コラム2004年09月27日 【SCOPE】 電話加入権が廃止の方向で検討 税務上の取扱いはどうなる?(2004年9月27日号・№084)
電話加入権が廃止の方向で検討
税務上の取扱いはどうなる?
電話加入権が廃止される方向で検討が行われている。電話加入権が廃止されることになれば、現行上、税務上は一時の損金として計上することができる。しかし、すべての企業が損金に算入することになれば、税収にも多大な影響を与えることになるため、財務省側等の対応が注目される。今回は、電話加入権廃止に関する動向と税務上の取扱いについてレポートする。
加入権の受入額は年々減少
電話加入権とは、正式には施設設置負担金といい、NTTが加入者回線設備の新規架設工事に係る費用の一部に充てるという目的で徴収しているもの。すべての新規加入者から現在、72,000円(税抜き)が徴収されているが、平成12年度では360億円の電話加入権の受入額が、平成15年度では64億円と年々減少する傾向にある。
一方、最近では、ライトプラン(電話加入権を支払わない代わりに月々の基本料に一定額を加算するもの)を選択する新規加入者が9割以上を占めていることもあり、ライトプラン加算額収入は年々増加している(図参照)。また、携帯電話の加入者が増加するなどの傾向がある。
このような状況を受け、総務省は7月27日に電話加入権の廃止を含めた見直し案である「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」を公表(パブリックコメントは8月27日で終了)している。

電話加入権廃止はNTTの経営問題
この総務省の見直し案では、電話加入権の廃止を含めた見直しを行う旨が盛り込まれている。ただ、最終的には、NTT東日本及びNTT西日本の経営判断の問題としている。
また、電話加入権が廃止された場合のいくつかの問題点も見直し案では指摘されている。例えば、①電話加入権質に関する臨時特例法や税法等により、電話加入権は財産と位置付けられており、廃止された場合には、電話加入権の市場における取引価格が下落する、②施設設置負担金を支払った人と支払わない人との利用者間の不公平が生じる、③関連業界が壊滅するおそれがあるといった点などだ。
しかし、前述の見直し案では、これらの指摘を持って、電話加入権の額を変更することは妨げないとしており、電話加入権の廃止は規定路線になっているといえそうだ。なお、企業や個人が支出した電話加入権は、あくまでも施設設置負担金であって、返還される性質のものではないことに留意が必要だ。
総額は4兆6,000億円
電話加入権が廃止されることによる利用者側での最大の問題は、税務上の取扱いといえるだろう。現行の取扱いによれば、電話加入権については、減価償却することはできず、無形固定資産として資産計上することになっている(法令12三)。
仮に電話加入権が来年4月以降に廃止されることになれば、電話加入権の資産価値は認められなくなる。そうすれば、企業については、一時の損金として計上することができるようになることが考えられる。電話加入権の廃止を見越して、大企業の一部には、有税で償却しているところもあるようだ。
ただ、今まで企業や個人が支払った電話加入権は膨大な額になっている。NTTによれば、加入者が支払った電話加入権の総額は約4兆6,000億円にものぼっている。この額のすべてが企業の支出したものではないが、企業が一気に即時償却することになると、税収に大きな影響を及ぼすことになる。この点は、財務省側が最も気にしている点だ。
また、総務省に寄せられたパブリックコメントには、即時償却を可能とするべき旨を報告書に明確化すべきとの意見が寄せられており、企業側も注目している点といえる。
5年以内で段階的に減価償却も視野に
前述の総務省の見直し案によれば、電話加入権の廃止をNTTが決定した場合には、廃止の旨を十分に周知する必要があるとしている。例えば、電話担保金融における貸付期間が概ね5年以下であることや、携帯電話の新規加入料の廃止は5年から6年かけての段階的値下げを行った上での廃止だったことを挙げ、参考にすべき旨が明記されている。
このため、現時点では、即時償却できるのか、又は5年程度の期間で段階的な償却を行うかといった点は不明だが、今後、総務省と財務省間において調整が行われることになる。
なお、今回の見直し案については、答申が10月にも決定され、来年3月には省令改正などが行われる予定となっている。NTTの動向とともに財務省の動きも注目されるところだ。
<施設負担金・ライトプランの料金>
【加入電話(ライトプランは平成14年2月開始)】
税務上の取扱いはどうなる?
