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行政・財政2024年05月15日 普通財産の貸付制度 2 執筆者:髙松佑維

1.はじめに

前回の記事では、国有財産の中の普通財産の貸付制度の概要をご紹介し、その形式についても簡単に触れました。
 今回は、貸付期間の定めを見つつ、行政財産の使用許可制度と普通財産の貸付制度における法的性質の違いやそれに伴う影響等について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

2.普通財産の貸付期間や更新の有無

普通財産の貸付期間は、国有財産法上、財産の種類や目的に応じて、個別の定めがされています。
 具体的には、植樹を目的として土地等を貸し付ける場合は60年以内、建物の所有を目的として土地等を貸し付ける場合で借地借家法第22条1項(定期借地権)の規定に基づく借地権の存続期間を設定するときは50年以上、その二つ以外で土地等を貸し付ける場合は30年以内、建物その他の物件を貸し付ける場合は10年以内とされ、定期借地権設定の場合を除いて、その期間は更新することができるとされています(国有財産法第21条)。
 さらに、財務省通達(普通財産貸付事務処理要領:平成13年3月30日財理第1308号)の中に、土地に建物の所有を目的とする賃借権を設定しようとする場合は30年(借地借家法第25条(一時使用目的の借地権)該当の場合を除く)、建物(その敷地を含む)を使用させるために建物の賃借権を設定しようとする場合は3年(同法第40条(一時使用目的の建物の賃貸借)該当の場合を除く)等、より細かい定めがあり、期間満了時の契約更新等に関してもより細かく定められています。
 このように、普通財産の貸付制度では、内容や使用目的によって貸付期間が個別に決められ、一定の場合を除いて期間更新があり得る前提となっています。
 なお、行政財産の使用許可制度においても、期間満了後、再許可という形で更新がされる場合はあります。

3.両制度における法的性質の違い・借地借家法との関係

もっとも、同じ更新といっても、両制度の法的性質の側面には大きな違いがあるため、その性質に対応した考え方を把握しておく必要があります。
 行政財産の使用許可制度では、許可形式を採用し、裁判所も許可・不許可行為(や許可取消し行為)を行政事件訴訟法上の抗告訴訟の対象として審理します。すなわち、性質として契約の前提には立っておらず、使用者の求めに対して更新するかどうかは許可権者の裁量に委ねられるため、使用者側から当然に更新を求められるわけではありません。同制度では、借地借家法の排除(国有財産法第18条8項)の明示といった特徴的事項のほか、行政目的に供されている行政財産を対象とした行政処分という性質に基づくポイントを抑えておく必要があります。
 一方、普通財産の貸付制度では、契約形式を採用している点を前回ご紹介しました。同制度において借地借家法の適用を排除する規定は設けられておらず、貸付の法的性質や(当時の)借地法の適用に関して、裁判例(東京高裁昭和38年12月10日判決)で次のように判示されています。
 「普通財産は国の私産の性質を有し、これに私権を設定することができる(国有財産法第二十条)のであるから、普通財産の有償貸付の性質は賃貸借契約である・・・従つて、建物の所有を目的として普通財産である土地の貸付契約がなされた場合には、借地法の適用がある・・・が、国有財産法は国有財産の管理の公正を期するため、その貸付について特別の定めをなしているのであるから、この限度においては同法の規定が優先して適用せらるべき・・・」
 「・・・国有財産法第二十一条は普通財産の貸付期間を限定しているが、その貸付期間はこれを更新することができると規定し、かえつて、更新を禁止する旨の特別の規定は存しないのであるから、法定更新に関する借地法第六条は普通財産である土地の貸付契約についても当然に適用せられ、ただ更新後の借地期間については前記国有財産法第二十一条の特別の規定があるため、借地法第六条第一項後段、第五条の適用がなく、前契約におけると同一の期間となるものと解すべき・・・」
 つまり、貸付料を払う形で普通財産の貸付を受けた場合、その内容(法的性質)は賃貸借契約(私法上の契約)となり、国有財産法に特別の定めがある事項は同法の定めが優先適用されますが、それ以外の事項については基本的に民法の適用があり、契約内容によっては借地借家法の適用もあるということになります。
 加えて、同法の適用があり得るということは、契約内容や実態(例えば、建物所有目的の土地貸付といえるかどうか、一時使用目的にあたるかどうか、所定の手続きを踏んでいるかどうか等)によって、更新拒絶の要件(通知期間制限や正当事由の存在)や定期借地・定期借家の適用といった場面等で特に大きな影響があり得るということを示しています。
 これらの点は、使用許可制度と大きく異なるポイントといえるでしょう。

4.事案検討にあたって

このように、貸付の事案では、事案内容やその時点での状況に応じて、借地借家法の適用があるのか(あるとすればどのような影響が出るのか)、国有財産法に定められている特別規定(例えば、前回ご紹介した同法第24条1項(公用又は公益事業の用に供する必要が生じたときの解除規定)等)の適用があるのか、といった多方面からの検討を十分に行わなければ、適切な判断をすることが困難です。
 そのため、検討にあたっては上記の点を念頭に置きながら、分析を進めるよう心がけるとよいでしょう。

(2024年4月執筆)

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