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解説記事2020年08月10日 税制改正解説 令和2年度における納税環境整備及び新型コロナウイルス感染症緊急経済対策に関する改正について(2020年8月10日号・№845)

税制改正解説
令和2年度における納税環境整備及び新型コロナウイルス感染症緊急経済対策に関する改正について
 上田岳徳

はじめに

 令和2年度税制改正では、持続的な経済成長の実現、経済社会の構造変化を踏まえた対応等の観点から、個人所得課税、資産課税、法人課税、消費課税、国際課税、納税環境整備等について所要の措置が講じられた。
 このうち納税環境整備については、企業等の生産性向上を促すための電子帳簿等保存制度の見直しを行うとともに、国外取引等に係る適正な課税を確保するための方策の整備等の措置が講じられている。
 以下では、これらの法令改正の主な内容について説明する。

一 企業等の生産性向上を促すための電子帳簿等保存制度の見直し

1 改正前の制度の概要
 所得税法や法人税法では、取引相手から受け取った請求書や領収書などの書類(以下「請求書等」という。)は、原則7年間保存しなければならないこととされている(所法148、所規63、法法126、法規59等)。請求書等の授受について、書面で行うか電子的なデータで行うかは納税者の任意に委ねられているが、電子的に受領した請求書等のデータを保存する場合には、電子帳簿保存法に基づき、所定の方法によることが求められている。
 具体的には、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、書面又はマイクロフィルムに出力して保存する場合を除き、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を、その取引情報の受領が書面により行われたとした場合又はその取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、その書面を保存すべきこととなる場所に、その書面を保存すべきこととなる期間、(1)真実性の確保のための措置を行い(旧電子帳簿保存法規則8①一)、(2)可視性の確保(電子帳簿保存法規則3①四、8①)、(3)電子計算機処理システムの概要書等の備付け(電子帳簿保存法規則3①三イ、3⑤七、8①)及び(4)検索機能の確保(電子帳簿保存法規則3①五、3⑤七、8①)を行って保存しなければならないこととされている(電子帳簿保存法10、旧電子帳簿保存法規則8①)。
(注1)上記の「保存義務者」とは、国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類(国税に関する法律の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿(国税関係帳簿)又は国税に関する法律の規定により保存をしなければならないこととされている書類(国税関係書類)をいう。)の保存をしなければならないこととされている者をいう(電子帳簿保存法2四)。
(注2)上記の「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう(電子帳簿保存法2六)。
 上記(1)から(4)までの要件のうち、(1)の真実性の確保のための措置については、具体的には、次に掲げるいずれかの措置を行うことをいう。
① 取引情報の授受後遅滞なく、その電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、その電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと(旧電子帳簿保存法規則8①一)。
② その電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿った運用を行い、その電磁的記録の保存に併せてその規程の備付けを行うこと(旧電子帳簿保存法規則8①二)。

2 改正の内容
 近年、ICTの進展に伴い、多様な手段によりデータの適正性を確保することが可能となっている。また、例えば、従業員によるスマートフォンのアプリを利用したキャッシュレス決済や、アプリ提供業者から直接提供されるデータを活用した経費精算などの新しいシステムも広まってきている。
 そのような中、政府税制調査会の「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」(令和元年9月26日)では、「ICTの活用により、企業等の業務プロセスの簡素化・効率化や誤りの未然防止等を図る観点から、企業等の規模や業種に応じた経理・税務手続の実態を踏まえた上で、データの適正性の確保にも配慮しつつ、電子帳簿等保存制度の見直しを進めるべきである。」との指摘がなされた。
 電子的な請求書等や各種決済データを経理に活用すれば、取引先あるいは社内他部署との間において書面の授受を行う必要はなくなる。また、それらのデータが電子帳簿と連携すれば、記帳の正確性を確保する観点からも有益である。
 今回の改正においては、こうした利点を踏まえ、請求書等の電子化を推進し、バックオフィスの効率化による企業等の生産性向上を図る観点から、電子取引を行った場合の電磁的記録の保存要件を緩和(選択肢の追加)する見直しが行われた。
 具体的には、上記1に記載した要件のうち(1)の真実性の確保の要件を満たす措置の範囲に、次の措置が追加された。
(1)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、その取引情報の授受を行うこと(電子帳簿保存法規則8①一)。これにより、タイムスタンプの付与による真実性の確保については、従前の受領者側によるタイムスタンプの付与(上記1①参照)か、今般の発行者側によるタイムスタンプの付与のいずれかの措置を行うことにより、その要件を満たすこととなる。
(注)上記のタイムスタンプは、一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るもので、次の要件を満たすものに限られている(電子帳簿保存法規則3⑤二ロ)。
 ① その記録事項が変更されていないことについて、国税関係書類の保存期間を通じ、その業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
 ② 課税期間中の任意の期間を指定し、その期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。
(2)次の要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して、電子取引の取引情報の授受及びその電磁的記録の保存を行うこと(電子帳簿保存法規則8①三)。
 ① その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
 (注)上記①の措置については、例えば、電磁的記録の記録事項を直接に訂正又は削除を行った場合には、訂正・削除前の記録事項及び訂正・削除の内容について、その電磁的記録又は別の電磁的記録(訂正・削除前の履歴ファイル)に自動的に記録されるシステム等が該当することとなる(電子帳簿保存法取扱通達10−2前段)。
 ② その電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
 (注)上記②の措置については、例えば、電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除について、物理的にできない仕様とされているシステム等が該当することとなる(電子帳簿保存法取扱通達10−2後段)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和2年10月1日から施行され(改正電子帳簿保存法規則附則①)、同日以後に行う電磁的記録の保存について適用される。

二 国外取引等に係る適正な課税を確保するための方策の整備

Ⅰ 改正の背景等

 近年、経済社会の国際化が進む中、国外取引等について適正・公平な課税を実現することは重要となっている。
 適正・公平な課税を実現するためには、税務調査などにおいて、納税者等から事実認定に必要となる資料を収集することが必要不可欠であるが、我が国の税務調査は、納税者の理解と協力を得て、その承諾の下に行うことが基本とされており、また、訴訟においては、課税処分の立証責任は一般的には課税庁側にあることとされているため、納税者が自己に不利益な情報を故意に秘匿することにより税負担を免れることがあれば、誠実に納税を行っている納税者からの税制への信頼を損ないかねない。
 また、国外取引や国外財産については、執行管轄権の制約上、税務当局が相手国に赴いて直接事実関係を確認することは困難であるのが実情であるため、租税条約等に基づく税務当局間の情報交換制度が積極的に活用されているが、巧妙・悪質な場合には、取引内容や資金の流れの全貌を解明するため、何度も情報交換を行う必要があるなど、相当な時間を要することがある。
 そのような中、政府税制調査会の「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」(令和元年9月26日)では、「国外において行われた取引等に係る情報については、執行管轄権の制約上、税務当局が直接現地に赴いて事実関係を確認することが困難であることから、納税者に一定の説明責任を求めるなど、適正な情報開示を促すための仕組み等について検討する必要」があり、「違法・不当な行為を抑止し、その的確な是正を図る観点から、加算税や延滞税、更正の期間制限といった基本的な枠組みについても、総合的に検討を行っていく必要がある」との指摘がなされていた。
 今回の改正においては、こうした政府税制調査会の指摘を踏まえ、納税者からの情報開示を促す観点から、国外財産調書制度等の見直し及び国外取引等の課税に係る更正決定等の期間制限の見直しが行われた。
 以下では、これらの見直しの内容について説明する。

