対象として例示されている。一方、消費者に販売される最終製品に組み込まれる中間財及び部品を販売するビジネスは原則として対象外とされた。
 対象となるグループの規模としては、事務局案の通り750百万€閾値案が提示されたが、今回はそれに加え、対象ビジネスに係る収入金額を足し上げた金額が一定の閾値に満たない場合と、主として国内で事業活動を展開しており国外所得が僅少であるが故に市場国に配分する利益が一定のデミニマス金額に満たない場合という2つの適用免除案が提案されている(数値基準は明示されず)。
 また、米国によるセーフハーバー提案(第1の柱を企業の選択制とする案と解されている)には多くの国から懸念が示された。
 年末の最終報告書に向け、まずは7月上旬の次回包摂的枠組会合で重要な政策上の論点について合意を目指す。

本ステートメントの位置づけ

「第2の柱」は進捗報告のみ

 OECDが昨年5月31日に公表した「デジタル課税に関する包摂的枠組(Inclusive Framework=IF)の作業計画」では、2020年1月の会合までに課税の仕組みについて大枠合意する予定が示されていたが(本誌793号4頁~参照)、今回のステートメントでは、OECDが昨年秋に示した事務局案である「第1の柱(デジタル課税案のうち所得配分ルール及びネクサスルールの見直し)」(本誌808号4頁~参照)及び「第2の柱(ミニマム・タックス)」(本誌812号4頁~参照)の公開討議草案を踏まえ、IFとして第1の柱について制度の大枠を公表している。
 一方、第2の柱(ミニマムタックス)については進捗報告を行うにとどまっている。
 以下、第1の柱に関する合意事項を中心に見ていこう。

第1の柱 利益A

「クラウド」追加でアマゾンも対象に

 統合的アプローチは利益A、B、C(42頁参照)からなるが、特に利益Aについては事務局案の段階からいくつか注目すべき変更点がある。
 利益Aの対象ビジネスの範囲は、事務局案の段階では単に「消費者向けビジネス」とされていたが、今回、「自動化されたデジタルサービス」(automated digital services)が新たに追加された。具体的には、オンライン検索エンジン、ソーシャルメディアプラットフォーム、オンライン仲介プラットフォーム(オンライン市場の運営を含み、顧客が事業者か消費者かは問わない)、デジタルコンテンツの配信、オンラインゲーム、クラウドコンピューティング役務、オンライン広告役務が例示されている。
 アマゾンの連結ベースの売上高営業利益率は10%を割り込んでおり、グループ全体で判定する案だと同社が対象とならない可能性もあったが、クラウドが対象となることで同社も少なくとも部分的には捕捉されることになる。

再販事業者又は仲介事業者を経由しての販売も「消費者向けビジネス」に

 「消費者向けビジネス」は、「一般に消費者(すなわち、商業上又は職業上の目的ではなく個人利用のためにアイテムを購入する個人)に販売されるタイプの財又は役務からの収入を生み出すビジネス」をカバーするとされた。
 ここでいう「販売」には、消費者への財又は役務の直接販売のみならず、第三者たる再販事業者又は仲介事業者(マイナーな組み立てや梱包といったルーティン業務を行うもの)を経由しての販売も含まれる。また、商標登録された消費者向け製品に係るライセンスの権利から得られる収入を生み出すビジネス及びフランチャイズ・モデルのように消費者ブランド(及び商業上のノウハウ)のライセンスにより収入を生み出す事業も対象となる。具体的には、パーソナルコンピューティング製品(例えばソフトウェア、家電用品、携帯電話)、衣服、生活品、化粧品、贅沢品、ブランド飲食料品、フランチャイズ・モデル(レストラン・ホテル)、自動車が消費者向けビジネスとして例示された。

中間財及び部品を販売するビジネスは原則対象外

 一方、消費者に販売される最終製品に組み込まれる中間財及び部品を販売するビジネスは対象外とされた。
 消費者が一般的に個人利用のために入手することのできるブランド化された中間財及び部品(例えば自動車のタイヤ)はその例外となる可能性があるとされたものの、特に中間財が基本的に除かれたことは、関係業界にとっては朗報であろう。
 また、採掘事業、金融セクター(保険業を含む)の大部分、租税条約で課税権が明確に居住地国に割り振られている国際運輸に係る船舶及び航空は対象外となる。

医療用医薬品については今回特段の記載なし

 以上のとおり、今回公表されたステートメントでは、事務局案の段階に比べ、対象ビジネスについて相当程度の明確化がなされたといえる。
 ただし、医療用医薬品については今回特段の記載がない点、また、グループが複数の事業を行う場合、異なる事業ラインにセグメント化し、利益Aを別々に適用する可能性が示されている点は気になるところだ。
 これらの点について、企業の間では早くも警戒感が広がっている。

