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解説記事2016年06月13日 【未公開裁決事例紹介】 借入金の使途等が異なれば別個の事実関係が発生(2016年6月13日号・№646)

未公開裁決事例紹介
借入金の使途等が異なれば別個の事実関係が発生
ノンリコースローンのスキームは関係なし

○外国通貨で支払が行われる金銭の返済であり、法人税法61条の8(外貨建取引の換算)第1項に規定する外貨建取引に該当するため、本件返済の際に生じる為替差益は、益金の額に算入されるとされた事例(平成27年9月1日、棄却)。請求人は、銀行からの借入金の返済は、借入金の残債務額とほぼ同額を同一の外国通貨で他の銀行からの借入金により行ったものであり、借入先の変更による実質的な変化は何もないから、外貨建取引に該当しないと主張。しかし、審判所は、本件借入金と他の銀行からの借入金は、借入金の使途、借入額及び金利等の借入れにおける重要な諸条件が異なっており、本件返済により別個の新たな事実関係が発生したというべきであると判断した。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)が組合員となっている有限責任事業組合が行った米国ドル建の金銭の借入れについて、その返済の際に生じた為替差益のうち請求人の損益分配の割合に応じた額が、請求人の法人税の所得金額の計算上、益金の額に算入されていないとして更正処分を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の調査手続に違法があり、また、当該返済は外貨建取引に該当せず、為替差益に相当する経済的価値は実現していないことから、当該為替差益を所得として認識する必要はないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯(略)
(3)関係法令等の要旨(略)
(4)基礎事実
 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、××に、ホテル経営及びその他の観光事業等を目的として設立された法人であり、その事業年度を毎年5月1日から翌年の4月30日までとしている。
ロ 請求人ほか3名は、平成19年6月8日付で、有限責任事業組合契約に関する法律第3条《有限責任事業組合契約》第1項に基づき、合計2,500,000米国ドル(以下、米国ドルを「ドル」という。)を出資して(うち請求人の出資額は××であり、請求人の同法第33条《組合員の損益分配の割合》に規定する損益分配の割合は××である。)、××(以下「本件組合」という。)の名称で不動産の賃貸等の事業を共同で営むこと、及びその事業年度を暦年(毎年1月1日からその年の12月31日まで)として損益を計算することなどを約した上、同年6月15日までに各出資
の全額を払い込むことにより、有限責任事業組合が成立した。
ハ 本件組合は、平成19年6月29日、米国で、××(以下「本件銀行」という。)から3,300,000ドルを借り入れた(以下、その借入れを「本件借入れ」といい、その借入金を「本件借入金」という。)。同日における対顧客直物電信売買相場の仲値(本件組合の取引銀行である××が公表するもの。以下同じ。)は××であった。
ニ 本件組合は、平成23年7月29日、本件借入れに係る残債務3,089,525.70ドルを本件銀行に返済した(以下、このうち元本の返済を「本件返済」という。)。同日における対顧客直物電信売買相場の仲値は××であった。

争点および主張
(1)争点1 原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の手続に本件各更正処分を取り消すべき違法があったか否か。(略)
(2)争点2 本件返済の際に生じる為替差益は、請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額の計算上、益金の額に算入すべき収益に該当するか否か。
 当事者の主張はのとおり。

【表】本件返済の際に生じる為替差益は、請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額の計算上、益金の額に算入すべき収益に該当するか否かについて
原処分庁 請 求 人
 法人税法第61条の8第1項の規定によれば、外国通貨で行われる全ての取引が外貨建取引に含まれると解される。
 そうすると、本件返済は、同項に規定する外貨建取引に該当することから、本件返済の際に、本件借入れ時点での為替相場により換算した金額と本件返済の時点での為替相場により換算した金額との差額に係る為替差益が発生し、当該為替差益の請求人の損益分配の割合に応じた額は、法人税法第22条第2項に基づき、請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額の計算上、益金の額に算入されるべき収益に該当する。
 請求人が主張するスキームの存在等は上記の理由とは無関係の事情であり、結論に何ら影響を及ぼさない。
 本件返済は、本件借入れの残債務額とほぼ同額を同一の外国通貨で他の銀行から借り入れてしたものであり、借入先の変更である。しかも、本件借入れは本件組合の事業用財産である不動産と借入金が一体となったノンリコースローンの仕組みを用いたスキームであり、その仕組みに、借入先の変更後の借入金がそのまま引き継がれている。
 このように、借入先の変更による実質的な変化は何もないから、本件返済は外貨建取引に該当しないともいえるし、一般的な外国通貨による借入金の返済とは異なり本件返済によっては為替差益に相当する経済的価値は実現しておらず、所得として認識する必要もないことから、本件返済の際に生じる為替差益は、請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべき収益には該当しない。