Ⅱ 国外財産調書制度等の見直し

1 改正前の制度の概要
(1)国外財産調書制度

① 国外財産調書の提出
  居住者(非永住者を除く。以下同じ。)は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その者の氏名、住所又は居所及び個人番号並びにその国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(以下「国外財産調書」という。)を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(旧国外送金等調書法5①)。
  ただし、提出期限までの間(その年の翌年の1月1日から3月15日まで)に国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国をしたときは、国外財産調書の提出を要しないこととされている(旧国外送金等調書法5①ただし書)。
② 過少申告加算税等の特例
イ 国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置
  国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告(以下「国外財産に係る事実」という。)による修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定(以下「修正申告等」という。)があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限内に提出された国外財産調書にその修正申告等の基因となる国外財産についての記載があるときは、その修正申告等につき課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、その「国外財産に係る事実」に基づく本税額(その過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき本税額)の5%に相当する金額を控除した金額とすることとされている(旧国外送金等調書法6①)。
ロ 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置
  国外財産に係る所得税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告による修正申告等(死亡した者に係るものを除く。)があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限内に国外財産調書の提出がないとき、又は提出された国外財産調書にその修正申告等の基因となる国外財産についての記載がないとき(重要な事項の記載が不十分であると認められるときを含む。)は、その修正申告等につき課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、その「国外財産に係る事実」に基づく本税額(その過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき本税額)の5%に相当する金額を加算した金額とすることとされている(旧国外送金等調書法6②)。
ハ この特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書
  上記の国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置又は国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用に当たり、その提出の有無や国外財産の記載の有無を判定する国外財産調書は、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める国外財産調書とされている(旧国外送金等調書法6③)。
(イ)国外財産に係る所得税に関する修正申告等である場合……その修正申告等に係る年分の国外財産調書(その年の中途においてその修正申告等の基因となる国外財産を譲渡等により有しないこととなった場合には、その修正申告等に係る年分の前年分の国外財産調書)
(ロ)国外財産に対する相続税に関する修正申告等である場合……次に掲げる国外財産調書のいずれか
 a その相続税に係る被相続人(遺贈(死因贈与を含む。以下同じ。)をした者を含む。以下同じ。)の相続の開始の日の属する年(以下「相続開始年」という。)の前年分の国外財産調書(被相続人がその提出期限までに相続開始年の前年分の国外財産調書を提出しないで死亡した場合には、被相続人の相続開始年の前々年分の国外財産調書)
 b その相続税に係る相続人(遺贈により財産を取得した者を含む。以下同じ。)の相続開始年の年分の国外財産調書
(2)財産債務調書制度
① 財産債務調書の提出
  所得税の申告書を提出すべき者は、その申告書に記載すべきその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する場合には、その者の氏名、住所又は居所及び個人番号(個人番号を有しない者にあっては、氏名及び住所又は居所)並びにその者が同日において有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した調書(以下「財産債務調書」という。)を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(旧国外送金等調書法6の2①)。
  ただし、提出期限までの間(その年の翌年の1月1日から3月15日まで)に、財産債務調書を提出しないで死亡したときは、財産債務調書の提出を要しないこととされている(旧国外送金等調書法6の2①ただし書)。
② 過少申告加算税等の特例
イ 財産債務調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置
  財産債務に係る所得税又は財産に対する相続税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告(以下「財産債務に係る事実」という。)による修正申告等があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限内に提出された財産債務調書に、その修正申告等の基因となる財産又は債務についての記載があるときは、その修正申告等につき課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、その財産債務に係る事実に基づく本税額(その過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき本税額)の5%に相当する金額を控除した金額とすることとされている(旧国外送金等調書法6の3①、6①)。
ロ 財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置
  財産債務に係る所得税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告による修正申告等(死亡した者に係るものを除く。)があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限内に財産債務調書の提出がないとき、又は提出された財産債務調書にその修正申告等の基因となる財産若しくは債務についての記載がないとき(重要な事項の記載が不十分であると認められるときを含む。)は、その修正申告等につき課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、その財産債務に係る事実に基づく本税額(その過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき本税額)の5%に相当する金額を加算した金額とすることとされている(旧国外送金等調書法6の3②、6②)。
ハ この特例の適用の判定の基礎となる財産債務調書
  上記の財産債務調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置又は財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用に当たり、その提出の有無や財産又は債務の記載の有無を判定する財産債務調書は、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める財産債務調書とされている(旧国外送金等調書法6の3③、6③)。
(イ)財産債務に係る所得税に関する修正申告等である場合……その修正申告等に係る年分の財産債務調書(その年の中途においてその修正申告等の基因となる財産又は債務を譲渡等により有しないこととなった場合には、その修正申告等に係る年分の前年分の財産債務調書)
(ロ)財産に対する相続税に関する修正申告等である場合……次に掲げる財産債務調書のいずれか
 a その相続税に係る被相続人の相続開始年の前年分の財産債務調書(被相続人がその提出期限までに相続開始年の前年分の財産債務調書を提出しないで死亡した場合には、被相続人の相続開始年の前々年分の財産債務調書)
 b その相続税に係る相続人の相続開始年の年分の財産債務調書

