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一般2024年01月05日 私道の通行・掘削に関するトラブルについて 執筆者:政岡史郎

 人間は社会を作って生活していく動物のため、日常生活の中で、どうしても周囲との軋轢やトラブルが生じがちです。騒音や匂い、ごみの出し方トラブル、路上の駐車トラブルなど様々ですが、今回は、住宅街などの戸建てを売買する際にトラブルとなる私道の通行やライフライン設置のための掘削について考えてみたいと思います。

 例えば以下の図のA地を売る場合、AはBから通行や掘削の承諾を得ておかないと、B所有私道を通行することやライフライン設置のための掘削に支障が生じ、A地の市場価値が著しく悪化します。*ちなみに、上記のB所有私道は建築基準法上の道路扱いがされていて(建築基準法42条2項道路や位置指定道路)、A地での建物建築は可能という前提です。

 古くから民法では袋地所有者(今回のA)には他人所有地の通行権(民法210条) が認められており、また、民法改正により、ライフラインを設置するためなら他人所有地の利用は可能となりましたが(従前の判例法理を明文化した民法213条の2の新設 )、通行については車両通行まで当然に認められるわけではなく、A地の使い勝手(市場価値)は著しく落ちてしまいます。また、ライフラインの掘削についても、Bが私道利用を禁止している中での工事は非常にやりづらく(業者が引き受けてくれない可能性)、その意味でも、購入希望者が躊躇することとなり、やはり市場価値が著しく落ちてしまいます。

 社会生活を営む上でご近所さん同士が便宜を図るのは「お互い様」ですので、例えばBから相談を受けた場合には、「Aに通行や掘削を承諾してあげることが好ましい」とアドバイスします。

 というのも、仮に将来Bが土地を売却する場合には、A地との境界の確定測量や分筆などの作業が必要になる可能性もありますので、その際、今度はBがAに測量作業や立会い、境界確認書への署名押印をお願いする立場となります。したがって、なるべくお互いに協調して物事に対処するようアドバイスするのですが、例えばBに将来の心配がなく、かつ、数十年来のやり取りの中で人間関係が悪化していると、BがAに親切にしてあげる動機はなく、Aがただ困るのみ、ということになりかねません。

 では、この場合、AはBに対して私道の通行(車両)や掘削の承諾を求めていく法的な権利や対処法は無いのでしょうか。

 上記の通り、車両以外の通行権やライフライン設置のための土地利用権は法律上で認められているものの、Aには、土地所有者であるBの意思を無視して一方的に承諾を要求する権利はありません。ですから、あくまでBに対して承諾のお願いをしていくしかない弱い立場となります。

 もっとも、B所有の私道が、例えば隣接する多くの住民の一般的な道路として公共的に用いられていて、Aだけの通行を拒否する積極的な理由がない場合(Aの通行を認めてもBに著しい不利益が無い場合)で、他方、Aにとっては必要不可欠なものである場合には、BがAの通行を妨害したら、Aは裁判所に訴えてBの妨害を排除する判決を出してもらったり、緊急を要する場合には仮処分を出してもらうことが出来ます。特に、位置指定道路などになっていて道路部分が非課税になっている場合などは、Bは公共の利用に提供することとの引き換えに税金を免除されている関係にもなりますし、一層、Aの通行を妨害する高度の必然性が無い限り、単なる意地悪は認められないと思います。判例は事件ごとの具体的事情に応じて判断されるため、肯定するものと否定するものがあり、最高裁の平成12年1月27日判決や平成9年12月18日の判決がありますので、参照して頂ければと思います。

 Aとしては、最高裁判所の考え方(Aの必要性とBの生活への支障の程度等によってBの妨害行為を排除しうるという考え)を踏まえ、Bに丁寧に説明した上で、解決策として、通行や掘削の承諾の代わりに私道の修繕や維持のための経費をAも負担するとか、通行などにルールを設けてBの生活に大きな支障が生じないように工夫するとか、またはAが私道持分をそれなりの対価で買うなどの工夫をしながら、交渉や裁判所の調停をもって落としどころを見出していくことになるでしょう。

(2023年11月執筆)

執筆者

政岡 史郎まさおか しろう

弁護士

略歴・経歴

  H7  早稲田大学卒業、都内某不動産会社入社
  H13 同社退社
  H17 司法試験合格
  H19 弁護士登録・虎ノ門総合法律事務所入所
  H25 エータ法律事務所パートナー弁護士就任

「ある日、突然詐欺にあったら、どうする・どうなる」(明日香出版社 共著)
「内容証明の文例全集」(自由国民社 共著)
「労働審判・示談・あっせん・調停・訴訟の手続きがわかる」(自由国民社 共著)
「自己破産・個人再生のことならこの一冊」(自由国民社 校閲協力)

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