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紛争・賠償2024年04月24日 全面解決へ、地道な歩み 強制不妊、法成立5年 提供:共同通信社

 旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が強いられた問題で、被害者に一律320万円を支給する一時金支給法は24日で成立から5年。国家賠償請求訴訟の最初の判決前にできたが、近年はこの金額を上回る賠償を国に命じる判決が続き、最高裁大法廷は今夏にも統一判断を示す見通しだ。弁護団は「支給法のアップデートを含む、全面解決の時」と意気込む。被害者は高齢化しており、一時金制度の周知に向けた地道な歩みが続く。
 2019年4月24日成立、施行の支給法は、国賠訴訟の提訴を受けた議員立法だった。全国被害弁護団の新里宏二(にいさと・こうじ)共同代表は、内容は不十分としつつも「被害者の行動が、何十年も国が放置した問題の扉をこじ開けた」と話す。
 訴訟は地裁段階で敗訴が続いたが、大阪高裁が22年2月、国に初の賠償命令を出して以降、流れが変わった。最高裁で審理される高裁判決5件のうち4件が国に賠償を命じ、賠償額は最大で1人当たり1650万円。弁護団は、一時金の支給額増額を求めている。18年1月に初提訴した宮城県の60代女性の義姉佐藤路子(さとう・みちこ)さん=60代、仮名=は「国が人の体にメスを入れたのはひどいこと。過ちを認めて補償してほしい」と訴える。
 国の統計に残るだけでも約2万5千人が手術を受けさせられたが、今年2月末時点で支給認定されたのは1094人。被害者への個別通知は、プライバシーを理由に制度化されておらず、山形県や兵庫県などが独自に行っているだけだ。
 今年3月に予定された高裁判決の約1カ月前、熊本訴訟の原告渡辺数美(わたなべ・かずみ)さん=当時(79)=が亡くなった。原告39人中6人が世を去った。「命あるうちの被害回復」を目指し、弁護団は被害の掘り起こしを進める。
 手術件数が多かった大分県の弁護団は23年、県内約30の障害者支援施設に支給制度を知らせる手紙を出した。今年は精神科病院にも送るつもりだ。
 弁護団の徳田靖之(とくだ・やすゆき)弁護士は「親世代は亡くなり、施設や病院にいる被害者がほとんどではないか。声を上げるには支える人が必要で、職員に制度を知ってほしい」と話す。今後は制度改正による個別通知が必要と考えている。
 3月に今月までだった請求期限を5年延長する改正法が参院本会議で成立した。林芳正官房長官は23日の記者会見で「一時金の水準を含め、国会での議論の進展に向け最大限協力し、議論を踏まえて対応を検討していく考えだ」と述べた。被害者側が求める岸田文雄首相との面会については引き続き検討するとした。

旧優生保護法を巡る経過

 1948年 旧優生保護法施行
 96年 障害者差別に該当する条文が削除され、母体保護法に改称
 2018年1月 宮城県の女性が国に損害賠償を求め仙台地裁に初提訴
 19年4月24日 被害者へ一律320万円を支給する一時金支給法が成立
 5月 仙台地裁が旧法違憲の初判断。賠償請求は棄却し、原告が控訴
 22年2月 大阪高裁が国に初の賠償命令。国は上告
 23年11月 最高裁が5件の上告審について、大法廷での審理を決定
 24年2月 最高裁が弁論期日を5月29日に指定
 3月29日 一時金の請求期限を29年4月23日まで5年延長する改正法が成立

旧優生保護法

 1948年に「不良な子孫の出生を防止する」との目的で制定された。本人の同意がなくても知的障害や精神疾患などを理由に不妊手術や人工妊娠中絶手術を認めた。96年に差別に当たる条文が削除され、母体保護法に改称。2018年以降、全国12地裁・支部で国家賠償請求訴訟が起こされた。各地の判決では「旧法は違憲」との判断が続き、国に賠償を命じる判決も相次ぐ。一時金支給法は一連の判決が出る前の、19年4月24日に議員立法で成立した。

(2024/04/24)

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