2 改正の内容
(1)相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等の記載の柔軟化

① 国外財産調書の記載の柔軟化
  相続開始年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する相続人は、相続開始年の年分の国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産(以下「相続国外財産」という。)を除外して、国外財産調書を提出することができることとされた(国外送金等調書法5②)。
  この場合において、相続開始年の年分の国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額から相続開始年に取得した相続国外財産の価額の合計額を除外して判定することとされた(国外送金等調書法5②後段)。
② 財産債務調書の記載の柔軟化
  財産債務調書についても、国外財産調書と同様の見直しが行われ、相続開始年の年分の所得税の申告書に記載すべき総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、相続開始年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する相続人は、相続開始年の年分の財産債務調書については、その相続又は遺贈により取得した財産又は債務(以下「相続財産債務」という。)を除外して、財産債務調書を提出することができることとされた(国外送金等調書法6の2②)。
  この場合において、相続開始年の年分の財産債務調書の提出義務については、財産の価額の合計額から相続開始年に相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を除外して判定することとされた(国外送金等調書法6の2②後段)。
(2)国外財産調書等の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し
① 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し
イ 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象に、国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合が追加された(国外送金等調書法6③)。ただし、その修正申告等が相続税に関するものである場合には、次に掲げる者については、国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置は、適用しないこととされている(国外送金等調書法6⑤)。
(イ)その相続税に係る相続人で相続開始年の翌年分の国外財産調書の提出義務がないもの
(ロ)その相続税に係る相続人で相続開始年の翌年の12月31日においてその修正申告等の基因となる相続国外財産を有しないもの
(注)上記の国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の加重措置は、下記(3)①ロにあるとおり、被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書、相続人の相続開始年の年分の国外財産調書及び相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書の全ての提出がない悪質なケースを念頭に置いて講じられたものである。他方で、例えば、提出義務がある被相続人が相続開始年の前年分の国外財産調書を提出せず、相続人が上記(1)①の措置により、相続国外財産を除外することにより相続開始年の年分の国外財産調書の提出を省略し、その後、相続開始年の翌年の12月31日までにその相続国外財産の譲渡等をしたことにより、相続人が相続開始年の翌年分の国外財産調書の提出義務がないといったケースでは、被相続人又は相続人に提出義務がある国外財産調書は被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書のみとなり、被相続人の国外財産調書の提出がないことのみに基因して国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置が適用されてしまうのは酷であるため、相続開始年の翌年分の国外財産調書の提出義務がない相続人については、国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置は適用しないこととされている。
  また、相続税は、課税遺産総額の各法定相続人の法定相続分相当額に対して税率を適用して相続税の総額が計算され、その相続税の総額について実際の相続割合で按分して各相続人の税額が計算されるため、ある相続人に相続国外財産の申告漏れがあった場合には、その申告漏れの相続国外財産を有しない相続人についても申告漏れの税額(増差税額)が発生し、過少申告加算税が課されることになる。他方で、申告漏れの相続国外財産を有しない相続人は、その申告漏れの相続国外財産を国外財産調書に記載して提出することはできないため、相続開始年の翌年の12月31日において申告漏れの相続国外財産を有しない相続人については、国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置は適用しないこととされている。
ロ 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象から、次に掲げる場合が除外された(国外送金等調書法6③)。
(イ)その年の12月31日において相続国外財産を有する者(その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産(相続国外財産を除く。)を有する者を除く。)の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合
(ロ)その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく国外財産調書に記載すべきその修正申告等の基因となる相続国外財産についての記載がない場合(重要な事項の記載が不十分であると認められる場合を含む。)
(注)上記の「責めに帰すべき事由がない」場合には、例えば、相続国外財産を有する者又はその相続国外財産に関する資料を有する者が、災害や病気による入院等により、国外財産調書の記載やその提出が困難であると認められる場合のほか、相続財産の内容や管理状況など客観的な事実に基づき、相続人において相続財産の存在を知ることが困難と認められる場合等がこれに該当するものと考えられるが、詳細については、今後、通達等で定められる予定である。
② 財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し
  財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置についても、上記①ロと同様の見直しが行われ、その適用対象から、次に掲げる場合が除外された(国外送金等調書法6の3②、6③)。
イ その年の12月31日において相続財産債務を有する者(その価額の合計額が3億円以上の財産(相続又は遺贈により取得した財産を除く。)又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(相続又は遺贈により取得した財産を除く。)を有する者を除く。)の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に財産債務調書の提出がない場合
ロ その年の12月31日において相続財産債務を有する者の責めに帰すべき事由がなく財産債務調書に記載すべきその修正申告等の基因となる相続財産債務についての記載がない場合(重要な事項の記載が不十分であると認められる場合を含む。)
(3)過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し
① 国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の適用の判定の基礎となる国外財産調書の見直し
  国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の適用の判定の基礎となる国外財産調書は、次に掲げる措置の区分に応じそれぞれ次に定める国外財産調書とされた(国外送金等調書法6②二、④二)。
イ 過少申告加算税等の軽減措置……次に掲げる国外財産調書のいずれか
(イ)その相続税に係る被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書(被相続人がその提出期限までに相続開始年の前年分の国外財産調書を提出しないで死亡した場合には、被相続人の相続開始年の前々年分の国外財産調書)
(ロ)その相続税に係る相続人の相続開始年の年分の国外財産調書
(ハ)その相続税に係る相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書
ロ 過少申告加算税等の加重措置……次に掲げる国外財産調書の全て
(イ)その相続税に係る被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書(被相続人がその提出期限までに相続開始年の前年分の国外財産調書を提出しないで死亡した場合には、被相続人の相続開始年の前々年分の国外財産調書)
(ロ)その相続税に係る相続人の相続開始年の年分の国外財産調書
(ハ)その相続税に係る相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書
② 相続開始年に取得した相続国外財産に係る所得税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の加重措置の不適用
  上記(1)①の措置により、相続開始年の年分の国外財産調書について、除外して提出することができる相続国外財産(相続開始年に取得したものに限る。)に係る所得税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の加重措置は、相続開始年の年分については、適用しないこととされた(国外送金等調書法6④一)。
③ 財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の軽減措置の適用の判定の基礎となる財産債務調書の見直し
  財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の軽減措置の適用の判定の基礎となる財産債務調書について、上記①イと同様の見直しが行われ、次に掲げる財産債務調書のいずれかとされた(国外送金等調書法6の3①、6②二)。
イ その相続税に係る被相続人の相続開始年の前年分の財産債務調書(被相続人がその提出期限までに相続開始年の前年分の財産債務調書を提出しないで死亡した場合には、被相続人の相続開始年の前々年分の財産債務調書)
ロ その相続税に係る相続人の相続開始年の年分の財産債務調書
ハ その相続税に係る相続人の相続開始年の翌年分の財産債務調書
④ 相続開始年に取得した相続財産債務に係る所得税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の加重措置の不適用
  上記(1)②の措置により、相続開始年の年分の財産債務調書について、除外して提出することができる相続財産債務(相続開始年に取得したものに限る。)に係る所得税に関し修正申告があった場合の過少申告加算税等の加重措置は、相続開始年の年分については、適用しないこととされた(国外送金等調書法6の3②、6④一)。
(4)国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提出がない場合の過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の特例の創設
① 特例の内容
  国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税に関し修正申告等があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある居住者が、その修正申告等があった日前に、国税庁、国税局又は税務署の当該職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類(その電磁的記録を含む。)又はその写しの提示又は提出を求められた場合において、その提示又は提出を求められた日から60日を超えない範囲内でその提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出をしなかったとき(その居住者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)における国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置又は国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用については、次のとおりとされた(国外送金等調書法6⑦)。
イ 国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置は、適用しないこととされた(国外送金等調書法6⑦一)。
ロ 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置については、その加算する割合は10%(この特例の適用前の加算割合:5%)とすることとされた。ただし、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合には、その加算する割合は5%(この特例の適用前の加算割合:なし)とすることとされている(国外送金等調書法6⑦二)。
(イ)提出期限内に国外財産調書の提出がないことについて、その提出期限の属する年の前年の12月31日において相続国外財産を有する者(その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産(相続国外財産を除く。)を有する者を除く。)の責めに帰すべき事由がない場合
(ロ)国外財産調書に記載すべきその修正申告等の基因となる相続国外財産についての記載がない場合(重要な事項の記載が不十分であると認められる場合を含むものとし、その相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がない場合に限る。)
(注)上記①本文の「その居住者の責めに帰すべき事由がない場合」には、例えば、資料の提示又は提出を求められた後に、その居住者又はその国外財産に関する資料を有する者が、災害や病気による入院等により、指定された期限までにその提示又は提出をすることができない場合のほか、資料の収集に相当な困難を伴うことが判明した場合等がこれに該当するものと考えられるが、詳細については、今後、通達等で定められる予定である。
② 国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類
  上記①の「国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類」は、次に掲げる国外財産の区分に応じそれぞれ次に定める書類(上記①の居住者が通常保存し、又は取得することができると認められるものに限る。)とされている(国外送金等調書規13の2)。
イ 土地又は建物……その土地又は建物の取得、貸付け(他人にその土地又は建物を使用させることを含む。)又は譲渡に関する事項が記載された書類
ロ 預貯金……その預貯金の預入、利子(これに類するものを含む。)の受領、払出し又は譲渡に関する事項が記載された書類
ハ 有価証券……その有価証券の取得若しくは譲渡又はその有価証券に係る利子等、配当等その他これらに類するものの受領に関する事項が記載された書類
ニ 匿名組合契約の出資の持分……その匿名組合契約の出資の持分の取得若しくは譲渡又はその匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配に関する事項が記載された書類
ホ 未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引に係る権利……その未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引に関する事項が記載された書類
ヘ 貸付金……金銭の貸付け又はその貸付金の利子の受領若しくは譲渡に関する事項が記載された書類
ト 上記イからヘまでの国外財産以外の国外財産……その国外財産の取得、運用又は処分に関する事項が記載された書類
(5)国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例の適用がある場合の過少申告加算税等の額の計算の基礎となるべき本税額の計算方法の見直し
 過少申告加算税等の特例の見直しに伴い、国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例の適用がある場合の過少申告加算税等の額の計算の基礎となるべき本税額の計算方法について、所要の見直しが行われた。
 
3 適用関係
(1)
上記2(1)①の改正は、令和2年分以後の国外財産調書について適用される(改正法附則133①)。
(2)上記2(1)②の改正は、令和2年分以後の財産債務調書について適用される(改正法附則133⑤)。
(3)上記2(2)①並びに(3)①(イに係る部分を除く。)及び②の改正は、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する国外財産に係る相続税について適用し、令和元年分以前の所得税又は同日前に相続若しくは遺贈により取得した国外財産に係る相続税については従前どおりとされている(改正法附則133③)。
(4)上記2(2)②及び(3)④の改正は、令和2年分以後の所得税について適用し、令和元年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則133⑦)。
(5)上記2(3)①(イに係る部分に限る。)の改正は、令和2年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する国外財産に係る相続税について適用し、同日前に相続又は遺贈により取得した国外財産に係る相続税については従前どおりとされている(改正法附則133②)。
(6)上記2(3)③の改正は、令和2年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用し、同日前に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については従前どおりとされている(改正法附則133⑥)。
(7)上記2(4)の改正は、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する国外財産に係る相続税について適用される(改正法附則133④)。
(8)上記2(5)の改正は、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税について適用し、令和元年分以前の所得税又は同日前に相続若しくは遺贈により取得した財産に係る相続税については従前どおりとされている(改正国外送金等調書令附則6、7②、8)。

Ⅲ 国外取引等の課税に係る更正決定等の期間制限の見直し

1 改正前の制度の概要
(1)更正決定等の期間制限

 通常の更正決定等の期間制限(除斥期間)は、法定申告期限から5年とされている(通法70①)。ただし、特定の場合(脱税があった場合等)における更正決定等については、それぞれ個別に除斥期間(法制申告期限から7年等)が設けられている(旧通法70②〜④)。
(2)更正決定等の期間制限の特例
 上記(1)の期間制限が満了した後においても、特殊な場合(争訟についての裁決等による原処分の異動があった場合等)の更正決定等については、一定の期間内(裁決等があった日から6月間等)は行うことができることとする特例が設けられている(旧通法71①)。

