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経営・総務2020年06月06日 TDB景気動向調査(全国) ― 2020年5月調査 ― 出典:帝国データバンク

国内景気は生産活動の減退が継続
~急激な経済収縮には歯止めも、世界経済の先行きが懸念材料~

(調査対象2万3,675社、有効回答1万1,979社、回答率50.6%、調査開始2002年5月)
調査結果のポイント
1.2020年5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の25.2となり8カ月連続で悪化した。国内景気は、急激な収縮には歯止めがかかったものの、生産活動の減退が続いた。今後は、国内外の懸念材料がみられるなか、後退傾向が一時的に下げ止まるとみられる。
2.10業界中、『製造』『卸売』など5業界が悪化、『不動産』『サービス』など5業界が改善した。『製造』は調査開始以降で初となる、13カ月連続の悪化となった。51業種別では「広告関連」など、7業種が過去最低を記録した。
3.4月7日に始まった緊急事態宣言が一部地域では5月25日まで続いた。こうしたなか、10地域中9地域31都道県が悪化、『北陸』が改善した。外出自粛や休業要請などによりヒトやモノの移動が大幅に縮小したことが地域経済に響いた。「大企業」「中小企業」「小規模企業」は8カ月連続でそろって悪化した。
<2020年5月の動向:後退局面>
 2020年5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の25.2となり8カ月連続で悪化した。
 5月の国内景気は、政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けて発した緊急事態宣言が25日まで継続され、大幅に制約された経済活動が続いた。生産調整や一時帰休などが実施され、生産・出荷量DIが過去最低の水準まで落ち込んだほか、企業の人手不足感は急激に減退した。他方、緊急事態宣言の解除を前にした5月中旬頃から企業の景況感は徐々に上向き始めた。外出自粛による自宅内消費の高まりやテレワーク、ビデオ通話の拡大のほか、衛生商品やハンドメイド商品などは好材料だった。
 国内景気は、急激な収縮には歯止めがかかったものの、生産活動の減退が続いた。
<今後の見通し:一時的に下げ止まり>
 今後の国内景気は、緊急事態宣言が解除されたことで、経済活動が徐々に始動していくとみられる。生産調整や一時帰休などによる落ち込みからの挽回生産が期待されるほか、外出自粛や休業にともない創出された新規需要に向けた商品・サービスも好材料となろう。さらに緊急経済対策や金融緩和政策の強化に加え、訪日観光消費の再開なども下支え要因となる。他方、新型コロナウイルスの第2波・第3波の可能性は非常に大きなリスクといえる。企業の売り上げが激減したなか、企業業績の悪化にともなう雇用・所得環境の悪化が懸念材料である。また世界経済は大幅な落ち込みが予測され、景気回復には時間がかかるとみられる。国内景気は新型コロナなど外部環境の変化に左右される状態が続く。
 今後は、国内外の懸念材料がみられるなか、後退傾向が一時的に下げ止まるとみられる。
業界別:10業界中5業界が悪化、7業種で景気DIが過去最低に
・10業界中、『製造』『卸売』など5業界が悪化、『不動産』『サービス』など5業界が改善した。51業種別では「広告関連」など、7業種が過去最低を記録した。
『製造』(23.0)…前月比1.7ポイント減。調査開始以降で初の13カ月連続で悪化。『製造』の設備稼働率DIは30.5となり、2009年7月(30.1)以来の水準まで低下した。前月に続き過去最低の水準となった「飲食料品・飼料製造」(同0.2ポイント減)は、内食向けの需要がある一方で、清酒や肉製品などで外食向けの需要が減退した。「出版・印刷」(同2.4ポイント減)は、広告出稿の減少やイベント自粛で印刷需要が落ち込んだ。また、国内外の自動車工場での生産減少、稼働停止の動きがサプライチェーン全体へ波及し、「輸送用機械・器具製造」(同4.0ポイント減)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同2.1ポイント減)、「化学品製造」(同2.2ポイント減)などに影響した。『製造』は12業種中11業種が悪化となった。
『卸売』(23.0)…同0.7ポイント減。8カ月連続で悪化。製造でも過去最低水準となった「飲食料品卸売」(同0.3ポイント減)、紙製品や文房具・事務用品の卸売が悪化した「紙類・文具・書籍卸売」(同2.9ポイント減)など3業種で過去最低を記録。「機械・器具卸売」(同0.8ポイント減)は、取引先の在宅勤務による営業活動の制限や、設備投資意欲の減退が影響した。工場の稼働率低下やガソリンの需要が減少した石油卸売を含む「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(同0.4ポイント減)、建設用資材の流通に影響がある「建材・家具、窯業・土石製品卸売」(同0.2ポイント減)など、『卸売』は9業種中7業種が悪化した。