連結総収入金額に2つのカーブ・アウト案が追加も数値基準は明記なし

 対象となるグループの規模としては、事務局案の通り、CbCRと同じ750百万€(連結総収入金額約900億円)の閾値案が示されたが、今回はそれに加え、2つのカーブ・アウト(適用免除)案が提案された。
 1つは、対象ビジネスに係る収入金額を足し上げた金額が一定の閾値に満たない場合、もう1つは、大規模グループではあるものの主として国内で事業活動を展開しており国外所得が僅少であるが故に、市場国に配分する利益が一定のデミニマス金額に満たない場合である。ただし、いずれも具体的な数値基準は示されていない。
 いずれにせよ、対象を絞り込む方向で議論が進んでいるとは言えそうだ。

閾値以上の市場国でネクサスを認定、他の税制等への波及は遮断

 ネクサスについては、対象ビジネスに係る収入金額がある市場国で一定の閾値以上となる場合、その市場国で認定されることになる(複数年での判定も検討)。今後、各国の市場規模なども考慮した上で、絶対額により最小値が示される。
 自動化されたデジタルサービスについては収入金額がネクサス認定にあたり唯一の「テスト」となるが、有形の財の販売等の他の対象ビジネスについては、追加の要素(例えば市場国において物理的な存在を有する場合、又は市場国をターゲットにした広告を行っている場合等の要素)を検討する。また、収入金額がどの法域で発生しているかを判定するソース・ルールの検討も行うこととなった(製品が仲介者を経由して最終消費者に届けられた場合の取扱い等を含む)。
 新しいネクサスルールは独立のルールとして定められ、既存の他の税制及び税以外のルールへの波及効果は遮断される。
 また、昨年11月のパリ・OECD公聴会での各国経済界からの主張もあり、簡素化された報告・登録メカニズム(ワンストップショップなど)やCbCRを参考にした親会社所在地国のみにおける申告等も検討されることとなった。

対象外ビジネスの収入金額等次第でセグメンテーションも

 利益Aは連結財務諸表を基礎に計算した利益のうち通常利益を超える部分を残余利益とし、その一定割合を収入金額に応じ各市場国に按分するところ、利益の意義については税前利益が好ましいとされた(課税所得に近いとの理由による)。営業利益の方が指標として適当とする多くの日本企業の考え方とは異なる方向となっている。ただし、税前利益をそのまま使うのではなく、一定の調整を加える可能性も今後の検討課題とされている。益金不算入とされる受取配当をどのように扱うのかといった議論も出てこよう。なお、利益Aは利益のみならず損失にも適用するとされた。損失(利益A導入前の損失及び導入後の損失の双方)の繰越ルールも今後、検討課題となる。
 企業が注目しているセグメンテーションの要否については、対象外ビジネスに係る収入金額が重要な場合には、対象ビジネスのみを捕捉すべく、セグメント会計が求められるかもしれないとされた。また、納税者の利益率が事業ライン又は地域によって有意に異なる場合にも、複数の事業ライン又は地域間でセグメントが必要になるかもしれないとされている(本ステートメントでは、地域ごとのセグメンテーションについては、包摂的枠組参加国内で大きな見解の隔たりがあるとされている)。
 通常利益率や残余利益のうち市場国への配分割合は提示されておらず、経済分析などを踏まえ、今後決定する。なお、今回、企業のデジタル化の度合いによって市場国への配分割合を変えること(いわゆる“digital differentiation”)が新たに検討課題とされた。電子経済の「囲い込み(リング・フェンス)」論の再燃とも言える提案であり、関連するIT業界からの反発も予想される。
 みなし残余利益のうち市場国に配分されるものとしてプールされた金額は、収入金額(売上)に基づき各国に按分する。この点は事務局案の段階から特段、変更されておらず、収入金額に係るソース・ルールを定める必要があることはネクサス認定の場合と同様とされている。
 利益Aの納税義務の有無の判定方法をフローチャートで示せば下図の通りとなる。

