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倒産2020年02月18日 特別企画:パン製造小売業者の倒産動向調査(2019年) 出典:帝国データバンク

パン屋の倒産、過去最多
~近畿エリアで急増~

はじめに
 パンの消費が旺盛だ。1世帯あたりのパンに対する支出額は、2011年に米を抜いて伸びているうえ(『家計調査』<総務省統計局>)、ここ数年は高級食パンが牽引し、空前のパンブームとなった。一方、こうした裏側では、同業間の競争激化により売上不振に陥る業者も少なくない。加えて、薄利多売のビジネスかつ原材料・人件費の高騰や廃棄ロスで採算が悪化。特に家族経営の業者は、後継者問題や店主の病気・体調不良、重労働などによる人手不足も重なり、懸念材料が内包している。
 帝国データバンクは、「パン製造小売」を主業としている事業者の2010年~2019年の倒産(負債1000万円以上の法的整理)について分析した。なお、本調査は今回が初めて。

※「パン製造小売」はパン類を製造し、その場所で小売する事業者
※「パン製造」を主業としている製パン業者は対象から除外した

1. 件数・負債総額~前年比2倍で、過去最多
 2019年の倒産件数は31件で、前年比2.1倍となり過去最多を更新した。2011年以降は10件台で推移していたものの、2年ぶりに前年を上回り、初めて30件を突破した。
 負債総額は18億200万円となり、同じく2年ぶりに前年比増加となった。負債額トップは、大阪・兵庫エリアにて手作りパンの店「Copenharvest」を約18店舗展開していた、元・運営会社の(株)CH(負債約5億3100万円、特別清算)。
2. 負債規模別~小規模倒産が7割を占める
 負債規模別にみると、「1000万円-5000万円未満」が22件で最多となり、7割(構成比71.0%)を占めた。次いで、「1億円-5億円未満」が5件(同16.1%)、「5000万円-1億円未満」が3件(同9.7%)となった。一方、負債「5億円以上」の倒産は(株)CHのみとなり、同レンジの倒産は2010年以来9年ぶりに発生した。
3. 地域別~「近畿」が6割を占めトップ
地域別にみると、「近畿」が19件で最多となり61.3%を占めた。次いで、「関東」の4件(構成比12.9%)、「中部」の3件(同9.7%)と続いた。都道府県別では、「大阪府」が8件でトップ。もともとパン製造小売業者の多い地域であるうえ、近年品質が向上したコンビニパンなど他業態との競争が激化し、販売不振に陥る小規模事業者が表面化した。
4. 業歴別~「30年以上」が35.5%で最多
 業歴別にみると、「30年以上」が11社(構成比35.5%)で最多。次いで、「10-20年未満」が10件(同32.3%)と続き、両レンジが3割を超えたことで、業歴10年以上の業者が7割超を占めた。特に、業歴が長く家族経営がベースとなる小規模事業者では、後継者問題から事業継続を断念する事業者も散見された。
5. まとめ
 2019年のパン製造小売業者の倒産件数は31件となり、過去最多を更新した。負債総額についても、(株)CHや、大田区内・川崎市内等に店舗を構えていた(株)イッツピーターパンのような多店舗展開する事業者の破綻が目立ち、負債18億200万円に達した。近畿エリアが倒産全体の6割を占めたことも特徴的だった。
 他方、地域に根付いた個人事業者が多いことから、負債「5000万円未満」が全体の約7割を占めた。店舗の立地が重要となるパン屋だが、高級路線や特色のある商品を打ち出すような同業他店等との競争が激化し、店舗開設に伴う借入金の返済負担のほか、小麦粉・バター等の原材料や人件費の高騰で採算が悪化し、代表者の病気・体調不良も重なって、運営体制を維持できなくなるケースがみられた。昨年末には、高知市の人気ベーカリー「くまのPAN屋」を運営していた(株)ブーランジェリ近森や、今年に入っても「サンキョウ・ブレッド」のブランド名で学校給食向け等にも幅広くパン製造販売を行っていた三共フーズ(株)(石川県白山市)の破綻も聞かれ、今後も中小規模事業者を中心に、厳しい業況を余儀なくされる業者の淘汰は進んでいくとみられる。

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