電話加入権が廃止される方向で検討が行われている。電話加入権が廃止されることになれば、現行上、税務上は一時の損金として計上することができる。しかし、すべての企業が損金に算入することになれば、税収にも多大な影響を与えることになるため、財務省側等の対応が注目される。今回は、電話加入権廃止に関する動向と税務上の取扱いについてレポートする。
加入権の受入額は年々減少
電話加入権とは、正式には施設設置負担金といい、NTTが加入者回線設備の新規架設工事に係る費用の一部に充てるという目的で徴収しているもの。すべての新規加入者から現在、72,000円(税抜き)が徴収されているが、平成12年度では360億円の電話加入権の受入額が、平成15年度では64億円と年々減少する傾向にある。
一方、最近では、ライトプラン(電話加入権を支払わない代わりに月々の基本料に一定額を加算するもの)を選択する新規加入者が9割以上を占めていることもあり、ライトプラン加算額収入は年々増加している(図参照)。また、携帯電話の加入者が増加するなどの傾向がある。
このような状況を受け、総務省は7月27日に電話加入権の廃止を含めた見直し案である「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」を公表(パブリックコメントは8月27日で終了)している。

電話加入権廃止はNTTの経営問題
この総務省の見直し案では、電話加入権の廃止を含めた見直しを行う旨が盛り込まれている。ただ、最終的には、NTT東日本及びNTT西日本の経営判断の問題としている。
また、電話加入権が廃止された場合のいくつかの問題点も見直し案では指摘されている。例えば、①電話加入権質に関する臨時特例法や税法等により、電話加入権は財産と位置付けられており、廃止された場合には、電話加入権の市場における取引価格が下落する、②施設設置負担金を支払った人と支払わない人との利用者間の不公平が生じる、③関連業界が壊滅するおそれがあるといった点などだ。
しかし、前述の見直し案では、これらの指摘を持って、電話加入権の額を変更することは妨げないとしており、電話加入権の廃止は規定路線になっているといえそうだ。なお、企業や個人が支出した電話加入権は、あくまでも施設設置負担金であって、返還される性質のものではないことに留意が必要だ。
総額は4兆6,000億円
電話加入権が廃止されることによる利用者側での最大の問題は、税務上の取扱いといえるだろう。現行の取扱いによれば、電話加入権については、減価償却することはできず、無形固定資産として資産計上することになっている(法令12三)。
仮に電話加入権が来年4月以降に廃止されることになれば、電話加入権の資産価値は認められなくなる。そうすれば、企業については、一時の損金として計上することができるようになることが考えられる。電話加入権の廃止を見越して、大企業の一部には、有税で償却しているところもあるようだ。
ただ、今まで企業や個人が支払った電話加入権は膨大な額になっている。NTTによれば、加入者が支払った電話加入権の総額は約4兆6,000億円にものぼっている。この額のすべてが企業の支出したものではないが、企業が一気に即時償却することになると、税収に大きな影響を及ぼすことになる。この点は、財務省側が最も気にしている点だ。
また、総務省に寄せられたパブリックコメントには、即時償却を可能とするべき旨を報告書に明確化すべきとの意見が寄せられており、企業側も注目している点といえる。
5年以内で段階的に減価償却も視野に
前述の総務省の見直し案によれば、電話加入権の廃止をNTTが決定した場合には、廃止の旨を十分に周知する必要があるとしている。例えば、電話担保金融における貸付期間が概ね5年以下であることや、携帯電話の新規加入料の廃止は5年から6年かけての段階的値下げを行った上での廃止だったことを挙げ、参考にすべき旨が明記されている。
このため、現時点では、即時償却できるのか、又は5年程度の期間で段階的な償却を行うかといった点は不明だが、今後、総務省と財務省間において調整が行われることになる。
なお、今回の見直し案については、答申が10月にも決定され、来年3月には省令改正などが行われる予定となっている。NTTの動向とともに財務省の動きも注目されるところだ。
<施設負担金・ライトプランの料金>
【加入電話(ライトプランは平成14年2月開始)】
事住 区分 | 種別 | 基本料(月額) | 施設設置負担金 | ||
3級局 | 2級局 | 1級局 | |||
事務用 | 既存プラン | 2,600円 | 2,450円 | 2,300円 | 72,000円 |
ライトプラン | 3,240円 | 3,090円 | 2,940円 | - | |
住宅用 | 既存プラン | 1,750円 | 1,600円 | 1,450円 | 72,000円 |
ライトプラン | 2,390円 | 2,240円 | 2,090円 | - |
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