カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

債権管理2020年02月19日 無催告解除 施行日前に締結された取引基本契約に基づき、施行日前又は施行日後に締結された個別契約について、相手方が、施行日後に履行拒絶意思を明確に表示した場合  


 当社は、A社との間で、新法施行日前の2019年12月1日に、継続的に国産木材を購入する取引基本契約を締結しました。その後、新法施行日後の2020年5月1日、国産木材100kgを50万円で購入する旨の個別契約を締結しましたが、A社は、履行期日の1週間前になって、国産木材の価格高騰を理由として、代金の増額がされない限り、同国産木材の引渡しには一切応じられない旨の内容証明郵便を送付してきました。
 この場合、新法と旧法、どちらが適用されるのでしょうか。

 改正法附則32条は、「施行日前に契約が締結された場合におけるその解除については、……なお従前の例による。」と定めています。
 つまり、契約が締結されたのが新法の施行日前なら旧法が、施行日後なら新法が適用されます。
 本ケースでは、取引基本契約締結後、新たに個別契約が締結されたのが新法施行日後ですので、新法が適用されます。
解 説
1 旧法の規定内容
 旧法において、無催告による解除が認められたのは、下記のケース のみです。債務者から履行拒絶の意思を明確に表示されたのみで、無催告解除を認める規定はありません。
・定期行為の債務不履行(旧法542)(下記2の④に対応)
・債務の一部又は全部の履行不能(旧法543)(下記2の①③(一部の履 行不能)、⑥に対応)
 したがって、本ケースでは、無催告解除をすることはできません。
 なお、履行期前の履行拒絶を債務不履行の一類型として捉える見解、すなわち、たとえ履行期前であっても、債務者に債務を履行する意思が全く認められず、かつ、履行をしない意思を覆すことが全く期待できない場合には、それを理由として、(他の要件が充足していることを前提に)損害賠償請求(填補賠償)又は契約解除(無催告解除)を肯定してよいとの見解もありましたが(奥田昌道編『新版注釈民法(10)Ⅱ債権(1)』67頁(有斐閣、2011)参照)、通説として確立したものとまではいえず、最高裁判例においても、履行拒絶がどのような意味を持つのかについて明確に判断を示すものはありません。
2 新法の規定内容と旧法との違い
 新法542条では、旧法で無催告解除が認められたケースに加えて、下記②③(一部の履行拒絶)⑤⑦についても無催告解除が認められることになりました。
 本ケースで新法が適用されるとすれば、②に該当するかが問題となるところ、履行拒絶の意思が内容証明郵便により通知されているとのことですから、債務者の意思は、終局的かつ確定的なものであるといえ、無催告解除が認められるでしょう。
 (1) 新法542条1項:催告によらない契約の全部解除
① 債務の全部の履行不能(1号)
② 債務者による債務の全部の明確な履行拒絶(2号)
 なお、この場合の「履行拒絶」は、履行が拒絶されればいかなる場合であっても填補賠償が認められるわけではなく、履行不能に匹敵すること、すなわち、履行拒絶の意思が終局的かつ確定的であることを要します。具体的には、履行拒絶の意思が繰り返し表示されたり、書面で表示されたりすることが必要です(③⑦の「履行拒絶」要件の充足性を判断するに当たっても、同様です。)。
③ 債務の一部履行不能又は一部履行拒絶による契約の目的の達成不能(3号)
④ 定期行為の債務不履行(4号)
⑤ その他、債務者の債務の履行不能による契約目的達成不能(5号)
 (2) 新法542条2項:催告によらない契約の一部解除
⑥ 債務の一部の履行不能(1号)
⑦ 債務者による債務の一部の明確な履行拒絶(2号)
3 新・旧の適用判断
 改正法附則32条は、「施行日前に契約が締結された場合におけるその契約の解除については、……なお従前の例による。」と定めています。
 このように契約締結時が施行日の前か後かを判断基準とするのは、契約の当事者は契約を締結した時点において通用している法令の規定が適用されると考えるのが通常であるからです(部会資料85 4頁)。
 本ケースでは、新法施行日前に取引基本契約が締結されたものの、新たに個別契約が締結されたのは新法施行日後です。上記部会資料によれば、新法・旧法どちらが適用されるかは、契約当事者の意思解釈の問題となります。本ケースの個別契約は、売買契約の要素である目的物と代金を定めるものですので、契約の当事者としては、当該個別契約が締結された時点で通用している法令の規定が適用されると考えるのが通常と考えられます。したがって、本ケースの事実関係の下では、新法が適用されると考えてよいでしょう。
 他方で、仮に、取引基本契約及び個別契約、いずれも締結日が新法施行日前である場合、旧法が適用されます。
実務の目
 本ケースの事実関係においては、個別契約と新法施行日の先後により、新法・旧法の適用判断を行いました。しかしながら、取引基本契約と個別契約が存在する場合、常に、個別契約の締結日が基準となるのではありません。取引基本契約と個別契約、いずれが新法・旧法の適用判断の基準となるかは、契約の要素がどちらで規定されているか(個別契約が付随的な義務のみを定めるにすぎない場合には、取引基本契約の締結日が基準となる可能性が高いです。)、取引基本契約に個別契約を優先して適用する旨の条項が規定されているか(規定されている場合には個別契約の締結日が基準となる可能性が高いです。)等により決まります。
【関連条文】
新 法
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
 一 〔省略〕
 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三〜五 〔省略〕
2 〔省略〕
改正法附則
(契約の解除に関する経過措置)
第32条 施行日前に契約が締結された場合におけるその契約の解除については、新法第541条から第543条まで、第545条第3項及び第548条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

記事の元となった書籍

関連カテゴリから探す

  • bnr-購読者専用ダウンロードサービス
  • 法苑
  • 裁判官検索