『農・林・水産』(25.1)…同3.1ポイント減。6カ月連続で悪化し、2009年3月(24.2)以来11年2カ月ぶりの低水準。飲食店、学校給食向けの農作物・水産物・畜産物の需要が落ち込み、生産・出荷量DIは調査開始以降で最低の水準となった。住宅着工戸数が減少基調で推移するなか、木材の需要が見込めず森林組合の景況感も悪化。他方、2020年以降雇用過不足DIは低下傾向も、外国人技能実習生の入国の見通しが立たないといった問題もみられ、依然判断の分かれ目である50を上回り人手不足感が継続している。
『サービス』(26.1)…同0.3ポイント増。4カ月ぶりに改善。建設用機械器具賃貸などが持ち直した「リース・賃貸」(同1.3ポイント増)、リモート需要が追い風となった「情報サービス」(同0.3ポイント増)などの改善が寄与した。「旅館・ホテル」(同1.4ポイント増)、「飲食店」(同1.2ポイント増)、「娯楽サービス」(同3.7ポイント増)は改善したものの1桁台が継続している。他方、「広告関連」(同0.6ポイント減)は広告出稿の減少やイベント自粛が影響し、4月に続き過去最低を更新。また、派遣先企業の営業自粛など人手不足感の急激な減退を受け「人材派遣・紹介」(同1.0ポイント減)が悪化した。
規模別:全規模が8カ月連続で下落、一方で新たな需要の創出も
・「大企業」「中小企業」「小規模企業」が8カ月連続でそろって悪化した。緊急事態宣言による影響が継続した一方、大手を中心に新たな需要創出も一部でみられた。
「大企業」(28.1)…前月比0.1ポイント減。8カ月連続で悪化。取引先の休業など派遣
「中小企業」(24.6)…同2.4ポイント増。悪化は8カ月で停止。ソフトウェア業界では補助金を利用した民間需要が高まるなど、人材難のなか堅調な受注状況となった。また家具インテリアや家庭菜園、衣服などのネット販売やカタログ販売などが上向いた。
「小規模企業」(24.6)…同0.8ポイント減。8カ月連続で悪化。生産活動の縮小・中止が相次ぎ機械製造や出版などが悪化、『製造』は全12業種が落ち込んだ。工事の中断や設備投資の先送りなども悪材料となるなど、景気DIは10業界中4業界で20を下回った。
地域別:10地域中9地域31都道県が悪化、ヒト・モノの移動縮小が影響
・4月7日に始まった緊急事態宣言が一部地域では5月25日まで続いた。こうしたなか、10地域中9地域31都道県が悪化、『北陸』が改善した。外出自粛や休業要請などによりヒトやモノの移動が大幅に縮小したことが地域経済に響いた。
『北海道』(27.5)…前月比3.2ポイント増。悪化は6カ月で停止。特別定額給付金の支給が続いたなか『小売』の改善が顕著だったほか、「中小企業」も目立った。また青森市や仙台市など都市部で上向き傾向がみられた。
『南関東』(25.5)…同0.8ポイント減。4カ月連続で悪化。緊急事態宣言が49日間続いたこともあり、域内1都3県は4カ月連続でそろって悪化した。特に『小売』は外出自粛などの影響を大きく受け、景況感が過去最低を更新した。
『中国』(25.7)…同1.3ポイント減。8カ月連続で悪化。主力産業である自動車や製鉄業などの生産調整や一時帰休などの実施により、関連部品メーカーや物流など幅広い業種で落ち込んだ。また「岡山」「広島」は2カ月連続で前年同月より20ポイント以上悪化した。
2.調査事項
 ・景況感(現在)および先行きに対する見通し
 ・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
3.調査時期・方法
2020年5月18日~5月31日(インターネット調査)
景気動向指数(景気 DI)について
■TDB 景気動向調査の目的および調査項目
 全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万3千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
 全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI 算出方法
 DI(ディフュージョン・インデックス〈DiffusionIndex〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。
 景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。
■企業規模区分
 企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。
■景気予測 DI
 景気DIの先行きを予測する指標。ARIMAモデルに、経済統計やTDB景気動向調査の「売り上げDI」、「設備投資意欲DI」、「先行き見通しDI」などを加えたstructuralARIMAモデルで分析し、景気予測DIを算出している。

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