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一般2024年05月22日 教員性犯罪公判に職員動員 横浜市教委、傍聴阻止狙う 「行き過ぎた行為」と謝罪 提供:共同通信社

 横浜地裁で審理された教員による複数の性犯罪事件の公判を巡り、横浜市教育委員会が多数の職員を動員し、一般人が傍聴できない事態が相次いでいたことが21日、共同通信の取材で分かった。市教委は同日午後に記者会見して4事件の公判計11回で動員をかけたと認めた。被害児童・生徒のプライバシーの保護のためだったとしたが村上謙介(むらかみ・けんすけ)教職員人事部長は「行き過ぎた行為だった」と謝罪し、今後は実施しないとした。
 市教委は裁判公開の原則をないがしろにしたのではないかとの質問に「法廷の公益性を妨げ、一般傍聴に支障が出たことは申し訳ないが、そこまで考えていなかった」と釈明した。
 横浜地裁では、注目事件を除いて裁判傍聴の多くが抽選ではなく先着順のため大人数で早くから並べば傍聴席を占めることができる。立ち見は認められていない。
 共同通信は今春以降、小学校校長による強制わいせつ事件や、中学校教員の不同意性交事件などの一部期日で大勢が並んでいるのを確認。市教委によると、2019年度と23、24年度に行われた4件の公判計11回で延べ525人に傍聴を命じ、確認が取れた23、24年度の計8回で延べ371人が実際に裁判所を訪れた。いずれも業務だった。
 動員は、地域別にある市教委の学校教育事務所が関係部署に文書で指示。集団で来たことが分からないよう裁判所での待ち合わせや、事件に関する話題を避けるようになどと求めていた。
 19年度の事件で、市教委が情報収集のため傍聴すると被害者の保護者に伝えたところ「情報が拡散しないよう多くの職員に傍聴してほしい」と要望があり、市教委内で動員を検討、当時の教育長も了承した。23、24年度も市教委側から提案はしておらず「被害者のプライバシー保護のためで、加害者をかばう意図はなかった」と主張した。
 ただ、少なくとも23、24年度の3事件では被害者や被告を匿名にするなどの措置が取られていた。
 市教委は、共同通信の問い合わせを受けた今月7日以降に対応を協議。20日、教職員人事課長名で今後は実施しないとする通知を出した。

開廷1時間前に長蛇の列 傍聴席と同等人数を動員

 職員が大量動員されていた教員による性犯罪事件の横浜地裁公判では、開廷の約1時間前から長蛇の列ができ、一般傍聴者を排除するという横浜市教育委員会の意図が透けて見えた。注目裁判以外で傍聴席が埋まることは珍しい。市教委は21日の記者会見で「傍聴席数と同等の人数に呼びかけた」と明らかにした。
 4月下旬、小学校校長の男による児童に対する強制わいせつ事件の論告求刑公判では、傍聴席50人弱の法廷の前に、開廷約1時間前から席数を超える傍聴希望者が並んだ。通常、見学の学生らや傍聴を趣味とする人が訪れても全席が埋まることはほぼない。
 地裁は混雑を見越してか職員を配置し、廊下にポールを立てて列を整理。スーツや落ち着いた服装の男女が集まり、無言で開廷を待った。公判が終わり、傍聴者とみられる一部を記者が追うと、市教委の出先機関である学校教育事務所が入るビルへと姿を消した。
 席数を上回る傍聴希望者が集まった公判は他にもあった。生徒に対する不同意性交罪で中学校教員に懲役3年、執行猶予5年の判決が出た事件や、教員による不同意わいせつ事件で、いずれも地裁は通常の事件では公開される被害者や被告の氏名を匿名とし、一部事件では犯行場所も「神奈川県内」などとして詳細を明かさなかった。第三者が傍聴したとしても被害者の個人情報はほとんど伏せられていた。
 21日の会見では、その上で、どのような情報を秘匿する目的で動員したのか問う質問が出たが、市教委は曖昧な回答を繰り返すばかりだった。

公開原則に反する行為 識者談話

 裁判制度に詳しい専修大の山田健太(やまだ・けんた)教授(言論法)の話 一般人の傍聴の機会を行政機関が阻害するのは、憲法で定められた裁判公開の原則に反する言語道断の行為だ。裁判は、事件の情報を社会全体で共有し、考える契機となるもので、原因の究明や、同種事案の抑止につながる。横浜市教育委員会はこうした意義を理解しているとは思えず、児童・生徒のプライバシー保護を建前に「教師の犯罪」を隠蔽(いんぺい)していると言わざるを得ない。

傍聴機会封じ言語道断 識者談話

 ジャーナリストの江川紹子(えがわ・しょうこ)さんの話 昨今、教育の場での性暴力は関心を集めている。なぜ事件が起きたのか、再発防止の対策はどうするのか、実際に起きた事件の裁判を通じて考えていくことが重要なのに、一般の人が傍聴する機会を封じてしまっている。横浜市教育委員会がしゃしゃり出てくるような話ではなく、言語道断だ。市教委は被害者保護のためとしているが、裁判所は相当気を使っている。謝罪して終わりではなく、第三者の検証が必要ではないか。

(2024/05/22)

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