解説記事2018年10月15日 【レポート】 平成30年3月期における会計方針の変更(2018年10月15日号・№759)
レポート
平成30年3月期における会計方針の変更
収益認識基準を変更する企業も
東京証券取引所などに上場している企業の平成30年3月期決算会社では22社(会計方針の変更は23件)の監査報告書において、会計方針の変更に関する強調事項が付されたことが本誌の調査でわかった。強調事項のうち、18社が固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更するものとなっている。また、収益認識基準を変更する企業も見られた。
18社が定率法から定額法に変更 強調事項に付された22社のうち、18社が減価償却方法を定率法から定額法に変更している(下記参照)。例えば、フジクラでは、「生産設備のこれまでの使用実態から急激な技術的・経済的な陳腐化は見られず、また今後も耐用年数にわたり安定的に稼働していくことが見込まれることから、費用を均等に配分する定額法への変更を行いました。」としている。
一方、定額法から定率法に変更した会社が日新製鋼だ。同社は、「新日鐵住金株式会社の連結子会社となったことに伴い会計処理の統一を図るとともに、今後、新日鐵住金グループにおいて推進する事業構造改革による同種設備間での最適な生産配分等により設備の生産性が向上していくことを踏まえた変更である。」と理由を記載している。
収益認識基準を変更する企業も見られた。SDエンターテイメントについては、いわゆる消化仕入について、「売上高及び売上原価を総額表示する方法」から「売上高と相殺して表示する方法(純額表示)」に変更している。「重要なリスクを負担しない取引にかかる「売上高」については、取引高でなく手数料のみの純額で表示すべきとされている」などと説明している。売上高及び売上原価は、それぞれ549,716千円減少しているが、売上総利益、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益への影響はないとしている。
また、ユニゾホールディングスでは、賃貸収入についての収益認識基準を「契約書に基づき収益を認識する方法」から「解約の可能性が高い又は相当程度の不確実性があると判断される場合を除いた期間(賃貸人が退去しない可能性が高い期間が合理的に確実な期間)の段階賃料も含めた契約総額をフリーレント期間を含む当該期間に亘り均等に認識する方法」に変更。海外賃貸物件が増加し、フリーレント期間により収益が大きく変動する状況を踏まえたものと説明している。この結果、売上高は680,053千円増加し、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益はそれぞれ674,015千円増加している。
平成30年3月期における会計方針の変更
収益認識基準を変更する企業も
東京証券取引所などに上場している企業の平成30年3月期決算会社では22社(会計方針の変更は23件)の監査報告書において、会計方針の変更に関する強調事項が付されたことが本誌の調査でわかった。強調事項のうち、18社が固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更するものとなっている。また、収益認識基準を変更する企業も見られた。
18社が定率法から定額法に変更 強調事項に付された22社のうち、18社が減価償却方法を定率法から定額法に変更している(下記参照)。例えば、フジクラでは、「生産設備のこれまでの使用実態から急激な技術的・経済的な陳腐化は見られず、また今後も耐用年数にわたり安定的に稼働していくことが見込まれることから、費用を均等に配分する定額法への変更を行いました。」としている。
SGホールディングス、フジクラ、東京インキ、日本精線、東北特殊鋼、名港海運、日本通運、日本精機、油研工業、エクセディ、オークマ、スガイ化学工業、田中化学研究所、宮入バルブ製作所、みらかホールディングス、わかもと製薬、ジェイ エフ イー ホールディングス、いなげや |
収益認識基準を変更する企業も見られた。SDエンターテイメントについては、いわゆる消化仕入について、「売上高及び売上原価を総額表示する方法」から「売上高と相殺して表示する方法(純額表示)」に変更している。「重要なリスクを負担しない取引にかかる「売上高」については、取引高でなく手数料のみの純額で表示すべきとされている」などと説明している。売上高及び売上原価は、それぞれ549,716千円減少しているが、売上総利益、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益への影響はないとしている。
また、ユニゾホールディングスでは、賃貸収入についての収益認識基準を「契約書に基づき収益を認識する方法」から「解約の可能性が高い又は相当程度の不確実性があると判断される場合を除いた期間(賃貸人が退去しない可能性が高い期間が合理的に確実な期間)の段階賃料も含めた契約総額をフリーレント期間を含む当該期間に亘り均等に認識する方法」に変更。海外賃貸物件が増加し、フリーレント期間により収益が大きく変動する状況を踏まえたものと説明している。この結果、売上高は680,053千円増加し、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益はそれぞれ674,015千円増加している。
【全国証券取引所における平成30年3月期決算会社に係る会計方針の変更に関する注記の強調事項の記載状況】 |
会社名 | 業種 (上場区分) | 強調事項の内容(一部抜粋) | 監査法人等 |
SGホールディングス | 陸運(東証1部) | 会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、従来、定率法を採用していた有形固定資産について当連結会計年度から定額法に変更している。また、一部の有形固定資産の耐用年数を変更している。 | 有限責任監査法人トーマツ |
フジクラ | 非鉄金属(東証1部) | 会計方針の変更等に記載のとおり、従来、会社及び国内連結子会社は、有形固定資産の減価償却方法について、主として定率法を採用していたが、当連結会計年度より定額法に変更している。また、あわせて一部の有形固定資産について耐用年数を変更している。 | PwCあらた有限責任監査法人 |
SDエンターテイメント | サービス (JASDAQスタンダード) | 会計方針の変更に記載されているとおり、従来、「カウネット」事業において売上原価に計上していた商品仕入高について、当連結会計年度より、売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更している。 | 瑞輝監査法人 |
東京インキ | 化学(東証2部) | 会計方針の変更に関する注記に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、当連結会計年度より有形固定資産の減価償却方法を変更している。 | 有限責任あずさ監査法人 |
日本精線 | 鉄鋼(東証1部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、従来、会社は、有形固定資産の減価償却方法について、主として定率法を採用していたが、当連結会計年度より定額法に変更している。 | ひびき監査法人 |
