債権管理2020年03月03日 売買契約において瑕疵ないし契約不適合があった場合の解除 施行日前に締結された売買契約において施行日後に目的物に瑕疵ないし契約不適合が発見された場合における契約解除の可否

私は、新法施行日(2020年4月1日)前に、知人が持っていた自作PCを買ったのですが、施行日後に動画編集をするようになって不具合が度々生じます。私としては、知人に対して趣味で動画編集を行うことを説明していたのに、この目的に合致しないPCを売りつけられたのは大変残念な思いです。
私としては、正直PCが要らなくなったので、売買契約を解除したいのですが、新法では、解除の方法について旧法から変化があったと聞きました。
新法施行日前の契約を解除する場合に、新法と旧法どちらが適用されるのでしょうか。

改正法附則34条1項には、施行日前に締結された売買契約については、なお従前の例による旨が規定されています。
したがって、売買契約締結日が新法施行日前ならば、旧法が適用さ れることになります。

1 旧法の規定内容
旧法では、570条・566条において、瑕疵担保責任に基づく解除が規定されています。
解除の要件として、債務者の帰責事由は要求されていませんが、条文上、瑕疵によって契約目的を達することができない場合には解除ができるとされていました。
2 新法の規定内容と旧法との違い
瑕疵担保責任を定めた旧法に代わり、契約不適合責任を定めた新法564条では、「前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。」と規定されています。
要するに、契約不適合がある場合の解除は、債務不履行による一般準則に従って解除することができるようになったのです。
よって契約不適合責任の解除については、催告解除による方法(新法541)と無催告解除による方法(新法542①三前段)が可能となります。
旧法570条・566条とは、解除の要件や方法に大きな違いが生じることから新法と旧法いずれが適用されるかは重要です。
この点、旧法570条・566条は、催告は不要ですが、隠れた瑕疵の存在、買主の善意・無過失、契約目的達成不可能が要件となります。
これに対し、新法541条は、催告を必要としますが、債務不履行が軽微でなければ催告期間経過後に解除が可能です。
なお、新法542条1項3号では、催告は不要ですが、契約目的達成不可能が要件となります。隠れた瑕疵の存在や買主の善悪については特に要件とはされていないところです。
3 新・旧の適用判断
以上のとおり、新・旧の適用判断は重要です。
この点、新法では、改正法附則34条1項において、新法の施行日前に締結された売買契約については、なお従前の例、つまり旧法が適用されると規定されています。
したがって、上記各事項についても旧法の適用があるということになります。
【関連条文】
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2・3 〔省略〕
(売主の瑕疵担保責任)
第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
(贈与等に関する経過措置)
第34条 施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第589条に規定する消費貸借の予約を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。
2・3 〔省略〕
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