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行政・財政2022年02月25日 国有財産の使用許可制度 3 (使用料について) 執筆者:髙松佑維

1.はじめに
前回前々回の記事では、使用許可制度の概要や性質、要件の内容等を取り上げました。一定の場合を除き、使用許可を受けると使用料を払う必要があります。この使用料はどのように決められるのでしょうか。
2.使用料の性質
使用許可は行政の長による裁量処分であり、行政の長が自身の有する裁量権の範囲内かつ適切な裁量権行使の下、処分内容を決定するものです。許可申請を受けた行政の長は、許可の可否だけでなく許可条件についても検討します。
そもそも、国の財産は適正な対価なく貸付できないとされ(財政法第9条第1項)、国有財産法第22条及び第23条は、一定の場合を除いて貸付料を「納付させなければならない」と定めています。これらの条文は同法第19条によって使用許可の場合に準用されており、一定の場合に無償で使用許可できるという条文が別に設けられています(同法第18条第7項)。このように行政財産の使用許可では、使用収益に対する適正な対価として使用料を納付させることが原則となっています。
一方で使用料に関する要件等は国有財産法等で定められていません。使用料はその性質上、許可範囲や内容と密接に関連し、使用許可処分に付される付随的な条件であること等に照らすと、使用料を納付させること(使用料納付義務を課すこと)は使用許可処分に付随するいわゆる附款であると考えられます。
つまり、使用料の決定も行政の長の裁量の下で行われるということです。
3.使用料に関する蔵管1号による算定基準
前回の記事で取り上げた財務省理財局発出の行政通達「行政財産を貸付け又は使用許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年1月7日蔵管第1号、以下「蔵管1号」といいます。)には、使用許可要件の基準だけでなく、使用料の算定に関する基準(別添第2節:「使用料予定価格算定基準」)が、期間や対象によって場合分けされた形で示されています。
期間が5年を超える土地建物の許可の場合は、不動産鑑定士による使用許可財産の使用料鑑定評価額を用い、4年目以降の継続使用料は変動率を乗じて算定するとされています。期間が5年以内の土地の場合は、使用許可財産の相続税評価額と期待利回りを用いた手法、類似施設の賃貸取引事例を用いた簡易手法(極めて小規模な施設が対象)等が示されています。期間が5年以内の建物の場合は、近隣賃貸取引事例又は民間精通者の意見価格等を基に算定した平米単価を用いて計算する手法、近隣使用許可先例を基にする手法(極めて小規模な施設が対象)等が示されています。
なお、対象が土地建物の場合、借地借家法の適用を受けない行政処分という使用許可の特殊性を考慮する基準になっていること(減額の調整率を乗じる、又は鑑定等にあたってその点を考慮に入れること)が特徴的といえるでしょう。
土地又は建物以外の使用料は、実情に応じて定めるとされています。
特殊な工作物等の場合(例:空港の旅客ターミナルビル等の施設)や電柱等を設置する場合等、別途通達で基準が定められている特殊なケースもありますが、基本的に使用料算定の場面においても、蔵管1号の基準を用いることが適切な裁量権行使のため重要なポイントになるといえるでしょう。
4.使用料の内容が違法・無効となる場合
使用料の決定が裁量の下で行われる以上、その決定判断に裁量権の逸脱濫用があった場合、その決定は違法となり、裁判所による取消しの対象となります。さらに、重大かつ明白な瑕疵が存するような場合には、決定が当然に無効であるとして、取消訴訟を経ずにその効果が否定されることもあり得ると考えられます。
原告である国が、行政財産の建物の一部を被告に使用許可したところ、被告がその使用料を支払わなかったため、国が被告に対し未払使用料等の支払を求めた事案の裁判例(東京高裁平成31年3月7日判決)では、算定した使用料平米単価が前年度単価を大幅に超え、公募公告や仕様書記載の見込金額と比べても著しく高額となっていたこと、算定の基にした近隣取引事例2件の内の1件の条件が類似事例と認め難いものであり、事例選定の合理性を欠いていたことから、裁判所は裁量権の逸脱濫用を認め、使用料の処分を違法と判断しました。
さらに、算定単価は公募の見込金額から合理的に予測される範囲を大きく逸脱していたこと、申請者への使用料通知が使用予定期間最終日の直前だったこと、本件使用料決定処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要がなかったこと等を踏まえ、算定された使用料の一部には重大かつ明白な瑕疵があり無効と判断しました。
この裁判例において裁判所は、①算定過程において蔵管1号が示した考慮事項(類似事例選定時の考慮要素、前年度使用料との調整)を踏まえた算定ができていなかった点や、②当該事案の経緯も含めた個別具体的事情(公募等で示した見込額、算定使用料の通知時期)といった点に着目しています。
このように、使用料に関する判断や検証を行う場合、①の点が主要な着眼点になることはもちろんですが、②の点も考慮されうることを合わせて忘れないようにしなければなりません。
(2022年2月執筆)

執筆者

髙松 佑維たかまつ ゆうい

弁護士

略歴・経歴

早稲田大学高等学院 卒業
早稲田大学法学部 卒業
国土交通省 入省
司法試験予備試験 合格
司法試験 合格
弁護士登録(東京弁護士会)
現在、湯川・佐原法律事務所所属

大学卒業後、約7年半、国土交通省の航空局に勤務。
国土交通省本省やパイロット養成機関の航空大学校などに配属され、予算要求・予算執行・国有財産業務などに従事。

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