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行政・財政2021年09月14日 国有財産の使用許可制度 2 (どのような場合に許可がされるのか) 執筆者:髙松佑維

1.はじめに
前回の記事では、私人が行政財産を使う場合には使用許可を受ける必要があること等を取り上げましたが、許可要件の「用途又は目的を妨げない限度において」(国有財産法第18条第6項)とは、具体的にどのような場合を指すのでしょうか。
2.使用許可制度及び使用許可処分の性質
この要件を検討するには、まず、使用許可制度及び使用許可処分の性質を確認する必要があります。
①使用許可制度は行政上の処分として行政の長が使用収益を認めるものであること、②制度根拠の国有財産法第18条第6項は「許可することができる」と規定し、許可が可能なことのみ定め、許可を義務付けていないこと、③同項の「用途又は目的を妨げない限度」とは、行政の長が管理財産の内容等を勘案し、その専門性を基に判断することを前提とした要件と考えられること、④同条第1項で行政財産の処分等は原則として制限されていること等を踏まえると、許可するかは行政の長の裁量に委ねられていること、すなわち、使用許可処分は行政庁の裁量処分であることがわかります。
近時の裁判例でも、「許可をするか否かの判断については,…管理者の合理的裁量に委ねられている」とされています(東京地裁令和2年12月10日判決)。地方自治体の行政財産に対する目的外使用許可に関して、「許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられている」とした判例もあります(最高裁判所第三小法廷平成18年2月7日判決)。この判例の対象は国有財産ではないものの、目的外使用許可の根拠となる地方自治法第238条の4第7項の規定の仕方や目的が国有財産法第18条第6項と共通しており、国有財産使用許可を検討するに際しても大変参考になる判例です。
そして、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合」、裁量処分は裁判所によって取り消されることから(行政事件訴訟法第30条)、行政の長は許可の判断の際、完全に自由な判断ができるわけではなく、自身が有する裁量権の範囲内かつ適切な裁量権行使の下、「用途又は目的を妨げない限度」を満たすか判断することになります。
3.「用途又は目的を妨げない限度」の解釈
行政の長が上記判断を行う際の重要な基準として、財務省理財局発出の行政通達「行政財産を貸付け又は使用許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年1月7日蔵管第1号、令和元年12月26日改正後のもの、以下「蔵管1号」といいます。)があります。使用許可の基本方針や判断基準、付される条件、手続き、取消し、財務大臣への協議に関する内容等が定められている蔵管1号は、国有財産を管理する長が使用許可を判断するにあたって必ず参照すべき重要な通達です。
蔵管1号によれば、「用途又は目的を妨げない限度」とは、次(※1)のいずれにも該当しない場合を指すとされています(第1節 第2)。
(※1)
・国の事務、事業の遂行や行政財産の管理上支障の生じるおそれがある場合
・行政財産の公共性、公益性に反する場合
・その他行政財産の用途又は目的を妨げるおそれがある場合
さらに蔵管1号は、使用許可できる類型的な具体的事例(※2)を挙げるとともに、「当該財産の性質や使用用途等を踏まえ、地域社会のニーズへの対応と収益確保の観点も勘案して、個々の事案に即して個別に判断する」という考え方を示しています(第4節 第1)。
(※2)
行政財産の公共性等に反せず、一時的又は限定的で業務運営上支障が生じない場合や社会的又は経済的な見地から妥当な場合、職員や来庁者等の利便に資する場合、地域課題解決や周辺住民の利便に資する場合等(全7類型)。
なお、対象の国有財産に関して、関係法令や通達が管理にあたって特別の定めを設けている場合は、その定めも裁量権行使の適法性判断にあたって重要となる場合があります。
このように、行政の長は、蔵管1号の内容(※1、※2等)を参照しつつ、対象行政財産の性質(業務内容や目的)や状況、使用用途、申請者のニーズや収益の観点といった諸般の事情を勘案した上で、事案ごとに「用途又は目的を妨げない限度」を満たすか個別に裁量で判断することになります。
4.蔵管1号の指針としての重要性
以上のとおり、許可がされるかは個々の事案ごとに裁量で判断されますが、その裁量も無制限ではなく、蔵管1号が重要な判断材料となります。
申請者側からすれば、蔵管1号が示す類型(※2)に該当すること、使用収益させても行政の事業や財産管理に支障は生じないこと、申請者が使用する必要性が高いこと、使用料納付等適切な対応が可能なこと等を示せるかについて十分検討し、その準備をした上で申請することが重要になると考えられます。
一方、申請を判断する行政側からすれば、上記の事情に関する検証や確認はもちろん、財産を管理する立場として財産の現況や将来の状況予測も踏まえた上で、付する条件も含めて検討を行い、行政財産の適切な管理と有効活用のバランスがとれるかという観点を意識しながら判断を行うことが大切といえるでしょう。
(2021年9月執筆)

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