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一般2020年10月23日 スポーツ団体における不祥事対応の現状 執筆者:飯田研吾

 2020年9月25日に、2020年度関東弁護士会連合会シンポジウム「スポーツにおける公正性・公平性の実現のために~障害者スポーツ、不祥事対応を題材として~」が、オンライン配信の方法で行われた。本シンポジウムは、第1部「障害者スポーツの現状と諸問題」、第2部「スポーツ団体における不祥事対応~処分手続の現状と課題~」という2部構成で行われ、筆者は第2部において「スポーツ団体が科した処分(決定)に対する仲裁判断の調査・分析」を担当した。
 このシンポジウム第2部の目玉の一つは、スポーツ団体に対して行った不祥事対応に関するアンケートの実施である。公益財団法人日本スポーツ協会のご協力もあり、実に373のスポーツ団体から回答が得られた。これほど数多くのスポーツ団体からアンケート調査の回答を頂き、その現状を把握できたことは、非常に大きな価値があると考えている。
 第1に、このアンケートで浮き彫りになったこととして、スポーツ団体の規模により(中央競技団体か、都道府県レベルか、市町村レベルか)、不祥事対応への準備・対策状況に大きな差があるということである。特に、処分に関する実体規程の策定状況、手続規程の策定状況、通報・相談窓口の設置状況について、団体の規模が小さいほど準備・対策が十分でないことが判明した。
 その原因として、準備・対策のための人的なリソース、費用面で脆弱であるということがよく言われる。ただ、これらに加えて、全くの私見であるが、アンケートへの回答のあった市町村レベルのスポーツ団体(15団体)の全てが、不祥事案件の把握数及び不祥事処分案件数がともに0件という結果であったことからすると、そういった準備・対策の必要性の認識の部分に差があるように思われる。
 第2に、不祥事発覚の端緒について、アンケート結果では、被害当事者あるいはその家族からの通報が最も多かった。そういった意味では、被害者による相談・通報の仕組みをいかに充実させるかが重要と思われるが、残念なことに、アンケートによれば、相談・通報窓口を設けている団体は全体の約40%にとどまり、設置状況として十分でないことが判明した(中央競技団体でも24.3%が未設置であった。)。
 ちなみに、設置されている相談・通報窓口については、その利用のしにくさが指摘されている1
 最後に、不祥事対応の相談や対応、事実調査、研修の実施について、弁護士や弁護士会に対して期待するという声が相当数認められた。弁護士として必要とされることはありがたいことであるが、他方で、弁護士への依頼の検討にあたって、特に費用面や繋がりがないということが懸念されていることが分かった。
 以上は、アンケート調査の結果の一部であるが、今回のアンケート調査については、岩橋一登弁護士(千葉県)、澤井真洋弁護士(千葉県)、松原範之弁護士(神奈川県)の3名が中心になって取り纏め分析を行っており、詳細は同連合会が発行した報告書をご覧いただきたい(http://www.kanto-ba.org/symposium_video/data/symposium_houkoku.pdf)。
 ご存知の方も多いと思うが、2019年7月に、中央競技団体(NF)向けのスポーツ団体ガバナンスコードがスポーツ庁により策定・公表された。同コードでは、通報制度の構築(原則9)、懲罰制度の構築(原則10)、危機管理及び不祥事対応体制の構築(原則12)が定められている。
 今後、日本スポーツ協会・日本オリンピック委員会・日本障がい者スポーツ協会の加盟団体に対しては、ガバナンスコードの適合状況について、毎年の自己説明及び公表が義務付けられ、4年毎の適合性審査が行われる。
 そう考えると、中央競技団体においては今後の制度・体制の整備が期待できるが、都道府県・市町村レベルのスポーツ団体についてはそのようなインセンティブは働かない。
 しかし、より現場の選手・指導者に近い都道府県・市町村レベルにおける不祥事対応を含めたガバナンス体制・整備の必要性は大きいと思われる。
 上記アンケート結果をふまえると、例えば、一定の地域ごとにスポーツ法に精通した弁護士をプールし、都道府県・市町村レベルでもアクセス可能な体制を整備することが望まれる。ここ最近は新型コロナウィルスの影響で、オンライン会議やオンライン研修などが非常に多くなり、物理的な距離を感じなくなることが多くなっている。良し悪しはあるものの、こうした流れが、弁護士へのアクセス問題の解消に繋がるのではないかと勝手に期待しているところである。

1「数えきれないほど叩かれて」日本のスポーツにおける子どもの虐待 Human Rights Watch,2020年7月,33頁~

(2020年10月執筆)
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