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労働基準2019年09月20日 労働基準法改正への対応等、ケアマネジャーに求められる対応は十分か 発刊によせて執筆者より 執筆者:松川竜也

 労働基準法が改正され、4月1日に施行されました。この改正は、「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進する法律案)に関するもので、【長時間労働の是正】【多様で柔軟な働き方の実現】【雇用形態に関わらない公正な待遇の確保】が主軸とされます。「勤怠管理」は、この法改正を受けて今後ますます重要な業務になりました。しかしながら、実際の業務で具体的に何をどうすればいいのか、理解がされていない場合がみられます。今回の改正により、年間10日以上の有給休暇を付与される従業員(管理監督者等を含む)パート、アルバイトを対象に、企業には「年休を付与した日を基準日として1年以内に5日以上の有給休暇を取得」させることが義務づけられました。また、「年休管理簿」を作成し管理することも義務化されました。従業員が自らの希望で5日以上取得する場合は問題ではありませんが、有給休暇が5日未満の場合は企業による時季指定が必要となります。ただし、従業員に企業が時季指定する場合は、従業員の意見を聞き取り、その意見を尊重するよう努めなければいけません。
 介護サービス事業者の指定権者である都道府県や市町村は、労働基準法等、労働法規に違反して罰金刑を受けた介護サービス事業者の指定を取り消すことができる様、法改正され、平成24年4月から施行されました。これにより、介護保険事業所が労働基準法違反で労働基準監督署の是正勧告の対象となり、適正な措置を取らなかった場合には罰金刑や、介護保険サービス指定事業者の取消し処分とすることが可能となりました。しかしながら、未払い残業代、移動時間に対する賃金の不払い、最低賃金以下の賃金の支払いといった理由で、労働基準法違反で労働基準監督署から是正勧告を受けている介護サービス事業者も少なくありません。介護保険サービス指定事業者の労務管理では、労働時間管理と賃金管理のトラブルが多くみられます。例えば、訪問介護事業所で勤務している登録ヘルパーに対する移動時間に対応する賃金について違反がみられることがあります。訪問介護事務所と利用者宅などを行き来する移動時間は、労働時間として、一定の給料を払う必要がありますが、移動時間を計算せず、一回当たりの移動に対し一律の賃金を支払っている介護事業者がみられます。移動時間についても、それに費やした時間に応じて給与を支払う必要があります。時間に関係なく一定額の給料を支払っている場合、その金額が移動時間に見合う以上の額になっていれば労働基準法には抵触しませんが、実際の移動時間に対し、適切な給与が支払われていない場合は、労働基準法違反となることが考えられます。なお、通勤時間と移動時間を混同している事業所もみられますが、従業員が利用者の家に直行するときは、通勤時間と解釈されます。このことは、もちろん居宅介護支援事業所においても同様です。
 今回の改正で変わったのは、有給休暇の取得だけではありません。これまで、36協定の締結によって延長できる労働時間に法律上の上限はなく、さらに「特別条項」を設けることで、事実上無制限の残業が認められていましたが、今回の改正では、現在の限度基準を法律条文に格上げし、さらに特別条項にも規制を設けることになりました。
 労働基準法が変わったことにより、どのようなことが求められるのかを正しく理解し、対応しなければ、従業員から労働基準法違反について労働基準監督署等に相談され、トラブルとなることも考えられます。改めて労働基準法の改定のポイントや留意点を押さえた対応について、見直しをすることが必要です。
 このように居宅介護支援事業運営には、同居して面倒を見ている家族と相談して決めた計画に他の親族が口を挟んでくるなど、利用者や家族だけでなく、他の親族や近隣住民とのトラブルや、経営者によるハラスメントや時間外勤務など職場でのトラブル、サービス提供事業者が急に閉鎖することになったなどサービス提供事業者とのトラブル、病院から一人暮らしの利用者の入院時に医療同意等を求められるなど医師、その他専門職、行政等関係機関とのトラブル、利用者が亡くなった後に家財整理等を成年後見人にお願いしたら断られたなど介護保険以外の制度等におけるトラブルなど様々なトラブルが想定されます。高齢化が進み、高齢者一人暮らしや高齢者世帯が増加する中で、このような多岐に渡るトラブルへの対応力もケアマネジャーはますます求められるようになります。ケアマネジャーは具体的な内容を踏まえ、トラブルへの対応へ備えていくことが今後は重要となるでしょう。

一般社団法人神奈川県介護支援専門員協会 副理事長
(2019年9月執筆)

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