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一般2025年07月18日 スタジアム・アリーナビジネスの未来 ~スタジアム・アリーナ基準再考~ 執筆者:松本泰介

 2024年から、広島のエディオンピースウィングスタジアム(サンフレッチェ広島およびサンフレッチェ広島レジーナ)、長崎のピーススタジアム(V・ファーレン長崎)、千葉船橋のららアリーナ東京ベイ(千葉ジェッツ)、長崎のハピネスアリーナ(長崎ヴェルカ)、神戸のジーライオンアリーナ神戸(神戸ストークス)など、スタジアム・アリーナの新設、開業が相次いでいます。今回は、スタジアム・アリーナビジネスの未来を考える上で、スタジアム・アリーナ基準に着目してみたいと思います。

1. スタジアム・アリーナの新設開業の背景

 背景にあるのは、リーグによるスタジアム・アリーナ基準の設定、これに基づく建設です。プロスポーツリーグでは、トップリーグへの参入要件として、参入クラブが利用するスタジアム・アリーナ基準を定めています。このスタジアム・アリーナ基準を満たさない場合、トップリーグへの参入は認められないため、各クラブが利用するスタジアム・アリーナを建設することになります。
 このようなスタジアム・アリーナ基準が定められていることで、各クラブが利用するスタジアム・アリーナがスポーツビジネスを行ううえで最低限の仕様が整えられることになります。JリーグでもBリーグでも、このような最低基準が定められることによって、旧来のスポーツだけを行う競技場から、プロスポーツ興行を実施する最低限のスタジアム・アリーナに生まれ変わっています。

2. 今後のスタジアム・アリーナ

 これからもスタジアム・アリーナの新設、開業は続くでしょう。各クラブの売上を増やしつづけるためには、よりキャパシティの大きなスタジアム・アリーナが求められることになるため、規模を拡大するスタジアム・アリーナが新設されることはとどまることはありません。
 しかし、今後のスタジアム・アリーナビジネスについては、いくつか課題が考えられます。

 ①  ソフトコンテンツの充実

 1つ目は、ハードであるスタジアム・アリーナが整備される中で、エンターテイメントとしてのソフトコンテンツの充実です。昨今新設、開業しているスタジアム・アリーナでも、現代型のスポーツエンターテイメントを十分に実施できていないケースもあります。もちろん従前は公立の競技場、体育館などでやっていた興行がいきなり新設のスタジアム・アリーナに変わりますので、ソフトコンテンツが追い付いていないケースはまだまだ見られます。また、既にお気づきの読者の方もおられるかもしれませんが、新設、開業したスタジアム・アリーナでも、どこか他で見たことのあるような演出が続けられているケースもあります。エンターテイメントも予算次第なところもありますが、多くのスタジアム・アリーナビジネスが見られるようになり、既に10年15年経過してくる中では、より目新しい演出が実施されないと、簡単に飽きられてしまいます。そのような中で、よりファンに魅力的なソフトコンテンツが求められることになるでしょう。

 ②  スタジアム・アリーナ基準の再考

 2つ目は、スタジアム・アリーナ基準の未来です。あくまでスタジアム・アリーナ基準はあくまで最低限のレベルを規律するにすぎません。これからさらに魅力的なスタジアム・アリーナを作っていくために、今後スタジアム・アリーナ基準をどうしていくべきか再考する必要があります。
 意外に見落とされている点ですが、日本のプロ野球はスタジアム基準を持っていません。野球規則に最低限の競技場基準はあるものの、それ以外にJリーグやBリーグが定めるようなスタジアム・アリーナ基準はありません。にもかかわらず、広島のMAZDAZoomZoomスタジアムや、2023年に開業したエスコンフィールド北海道など、極めて特徴的なエンターテイメント性に優れたスタジアムが誕生しています。先日、千葉幕張のZOZOマリンスタジアム近くに、千葉ロッテマリーンズの新スタジアムが建設されることがリリースされていました。この新スタジアムもまた他の12球団の本拠地と異なった特別なスタジアムが完成するでしょう。理由はスタジアム基準がないため、それぞれの球団が自由な発想から魅力的なスタジアムを構想しやすいからでしょう。スタジアム・アリーナ基準の未来がどのようになるのかは、日本のスタジアム・アリーナの未来を決めることになります。

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

(2025年7月執筆)

執筆者

松本 泰介まつもと たいすけ

早稲田大学スポーツ科学学術院教授・博士、弁護士

略歴・経歴

専門分野はスポーツ法、スポーツガバナンスなど。

主な経歴は、日本プロ野球選手会監事、日本プロサッカー選手会執行理事、日本スポーツ仲裁機構理事、早稲田大学スポーツビジネス研究所(RISB)研究員など。

主な著作に、「スポーツビジネスロー」(大修館書店)、「代表選手選考とスポーツ仲裁」(大修館書店)、「標準テキスト・スポーツ法学」(エイデル研究所刊。編集委員)、「理事その他役職員のためのガバナンスガイドブック」(日本スポーツ仲裁機構刊。共著)、「トラブルのないスポーツ団体運営のために ガバナンスガイドブック」(日本スポーツ仲裁機構刊。共著)など。

その他経歴、肩書などは、https://wasedasportslaw.amebaownd.com/参照。

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