2 改正の内容
 国外取引等について、上記1(1)の更正決定等の期間制限が満了した後においても、次の(1)の事由が生じた場合において、次の(2)の事由に基づいてする更正決定等については、租税条約等の相手国等に対して情報提供要請に係る書面が発せられた日から3年間は、行うことができること(上記1(2)の特例の一類型として追加)とされた(通法71①四)。
(1)国税庁、国税局又は税務署の当該職員が納税者にその国税に係る国外取引又は国外財産に関する書類(その電磁的記録を含む。)又はその写しの提示又は提出を求めた場合において、その提示又は提出を求めた日から60日を超えない範囲内でその準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出がなかったこと(その納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)。
(2)国税庁長官(その委任を受けた者を含む。)が租税条約等の規定に基づき、その租税条約等の相手国等に上記(1)の国外取引又は国外財産に関する情報の提供を要請した場合(その要請が上記1(1)により更正決定等をすることができないこととなる日の6月前の日以後にされた場合を除き、その要請をした旨の上記(1)の納税者への通知がその要請をした日から3月以内にされた場合に限る。)において、その国税に係る課税標準等又は税額等に関し、その相手国等から提供があった情報に照らし非違があると認められること。
(注1)上記の「国外取引」とは、非居住者若しくは外国法人との間で行う資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引又は非居住者若しくは外国法人が提供する場を利用して行われる資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引をいう(通法71①四イ)。
(注2)上記(1)の「納税者の責めに帰すべき事由がない場合」には、例えば、資料の提示又は提出が求められた後に、その納税者又は国外取引等に関する資料を有する者が、災害や病気による入院等により、指定された期限までにその提示又は提出をすることができない場合のほか、資料の収集に相当な困難を伴うことが判明した場合等がこれに該当するものと考えられるが、詳細については、今後、通達等で定められる予定である。
 また、上記の更正決定等の期間制限の特例が設けられたことに伴い、この特例の適用がある場合における更正決定等により納付すべき国税の消滅時効の起算点について、その更正決定等があった日とすることとされている(通法72①)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される(改正法附則52②③)。

三 利子税及び還付加算金等の割合の引下げ

1 改正前の制度の概要
(1)利子税の概要

 利子税は、①所得税法・相続税法の規定による延納等や、②法人税法の規定による確定申告期限の延長の特例等が適用された場合に課されるものであり(通法64①)、期限内に納付した者との間の負担の公平を確保する等の観点から設けられているものである。この利子税については、納付遅滞の状態となっていない場合に課されるものであり、民事における約定利息に相当するものとされている。
 この利子税の割合については、原則として各税法に定められているところであるが、租税特別措置法において、利子税の負担軽減を図るための特例が設けられている。具体的には、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合(相続税法の規定による延納に係る利子税については、各分納期間の開始の日の属する年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合)には、その年中(相続税法の規定による延納に係る利子税については、各分納期間)においては、その特例基準割合(相続税及び贈与税に係る利子税については、これらの利子税の割合にその特例基準割合が年7.3%に占める割合を乗じて計算した割合)とすることとされている(旧措法93)。
(注)上記の「特例基準割合」については、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における「国内銀行の貸出約定平均金利(新規・短期)」の合計を12で除して計算した割合(この割合に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合とされている(旧措法93②)。
(2)延滞税の概要
① 延滞税の割合
  延滞税は、優先徴収権が認められた国税の確実な収納・確保を図るため、期限内に納付した者との間の負担の公平の確保、滞納防止、滞納となった国税の早期納付を促す等の観点から設けられており、民事における遅延利息(遅延損害金)に相当するものとされている。
  この延滞税の額は、国税の法定納期限の翌日から完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税額に年14.6%の割合を乗じて計算した額とされている。ただし、納期限までの期間又は納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、その未納の税額に年7.3%の割合を乗じて計算した額とされている(通法60②)。
  この延滞税の割合については、租税特別措置法において、延滞税の負担軽減を図るための特例が設けられている。具体的には、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、次に掲げる延滞税の区分に応じそれぞれ次に定める割合とすることとされている(旧措法94①)。
 イ 年14.6%の割合の延滞税……その特例基準割合に年7.3%の割合を加算した割合
 ロ 年7.3%の割合の延滞税……その特例基準割合に年1%の割合を加算した割合(その加算した割合が年7.3%を超える場合には、年7.3%の割合)
② 延滞税の軽減・免除制度
  上記①の延滞税の割合については、納税が猶予された場合その他一定の場合には、軽減・免除されている(通法63)。主な延滞税の軽減・免除制度は、次のとおりである。
 イ 納税の猶予、換価の猶予等がされた国税に係る延滞税の減免(通法63①)
(イ)災害等による納税の猶予又は滞納処分の執行の停止がされた国税に係る延滞税については、その猶予又は停止がされた期間に対応する部分の金額に相当する金額は免除される。
(ロ)事業の廃止等による納税の猶予又は換価の猶予がされた国税に係る延滞税については、その猶予がされた期間のうち年14.6%の割合で課される期間(納期限の翌日から2月を経過する日後の期間)に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額は免除される。
 ロ 災害等による納期限の延長がされた国税に係る延滞税の免除(通法63②)
   災害等による期限の延長の規定(通法11)により納期限の延長がされた国税に係る延滞税については、その延長した期間に対応する部分の金額は免除される。
 ハ 徴収の猶予がされた国税に係る延滞税の軽減(通法63④)
   徴収の猶予がされた国税に係る延滞税については、その猶予がされた期間のうち年14.6%の割合で課される期間(上記イ及びロによる免除期間を除く。)に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額は免除される。
 ニ 充足差押え等がされた国税に係る延滞税の軽減(通法63⑤)
   滞納国税の全額に相当する財産の差押え又は納付すべき税額に相当する担保の提供に係る国税を計算の基礎とする延滞税については、その差押え又は担保の提供がされている期間のうち年14.6%の割合で延滞税が課される期間(上記イからハまでによる免除期間を除く。)に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額を限度として、免除することができることとされている。
   また、これらの延滞税の軽減・免除制度についても、租税特別措置法において、これらの制度により免除し、又は免除することができる金額の計算の基礎となる期間を含む年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その期間であってその年に含まれる期間に対応する延滞税の額のうち、その延滞税の割合が特例基準割合であるとした場合における延滞税の額を超える部分の金額を免除することとされている(旧措法94②)。
(3)還付加算金の概要
 還付加算金は、還付金又は国税に係る過誤納金を還付し、又は充当する場合に、その還付金等に付される一種の利息であり、民事における約定利息に相当するものとされている。
 この還付加算金の額は、還付金等に係る国税の納付の日等の翌日から還付金等を還付し、又はその充当する日までの期間の日数に応じ、その金額に年7.3%の割合を乗じて計算した金額とされている(通法58①等)。
 この還付加算金の割合については、租税特別措置法において、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、その特例基準割合とすることとされている(旧措法95)。

2 改正の内容
(1)特例基準割合の引下げ

 利子税(上記1(1)参照)の特例基準割合(改正後:利子税特例基準割合)、還付加算金(上記1(3)参照)の特例基準割合(改正後:還付加算金特例基準割合)及び納税の猶予等の適用を受けた場合の延滞税(上記1(2)②参照)の特例基準割合(改正後:猶予特例基準割合)について、この特例が措置された平成25年度の税制改正時と比較して国内銀行の貸出金利が全体的に低下し、「都市銀行」と「地方銀行・第二地方銀行・信用金庫」の金利差も▲0.5%程度縮小していること等から、このような市中金利の実勢を踏まえ、「国内銀行の貸出約定平均金利(新規・短期)」の年平均に上乗せされている年1%の割合が年0.5%の割合に引き下げられた(措法93②、94②、95)。
 なお、通常の延滞税(上記1(2)①参照)の特例基準割合(改正後:延滞税特例基準割合)については、民間の債務に係る遅延損害金等と比較して滞納税額を優先して納付する意欲が失われかねないことや、延滞税額が1,000円未満の場合に全額が切り捨てられる(通法119④)ためその割合が低すぎると少額滞納について早期納付のインセンティブが機能しなくなること等から、従前の割合が維持されている(措法94①)。
(注1)上記の「利子税特例基準割合」、「還付加算金特例基準割合」及び「猶予特例基準割合」とは、平均貸付割合(下記(3)参照)に年0.5%(改正前:1%)の割合を加算した割合とされている(措法93②、94②、95)。
(注2)上記の「延滞税特例基準割合」とは、平均貸付割合下記に年1%の割合を加算した割合とされており(措法94①)、改正の前後で内容の変更はない。
(2)利子税、還付加算金及び延滞税の割合における下限の整備
 利子税、還付加算金及び延滞税の割合について、その割合が0%となることのないよう下限(0.1%)が設けられた。具体的には、利子税、還付加算金及び延滞税の割合の特例の適用がある場合における利子税、還付加算金及び延滞税の額の計算において、その計算した割合及び加算した割合(平均貸付割合及び延滞税特例基準割合を除く。)が年0.1%未満の割合であるときは年0.1%の割合とすることとされ、最終的に算出される利子税、還付加算金及び延滞税の割合が0%となることがないよう整備が行われた(措法96①)。
(3)利子税、還付加算金及び延滞税の割合の基準となる財務大臣が告示する割合(改正後:平均貸付割合)の告示期日の見直し
 利子税、還付加算金及び延滞税の割合の基準となる財務大臣が告示する割合(改正後:平均貸付割合)について、納税者の予見可能性を確保する観点から、その告示を行う期日を各年の前年の11月30日(改正前:12月15日)に前倒しすることとされた。それに伴い、告示する割合は、各年の前々年の9月から前年の8月まで(改正前:前々年の10月から前年の9月まで)の各月における「国内銀行の貸出約定平均金利(新規・短期)」の合計を12で除して計算した割合とされた(措法93②)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和3年1月1日以後の期間に対応する利子税、還付加算金及び延滞税について適用される(改正法附則111①)。
 なお、令和3年1月1日前に開始した相続税・贈与税の延納に係る分納期間のうちに同日以後の期間(特例対象期間)がある場合には、その特例対象期間については、令和3年中に用いられる利子税特例基準割合又は旧特例基準割合のうちいずれか低い割合により、利子税を計算することとされている(改正法附則111②)。

