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不動産登記2026年07月14日 処分に困る土地の相続 -相続土地国庫帰属制度と法務局への相談- 実務で役立つ!ベテラン登記官の知恵袋 執筆者:角間隆夫

 土地は大切な資産・財産であって売却することによって、金銭が得られることが常識と思われていたのですが、実際には、
 ・遠く離れた場所にある
 ・農地や山林など維持管理に手間がかかる
 ・使用又は利用する予定がない
などできれば手放したいと考える土地もあると思います。

 建物であれば、費用を要するものの取り壊すという方法もありますが、土地を失くすことはできません。
 不動産業者に仲介を依頼して売買することや、市町村などに寄付することも考えられますが、需要のない土地として、売買や寄付等に応じてもらえないこともあります。
 また、相続により取得した土地を手放したい場合、相続を放棄するという方法もありますが、相続の放棄は、相続した財産全部を放棄する必要があることから、財産の一部である土地や建物の所有権だけを放棄することはできません。

 相続した土地の処分にお困りの方が、インターネットで「相続土地」「引き取り」などと検索すると、相続した土地や売れない土地の処分の引取りや仲介を行う事業者のホームページが掲示されると思います。
 土地は大切な財産であり、売却することや行政機関に寄付することはあっても、家電や家具のように、不用な物について引取り料を支払ってまで、他人に所有権を移転することは考えられないことから、土地の管理や処分に困っていても、インターネットで検索した事業者に連絡することに躊躇されるのではないでしょうか。

 このような有料で不要な土地の引取りを行う事業者が増加したのは、法務局において相続した土地の所有権について国庫へ帰属する制度である「相続土地国庫帰属制度」が開始されたためと思われます。

 相続で取得した土地を、条件はあるものの、国が引き取るという相続土地国庫帰属制度が開始されたことにより、不要な土地について料金を支払って他人に引き取ってもらうことの認識が広まり、事業として成立するとの考えが広まりつつあるのではないかと思われます。

 しかし、中には宅建業の免許を持っていない事業者や、「土地を引き取る」と言いながら、実際にはより高額な別の土地を買わせたり、高額な調査費用だけを受け取って契約を結ばない悪質な事業者もいるなど、法的規制が及ばないことが一部で問題視されています。

 相続により取得した土地を処分したい場合には、民間業者に依頼する前に、相続土地国庫帰属制度の活用を検討するとよいでしょう。

 相続土地国庫帰属制度は、令和3年に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律25号 以下「国庫帰属法」といいます。)」が制定され、令和5年4月から施行されている、相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、その所有権を国庫へ帰属する制度です。

 相続土地国庫帰属制度では、当該土地を相続した者が申請する必要があり、弁護士や司法書士、行政書士に申請書の作成を依頼することはできますが、手続の申請は本人に限られます。ただし、後見人や未成年者の法定代理人、破産管財人は相続人に代わって申請することができます。
 申請には、土地1筆ごとに申請手数料が必要であり、国への所有権の帰属が承認された場合であっても負担金を納めなければ、国に所有権を帰属させることはできません。

 同制度では、売買や寄付などによる所有権の移転と違って、土地の所有権が帰属する国による同意や承諾は要しません。
 しかしながら、どのような土地でも申請すれば、直ちに国に所有権が帰属するのではなく、申請に基づき承認できるか審査します。

 国庫帰属法は、所有権の帰属に争いがある土地や抵当権などの所有権以外の権利が設定されている土地、建物のある土地などは、申請することができない定め(国庫帰属法2条3項)、崖のある土地や工作物などのある土地、隣接する土地の所有者などと争いがある土地など、国に帰属した後、過分の費用や労力を要する土地についても、承認することができないと定めています(国庫帰属法5条1項)。

 また、国庫帰属法は、土地の利用状況(種目)と土地の地積に応じた負担金を定めて、申請が承認された場合であっても負担金が納められなければ、国に土地の所有権は帰属しないとも定めています(国庫帰属法11条1項)。
 これは、相続した土地が国庫へ帰属した場合、その土地は、国以外の第三者に売却等によって処分するまでの間、国が管理することになりますが、土地の維持管理に関する費用は、国が負担することになることから、仮に、負担金の納付を要しないとした場合、国による土地の維持管理に関する費用は、税金等によって賄うことになるためです。

