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コラム2020年11月30日 SCOPE 通達評価額と鑑定評価額との著しいかい離、説明つかず(2020年11月30日号・№860)

国が敗訴を受け入れた「特別の事情」とは?
通達評価額と鑑定評価額との著しいかい離、説明つかず


 評価通達によらない「特別の事情」が存在するとの納税者の主張を容認した10月9日東京地裁判決が、国の控訴断念により確定した(本誌854号40頁参照)。東京地裁は、評価通達に明らかにされていた広大地補正率に基づく減価額が20,526,444円であるのに対し、宅地造成費等は40,467,488円であると認定し、「評価通達により難い特別の事情があると認めるのが相当」と判示していた。市街地農地では、本件にあるような宅地比準方式による評価に当たって、多額な宅地造成費が見込まれる土地(売れそうにない土地)は散見される。どのような事情・状況をもって、評価通達によらない「特別の事情」が認められたのか検証する。

通達評価額>時価だけでは「特別の事情」には該当せず

 本件においては「特別の事情がある」と認定されたが、評価通達の定めは、一般には合理性を有するものと認められ、判例では、「評価通達の定めと異なる評価方法による評価額よりも低いというだけでは、評価通達により難い特別の事情があるとはいえないと解される。」(最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁の千葉勝美補足意見参照)とされている。本件において、東京地裁は「本件土地を宅地転用するのに、評価通達40−2や24−4の定めが想定する程度を著しく超える宅地造成費等(建築基準法上の道路までの通路を開設するのに必要な費用を含む。)を要するような場合には、評価通達により難い特別の事情があると解される。」と判断枠組みを示していた。

固有の事情・状況に「特別の事情」あり

 本件土地の事情・状況は以下のとおりである。
① 本件土地は八王子市〇〇町を東西に走る市道幹線1級33号線から約100m北に位置しているほぼ平坦な農地であり、栗林として利用されていた。また、本件土地は、建築基準法第43条第1項その他の法令に規定する接道義務を満たしておらず、その西側を幅員1.82mの建築基準法上の道路に該当しない赤道(農道)(本件「西側通路」)を通ることにより進入することができる無道路地である。
② 本件土地は、赤道に沿った道路買収を考える場合、建築基準法上の道路まで(北側道路・東側道路・南側道路等)道路用地を買収の上、道路買収部分も開発区域に含めて開発を行わなければならない。道路拡幅部分の買収交渉に当たっては、多額の費用及び複数の地権者との長期間にわたる交渉が予想されるため、実現可能性は低いと言わざるを得ない。また、本件土地は450坪と開発素地としては小さく、事業採算性の面からも、買収交渉にかかる費用・時間・労力等を考えた場合、開発素地としての魅力は乏しい。以上から一般に取引の対象となる土地とは言えず、第三者からの需要を見込むことは難しい。
③ 本件土地は、JR中央線「西八王子」駅の北西約3.8kmに位置している。近隣地域は、「西八王子」駅から徒歩圏外に位置し、住宅地域の中にある果樹園、農地等が見られる地域である。本件土地は市街化区域にある市街地農地であり、形状はほぼ長方形である。東側、南側、西側は生産緑地であって道路を開設できず、宅地転用するには北側への道路開設を要する。

なぜ納税者は勝訴したのか?

 国は評価通達による減価額と宅地造成費等見積額の金額のかい離をできるだけ小さくしようと縷々主張したが、その差を埋めることにはつながらなかった。国は、「開発許可に当たっては道路開設予定地の所有権を必ずしも取得する必要はない。」と無道路地補正の課税実務と矛盾する主張まで行ったものの、東京地裁は、「評価通達20−2が、無道路地補正に当たり、道路開設予定地の権利者の同意により開発許可を受けることが可能であっても、接道義務に基づいて最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額(路線価に地積を乗じた価額)を減価すべきことに照らしても、宅地造成費を算定するに当たり、建築物の建築に必要な最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の買取費用を宅地造成に必要な費用に計上することは合理的である。」と判示して、国の主張を斥けた。
 本件訴訟の敗訴を国が受け入れた事情には、本件で争点となった旧評価通達24−4(広大地の評価)、旧評価通達40−2(広大な市街地農地等の評価)が平成29年改正により削除されていることが窺われる。さらに、本件は「特別の事情」の認定に付随しがちな「相続税の軽減目的」とは距離を置いた事案であり、相続税軽減の目的のために取得した土地ではない。開発できない(売れない)農地に宅地比準課税の網が掛かってしまったケースと言える。納税者の不動産鑑定人は、陳述書の提出などにより、取引事例の採用などでは適切な回答を行っており、国も「課税上の弊害が少ないもの」と受け止め、これ以上の主張(控訴)を断念したものと思われる。

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