四 不動産公売等における暴力団員等の買受け防止措置の創設

1 制度創設の背景等
 近年、公共事業や企業活動等からの暴力団排除の取組みが官民を挙げて行われており、一般の不動産取引の分野においても、暴力団排除の措置が講じられるようになってきている。
 しかし、国税徴収法における不動産公売及び民事執行法における不動産競売(以下「不動産公売等」という。)においては、暴力団員であることのみを理由として不動産の買受けを制限する規定はないため、暴力団員が、不動産公売等により買い受けた建物を暴力団事務所として利用する事例や、不動産公売等により買い受けた不動産を転売して高額な利益を得る事例等があるとの指摘がなされていた。
 このような状況を踏まえ、民事執行法における不動産競売については、一般の不動産取引と同様に暴力団への不動産の供給源を断つといった観点から、暴力団員等の買受け防止措置等が盛り込まれた「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案」が第198回通常国会に提出され、令和元年5月10日に可決・成立し、同月17日に令和元年法律第2号として公布されている(令和2年4月1日から施行)。
 今回の改正においては、上記の民事執行法における不動産競売についての暴力団員等の買受け防止措置を踏まえ、国税徴収法における不動産公売についても、暴力団員等の買受け防止措置が創設された。

2 制度の内容
(1)暴力団員等に該当しないこと等の陳述

 公売財産(不動産に限る。以下「公売不動産」という。)の入札等(入札又は競り売りによる買受けの申込みをいう。以下同じ。)をしようとする者(その者が法人である場合には、その代表者)は、税務署長に対し、公売不動産の入札等をしようとする者(その者が法人である場合には、その役員)及び自己の計算において公売不動産の入札等をさせようとする者(その者が法人である場合には、その役員)が暴力団員等に該当しない旨を陳述しなければ、入札等をすることができないこととされた(徴法99の2)。
 上記の「暴力団員等に該当しない旨の陳述」は、具体的には、税務署長に対し、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める事項を記載した陳述書を提出しなければならないこととされている(徴規1の2①一〜三・六・七)。
① 公売不動産の入札等をしようとする者が個人である場合……次に掲げる事項
 イ その者の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別
 ロ その者が暴力団員等に該当しない旨
 ハ その他参考となるべき事項
② 公売不動産の入札等をしようとする者が法人である場合……次に掲げる事項
 イ その者の名称及び住所
 ロ その役員の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別
 ハ その役員が暴力団員等に該当しない旨
 ニ その他参考となるべき事項
 また、自己の計算において公売不動産の入札等をさせようとする者がある場合には、上記①又は②に定める事項に加えて、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める事項を陳述書に記載しなければならないこととされている(徴規1の2①四〜六)。
③ 自己の計算において公売不動産の入札等をさせようとする者が個人である場合……次に掲げる事項
 イ その者の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別
 ロ その者が暴力団員等に該当しない旨
④ 自己の計算において公売不動産の入札等をさせようとする者が法人である場合……次に掲げる事項
 イ その者の名称及び住所
 ロ その役員の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別
 ハ その役員が暴力団員等に該当しない旨
(注1)上記の「暴力団員等」とは、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう(徴法99の2)。
(注2)国税の徴収を所掌する者は、税務署長が原則とされ、国税局長が徴収の引継ぎを受けた場合(通法43③)や通関行政と密接な関係にある国税(輸入消費税等)を税関長が徴収する場合(通法43①ただし書)等に限り、国税局長又は税関長とされている。このような場合には、「税務署長」に「国税局長又は税関長」が含まれることになる(徴法184、185)。
(注3)公売不動産の入札等をしようとする者は、次に掲げる場合には、それぞれ次に定める書類の写しを税務署長に提出することとされている(徴規1の2②)。
(イ)公売不動産の入札等をしようとする者が、指定許認可等を受けて事業を行っている者である場合……その者がその指定許認可等を受けていることを証する書類
(ロ)自己の計算において公売不動産の入札等をさせようとする者が、指定許認可等を受けて事業を行っている者である場合……その者がその指定許認可等を受けていることを証する書類
(注4)上記(注3)の「指定許認可等」とは、許認可等を受けようとする者(その者が法人である場合には、その役員)が暴力団員等に該当しないことが法令においてその許認可等の要件とされているもののうち国税庁長官が指定するものをいう(徴規1の4③)。また、国税庁長官は、その指定をしたときは、告示することとされている(徴規1の4④)。
(2)最高価申込者等が暴力団員等に該当するか否かの調査の嘱託
 税務署長は、公売不動産の最高価申込者等(その者が法人である場合には、その役員)又は自己の計算において最高価申込者等に公売不動産の入札等をさせた者(その者が法人である場合には、その役員)が暴力団員等に該当するか否かについて、必要な調査をその税務署の所在地を管轄する都道府県警察に嘱託しなければならないこととされた(徴法106の2)。ただし、上記の公売不動産の最高価申込者等又は自己の計算において最高価申込者等に公売不動産の入札等をさせた者が、指定許認可等を受けて事業を行っている者である場合には、これらの者についての調査の嘱託は要しないこととされている(徴法106の2①ただし書、②ただし書、徴規1の4①②)。
(注)上記の「最高価申込者等」とは、最高価申込者及び次順位買受申込者をいう(徴法100⑥一)。
(3)最高価申込者等の決定の取消し
 税務署長は、公売不動産の最高価申込者等又は自己の計算において最高価申込者等に公売不動産の入札等をさせた者が次のいずれかに該当すると認める場合には、これらの最高価申込者等を最高価申込者等とする決定を取り消すことができるものとされた(徴法108⑤)。
① 暴力団員等(公売不動産の入札等がされた時に暴力団員等であった者を含む。)
② 法人でその役員のうちに暴力団員等に該当する者があるもの(公売不動産の入札等がされた時にその役員のうちに暴力団員等に該当する者があったものを含む。)
(4)随意契約により不動産を売却する場合の暴力団員等の買受け防止措置
 税務署長は、差押財産等を換価する場合には、原則として公売に付さなければならないこととされているが、公売に付しても入札等がない場合、入札等の価額が見積価額に達しない場合等に該当するときは、公売に代えて、随意契約により差押財産等を売却することができる(徴法94①、109①)。
 今回の改正においては、随意契約により不動産を売却する場合についても、不動産公売と同様に、上記(1)及び(2)の措置が講じられた(徴法99の2、106の2、109④、徴規1の2、1の4、1の5)。
(5)不動産を換価に付する場合の売却決定期日の整備
 税務署長は、不動産等(不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、小型船舶、債権又は電話加入権以外の無体財産権等をいう。)を換価に付するときは、公売期日等(公売をする日(随意契約により売却する場合には、その売却する日)をいう。以下同じ。)から起算して7日を経過した日において最高価申込者に対して売却決定を行うこととされている(旧徴法113①)。
 今回の改正においては、税務署長は、不動産を換価に付するときは、上記(2)の調査に通常要する日数を勘案して、次の①に掲げる日から次の②に掲げる日までの期間内で税務署長が指定する日(以下「指定日」という。)において最高価申込者に対して売却決定を行うこととされた(徴法113①、徴規1の6)。ただし、税務署長が上記(2)の調査の嘱託をした場合において、指定日までにその結果が明らかでないときは、その結果が明らかになった日に売却決定を行うこととされている(徴規1の6)。
① 公売期日等から起算して7日を経過した日
② 公売期日等から起算して21日を経過した日
(6)暴力団員等に該当しないこと等について虚偽陳述をした者に対する罰則規定の整備
 上記(1)により陳述すべき事項について虚偽の陳述をした者については、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされた(徴法189)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和3年1月1日以後に行う公告に係る公売又は同日以後に行う見積価額の決定に係る随意契約による売却について適用し、同日前に行った公告に係る公売又は同日前に行った見積価額の決定に係る随意契約による売却については従前どおりとされている(改正法附則53)。

