民事2020年03月24日
賃貸借契約書に表示の面積と賃料額との関係が問題となる場合 契約書リーガルチェックのポイント-事例でみるトラブル条項例-
編集者:秦周平 仲晃一 山中俊郎
執筆者:奥山隆輔 北野了考 田尾賢太 塚元健 秦周平 髭野淳平 吉田将樹 田中勲 仲晃一 山中俊郎
(契約の目的)
第1条 貸主は、その所有する以下の建物を次条以下の約定にて借主に賃貸することを約する。
<建物の表示>
所在◯ 構造◯(◯m2)
<問題点>
① 数量指示賃貸借とみなされて実測面積との差が問題となることがある。
② みなされる場合、共用部分の面積の取扱いが問題となることがある。
(契約の目的)
第1条 貸主は、その所有する以下の建物を次条以下の約定にて借主に賃貸することを約する。
<建物の表示>
所在◯ 構造◯(◯m2、ただし、実測面積との違いが判明しても賃料額には影響しない)
あるいは、
所在◯ 構造◯(◯m2、ただし、面積には廊下、階段、エレベーター等の共同使用部分を含む)
1 数量指示賃貸借の主張
実測面積が賃貸借契約書に表示の面積より狭いことが判明した場合、賃借人から賃貸人に対し、数量指示賃貸借の数量不足に基づく(契約不適合を理由に)損害賠償請求がなされることがあります。数量指示賃貸借といえるには、賃貸人が契約において一定の面積があることを表示し、これを基礎に賃料額が定められたことを要します。したがって、単に実測面積と異なることが判明しただけでは、契約書に表示の面積は目的物特定のため記載されたに過ぎないとして、請求は認められません。
2 交渉経過が考慮される場合
もっとも、契約書に賃料算定の根拠が明記(例えば、「賃料は、月額◯円(◯円/m2)とする」といった定め)されていなくても、契約締結に際し、単位面積当たりの単価を定め、それに面積を乗じて賃料額を決めたといった事情(例えば、契約締結に際し、賃借人が建物の面積に重大な関心を持っており、また、敷金額を相場より高額にすることを条件に、単位面積当たりの賃料額を減額する交渉を行っていたといった場合)には、数量指示賃貸借と認められるケースがあります。よって、賃貸人としては、かかるリスクを考慮すべき事情が存する場合には、実測面積との違いが賃料額に影響しないことを明記しておくべきといえます。
3 共用部分が含まれるか問題となる場合
数量指示賃貸借と認められるケースで、表示された面積に専有部分の面積だけでなく、共用部分(廊下、階段、エレベーター等)の面積も含まれるか問題となることがあります。例えば、ビルのワンフロアに貸室が一つだけの場合、賃貸人としては、共用部分の面積も含め契約面積とみる場合(貸室が複数ある場合で、共用部分の面積を各貸室の専有面積割合で按分した面積を加算する場合も)が存するのに対し、賃借人からは、専有部分だけが契約面積と主張されることがあります。よって、賃貸人としては、かかるリスクを回避するには、共用部分を含む旨を明記しておくべきといえます。
◯ビルの貸室契約で、数量指示賃貸借に該当するか、専有部分の面積のみならず共用部分の面積も加算して契約したかが問題となった事例(東京地判平18・3・2(平16(ワ)15462))
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