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相続・遺言2026年08月28日 相続土地国庫帰属制度における却下・不承認要件の解消 ―法律実務家に期待される役割と事前準備― 実務で役立つ!ベテラン登記官の知恵袋 執筆者:角間隆夫

 令和5年4月から施行された相続土地国庫帰属制度では、申請に基づき審査を行い、申請が承認され負担金が納付されると相続した土地の所有権が国庫へ帰属します。
 承認後、負担金の納付によって土地の所有権が国庫へ帰属することから、法定代理人を除く代理人による申請は認められていないものの、申請書の作成や資料の作成などについては、弁護士、司法書士、又は行政書士の方々が代行することができます。申請書の様式(Word、PDFによるフォーマット)については、法務省ホームページからダウンロードすることができます。
 申請や承認又は却下に関する要件の具体的かつ詳細な内容は、個々の土地の利用状況によって異なります。
 そのため、法務局及び地方法務局にある国庫帰属審査室では、相続土地国庫帰属制度の説明や制度の利用、申請手続に関する相談に応じています。
 申請者本人だけでなく、依頼を受けた弁護士、司法書士又は行政書士の方々は勿論、相続に関する様々な手続に関わる税理士や不動産鑑定士も、申請書の作成を代行することはできませんが、依頼に応じて相談できるので、本制度の利用を検討している場合は、事前に相談をするのがよいでしょう。

【却下・不承認要件の解消】

 令和5年から施行された相続土地国庫帰属制度では、令和8年5月末現在で、5,545件の申請があり、うち2,762件について国庫への帰属が承認されています。
 一方、81件が却下、85件が不承認となり、取り下げられた1,023件中355件が却下・不承認となることが判明したためであるなど、申請された土地のうち約1割程度が、却下又は不承認要件に該当しています(法務省ホームページより)。
 また、概数は不明ですが、申請するための相談において却下又は不承認要件に該当するとして、申請に至らない土地も相当数あると思われることから、申請される方にとっては、相続した土地が却下又は不承認の各要件に該当するのかが、心配であると思われます。
 却下や不承認の要件に該当する土地については、申請しても承認されない可能性が高いものの、以下のように除去できる要件もあるため、依頼者に確認するとよいでしょう。

(1)建物など

 相続により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律25号 以下「法」といいます。)2条3項1号は、建物の存する土地については、承認申請をすることができないと定めていますが、建物がある土地であっても建物を取り壊すことにより同号には該当しないこととなります。
 簡易な物置などは、建物ではなく工作物と判断されることがあり、土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物と判断される場合には、法5条1項2号に該当するとして申請は不承認となるものの、建物と同様に取り壊すことによって、同号には該当しないと判断されます。

 これら建物や工作物がある土地であっても、取り壊すことによって法2条3項1号や法5条1項2号に該当しないと判断されるのですが、その他の却下又は不承認要件に該当する土地もあります。
 したがって、建物などの取壊し予定がない場合には、申請に基づく審査において他の却下又は不承認の要件に該当しないと判断された後に、取り壊すこともあると思いますが、取壊しを依頼する業者の選定などに相当な期間を要する場合には、取下げを求められることや、申請が却下されることもあります。
 そのため、申請に当たっては、申請する土地が却下又は不承認のいずれの要件に該当するのか、また、該当する要件であっても取り除くことが要件であるかを、あらかじめ理解していただくことによって、申請までの準備や申請後の審査が円滑に進めることができます。

(2)樹木

 法5条1項2号は、土地の通常の管理又は処分を阻害する樹木が地上に存する土地は、所有権の国庫への帰属を承認することができないと定めています。
 樹木が存する土地は、必ずしも、不承認となるわけではなく、果樹園にある樹木や害虫に寄生されている樹木、一部の竹などが存する土地が法5条1項2号に該当します。
 同号に該当する樹木が存する土地であっても、樹木を伐採すれば同号には該当しないのですが、伐採に相当な費用や労力を要する場合には、承認申請前に伐採するのではなく、建物や工作物と同様に、承認申請の審査において、他の却下又は不承認の要件に該当しないと判断された後に、伐採することも可能と考えられます。
 また、承認申請土地に存する樹木が、同号に該当する樹木であるか不明である場合も、審査において他の却下又は不承認の要件に該当しないものの、同号の樹木に該当すると判断されてから、伐採することも可能と考えられます。

(3)工作物

 法5条1項2号は、土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物が地上に存する土地は、所有権の国庫への帰属を承認することができないと定めています。
 建物とは認定できない簡易な物置などについては、建物と同様の対応によることが可能ですが、その他に土留めを目的とするコンクリートやブロック擁壁などのうち、劣化が著しく補修を要するものについても、同号の工作物に該当すると判断されることがあります。
 コンクリート擁壁などについては、経年によりクラック等が生じることがありますが、通常の管理又は処分をするために補修を要する工作物であるか、判断できないことがあると思います。
 また、申請人において補修すれば同号に該当しないと判断されるのか、撤去する必要があるのか判断できないこともあると思います。
 承認申請土地にある工作物についても、審査において同号の工作物に該当するのか、該当する場合でも、補修で対応可能であるか、撤去する必要があるかを確認してから、補修又は撤去することも可能と考えられます。

【専門家に期待される役割】

 申請書の作成等を依頼される弁護士、司法書士、又は行政書士の方々は、法令に基づく行政機関における手続に精通していると信頼されていることから、相続土地国庫帰属制度についても、申請手続はもちろんのこと、却下や不承認要件への該当に係る審査についても理解されていると、土地を相続した相続人からの信頼があると思います。

 弁護士、司法書士、行政書士などの国家資格に基づき業務を営まれている方々には、制度の概要はもちろん却下や不承認要件の具体的な事例、申請から承認までの流れ、負担金の算定などについてのご理解をいただき、相談があった際には、相談者が求める内容や事柄について、法令や通達等に基づき制度主旨に沿った的確なご回答をいただくことにより、相続土地国庫帰属制度について一層の活用が図られると思います。

 また、委任や依頼を受けて国庫帰属審査室で相談される場合には、あらかじめ申請から承認までの流れをご理解いただき、必要と思われる資料をご持参いただくことによって、円滑かつ的確に相談に対応することができ、その結果を土地の所有者に正確にお伝えいただくこともできると思います。

 この点、相続土地国庫帰属申請に基づく相談から申請、審査及び承認までの流れをフローチャートで示し、相談又は審査におけるポイントについて理解することができる「フローでわかる 相続土地国庫帰属制度-審査担当者からみた申請手続・判断のポイント-」が発行されました。制度をより深く理解し、効率的に相談及び申請を行いたい方は、ぜひ御覧ください。

【今後の制度の見直しに向けて】

 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が審議された第204回通常国会では、衆議院法務委員会において、相続土地国庫帰属制度について施行後5年の運用状況を踏まえて検討することが付帯決議されています。

 したがって、相続土地国庫帰属制度の施行から5年を経過する令和10年までに、相続土地国庫帰属制度全般について、あらためて検討されると思います。
 その際には、制度を利用される相続等によって土地の所有権を取得された方から直接意見をいただくことはもちろんですが、相続土地国庫帰属制度の利用について相談を受けられる弁護士、司法書士、及び行政書士の方々を含めた国家資格有資格者の方から、制度を利用された方や検討したものの断念された方との相談などにおける実情を踏まえたご意見をいただくことによって、より良い制度への見直しがされると思います。

 相続土地国庫帰属制度の検討においてご意見をいただく場合には、制度を利用される方にとってより良い制度となるよう、現在の制度について主旨や手続について、より正確にご理解いただきますようお願いいたします。

(2026年8月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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