五 その他納税環境整備関係の改正

1 振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出の電子化
(1)改正前の制度の概要

 振替納税又はダイレクト納付の利用に当たっては、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(以下「口座振替依頼書」という。)」又は「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書(以下「ダイレクト納付利用届出書」という。)」を作成し、所轄税務署長を経由して利用する金融機関に提出する(通法34①、34の2①、通規1の3①一、国税オンライン化省令4⑤)こととされており、金融機関においては、これらの書類に押印された印影と届出印とを照合することにより本人確認を行う必要があることから、その口座振替依頼書又はダイレクト納付利用届出書(旧国税オンライン化省令4⑤、5①)は、書面による提出に限定されていた。
(2)改正の内容
 近年、金融機関においては、電子的に入力された暗証番号による確認など届出印の照合を要しない本人確認の仕組みが整備されてきているところである。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、納税者利便の向上及び税務事務の効率化の観点から、口座振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書(国税オンライン化省令5①)の提出について、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行うことができることとされた。
 また、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う者は、原則として、その申請等に係る法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項並びに税務署長より通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされているが(国税オンライン化省令5①)、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により口座振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書の提出を行う場合には、上記のとおり、金融機関において暗証番号等により本人確認が行われていることを踏まえ、その申請等を行う者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信を要しないこととされた(令和2年国税庁告示第2号)。
(参考)上記のほか、更なる納税者利便の向上を図る観点から、納税地の異動があった場合の振替納税について、その個人が提出する「納税地の異動届出書」等に、その異動後も従前の金融機関の口座からの振替納税を行う旨を記載したときは、異動後の納税地の所轄税務署長に対してする申告等について振替納税を引き続き行うことができるようにすることとする運用上の対応がされた。この対応は、令和3年1月1日以後に提出する納税地の異動届出書等について実施することとされているが、詳細については、今後、通達等で定められる予定である。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和3年1月1日以後に行う届出について適用し、同日前に行った届出については従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則②)。

2 納税証明書の電子的請求手続等の柔軟化
(1)改正前の制度の概要

 納税証明書については、税務署長等に対し、証明を受けようとする国税の年度及び税目など一定の事項を記載した請求書を提出することにより、その交付を受けることができることとされている(通法123①、通令41④)。この納税証明書の請求手続については、請求書(書面)によるほか、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による請求(以下「納税証明書の電子的請求」という。)も可能とされている(国税オンライン化省令5①)。
 また、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による納税証明書の交付(以下「納税証明書の電子的交付」という。)については、真正性の担保(改ざん防止)の観点から、納税証明書の情報に税務署長等が電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書をその情報と併せてe-Taxにおける納税者の個人フォルダ(メッセージボックス)に格納することとされているが(旧国税オンライン化省令10、12)、電子的に受領した納税証明書(以下「電子納税証明書」という。)を書面で出力した場合には、その書面はあくまで複製されたものであり、原本には該当しないものとして取り扱われている。
(2)改正の内容
 納税証明書の電子的請求については、納税者から委任を受けた税理士等の代理人による代理請求は可能であるものの、これまでは、その請求時において電子委任状(委任を受けたことを証する電磁的記録をいう。以下同じ。)の添付がシステム上できる取扱いとなっていないことから、結果として、代理人は電子納税証明書の代理受領をすることができない状況となっており、その改善が課題とされていた。
 今回の改正においては、こうした課題に対応し、納税者利便の向上を図る観点から、納税証明書の電子的請求・交付手続について、以下のとおり、整備(柔軟化)が行われた。
① 納税証明書の電子的請求手続の柔軟化
  納税証明書の電子的請求について、代理請求する際に電子委任状の添付を行うことにより、代理人において電子的に納税証明書の代理受領ができることとされた。また、代理請求に際し電子委任状に納税者(委任者)の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されることを踏まえ、納税証明書の電子的請求に係る情報を送信する際、委任者である納税者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書を送信することを要しないこととされた(令和2年国税庁告示第2号)。
② 納税証明書の電子的交付方法の柔軟化
  納税証明書の電子的交付における真正性の担保措置について、納税証明書の情報に税務署長等が電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書を付す方法に代えて、その納税証明書に記載すべき事項が記録された二次元コード(いわゆるQRコード)を電子納税証明書に付す方法により行うことが可能とされた(国税オンライン化省令10、12、令和2年国税庁告示第3号)。この二次元コード(いわゆるQRコード)付きの電子納税証明書につき出力(印刷)した書面については、その書面の提出を受けた金融機関等にあっては、国税庁のホームページ上のシステムにおいて、その納税証明書(書面)に添付された二次元コード(いわゆるQRコード)を読み取って、その真正性の確認ができることとされている。これにより、納税者は、二次元コード(いわゆるQRコード)が記載された納税証明書(書面)について、これを原本に相当するものとして複数印刷し、使用することが可能となる。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和3年7月1日以後に行う納税証明書の電子的請求及び電子的交付について適用し、同日前に行った納税証明書の電子的請求及び電子的交付については従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則③、令和2年国税庁告示第2号前文、令和2年国税庁告示第3号前文)。

3 準確定申告の電子的手続の整備
(1)改正前の制度の概要

 所得税の確定申告書を提出すべき者が死亡した場合の確定申告(所法124)又は年の中途で死亡した場合の確定申告(所法125①〜③)(以下「準確定申告」という。)については、死亡した者に相続人が2人以上いる場合には、全ての相続人が連名で準確定申告書を提出することとされている(所令263②)。他方、電子情報処理組織(e-Tax)を使用して申請等を行う場合には、申請等を行う者は、原則として、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信しなければならないこととされている(国税オンライン化省令5①)。
 そのため、法令上、電子情報処理組織(e-Tax)を使用して準確定申告を行う場合には、全ての相続人による電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信が必要とされている。
(2)改正の内容
 今般、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による準確定申告の運用が開始されることに伴い、納税者の利便性向上を図る観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行われる準確定申告書の提出について、一定の要件を満たす場合には、準確定申告書に記載すべき事項(以下「記載情報」という。)に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する相続人(以下「申請等相続人」という。)以外の相続人の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書の送信を要しないこととされた(令和元年国税庁告示第25号)。
 上記の「一定の要件」とは、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行われる準確定申告書の提出と併せて申告書確認情報(申請等相続人以外の相続人がその記載情報を確認したことを証する電磁的記録をいう。)が送信されることをいう(令和元年国税庁告示第25号)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和2年分以後の準確定申告書を令和2年1月1日以後に提出する場合について適用される(令和元年国税庁告示第25号前文)。

4 支払調書等の電子的提出方法の柔軟化
(1)改正前の制度の概要

 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により支払調書等を提出する場合には、支払調書等に記載すべきこととされている事項を入力して送信することとされており、その際のファイル形式は、XML形式に限定されている(国税オンライン化省令5①③、平成30年国税庁告示第14号①一)。
(注1)上記の「支払調書等」とは、所得税法、相続税法、租税特別措置法及び内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の規定により提出する調書(教育資金管理契約の終了に関する調書及び結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書並びに国外財産調書及び財産債務調書を除く。)、源泉徴収票、計算書及び報告書をいう。
(注2)上記の「XML(eXtensible Markup Language)形式」とは、情報の内容にタグを付加して構造的に記述し、コンピュータ処理をしやすくするコンピュータ言語形式のファイルをいう。
(2)改正の内容
 今回の改正においては、支払調書等の提出義務者の事務負担を軽減する観点から、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により支払調書等を提出する場合のファイル形式に、CSV形式が追加された(令和2年国税庁告示第6号)。
(注)上記の「CSV(Comma-Separated Values)形式」とは、データをカンマ(,)や改行で区切って並べたテキスト形式のファイルであり、表計算ソフトやデータベースソフトなどの異なるアプリケーション間でデータを交換する場合に利用されるものをいう。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和3年1月1日から施行される(令和2年国税庁告示第6号附則①ただし書)。

