安全衛生2024年05月08日 コロナ死者1・6万人超 流行持続、昨年5~11月 5類移行、8日で1年 次の危機へ新組織も 提供:共同通信社

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、8日で1年となった。日常生活は平時に戻りつつあるが、依然として流行の波を繰り返している。厚生労働省が4月に発表した最新の人口動態統計(概数)によると、昨年5~11月に計1万6043人が新型コロナで死亡。専門家は「命を落とす人がいることを改めて理解して」と訴える。政府は法改正や新組織発足を進め、次の感染症危機に備える。
 昨年夏から秋にかけて流行「第9波」となり、沖縄県では医療が逼迫(ひっぱく)し、救急搬送を受け入れられない事態も生じた。冬には第10波も。今年4月以降は、治療薬や入院費の負担が増え、医療機関への受診控えも危惧される。
 マスク着用といった基本的な感染対策は今後も状況に応じて求められる。国立病院機構三重病院の谷口清州(たにぐち・きよす)院長(小児感染症学)は「国民が適切な感染対策を取るためにも、政府は重症化率や入院後の死亡率といった感染の実態が分かる情報をこまめに知らせるべきだ」と指摘する。
 同じ5類の季節性インフルエンザは、新型コロナの感染対策の影響を受けていない2019年でも、年間死者数が3575人。国内の感染症による死者は、新型コロナが圧倒的に多い状況となっている。
 高齢者や基礎疾患のある人は重症化リスクが高い。ワクチンは高齢者らを対象にした定期接種に移行し今秋から始まる。
 政府は病床逼迫を防ぐために感染症法などを改正。平時のうちに都道府県と医療機関が協定を結び、流行時に病床5万1千床を確保することを目指す。今国会では自治体に対する国の指示権拡充を盛り込んだ地方自治法改正案も提出した。
 23年9月には政府対応の司令塔を担う「内閣感染症危機管理統括庁」が発足。25年4月には政府に科学的助言をする「国立健康危機管理研究機構」が発足予定だ。深刻な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定案は今年6月に閣議決定される見込み。
 企業への資金繰り支援では、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)など官民の金融機関による融資が23年12月時点で計約259万件(約45兆円)に上った。経済産業省は今年3月、支援を6月末まで延長すると発表したが、返済と物価高、人手不足が重なり、倒産件数が拡大する懸念がくすぶる。

コロナワクチン、対策要に 一定の副反応、死者も

 新型コロナウイルスワクチンは、ウイルスに対する免疫を体内につくって発症や重症化を防ぐ効果があり、感染対策で大きな役割を果たした。一方で、接種後に副反応が一定程度起き、死者の報告もある。厚生労働省の有識者会議は、今年1月28日時点で、42歳と14歳の女性2人の死亡を、接種との因果関係が「否定できない」と結論づけている。
 国内ではこれまで、米ファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンや、ノババックスが開発した組み換えタンパクワクチンが使われてきた。
 国は2021年2月にワクチン接種を開始。同年2~11月の死者数は約1万人だったが、京都大の研究チームは、ワクチンがなければ約36万人に達した恐れがあると推計している。
 厚労省によると、ワクチンの副反応による健康被害は「ごくまれだが不可避的に生ずる」。予防接種法は、医師らに接種後の副反応を報告するよう求めており、厚労省の有識者会議は、この報告を評価した。
 一方、迅速な救済を目的とした「予防接種健康被害救済制度」では、今年4月25日時点で、死亡一時金や葬祭料の請求561件が認められている。

(2024/05/08)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

ここから先は新日本法規WEB会員の方のみ
ご覧いただけます。

会員登録していただくと、会員限定記事の閲覧のほか、様々なサービスをご利用いただけます。登録は簡単・無料です。是非ご利用ください。

ログイン新規会員登録

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索