税務ニュース2020年03月27日 職員の不正行為で税理士法人に賠償責任(2020年3月30日号・№828) 東京地裁、指示だけでは十分な監督が行われたとはいえず
本件は、原告の会社と税理士顧問契約を締結していた被告である税理士法人の職員が、契約終了後に原告の確定申告書類を偽造し、取引先の紹介を依頼してきた銀行に提出するといった不法行為により、原告の信用が毀損されて無形損害等の損害を被ったとして、使用者責任に基づき約243万円の損害賠償を求めた税賠事件である。
被告である税理士法人の職員(税理士試験は合格も税理士登録はなし)は、税理士顧問契約が解除された後も税理士法人の代表社員に契約が終了した事実を秘密にしており、取引先の銀行から新規取引先を紹介することを依頼され、原告の意向を確認しないまま、原告の直近3年分の確定申告書を偽造し銀行に提出していた(その後発覚)。
被告は、月に1度行われる数時間に及ぶ全体会議など、内部的にチェックする機会を設けていたほか、銀行に原告を紹介するに際しては、職員に対して原告の同意を取るように指示しており、職員が不法行為を行ったことに関して選任監督上の過失はなく、使用者責任を負わないと主張していた。
東京地方裁判所(齊藤学裁判官)は、被告の職員に対する監督の方法は抽象的な主張をするにとどまっているほか、原告の決算書類を銀行に開示することについては、原告の同意を得るように指示したとするが、当該指示をしたのみでは十分な監督が行われたものとはいえないと判断した。
その上で本件不法行為は、営利企業である原告の内容虚偽の決算書類を、原告の取引先銀行に交付するという悪質な行為であって、これにより原告の信用が相当程度毀損されたことは明らかであると指摘。原告が信用回復のために、本来であれば不要な労力を費やして、銀行への説明対応等を余儀なくされていることも考慮すると、原告は本件不法行為により一定の無形損害を被ったものと認めることができるとし、原告が被った無形損害を金銭評価した場合の金額は30万円が相当であると認めた。加えて、弁護士費用が10万円、被告の職員にかかる刑事告発や被告の懲戒請求申立てに要した費用を20万円と算定。原告の主張は60万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとしている。
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