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解説記事2022年04月11日 SCOPE 非居住者フリーランスへの支払は内容を問わず源泉徴収の対象(2022年4月11日号・№926)

条約適用手続と併せ課税当局への取材で確認
非居住者フリーランスへの支払は内容を問わず源泉徴収の対象


 非居住者のフリーランスへの報酬は、法人等により行われる所得税法161条1項6号の人的役務提供事業の対価ではなく、所得税法161条1項12号に該当し、役務の内容を問わず国内で行われる限りは源泉徴収が必要であることが、課税当局への取材により確認された。ただし、租税条約が適用可能であれば、様式7を提出することで免税措置の適用が可能であることも、併せて確認されている。

所得税法161条1項6号と12号では「人的役務の提供」は別概念

 フリーランスという言葉も世の中に定着し、企業が個人事業主であるフリーランスに対して役務提供の対価を支払うケースも増えてきている。フリーランスへの報酬は、それが居住者に対するものであれば所得税法204条に定める報酬料金に該当するかどうかで源泉徴収の要否を判断するが、それが非居住者に対するものである場合、そもそも所得税法161条1項のどの号を参照し、どのような役務提供について源泉徴収が必要なのかという疑問が実務家の間で聞かれる。
 所得税法上、国内源泉所得となる人的役務提供の対価には、161条1項6号の「国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価」(以下、「6号所得」)と、同項12号イの「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供……中略……に基因するもの」(以下、「12号所得」)の2種類がある。
 この2つの所得の違いは、法人の場合のように従業員等の他者を派遣して行う人的役務の提供が6号所得、フリーランス(個人事業主)のように自身が行う役務の提供が12号所得に区分される。要するに、他者を派遣するか、個人が自分でやるかの違いとなる。
 6号所得については、所得税法施行令282条1号から3号に具体的にその内容が規定されている。1号が芸能人や職業運動家、2号が弁護士や会計士等の士業、3号が科学技術や経営管理等の専門知識を有する者による役務提供、とそれぞれ定義され、いわば高度なスキルを有する個人による役務提供を念頭に置いている。一方、12号所得の人的役務の提供については、6号所得における施行令282条のような規定は存在しない。そのため、12号所得における人的役務の提供という概念も、高度なスキルを有する個人による役務提供のみが該当するのか、つまり、6号所得における人的役務の提供と同一の概念なのかという疑問が実務家の間で生じていた。
 この疑問を受けて本誌が課税当局に取材したところ、6号所得と12号所得では同じ「人的役務の提供」という用語が使用されているものの、その概念は異なることが確認された。課税当局によれば、まず6号所得は、人的役務の提供を主たる内容とする「事業」を行う者が受ける対価について定めており、施行令282条も、法人等が事業として従業員等を派遣する場合に源泉徴収の対象となる人的役務の提供「事業」の内容を規定したものであるとのことだ。一方の12号所得については、役務の内容を問わず国内で行われれば国内源泉所得とされる給与と並列に規定されていることからも読み取れる通り、12号所得における人的役務の提供という用語は、6号所得のように高度なスキルを要するものには限定されない。
 したがって、非居住者である個人が日本国内で提供した人的役務の対価を支払う源泉徴収義務者は、その個人が属する外国法人等への支払いであれば、6号所得の問題として施行令282条に規定する人的役務の内容に該当しなければ源泉徴収が不要となる余地があるが、フリーランスの非居住者が国内で行った役務提供の対価については、12号所得としてその役務の内容に関わらず源泉徴収が必要ということになる。

租税条約適用時は様式7を提出
 6号所得については、施行令282条3号に定める「科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能」の範囲が非常に曖昧であり、実務的にはどのような役務が3号に該当するのか問題となりやすい。そのため、租税条約の「PEなければ課税なし」という事業所得条項を適用すれば結局は免税とされ源泉徴収が不要となるようなケースでは、6号所得に該当するものとした上で、租税条約届出書の様式6を提出して免税とするケースもあるようだ。
 同様の取り扱いがフリーランスの非居住者が得る12号所得にも適用可能か、本誌が課税当局に取材したところ、同様に、租税条約の事業所得条項による免税措置が適用可能であることが確認された。ただし、フリーランスの非居住者が提出すべき租税条約届出書は、様式6ではなく様式7になるとのことなので、手続上留意が必要だ。なお、国税庁ウェブサイトにある説明を読むと、様式7は給与に関していわゆる183日ルールを適用する場合に使用する届出書のようにも思えるが、フリーランスの非居住者が事業所得条項を適用して免税措置を受ける場合も、様式7を提出するということで差し支えない。

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