福祉・保健2020年03月09日 サービス提供事業所の職員が、ケアマネジャーとサービス提供事業所の変更を勧誘する 編集/一般社団法人 神奈川県介護支援専門員協会

サービス提供事業所の職員が、ケアマネジャーと サービス提供事業所の変更を勧誘する
現在利用している通所介護事業所の職員が、別の通所介護事業所を併設する居宅介護支援事業所にケアマネジャーとして転職する予定です。
その職員は、自分の担当している利用者に、「転職予定の併設居宅介護支援事業所のケアマネジャーに変更すれば、デイサービスの利用回数を増やせる。」と、ケアマネジャーと通所介護事業所の変更を勧めています。利用者は、新しい事業所であることと、気に入っている職員であることから、その気になっています。
事業所を選ぶのは利用者ですが、その職員の行動に納得がいきません。
その職員は、自分の担当している利用者に、「転職予定の併設居宅介護支援事業所のケアマネジャーに変更すれば、デイサービスの利用回数を増やせる。」と、ケアマネジャーと通所介護事業所の変更を勧めています。利用者は、新しい事業所であることと、気に入っている職員であることから、その気になっています。
事業所を選ぶのは利用者ですが、その職員の行動に納得がいきません。
① 自らの事業所の利益供与のために、不正確な情報で利用者を誘導することは禁じられていますので、管理者に相談することも考えましょう。
② 正しい情報の提供により、サービスの選択ができるように支援しましょう。
1 サービス提供事業所からの利益収受の禁止
この通所介護事業所の職員の行動は適切とはいえません。自らの事業所の利益のために、利用者に直接働きかけて、サービス利用の選択を誘導することは、全てのサービスの運営基準で禁止されています。
特にサービス提供事業所の選択や変更について、居宅介護支援事業運営基準25条において「指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行ってはならない」、また、「指定居宅介護支援事業者及びその従業員は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該居宅サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならない」とされています。
ケアマネジャー自身が事業所の利益を得ることを目的として、別の居宅介護支援事業所の利用を誘導することは、適切ではありません。常に公正中立の立場でいなければならないことを自覚しましょう。
また、このような行動は、現在所属する事業所の就業規則等に抵触することも考えられます。職業倫理として、所属する事業所の規程を遵守しなければなりません。
ケアマネジャー自身が公正中立の立場を任されている身であることを自覚して、専門職として、高い倫理意識を持ちましょう。 自身の職業的立場を高めるのも、まずは、高い倫理意識を持つことから始まります。適切な介護保険制度の運用のために、サービス提供事業所の管理者に相談することも考えましょう。
2 正しい情報の提供によるサービスの選択の支援
サービスを選ぶことは、利用者に自己選択の自由があるということです。ケアマネジャー自身も業務を振り返ったときに、利用者が自由にサービスやサービス提供事業所を選べるように、十分な説明ができているでしょうか。意思決定を支援することは、理解、納得ができるような説明を行うことです。ケアマネジャーとしての説明力について、振り返ってみましょう。
本来は、利用者の要介護状態の改善や、自立した生活の実現のために支援を提供してもらえるサービス提供事業所が選ばれるべきです。 「家から近い」「価格が安い」「設備がきれい」、また、この事例のように、「○回通える」ということが、選択基準になっている現状があります。例えば、通所介護事業所でいえば「通うことが心地よい」ことだけが選択基準になるのではなく、目標を達成でき、要介護状態が改善し、自立に向けた支援をしてもらえることが、選択基準になるべきです。介護保険の理念である、自立を具体化するためにも、サービス提供事業者やケアマネジャーは、そのことを利用者に伝えることが必要だと思います。
ア ド バ イ ス
居宅介護支援事業運営基準24条では、「指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所について広告をする場合においては、その内容が虚偽又は誇大なものであってはならない」とされ、誇大な広告を行うことも禁止されています。広告とは、紙やインターネットの宣伝媒体だけでなく、口頭でも十分広告になり得ます。「うちの事業所を選んでくれれば、…」という発言は、結果的に宣伝し、利益を誘導していることになり、避けるべき言動であることはいうまでもありません。
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