 負担金は、申請人にとって過重な負担とならないように、国へ所有権が帰属しない場合には所有者が負担する土地の種目と地積に応じた10年分の管理費用に相当する額、すなわち申請人が所有を継続した場合、所有者である申請人が土地を管理するために要する10年間分の費用相当額として算出方法が定められています。

 また、申請や承認に関する要件を定めているのは、これらの要件に該当する土地について国が所有権を取得した場合、土地の維持管理や処分にこれらの要件に該当しない土地と比較して過分な費用や労力を要するところ、申請人が納付した負担金を超えた場合には、その費用については税金等によって負担することになるため、申請又は承認することができないとされているものです。

 申請や承認に関する要件の具体的かつ詳細な内容は、個々の土地の利用状況によって異なります。
 そのため、法務局及び地方法務局にある国庫帰属審査室では、相続土地国庫帰属制度の説明や制度の利用、申請手続に関する相談に応じています。
 相続土地国庫帰属の申請は、相続した土地を管轄する法務局又は地方法務局に申請書を提出若しくは送付する必要がありますが、相談はお住まいの各都道府県にある法務局又は地方法務局ですることも可能です。
 相談は、法務局又は地方法務局にある国庫帰属審査室の窓口でのほか、電話やオンラインによることも可能ですが、1回の相談時間は、おおむね30分以内であり、事前に予約が必要です。

 相談で説明される概要や申請手続の流れ、申請書の様式(電子データのフォーマット)が、法務省のホームページに掲示されているので、相談される前に確認することをお勧めします。
 一方、相談するために時間を確保する必要があることから、できるだけ効率的に相談するため、より具体的に相続土地国庫帰属制度の内容や手続を知りたいと思われる方もいらっしゃると思います。

 国庫帰属審査室の相談では、国への所有権の帰属を希望する土地について、基本的に以下の資料等の提示を求められます。
 ① 登記事項証明書
  国庫帰属では、負担金の額が申請意思に大きく関与すると思われることから、相談において負担金を試算することも可能です。
  負担金は、原則として登記されている地積に基づき算定されるため、また、相続等によって所有権を取得した相続人が申請を予定していることや抵当権などの担保権が設定されていないことを確認するため、登記事項証明書が必要となります。
  なお、複数の土地について、承認申請を予定している場合には、予定しているすべての土地の登記事項証明書が必要です。
 ② 地図等
  土地のおおよその位置や道路や隣接する土地との位置関係などを確認するため、登記所に備え付けられている公図が必要となりますが、インターネット上の地図データの写しを持参するとスムーズです。
 ③ 現地の写真
  負担金を試算するための種目の確認や申請又は承認の要件を判断するため、土地を撮影した画像を持参すると効率的に相談できますが、画像を印刷する必要はなく、デジタルカメラやスマートフォンなどに保存されたデータを提示することで十分です。
  なお、撮影の際には以下の点に留意してください。
  ア 土地の位置を確認できる画像であること
  イ 公道との接続状況が確認できる画像であること
  ウ 土地の利用状況が確認できる画像であること

 これら画像などの資料を持参しなかった場合には、次回の相談を予約して、資料を集める必要がありますが、あらかじめ申請までの流れや申請又は承認に係る要件のほか、相談で必要とされる資料や相談における要点等が具体的に分かっていれば、効率的に相談できると思います。

 以上について、相続土地国庫帰属申請に基づく相談から申請、審査及び承認までの流れをフローチャートで示し、相談又は審査におけるポイントを解説した「フローでわかる 相続土地国庫帰属制度-審査担当者からみた申請手続・判断のポイント-」が発行されます。制度をより深く理解し、効率的に相談及び申請を行いたい方は、ぜひ御覧ください。

 次回は、「作成代行を請け負う士業や不動産鑑定士、税理士などの相続に関与する士業向け」の記事を予定しています。

(2026年6月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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