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相続・遺言2026年10月09日 相続した空き家、売却する前に確認を ― 3,000万円特別控除の現行制度と今後の改正動向 ― 執筆者:北島淳

 近年、全国で空き家の増加が大きな社会問題となっています。親が亡くなり、実家を相続したものの、「すぐに使う予定がない」「思い出があって手放せない」などの理由から、そのまま空き家になってしまうケースは少なくありません。しかし、空き家は放置する期間が長くなるほど老朽化が進み、修繕や解体に伴う費用も増えていきます。また、売却しようとしても、経年に伴い相続関係者が複数となり、かつ、疎遠となり、容易に話し合いがまとまらない等、処分が煩雑となるケースも少なくありません。そこで、空き家の発生を抑制するための特例制度として「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」が設けられました。

 制度の概要

 本制度の適用対象は、被相続人の死亡で空き家になった家屋・敷地を、相続または遺贈により取得した人が売却した場合の譲渡所得です。譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は上限2,000万円)。適用期間は、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までとなっております。

 適用要件

 ・相続した家屋・敷地を、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却。
 ・被相続人が相続直前までその家屋に居住しており、他の同居者がいなかったこと。
  (一定の条件で老人ホーム入所中も対象)
 ・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)で、区分所有建物は原則対象外。
 ・相続から譲渡までの間、その家屋・土地を事業用・賃貸用・他人の居住用に使っていないこと。
 ・譲渡価額が1億円以下であること。
 ・建物付きで売る場合は、譲渡時点で現行の耐震基準に適合しているか、一定の期限までに耐震改修・
  取壊しを行うこと(令和6年1月1日以降の譲渡で要件が一部緩和)。

 実務上の注意点

 上記の通り、耐震改修または取壊し(更地譲渡)が必要となり、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主の工事が完了し、市区町村からの確認書を受けないと本制度は適用されません。また、買主が負担する取壊し・改修費用は、本来売主が負担すべき費用とみなされます。そのため、特例要件である「譲渡価額1億円以下」の判定には、売却価格に買主負担の改修・取壊費用相当額を加算して判定する必要があります。さらに、本制度を利用して、仮に譲渡所得税が0円となる場合でも、事前に自治体等で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得した上で確定申告をする必要があります。

 なお、小規模宅地等の特例(特定居住用住宅等:評価額80%減額・上限330㎡)の特例を受けた上で、本制度の適用を受けることもできます。その場合は当該宅地等を相続税の申告期限(相続から10ヶ月以内)まで保有していることが要件とされていますので、相続してすぐに譲渡しない様、注意が必要です。

 国土交通省による改正要望

 2026年8月、国土交通省は「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」を公表しました。要望の内容は次の三点です。
① 適用期限を4年延長(令和10年1月1日から令和13年12月31日まで)
② 対象家屋の築年数を緩和
③ 民事信託の終了に伴って家屋・敷地を取得した場合を対象に追加

 注目点は③で、現行の条文は「相続または遺贈による取得」を要件としています。従って、親の認知症対策として家族信託を組み、親が亡くなり信託が終了し、子が実家を受け取った場合、形式上は「相続による取得ではない」ため、本特例の適用を受けられない恐れがあります。認知症対策として家族信託が広がる一方で、その出口で3000万円の控除を失うという問題が指摘されているのです。今後、この点について税制改正大綱を通じ、何等かの回答が出るものと予想されます。

 空き家問題に対する税制改正の動向には、今後も留意が必要です。

(2026年9月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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