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相続・遺言2024年04月09日 相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題 行政の管理制度求める声 22年、全国家裁受理 提供:共同通信社

 不動産や借金などプラス、マイナスどちらの遺産も受け継がない「相続放棄」が年々増え、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件が受理されたことが9日、司法統計で分かった。人口減少や過疎化が進む中、専門家は空き家となった実家を手放したり、縁遠い親族の財産を受け取らなかったりする例が目立つと指摘。放置された家屋や土地への対策が課題で、行政が適切に管理できるよう制度設計を求める声もある。
 民法は、人(被相続人)が死亡した場合、配偶者や子らが一切の遺産を相続すると定めており、マイナスの遺産も相続しなければならない。これを避けるため、相続放棄を家裁に申し立てることができる。司法統計によると、全国の家裁で受理件数が伸び、少なくとも15年以降は毎年増加。15年は19万件弱だったのが17年に20万件を超え、19年は22万5416件、20年が23万4732件、21年が25万1994件だった。
 相続に関する手続きを多く扱う弁護士法人「心」(本部・名古屋市)によると、親が亡くなり、子どもが地元を離れている場合、維持費や固定資産税の負担を嫌って実家の相続を放棄することが多い。孤独死した人と疎遠な親族が遺産を放棄する例もある。
 こうして老朽化した家屋などは「負動産」とも呼ばれ、空き家の増加に拍車をかけている。倒壊や、ごみの不法投棄といった問題もあり、対策が急務とされる。
 大阪経済法科大の米山秀隆(よねやま・ひでたか)教授(住宅土地政策)によると、相続放棄の結果、放置された空き家は最終的に行政が代執行して取り壊すことがあるが、公金支出という負担が生じる。相続放棄とは別に、不要な土地の所有権を国に返す「相続土地国庫帰属制度」が昨年始まったものの、更地でなければならないなど条件が厳しく、利用は広がっていない。
 人口減少などにより、景観や治安の面で地域に悪影響を及ぼす空き家問題は今後も深刻化する可能性がある。米山教授は「国庫帰属制度を拡充して多様なケースで引き取るなど、国は管理の行き届かない土地や不動産を減らすための施策を打ち出す必要がある」と提言した。

財産処分NG、期限も 相続放棄に注意点

 「故人の財産を一つでも処分すると相続放棄は認められない可能性がある」「申立期限は原則として、亡くなったと知ってから3カ月以内」。不必要な遺産を引き継がない相続放棄は拡大しているが、手続きには注意点もある。
 弁護士法人「心」(本部・名古屋市)によると、財産の一部を使う例でありがちなのは、亡くなった人の預貯金を葬儀費用に充てるパターンだ。同法人の大沢耕平(おおさわ・こうへい)弁護士は「ごく少額の預金を葬儀費用に充て、後に相続放棄が認められた裁判例もあるが、あくまで例外だ」と指摘する。
 期限への留意も必要だ。民法は「相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に放棄を申し立てなければならないとしている。親族らが亡くなり、自身が相続人になったと知った時が起算点となる。
 また、交流のなかった親族が孤独死した場合には、一般的に警察から連絡が来る。自治体が火葬を終えていることも多く、遺骨の引き取りとともに遺産の処分も求められるが、親族がどんな財産や借金を抱えていたのか、すぐには分からない。
 弁護士法人心の全国の事務所には昨年、相続放棄に関する依頼が約800件寄せられたという。同法人の石井浩一(いしい・こういち)弁護士は「遺産の詳細を調べるのは難易度が高く、借金が後から判明することもある。困ったら早めに専門家に連絡してほしい」と語った。

現代社会を反映 識者談話

 立命館大の二宮周平(にのみや・しゅうへい)名誉教授(家族法)の話 相続放棄の増加は、親族間のつながりが希薄になった現代社会を反映している。価値の低い不動産を手放すことができるので、個人にとってメリットは大きいが、管理されなくなった空き家や土地が増えるのは問題だ。土地の周囲にはほかの住民もおり、公共財の側面もある。管理を当事者任せにするのではなく、国が財政支援や新制度を設けるなどして、地域の共有財産として活用していく方策を打ち出すべきだ。

相続放棄

 民法の規定では、被相続人が死亡した場合、配偶者や子ら法律で定められた相続人は預貯金や不動産などプラスの遺産のほか、借金や住宅ローンといったマイナスの遺産も全て受け継がなければならない。これに対し「相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」であれば、家庭裁判所に相続放棄を申し立てられる。受理されれば遺産の相続権は後順位の相続人に移る。4月から、相続した不動産の登記が義務化されたが、相続放棄した場合は対象外となる。

(2024/04/09)

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