5 期限到来間際にされた期限後申告等に係る加算税の賦課決定期限の整備
(1)改正前の制度の概要

 通常の更正決定等の期間制限(除斥期間)は、法定申告期限から5年とされている(通法70①)。ただし、特定の場合(脱税があった場合等)における更正決定等については、それぞれ個別に更正決定等の期間制限が設けられている(旧通法70②〜④)。
(2)改正の内容
 無申告加算税等の各種加算税については、期限後申告書の提出等があった場合に、行政制裁として、その申告等に基づいて納付すべき税額に一定の割合を乗じて計算した金額を課すものであるが(通法66①、67①等)、その課税(賦課決定)に当たっては、税務署長が賦課決定通知書の送達をもって行うこととされている(通法16②二、32①③)。そのため、これまでは、期限後申告書が上記(1)の更正決定等の期間制限の到来間際に提出された場合には、加算税の賦課要件を満たしているにもかかわらず、その期間制限の到来までに賦課決定通知書の送達が困難であり、結果として加算税を課税することができない事例が生じており、その適正課税の確保が課題とされていた。
 今回の改正においては、こうした課題に対応し、適切な加算税の賦課を行う観点から、加算税の賦課決定期限について整備が行われた。
 具体的には、通常の更正決定等の期間制限(除斥期間)により賦課決定をすることができないこととなる日前3月以内にされた納税申告書の提出又は源泉徴収等による国税の納付に伴って行われることとなる無申告加算税又は不納付加算税についてする賦課決定について、その納税申告書の提出又は源泉徴収等による国税の納付があった日から3月を経過する日まで、行うことができることとされた(通法70④)。
(注1)上記の「納税申告書の提出」又は「源泉徴収等による国税の納付」については、調査通知(源泉徴収等による国税の納付にあっては、納税の告知)を受ける前であり、かつ、調査による更正決定等を予知してされたものでない場合(通法66⑥、67②)に限って本措置の適用対象とされ、すなわち、税務当局の調査の結果必要となる期限後申告書の提出等については適用対象外とされている。これは、税務当局の調査の結果必要となる期限後申告書の提出等については、税務当局が未把握の中でされる自主的な期限後申告の提出等と異なり、税務当局にあっては、法律関係の安定を図る等の観点から定められている通常の期間制限(除斥期間)内に、加算税の賦課まで含めて処理することは行政として当然の対応であることから、これを本措置の対象とせず、税務当局がその提出を予期できない自主的な期限後申告の提出等に限って措置することが適当との考えに基づくものである。
(注2)上記の賦課決定期限の整備がされることに伴い、この場合の加算税の賦課決定により納付すべき国税の消滅時効の起算点について、その加算税の賦課決定があった日とすることとされている(通法72①)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される(改正法附則52①③)。

6 不服申立てにおける口頭意見陳述等におけるテレビ会議システムの導入
(1)改正前の制度の概要

 再調査の請求における再調査審理庁(審査請求にあっては、担当審判官)は、再調査の請求人(審査請求にあっては、審査請求人)又は参加人から申立てがあった場合には、その申立てをした者に口頭で再調査の請求(審査請求)に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならず、また、その口頭意見陳述は、再調査審理庁(担当審判官)が期日及び場所を指定し、再調査の請求人(審査請求人)及び参加人(審査請求にあっては、原処分庁も含む。)を招集して実施することとされている(通法84①②、95の2①③)。
(2)改正の内容
 国税に関する不服申立てについて行う口頭意見陳述については、これまでは、再調査審理庁又は担当審判官が指定する場所として各々の官署に再調査の請求人等を招集して実施することとされていたが、再調査の請求人等にあっては遠隔の地に居住している場合もあることから、そうした者について、再調査審理庁等の官署まで出向く負担の軽減が課題とされていた。
 今回の改正においては、こうした課題に対応し、再調査の請求人等の利便性の向上を図る観点から、国税に関する不服申立てにおける口頭意見陳述等について、一般の行政不服審査と同様に、テレビ会議システムを用いて行うことができることとされた。これにより、遠隔の地に居住する再調査の請求人等については、その最寄りの官署(再調査審理庁等が指定する場所)に出向き、テレビ会議システムを用いて、再調査審理庁等との間において口頭意見陳述を行うことが可能となる。
(注)一般的な行政不服審査については、平成26年の行政不服審査法(全部改正)の施行令において、テレビ会議システムを用いた口頭意見陳述の整備が行われている(行政不服審査法施行令8、18)。
(3)適用関係
 上記(2)の改正は、令和3年1月1日以後にされる再調査の請求又は審査請求に係る事件の審理について適用される(改正通令附則②③)。

新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(緊急経済対策関係)

はじめに

 我が国経済は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により大幅に下押しされており、国難ともいうべき厳しい状況に置かれている中、感染症の影響をしのぎ、その後の経済のV字回復につなげ、日本経済を持続的な成長軌道へ戻すことを確実になし遂げるため、財政・金融・税制といったあらゆる政策手段を総動員し、事業規模で100兆円を超える「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が策定されたところである(令和2年4月7日閣議決定。同月20日変更の閣議決定)。
 この中で、税制については、新型コロナウイルス感染症の我が国社会経済に与える影響が甚大なものであることに鑑み、感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により厳しい状況に置かれている納税者に対し、緊急に必要な税制上の措置を講ずることとされたところである。
 以下では、上記の措置が規定された「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(令和2年4月30日法律第25号)(以下「新型コロナ税特法」という。)」のうち、納税の猶予の特例及び給付金の差押禁止の主な内容について説明することとする。
(注)上記の「新型コロナウイルス感染症」とは、病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に中華人民共和国から世界保健機関に対して人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)である感染症をいう(新型コロナ税特法2、新型インフルエンザ等対策特別措置法附則1の2①)。

一 納税の猶予の特例の創設

1 国税通則法による納税の猶予の概要
(1)国税通則法による納税の猶予の類型

 国税通則法による納税の猶予は、相当な損失を受けた場合の納税の猶予(通法46①)、災害等に基づき納付できない場合の納税の猶予(通法46②)及び一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予(通法46③)の三類型がある。
(注)上記及びの納税の猶予については、猶予金額が100万円以下の場合、猶予期間が3月以内の場合又は担保を求めることができない特別の事情がある場合を除き、猶予金額に相当する担保を求めることとされている(通法46⑤)。
(2)相当な損失を受けた場合の納税の猶予の内容
 上記(1)の納税の猶予の内容については、以下のとおりとされている(通法46①)。
① 猶予の要件(猶予が認められる場合)
  震災、風水害、落雷、火災等の災害により、納税者がその財産につき相当な損失を受けたことが、猶予の要件とされている(通法46①)。
(注)上記の「相当な損失」については、災害による損失の額について納税者の全積極財産の価額に占める割合がおおむね20%以上の場合に該当することとされている(通基通46−2)。
② 猶予の対象となる国税
  猶予の対象となる国税は、損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で、次に該当するものとされている(通法46①一〜三)。
イ 災害のやんだ日等以前に納税義務の成立した国税(消費税、自動車重量税等一定のものを除く。)で、その納期限が損失を受けた日以後に到来するもののうち、猶予の申請の日以前に納付すべき税額が確定したもの(通法46①一)
ロ 災害のやんだ日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税で、その納期限が損失を受けた日以後に到来するもののうち、猶予の申請の日以前に納付すべき税額が確定したもの(通法46①二)
ハ 予定納税に係る所得税、中間申告に係る法人税及び地方法人税、中間申告に係る消費税等で、これらの納期限が損失を受けた日以後に到来するもの(通法46①三)
③ 猶予期間
  税務署長等は、納期限から1年以内の期間について猶予をすることができることとされており(通法46①)、その具体的な期間については、被害のあった財産の損失の状況及び財産の種類を勘案して定めることとされている(通令13①)。
④ 猶予金額
  猶予する金額については、対象となる国税(上記②参照)の全部又は一部の金額とすることとされている(通法46①)。
⑤ 猶予の申請手続
  猶予の申請をしようとする者は、災害のやんだ日から2月以内に、災害により財産につき相当な損失を受けた事実の詳細等一定の事項を記載した猶予申請書に、当該事実を証する書類を添付して、税務署長等に提出することとされている(通法46①、46の2①、通令15の2①)。
(3)猶予期間における延滞税の取扱い
① 相当な損失を受けた場合の納税の猶予における取扱い
  上記(1)の「相当な損失を受けた場合の納税の猶予」における猶予期間については、その期間に対応する延滞税は免除される(通法63①)。
② 災害等に基づき納付できない場合の納税の猶予及び一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予における取扱い
  上記(1)の「災害等に基づき納付できない場合の納税の猶予」及びの「一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予」における猶予期間については、その期間に対応する延滞税は、該当する事実に応じて、全額又は一部が免除される(通法63①、措法94②)。