第1の柱 利益B

利益Bは「オプションでもセーフハーバーでもない」ことを明記

 利益Bはベースラインのマーケティング・販売活動を行う市場国の販社等に一定の利益の最低保証を行うものである。これにより移転価格税制の簡素化と税の安定性の向上が期待されるという。利益Bについてはかねてから「簡素化し過ぎ(企業の実態とマッチしていない)」「利益Aに比べ重要性が落ちる」などの批判的意見があったところだが、今回のステートメントでは「固定リターンはALPに基づくものでありオプションでもセーフハーバーでもない」ことが明記され、第1の柱の構成要素として維持されることとなった。
 「ベースライン」の意義については、販社の機能がルーティンなレベルに留まること、無形資産の所有がないこと、リスクがない又は限定的であることなどの要素を掲げた上で、今後、定性的・定量的にポジティブ方式でその内容を(対象外の活動・事業体のリストとともに)具体化するとした。固定リターンを何%にするかは現段階では決まっていない。産業別・地域別にどの程度異なる取り扱いにするかといった点も含め、今後検討する。
 商社業界からは、ベリー比を適用する子会社は利益Bから除外とすべきとの意見があったところ。今回、それに対する明確な言及はなかったが、「非常に低いシステム利益の事業体をどう扱うか」が今後の課題として掲げられている。

第1の柱 二重課税問題

二重課税の排除問題への具体策示されず

 利益Aが決定されたとして、それを市場国に実際に配分するのがグループ内のどの事業体となるのか、その場合、二重課税の救済方法はどうするのか(税額控除、所得免除)という二重課税の排除問題については、事務局案の段階と同様、問題意識が提示されているものの、具体的な方向性を示すまでには至っていない。
 また、利益A、B、Cについては、利益の二重カウント(及び結果としての二重課税)のリスクが指摘されていたところ、今回、利益AとBについては二重カウントのリスクはあったとしても重要ではないとの見解が示された(利益Aはグループの残余利益を扱い、利益Bはベースラインの販売・マーケティング活動を扱うものであり、別々のものであるため)。一方、利益Aと利益Cについては二重カウントの可能性があるとされ、今後、さらに検討を進めることとされた。

第1の柱 税の安定性

利益Aについては拘束力のある紛争の予防・解決を開発

 今回のステートメントでは、「税の安定性」にも言及している。
 利益Aについては、紛争の予防・解決において拘束力のある方策を開発するとされた。紛争の予防については、関係各国の「代表者からなるパネル」(representative panels)によるレビューが今回新たに提案され、今後、詳細を検討することとされている。紛争の解決のメカニズムの具体策については触れず、今後コンセンサスが必要であるとした。
 利益Bについては、ベースラインの活動等について明確な定義を行うこと自体が税の安定性に資するとされた。
 利益Cの関連では、義務的な紛争防止・解決手段の採否や適用範囲等について引き続き検討するとされた。その際、仲裁の採用に国内での障害があるメンバーがあることを踏まえ、仲裁のような問題を生じさせず、かつ、IF加盟国がすべて採用できるような方策を検討するとされた。

第1の柱 残された課題

条約がなくてもカバーできる多国間フレームワーク策定を検討

 上述した利益Aの対象等からも明らかな通り、利益Aについては関係国が膨大になる。これを踏まえ、ステートメントでは、既存の条約がない場合もカバーできる(BEPS防止措置実施条約とは異なる)新たな多国間フレームワークの策定を検討することを明らかにしている。その際、関係国による一貫性のある同時期の実施を目指しつつ、段階的な施行や経過措置の導入も検討する。また、米国の提案したセーフハーバールールについても制度上の課題を検討することとしている。
 以上を踏まえ、第1の柱に関する昨年5月の作業計画が改定され、以下の11の項目が「残された課題」として整理されている。
 なお、これらの検討の過程で、ビジネス等の関係者からのインプットが引き続き必要である旨の記述があるが、特段、追加の市中協議や公聴会等の情報は記載されていない。

第1の柱 残された課題
(1)利益Aの対象
(2)利益Aに関する新たなネクサスルール及び関連する条約上の考慮事項
(3)課税ベースの決定
(4)利益Aの量
(5)利益Aにおける収入金額のソース・ルール
(6)利益Aにおける二重課税の排除
(7)利益A、B、Cの相互作用及び二重カウントの潜在的リスク
(8)利益Bの特徴
(9)利益Aにおける紛争の予防・解決
(10)利益B、Cにおける紛争の予防・解決
(11)実施及び税務行政

第2の柱

軽課税支払ルール等を含む公開討議草案が春先に公表の観測

 第2の柱については、有意な新情報はない。
 いわゆるブレンディングの方法についても、特定の方向性は示されていない。注目の最低税率の水準についても、決めていないのではなく、まだ議論されていない(has not yet been discussed)とされた。
 所得合算ルール以外の要素(軽課税支払ルール等)も含む公開討議草案が春先にも公表されるとの観測がある。そこでの議論を踏まえ、具体化していくということだろう。

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