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契約2024年09月27日 日本代表の法務 ~日本代表の報酬、報奨金をめぐる問題 執筆者:松本泰介

 パリオリンピックパラリンピックが終了しました。東京大会は無観客で、観客が入った会場で行われたオリンピックパラリンピックは久々でしたので、非常に大きな熱気を感じる大会となりました。
 この時期によく話題となるテーマとして、メダル獲得に伴う日本代表の報奨金のニュースがあります。そこで、今回は、日本代表の報酬、報奨金をめぐる問題に関して、解説してみたいと思います。

1. オリンピックパラリンピックの報奨金

 よく報道されていますが、日本オリンピック委員会(JOC)は、オリンピックメダリストに対して報奨金(金500万円、銀200万円、銅100万円)を支給しています。また、あまり報道されていないかもしれませんが、パラリンピックメダリストも、日本パラスポーツ協会(JPSA)から報奨金(金300万円、銀200万円、銅100万円)が支給されています。オリンピックは1992年のアルベールビル冬季オリンピックから、パラリンピックは2008年北京夏季パラリンピックから支給が開始され、現在まで徐々に金額がアップされてきています。完全に非課税であることも有名なお話です。
 男女の差はありませんが、近年はオリンピックとパラリンピックで差が出ているのは平等ではないのではないかという視点から、海外では同額に設定する国も出てきています。

 このようなJOCやJPSAの報奨金のほかに、各国内競技団体が設定する報奨金もあります。こちらは全額非課税ではなく、一定金額まで非課税というルールになっています。こちらは各団体に設定が委ねられていますので、競技によって報奨金がある競技もあれば、ない競技もあります。
 競技団体ごとの報奨金については、金メダリストが常に生まれる、比較的資金力のある団体でも設定していないこともあります。背景としては、競技団体の限られた強化資金をどこまで1人の結果に還元するか、という視点があります。確かに金メダリストが1人生まれることは大きな功績ですが、そのためにジュニア世代から多くの選手に対して強化資金を投入してきたからこそ、1人のメダリストが生まれることになります。実際若い選手に海外遠征など費用のかかるチャンスを与え続けることによって、より多くのメダリストが生まれるという考えもありますので、一概に良し悪しはわかりません。
 ゴルフはプロ選手が出場するということもあり、日本ゴルフ協会の報奨金は他の競技と比較してかなり高額に設定されていましたが、112年ぶりに復活して期間が浅いことやプロ選手向けの国別対抗戦が少ないためか、どのプロ選手も賞金のないプレーに新鮮さを持っていたようです。

2. 日本代表の報酬、賞金分配

 競技団体によっては、選手に対して、国際大会の出場に関して一定の報酬を支払ったり、賞金分配を行っている団体もあります。以前から報酬と無縁だったアマチュアスポーツも、最近は、賞金が支払われる国際大会への選手参加を認めたり、その場合に一定割合を競技団体が取得することはありますが、残りの賞金取得を選手に認めたりすることになっています。
 プロスポーツにおける日本代表の報酬、賞金分配は近年重要な問題になっています。プロとしてのレギュラーシーズンに加え、日本代表としての試合もあり、日程的にも移動的にも過密になってきた中で、どこまで日本代表活動に参加するかは報酬次第のところもあります。以前のような日本代表の名誉だけで出場できるものではなくなっています。競技団体も選手への報酬や賞金分配を検討し、どのように日本代表の強化や価値を向上させるのか考えなければならない時代です。
 その中で競技団体も可能な限り日本代表選手に報酬を支払うようになっています。国際大会に勝利給などを設定している団体だけでなく、出場給を用意する団体もあります。また、賞金を獲得できた場合、それを競技団体と選手間で折半するケースも出てきました。女子サッカー日本代表が前回のW杯から大きな賞金分配を得られることになったことも報道されていました。海外では、スポンサーボーナスや競技団体収入の一定割合をレベニューシェアするケースも出てきており、日本代表の価値向上に向けて、競技団体と選手が工夫している事例もあります。

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

(2024年9月執筆)

執筆者

松本 泰介まつもと たいすけ

早稲田大学スポーツ科学学術院教授・博士、弁護士

略歴・経歴

専門分野はスポーツ法、スポーツガバナンスなど。

主な経歴は、日本プロ野球選手会監事、日本プロサッカー選手会執行理事、日本スポーツ仲裁機構スポーツ団体のガバナンスに関する協力者会議委員、早稲田大学競技スポーツセンター副所長、早稲田大学スポーツビジネス研究所(RISB)研究員など。

主な著作に、「スポーツビジネスロー」(大修館書店)、「代表選手選考とスポーツ仲裁」(大修館書店)、「標準テキスト・スポーツ法学」(エイデル研究所刊。編集委員)、「理事その他役職員のためのガバナンスガイドブック」(日本スポーツ仲裁機構刊。共著)、「トラブルのないスポーツ団体運営のために ガバナンスガイドブック」(日本スポーツ仲裁機構刊。共著)など。

その他経歴、肩書などは、https://wasedasportslaw.amebaownd.com/参照。

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