2 納税の猶予の特例の内容
(1)納税の猶予の特例の概要

 税務署長等は、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により令和2年2月1日以後に納税者の事業につき相当な収入の減少があったことその他これに類する事実がある場合において、納期限が同日以後に到来する国税を一時に納付することが困難であると認められるときは、納期限までにされたその者の申請に基づき、その納期限から1年以内の期間を限り、その納税を無担保かつ延滞税なしで猶予することができる特例措置を講ずることとされた(新型コロナ税特法3①)。
(注)上記の納税の猶予の特例においては、担保の提供を求める規定(通法46⑤)の適用はないことから、担保の提供を要することなく本特例を受けることができる。また、本特例の適用がある場合の延滞税の全額免除の詳細については、下記(7)参照。
(2)猶予の特例の要件(猶予の特例が認められる場合)
 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、令和2年2月1日以後に、納税者の事業につき相当な収入の減少があったことその他これに類する事実(以下「新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実」という。)がある場合において、対象となる国税(下記(3)参照)の全部又は一部を一時に納付することが困難であると認められることが、本特例の要件とされている(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①)。
(注1)上記の「新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響」については、例えば、納税者又はその親族、従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したことによる影響のほか、イベント開催又は外出等の自粛要請、入国制限、賃料の支払猶予要請等の各種措置による影響等が該当することとなる(新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律による納税の猶予の特例の取扱いについて(国税庁法令解釈通達(令和2年4月30日徴徴6−6ほか)(以下「新型コロナ税特通」という。)1)。
(注2)新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実について、「令和2年2月1日以後」に生じたものが特例の対象とされているが、これは、本特例がイベントの自粛要請や入国制限措置など新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための措置に起因して多くの事業者等の収入が減少しているという厳しい状況を踏まえ、手元資金の活用による事業継続支援の観点から措置されるものであること及び新型コロナウイルス感染症に対する政府による具体的な施策が令和2年2月中に開始されたことを踏まえたものである。
(注3)上記の「相当な収入の減少」については、令和2年2月1日以後の1月以上の任意の期間の収入金額が、前年同期と比較して概ね20%以上減少していると認められる場合に該当することとなる(新型コロナ税特通2)。
(注4)上記の「その他これに類する事実」については、例えば、納税者の給与収入など経常的な収入につき相当な減少があったと認められること等が該当することになる(新型コロナ税特通3)。
(注5)上記の「国税の全部又は一部を一時に納付することが困難であると認められること」については、納税者の事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金並びに納税者及び生計を一にする親族の生活維持のために必要な少なくとも今後6か月間の費用を考慮して国税を納付する資金がない場合に該当することとなる(新型コロナ税特通4)。
(3)猶予の特例の対象となる国税
 猶予の特例の対象となる国税は、特定日(具体的には、令和3年2月1日をいう。以下同じ。)までに納付すべき国税で、次に該当するものとされている(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①一〜三)。
(注)上記の「特定日」については、本特例の対象となる国税の期日として令和3年2月1日とされているが(新型コロナ税特令2①)、これは、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法により、新型コロナウイルス感染症について、令和3年1月31日までの間、緊急事態宣言等の措置を実施することとされたことも参考にしつつ、各税法において令和3年1月31日とする国税の納期限については、同日が日曜日に該当することにより、その翌日(同年2月1日)をもって納期限とみなされること(通法10②)を考慮したものである。
① 特定日以前に納税義務の成立した国税(消費税、自動車重量税等一定のものを除く。)で、その納期限が令和2年2月1日以後に到来するもののうち、猶予の申請の日以前に納付すべき税額が確定したもの(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①一)
② 特定日以前に課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税で、その納期限が令和2年2月1日以後に到来するもののうち、猶予の申請の日以前に納付すべき税額が確定したもの(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①二)
③ 予定納税に係る所得税、中間申告に係る法人税及び地方法人税、中間申告に係る消費税等で、これらの納期限が令和2年2月1日以後に到来するもの(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①三)
(4)猶予期間
 税務署長等は、納期限から1年以内の期間について猶予をすることができることとされ(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①)、その具体的な期間については、新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実の状況及び対象となる国税(上記(3)参照)の全部又は一部を一時に納付することが困難である状況を勘案して定めることとされている(新型コロナ税特令2③による読替後の通令13①)。
(5)猶予金額
 猶予する金額については、対象となる国税(上記(3)参照)の全部又は一部の金額とすることとされている(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①)。この猶予の対象となる「国税の全部又は一部の金額」については、この「国税の全部又は一部」につき一時に納付することが困難であると認められることをもって本特例の要件とされていることから(上記(2)参照)、「一時に納付することが困難である国税」に当たる部分が猶予の対象となる金額となり、したがって、「一時に納付することが困難である国税」が「納付すべき国税の全部」の金額を下回る場合には、その「一時に納付することが困難である国税(すなわち納付すべき国税の一部)」の金額が猶予の対象となる金額となる。
(注)上記の「一時に納付することが困難である国税の」金額については、具体的には、「納付すべき国税の額」から「納税者が有する現金、預貯金等の価額に相当する金額(納税者の事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金並びに納税者及び生計を一にする親族の生活維持のために必要な少なくとも今後6か月間の費用は除く。)」を控除した金額となる(新型コロナ税特通8)。
(6)猶予の申請手続
 猶予の申請をしようとする者は、対象となる国税(上記(3)参照)の納期限まで(やむを得ない理由があると認める場合には、納期限後に申請されるものを含む。)に、新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実があること及びその国税の全部又は一部を一時に納付することが困難である事情の詳細等一定の事項を記載した猶予申請書に、当該事実を証する書類、財産目録その他の資産及び負債の状況を明らかにする書類並びに猶予を受けようとする日前後の収入・支出の実績・見込みを明らかにする書類を添付して、税務署長等に提出することとされている(新型コロナ税特法3①による読替後の通法46①・46の2①、新型コロナ税特令2②、新型コロナ税特令2③による読替後の通令15の2①)。
(注1)上記の納期限内に申請できない「やむを得ない理由」については、納税者が事業につき新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことに伴う貸付けを受けるための手続を行っていたこと等により納期限内に申請ができなかった場合に該当することとなる(新型コロナ税特通5)。
(注2)上記の「猶予を受けようとする日前後の収入・支出の実績・見込みを明らかにする書類」については、上記(5)の猶予金額、すなわち、「一時に納付することが困難である国税の全部又は一部の金額」を確認するための書類とされている。
(7)猶予期間における延滞税の取扱い
 上記(4)の猶予期間においては、その期間に対応する延滞税は免除される(通法63①)。

3 適用関係
 上記2の特例は、新型コロナ税特法の公布の日(具体的には、令和2年4月30日。以下同じ。)から施行され(新型コロナ税特法附則1)、令和2年2月1日から令和3年2月1日までの間に納期限が到来する国税について適用される(新型コロナ税特法3①)。
 また、猶予の申請期限(上記2(6)参照)の関係では、公布の日から2月内(具体的には、令和2年6月30日まで)に納付すべき国税については、その国税の納期限(公布の日以前のものを含みます。)後であっても、同日(令和2年6月30日)までに申請がされた場合には、上記2の特例を適用できることとされている(新型コロナ税特法附則2)。

二 給付金の差押禁止

1 特例の内容
 市町村又は特別区から給付される給付金で次に掲げるものについては生活に困っている家計への支援のための給付金と言う性格を有していることや児童手当の受給権が差押禁止とされていること(児童手当法15)を踏まえ、その給付金の給付を受ける権利は国税の滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえることができないこととされた(新型コロナ税特法4②)。
(1)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響に鑑み、家計への支援の観点から令和2年度の一般会計補正予算(第1号)における特別定額給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金(新型コロナ税特規2①)
(2)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置による児童の属する世帯への経済的な影響の緩和の観点から令和2年度の一般会計補正予算(第1号)における子育て世帯臨時特別給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金(新型コロナ税特規2②③)

2 適用関係
 上記1の特例は、新型コロナ税特法の公布の日(令和2年4月30日)から施行されている(新型コロナ税特法附則1)。

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