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経営・総務2019年11月28日 特別企画:駆け込み需要と反動減に関する企業の意識調査 出典:帝国データバンク

駆け込み需要、企業の26.5%にとどまる~ 小売業においては、半数以上の企業で反動減が発生~

はじめに

2019年10月1日、2度にわたり延期されていた消費税率の引き上げが実施された。
今回の消費税率引き上げは、8%から10%に税率が引き上げられると同時に、軽減税率制度やポイント還元制度、住宅ローン減税の期間延長など、さまざまな対策が行われている。こうしたなか、消費税率引き上げ前には緩やかながらも一部で駆け込み需要が表れた一方で、引き上げ後の反動減が懸念されている。
そこで、帝国データバンクは、消費税率引き上げにともなう駆け込み需要と反動減に関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年10月調査とともに行った。
※調査期間は2019年10月17日~31日、調査対象は全国2万3,731社で、有効回答企業数は1万113社(回答率42.6%)

1.駆け込み需要、企業の4社に1社にとどまる

自社における消費税率引き上げ前の駆け込み需要の有無について尋ねたところ、『駆け込み需要があった1』とする企業は、26.5%となった。また、駆け込み需要が生じた時期をみると、「2019年9月頃から駆け込み需要があった」が12.3%で最も高かった。他方、「駆け込み需要はなかった」とする企業は66.7%となった。
『駆け込み需要があった』企業を業界別にみると、「家具類小売」や「家電・情報機器小売」などの『小売』が58.7%で最も高かった。次いで、『卸売』(34.9%)、『運輸・倉庫』(27.8%)、『建設』(27.1%)が続いた。
特に、『小売』においては、「2019年9月頃から駆け込み需要があった」(28.3%)と「税率引き上げ直前(1週間前程度)に駆け込み需要があった」(22.7%)の合計が半数を超えており、消費税率引き上げの1カ月前から顕著に駆け込み需要が発生していた。また、『建設』においては、「建築を前倒しで実施する顧客があったため、当社の受注も増加。前期(2019年7月期)の増収に貢献」(信号装置工事、東京都)という声もあるように、2018年10月頃から2019年7月頃にかけて、断続的に駆け込み需要が生じていた様子が浮き彫りとなった。一方、『農・林・水産』(13.5%)など10業界中5業界が1割台となっており、消費税率の引き上げに際して、恩恵を受けた業界とそうでない業界との差が表れた。
他方で、企業からは「これまでの消費税率との差が2%なので、大きな買い物でなければ駆け込み需要はなく、前回の引き上げのような変化は感じられなかった」(建築工事、徳島県)や「消費税率10%について、事前に取り組む方針を顧客に展開してきたので、駆け込み需要などなく計画的に移行できた」(貸事務所、埼玉県)などといった声があがっていた。
1『駆け込み需要があった』は、「2018年10月頃から駆け込み需要があった」「2019年1月頃から駆け込み需要があった」「2019年4月頃から駆け込み需要があった」「2019年7月頃から駆け込み需要があった」「2019年9月頃から駆け込み需要があった」「税率引き上げ直前(1週間前程度)に駆け込み需要があった」の合計

2-1. 企業の 55.3%で反動減はないと認識も、『小売』では半数以上の企業で発生

消費税率引き上げ後における需要の反動減について尋ねたところ、10月時点で「ある」とする企業は19.4%となった。一方で、「ない」とする企業は、半数超の55.3%であった。
「反動減はある」とする企業を業界別にみると、『小売』が53.9%で突出して高かった。次いで、『卸売』(26.8%)、『運輸・倉庫』(20.2%)が2割台で続いた。上位3業界以外は1割台となっており、多くの業界で反動減はないと認識 している様子がうかがえた。また、規模別にみると、「大企業」では2割を超える企業で「反動減はある」と認識していた。

2-2. 駆け込み需要があった企業においても3割超で反動はなし

他方、『駆け込み需要があった』企業2,683社でみると、「反動減はある」は49.4%となった。 一方で、「ない」とする企業は31.9%となり、駆け込み需要があった企業においても約3社に1社は、現時点では駆け込み需要による反動は生じていない様子がみられた。
企業からも「反動減については思いのほか生じていない。逆に人手不足感から引き 合いが増加している」(木造建築工事、栃木県)や「消費税率が10%の対象となる商品 は駆け込み需要がみられたが、軽減税率や還元制度があるため現時点ではあまり影響 はない」(各種食料品小売、神奈川県)などといった意見が聞かれた。
また、駆け込み需要と反動減の両方に直面した企業を業界別にみると、『小売』(72.0%)が最も高かった。次いで、『金融』(60.7%)が6割台、『卸売』(56.2%)などが5割台で続いた。一方で、『建設』(28.0%)は、唯一2割台にとどまっており、駆け込み需要が生じていた上位の業界であっても需要の反動には差異がみられた。

まとめ

政府は、2019年10月1日に消費税率を8%から10%に引き上げると同時に、消費税の軽減税率や住宅ローン減税の期間延長などの制度をスタートさせた。
本調査によると、『小売』を中心として、企業の4社に1社で駆け込み需要がみられた。一方で、6割を超える企業で駆け込み需要は生じていないと認識していた。また、反動減においても半数以上の企業で現時点における需要の反動はないとみており、軽減税率制度など政府が進める景気への悪影響を抑制する各種軽減措置が奏功している様子もうかがえた。
他方で、現時点では、需要の反動はみられていないが、「マイナスの影響は、ポイント還元制度の終了後から顕著になると考えられる」(一般旅行、東京都)といった意見にもあるように、キャッシュレス・ポイント還元事業などの需要平準化対策の終了後に反動減を危惧する声も聞かれた。
これから季節消費の増加が見込まれる年末年始が控えるなかで、消費税率引き上げの影響がどの程度及ぶのか注視する必要がある。また、政府には、一時的な需要平準化政策だけでなく、所得増加など消費の基盤となる対策を継続的に打ち出すことが求められよう。

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