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訴訟・登記2024年04月16日 「申し訳ない」遺族に謝罪 弾劾裁判、制度に疑問も 判事罷免の岡口氏 提供:共同通信社

 交流サイト(SNS)への投稿などで事件遺族を傷つけたことを理由に、国会議員で組織される弾劾裁判所から罷免判決を受けた元仙台高裁判事の岡口基一(おかぐち・きいち)氏(58)が15日までに共同通信のインタビューに応じ、遺族に「傷つける意図はなかったが、十分配慮すべきだった。申し訳なかった」と改めて謝罪した。弾劾裁判に対しては「議員が本格的な事件を裁ける制度になっていない」と疑問を呈した。
 3日の罷免後、取材に応じるのは初めて。過去の弾劾裁判は刑事事件や重大な職務違反が問われたものだったが、今回は裁判官による表現行為の是非が争われた初のケースだった。
 衆参両院議員で構成する裁判官訴追委員会は、2015年に起きた女子高校生殺害事件に関する投稿など計13件の表現行為を理由に訴追した。
 裁判官弾劾法は、3年以上前の行為を理由とした訴追はできないと定めている。表現行為の一部はこの「訴追期間」を過ぎていたが、判決は「表現行為には一体性があり、訴追期間を過ぎていない」と認定した。岡口氏は「これでは訴追期間の意味がない。期間内に訴追しなかった訴追委のミスを、同じく議員で構成される弾劾裁判所がかばった」と指摘した。
 また判決は、岡口氏の表現行為で女子高校生の遺族が繰り返し傷つけられたことを罷免の理由としたが「誰かが傷ついたという理由だけで表現を非難するのは、表現の自由の観点からあり得ない」と反論。「司法の独立が脅かされる」とも述べた。
 仙台高裁判事を最後に職を追われたことには「原発事故訴訟などにきちんと取り組みたかった」と心残りを口にする一方、弾劾裁判で沈黙を続けた最高裁に対しては「見捨てられたように感じる」と恨み節も漏れた。
 5年後には法曹資格の回復を申し立てることもできるが「次世代の法曹の育成に貢献したい」と当面、司法試験指導校で講師をしながら、法律書の執筆や講演活動に取り組むとしている。

審理最長、欠席交代続出 政治に翻弄の弾劾裁判

 戦後10件しか開かれていない弾劾裁判の中でも、岡口基一(おかぐち・きいち)氏(58)のケースは異例ずくめだった。判決日を含めて公判回数は16回で過去最多、初公判から判決までの審理期間も2年超と最長を更新した。裁判官役も、検察官に当たる裁判官訴追委員会も国会議員が担うためスケジュールは政治に翻弄(ほんろう)され、欠席者や途中交代も目立った。
 初公判は2022年3月。この日は冒頭手続きのみで終わり、次の公判までは9カ月近くを要した。岡口氏の弁護側によると、訴追委員会側の立証に時間がかかったとされる。この間に参院選もあり、予定の調整は難航した。
 公判が開かれても、衆参両院議員計14人が務める裁判員の欠席が相次いだ。初公判から全ての審理に出席したのは、船田元裁判長ら3人にとどまる。その間、政界引退などを理由に交代者も出た。山下貴司元法相は審理中の言動を理由として、弁護側から「忌避」を申し立てられ、自ら辞職した。
 仙台高裁判事だった岡口氏は訴追された直後の21年7月、弾劾裁判所から職務停止の決定を受け、以後、仕事に戻ることなく罷免判決を言い渡されることとなった。これには「判決が出る前から事実上の罷免状態だったのではないか」と弁護士や学者らから批判の声も出ていた。

岡口基一(おかぐち・きいち)氏の弾劾裁判

 東京高裁や仙台高裁の判事だった岡口氏は、女子高校生殺害事件や、犬の所有権を巡る訴訟に関する交流サイト(SNS)への投稿など計13件の表現行為が問題視され、2021年6月に弾劾裁判所に訴追された。表現行為を理由とした訴追は初めてで、法律家からは賛否の声が上がった。22年3月に始まった弾劾裁判で弁護側は「罷免は重すぎる」と訴えたが、今月3日の判決は表現行為の一部を「著しい非行」と認定し、罷免が相当と結論付けた。不服申し立てはできず、岡口氏は即日失職した。

(2024/04/16)

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