東北特殊鋼 | 鉄鋼(JASDAQスタンダード) | 会計方針の変更に記載のとおり、会社及び国内連結子会社は当連結会計年度より、有形固定資産の減価償却方法を変更した。 | 有限責任あずさ監査法人 |
名港海運 | 倉庫・運輸関連(名証2部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、当連結会計年度より、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法を定率法から定額法へ変更している。 | 有限責任監査法人トーマツ |
日本通運 | 陸運(東証1部) | 会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び一部の国内連結子会社における有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法は、従来、建物は主として定額法、建物以外は主として定率法によっていたが、当連結会計年度より定額法に変更している。あわせて、一部の車両運搬具の耐用年数を変更している。 | 新日本有限責任監査法人 |
日本精機 | 輸送用機器(東証2部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更に記載されているとおり、会社は当事業年度より、有形固定資産の減価償却方法を変更した。併せて、会社は、耐用年数を見直した。(※個別財務諸表のみの記載) | 新日本有限責任監査法人 |
東洋製罐グループホールディングス | 金属製品(東証1部) | 会計方針の変更に記載されているとおり、会社は汚染負荷量賦課金の将来の納付見込額を、汚染負荷量賦課金引当金として計上する方法に変更した。 | 監査法人双研社 |
油研工業 | 機械(東証1部) | 1.会計方針の変更に記載されているとおり、会社は、在外子会社の収益及び費用について、従来、在外子会社の決算日の直物為替相場により円貨に換算していたが、当連結会計年度より期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更している。 2.会計上の見積りの変更と区分することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、従来、定率法(ただし、平成10年4月1日以降に取得した建物(建物附属設備を除く)並びに平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物については定額法)を採用していたが、当連結会計年度より定額法に変更している。 | ロイヤル監査法人 |
日新製鋼 | 鉄鋼(東証1部) | 注記事項(会計方針の変更)に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、当連結会計年度より、有形固定資産の減価償却方法を変更している。 | 有限責任あずさ監査法人 |
エクセディ | 輸送用機器(東証1部) | 会計方針の変更に記載されているとおり、会社は、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、従来、定率法(ただし、1998年4月1日以降に取得した建物(建物附属設備を除く)については定額法)を採用していたが、当事業年度より定額法に変更している。(※個別財務諸表のみの記載) | PwCあらた有限責任監査法人 |
オークマ | 機械(東証1部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び国内連結子会社は、有形固定資産の減価償却方法について、従来、主として定率法を採用していたが、当連結会計年度より、定額法に変更している。 | 東陽監査法人 |
スガイ化学工業 | 化学(東証2部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社は、従来、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について定率法(ただし、平成10年4月1日以降に取得した建物及び平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物を除く)を採用していたが、当事業年度より定額法に変更している。 | 有限責任あずさ監査法人 |
田中化学研究所 | 化学(JASDAQスタンダード) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社は、有形固定資産の減価償却方法について、従来、定率法(ただし、1998年(平成10年)4月1日以降に取得した建物(附属設備を除く)並びに2016年(平成28年)4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物については定額法)を採用していたが、当事業年度より定額法に変更している。 | 有限責任監査法人トーマツ |
宮入バルブ製作所 | 機械(東証2部) | 【注記事項】(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更)(有形固定資産の減価償却方法の変更)に記載のとおり、会社は、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法を定率法から定額法に変更している。 | 藍監査法人 |
みらかホールディングス | サービス(東証1部) | 「会計方針の変更」に記載されているとおり、会社は有形固定資産(平成10年4月1日以降に取得した建物(建物附属設備を除く)及び平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物等を除く)の減価償却方法を定率法から定額法へ変更している。また、減価償却方法の変更にあわせて、有形固定資産の使用実態を見直し、一部の有形固定資産の耐用年数を実態にあわせた耐用年数に変更している。 | PwCあらた有限責任監査法人 |
わかもと製薬 | 医薬品(東証1部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社は当事業年度より、従来、定率法を採用していた有形固定資産の減価償却方法を定額法に変更している。 | 京橋監査法人 |
ジェイ エフ イー ホールディングス | 鉄鋼(東証1部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載のとおり、会社は、当連結会計年度より、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法を変更している。 | 新日本有限責任監査法人 |
ユニゾホールディングス | 不動産(東証1部) | 会計方針の変更に記載されているとおり、会社グループは当連結会計年度より、賃貸収入についての収益認識基準を変更している。 | 新日本有限責任監査法人 |
いなげや | 小売(東証1部) | 会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更に記載されているとおり、会社及び連結子会社の有形固定資産の減価償却方法は従来一部を除き主に定率法を採用していたが、スーパーマーケット及びドラッグストアの小売事業については、当連結会計年度より定額法に変更している。 | 監査法人日本橋事務所 |
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