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行政・財政2023年02月10日 国有財産の使用許可制度 6 (特別な法律に基づく使用収益と第三者) 執筆者:髙松佑維

1.特別な定めがある場合の使用収益
これまで主に国有財産法に基づく許可(第18条第6項)を取り上げましたが、対象財産によっては国有財産法以外に占用(使用収益)に関する特別な定めがされている場合があります。
特に、直接公共の用に供されている公共用財産(同法第3条第2項2号)は、公共的性格が強いことから、公共利用の確保等を含めた適切な管理を行うため、法律が特別な定めを個別に置いているケースがありますので、使用収益にあたって留意する必要があります。
2.特別な定めの一例
例えば、道路法第32条第1項は、道路に特定の物件等を設けて継続して道路を使用しようとする場合に、あらかじめ道路管理者から許可を受けなければならないこと(道路の占用の許可制度)及び占用できる物件等を定めています。
許可対象物件等には、電柱や郵便差出箱、露店や商品置場、看板やパーキングメーター、足場などの工事用施設といった物から、下水道管やガス管、地下街や浄化槽といった道路地下の構造物、歩廊や雪よけといった道路上空の工作物等のほか、トンネルの上又は高架の道路の路面下に設ける店舗等の施設等も挙げられています(同項各号、道路法施行令第7条参照)。
これらの物件等は、交通のために使用するという道路本来の使用目的とは異なる目的のためのものですが、本来の目的を妨げない一定の場合に限って使用を認めることによって、道路の本来的機能を保ちつつ、道路の有効利用を図ろうとしています。
他に、河川法第24条(河川区域内の土地の占用に対する河川管理者の許可)、海岸法第7条(海岸保全区域内の占用に対する海岸管理者の許可)、港湾法第37条(港湾区域内の占用等に対する港湾管理者の許可)等にも特別の定めが設けられています。
3.許可を争う場合の第三者との関係
上記のような公共用財産に関する許可においては、対象財産の公共的性格上、公用財産(国の事務、事業等に供される財産(国有財産法第3条第2項1号))に関する許可の場合と比べて、第三者(許可権者、許可申請者以外の者)との関係で問題が発生しやすいと考えられます。
第三者が許可に対して不服を述べたい場合は、これらの許可の性質が行政上の処分であることから、許可申請者が処分を争う場合と同じく、行政不服審査法に基づく審査請求又は行政事件訴訟法に基づく処分取消しの訴えを提起する等して争う必要があります。
もっとも、第三者が争う場合、処分の違法性の判断の前に、その第三者が原告適格を有するか(そもそも処分を争う資格を有するのか)という点も問題となります。すなわち、原告適格が認められない第三者は、処分について裁判所等で争うことができません。
4.原告適格に関する判断基準
(1) 原告適格は、その処分を争うことについて「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法第9条第1項)が有するとされており、「法律上の利益を有する者」とは「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者」をいうとされています。
そして、「処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当た」るとされ、「処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、…当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、…害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべき」とされています(同条第2項、最高裁平成17年12月7日大法廷判決参照)。
上記基準によれば、処分の根拠法令・関係法令はどのような利益をどの程度まで保護しようとしているのか、侵害される利益内容や程度はどのようなものか、といった点が重要になると考えられます。
(2) 2.で述べたような許可処分を第三者が争う場合も、上記基準と同様の考え方で第三者の原告適格の有無が判断されています。
例えば、道路法の占用許可に関して第三者が争った裁判例には、原告適格を否定したもの(東京地裁平成28年6月30日判決、津地裁平成28年12月8日判決)や、一部の原告の原告適格を肯定したもの(東京地裁令和元年5月30日判決)がありますが、いずれの裁判例も根拠法令等や原告が主張した利益を個別具体的に検討して判断をしています。
そのため、第三者が上記処分を争うことを考える場合は、処分の違法性だけでなく、侵害される利益が根拠法令との関係でどのように評価されるか等についても、事前に十分検討する必要があると言えるでしょう。
(2023年1月執筆)

執筆者

髙松 佑維たかまつ ゆうい

弁護士

略歴・経歴

早稲田大学高等学院 卒業
早稲田大学法学部 卒業
国土交通省 入省
司法試験予備試験 合格
司法試験 合格
弁護士登録(東京弁護士会)
惺和法律事務所

大学卒業後、約7年半、国土交通省の航空局に勤務。
国土交通省本省やパイロット養成機関の航空大学校などに配属され、予算要求・予算執行・国有財産業務などに従事。

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