審判所の判断
(1)争点1について(略)
(2)争点2について
 イ 法令等解釈
 法基通13の2-1-2本文は、客観的な円換算の基準を定めるものであり、合理的であるといえる。法基通14-1-1の2ただし書は、有限責任事業組合を含む任意組合等の組合員である法人について、経理上の煩雑を避けるため、一定の要件の下にその組合事業に係る帰属損益額の計算の特則を定めるものであり、合理的であるといえる。法基通14-1-2の(1)は、任意組合等においてはいわゆる構成員課税が行われることから、その組合事業に係る帰属損益額の原則的な計算方法を定めるものであり、合理的であるといえる。
 以上のことから、これらの定めは、当審判所においても相当と認められる。
 ロ 認定事実  原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件借入れに当たっては、本件借入金は、本件組合が米国に所在する不動産(以下「本件不動産」という。)の賃貸事業を行うための本件不動産の取得費用等に充てられなければならないこと、条件により30日分のLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に××を上乗せした変動金利又は年××の固定金利による利息が発生すること、本件組合が本件銀行のために本件不動産に担保物権を設定すること等が約された。
(ロ)本件組合は、上記(イ)に従い、本件借入金を原資の一部として本件不動産を取得し、これを賃貸するなどして事業を開始した。
(ハ)本件組合は、××から借入れ(以下「××借入れ」という。)を行い、その金額は、平成23年7月29日現在において、3,112,661,000ドルであった。××借入れに当たっては、その借入金は、本件借入れに係る債務の借換えのための資金等に充てられなければならないこと、契約成立日から一定の期間はLIBORに××を上乗せした変動金利による、それ以降はLIBORに一定の利率を上乗せした変動金利による利息が発生すること等が約された。
(ニ)本件組合は、平成23年7月29日、本件借入れに係る残債務を本件銀行に返済し、そのうち本件返済の額は3,074,846.18ドルである。
  また、本件銀行が有していた担保物権は、本件返済の日までに消滅した。
(ホ)請求人は、平成21年6月30日、法人税法施行令第122条の5の規定に基づき、ドル建の短期外貨建債権債務に係る期末換算の方法を発生時換算法とする内容の書面を原処分庁に届け出た。
(へ)請求人は、本件組合の平成22年1月1日から同年12月31日までの事業年度における損失額のうち請求人の分配割合に応じた額を、当該事業年度の計算期問の終了する日が属する請求人の平成22年5月1日から平成23年4月30日までの事業年度の損金の額に算入して申告した。
 ハ 当てはめ及び請求人の主張の当否 (イ)本件返済は、ドルという外国通貨で支払が行われる金銭の返済であるから、法人税法第61条の8第1項に規定する外貨建取引に該当する。そして、本件返済は、法人税法第22条第2項に規定する「その他の取引で資本等取引以外のもの」に該当するから、本件返済の際に生じる為替差益は、益金の額に算入されることになる。
  これに対し、請求人は、本件借入れは、不動産と借入れが一体となったノンリコースローンの仕組みを用いたスキームであることから、借入先の変更による実質的な変化は何もない、一般的な外国通貨による借入金の返済とは異なり本件返済によっては為替差益に相当する経済的価値は実現していないなどと主張する。
  仮に請求人が主張するように××借入れにおいてもノンリコースローンの仕組みが引き継がれているとすれば、本件借入れと××借入れでは本件組合による本件不動産の所有の継続が要素になっているという限りでは共通点が存するとも言い得る。しかし、上記の(イ)ないし(ニ)によれば、本件返済には××借入れにおける借入金が充てられたものであるところ、本件借入れと××借入れでは債権者のみならず予定された借入金の使途、借入額、金利等の借入れにおける重要な諸条件が異なっているし、本件銀行が有していた担保物権が消滅するなどの変動があったことが認められる。こうした本件の事実関係の下では、本件返済により別個の新たな事実関係が発生したものというべきであり、本件返済の際に生じる為替差益の円換算後の額が単に評価上のものにとどまらず、当該差額に相当する経済的価値が実現したものといえる。
  したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(ロ)上記の(へ)で認定した本件組合の事業に関する請求人の申告状況等によれば、本件組合の事業に関する請求人への帰属損益額の計算については、法基通14-1-1の2ただし書及び法基通14-1-2の(1)が適用されるべきであるから、平成23年7月29日の本件返済に関しては、その収入金額等を請求人の分配割合に応じて計算し、これを請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額に算入されることとなる。
  そして、上記の(ニ)のとおり、本件返済の額は3,074,846.18ドルであり、そのうち請求人への帰属額は、前記基礎事実(4)ロの損益分配の割合に応じて分配され、別表2(略)の「③請求人帰属額」欄のとおり××となる。その円換算額は、法人税法第61条の8第1項の規定により本件返済の日である平成23年7月29日の為替相場(法基通13の2-1-2の定めによる電信売買相場の仲値。以下同じ。)により換算すべきであるから、別表2(略)の「⑤円換算額」欄のとおり××となる。他方、法人税法第61条の9第1項、法人税法施行令第122条の4第1項、同令第122条の7第1項の規定と上記の(ホ)の届出の事実を併せると請求人の外貨建債務については短期に分類されるものか否かを問わず発生時換算法によることとなる結果、請求人の平成24年4月期の前の事業年度終了の時におけるドルの円換算額は、本件借入れの日である平成19年6月29日の為替相場により換算すべきであるから、別表2(略)の「④円換算額」欄のとおり××となる。
  そうすると、本件返済の際に生じる為替差益は、別表2の「④円換算額」欄の××と「⑤円換算額」欄の××との差額であり、同表の「⑥為替差益」欄のとおり××となり、請求人の平成24年4月期の法人税の所得金額の計算上、益金の額に算入すべき収益に該当する。
(3)本件各更正処分について  本件各事業年度における請求人の所得金額及び翌期へ繰り越すべき欠損金額は、別表3(略)の「審判所認定額」欄のとおりであると認められ、平成24年4月期における請求人の翌期へ繰り越すべき欠損金額は、原処分の額を下回り、平成25年4月期における請求人の翌期へ繰り越すべき欠損金額は、原処分の額を下回ることとなるから、同処分は適法というべきである。

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