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民事2023年10月18日 配偶者暴力防止法(DV防止法)の改正~改正法の内容と残された課題~ 執筆者:末吉宜子

1 配偶者暴力防止法

  配偶者暴力防止法の正式名称は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」であり、いわゆる「DV防止法」といわれている法律である。
 2023年(令和5年)5月12日に改正法が成立し、令和6年4月1日から施行される予定である。
 本稿では、「DV防止法」の成立から、今回の改正までの主な動きと今回の改正法の主要な改正点をまとめ、家庭内での暴力の防止に向けて取り組むべき方向性を探りたい。
 また、近年増加している「デートDV」への法規制の現状についても述べる。

2 「DV防止法」の成立

 「DV防止法」は、2001年(平成13年)4月に成立し、2001年10月から施行(一部は2002年4月1日から施行)された。
 配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的としたものである。支援施設として、相談支援センタ-、婦人相談所を設置することとし、民間のシェルタ-にも委託できることとなった。そして保護命令の規定が新設され、裁判所は被害者の申立により、加害者に6ヶ月間の接近禁止命令や2週間の住居からの退去命令を出すことができる旨、定められた。命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる。
 この保護命令は、ストーカー規制法には認められていないもので、強力な対応策である。

3 2004年(平成16年)第一次法改正

 この改正では、「配偶者からの暴力」の中に、身体的暴力の他、言葉や態度による精神的暴力も含まれることになった。
 また、保護命令の対象も、「元配偶者」まで拡大された。

4 2007年(平成19年)第二次法改正

 この改正では、保護命令制度の拡充として、生命等に対する脅迫を受けた被害者も保護命令の対象としたこと、電話や面会の強要、乱暴な言動等に対しても保護命令の対象としたこと、被害者の親族に対しても、保護命令の対象となったこと、などである。

5 2013年(平成25年)第三次法改正

 これまでは、適用対象を、事実婚を含む配偶者や元配偶者からの暴力及びその被害者としていたが、この改正で、同居する交際相手からの暴力及びその被害者に拡大した。
 法律名は、これまでの「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」から、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」と「等」を入れたものとなった。
 一方、同居していない場合は適用外であり、恋愛カップル間の「デートDV」は適用外となった。

6 2019年(令和元年)の改正法

 「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」の改正に伴い、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」も一部改正となった。
 児童虐待と配偶者からの暴力は密接な関連があることから、福祉事務所、児童相談所を新たに被害者の保護のための関連機関として明記し、相互に連携を図りながら協力することを努力義務と定めた。

7 2023年(令和5年)5月12日に成立した今回の改正

 保護命令の拡充と保護命令違反の厳罰化として、申立ができる被害者について、配偶者から、「自由、名誉、財産」に対する加害の告知による脅迫を受けた者が追加となったこと、接近禁止命令の発令要件として、「更なる身体に対する暴力又は生命・身体・自由に対する脅迫により、心身に(筆者注:改正前は「身体に」であった)重大な危害を受けるおそれが大きいとき」が加わったこと、被害者と同居する未成年の子への電話等の禁止命令を創設したこと、接近禁止命令等の期間を6ヶ月から1年間に伸長したこと、保護命令違反に対しては、2年以下の懲役または200万円以下の罰金と厳罰化されたこと、などである。
 今回は、大きな改正であった2013年(平成25年)の第三次改正から10年を経ての改正である。この間、同居する配偶者、同居する交際相手からの暴力による、痛ましい事件が後を絶たない社会情勢があり、法の規制により、被害を防止することが強く求められていた。
 施行は2024年(令和6年)4月1日であり、それまでに、社会への周知や啓もう活動、関係機関での体制作りなど、実効性のある法となるよう、準備を進めることが必要となろう。経過について、注視していきたい。

8 いわゆる「デートDV」の被害対策

 「DV防止法」の改正の経緯をみてもわかるように、「DV防止法」の対象となるのは、あくまでも「同居する」配偶者(元配偶者)、交際相手、である。
 同居には至らない「デートDV」は、「DV防止法」のような強力な規制法がない。しかし現実には、被害が広がっているとの報道があり、残された課題である。
 現状では、ストーカー規制法を活用して被害対策をしていくことになると思われる。

(2023年10月執筆)

執筆者

末吉 宜子すえよし たかこ

弁護士

略歴・経歴

資格 弁護士
   1983年弁護士登録(東京弁護士会)

役職 東京弁護士会消費者問題特別委員会 委員
   日弁連消費者問題対策委員会 幹事
   医療問題弁護団 副幹事長

著書(共著) 医療紛争の法律相談(青林書院 2003)
       医療事故の法律相談(学陽書房 2009)
       美容医療トラブル解決への実務マニュアル(日本加除出版 2018)

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