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相続・遺言2021年07月15日 遺産分割前の財産処分の効果  


 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、遺産分割にどのような影響があるのでしょうか。

A
 改正民法909条の2の規定に基づき、遺産分割前に共同相続人の一部の者によって預貯金債権の単独行使がなされた場合には、その権利行使をした共同相続人が遺産の一部分割によりその預貯金債権を取得したものとみなされます。その他の遺産が処分された場合には、改正民法906条の2の規定により処理されます。
解 説
1 遺産分割前の財産処分と遺産の範囲
 旧法下では、遺産分割前に処分された財産がその後の遺産分割においてどのように処理されるのかについては、明文の規定はありませんでした。新法では、共同相続人の全員の同意により、当該処分された財産が、遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる旨明示されました(改正民906の2①)。
 また、共同相続人の中の一部の者が、当該財産処分を行った場合には、処分を行った共同相続人については、その同意を得る必要がないこととされました(改正民906の2②)。
 このように、遺産分割前に遺産の一部が処分された場合、原則として共同相続人全員の同意によって、遺産分割時の遺産に処分された財産を含めて遺産分割を行うことになります。
2 遺産分割前の預貯金債権の行使
 他方、改正民法909条の2の規定に基づき、遺産分割前に共同相続人の一部の者によって預貯金債権の単独行使がなされた場合には、同条後段が適用されます。同条後段は、「当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」と規定しています。
 ここで、同条後段と906条の2との関係が問題になりますが、909条の2は、遺産に属する財産のうち預貯金債権について共同相続人に単独での権利行使を認めた上で、その権利行使がされた場合に関する特則を設けるものです。
 したがって、906条の2の規定は、その特則である909条の2後段の規定が適用されない場合にのみ適用されるものと解されます。
 よって、遺産分割前に共同相続人の一部の者によって、預貯金債権の単独行使がなされた場合には、909条の2後段の規定が適用され、仮に単独行使された預貯金債権の額が払戻しを受けた者の具体的相続分を超過する場合には、その共同相続人は、その超過部分を清算すべき義務を負うことになります。
税務への影響
 相続の開始とともに金融機関の預貯金口座が凍結されるため、相続の開始が近いことを察した相続人が、被相続人の預貯金を引き出し、手許に現金で保管をする行為が、以前は散見していました。この使途は、被相続人の入院費や公共料金の支払、数百万円に上る葬式費用の支払などが主な目的でありました。しかし、相続開始直前の預貯金引き出しは、税務調査において重点的に調査される事項であります。そして、多額の預貯金引き出しは、意図的に相続財産から除外する目的もあるのではないかと税務当局からも疑念を持たれ、重加算税が賦課される事案に発展するケースも多々ありました。今回の改正により、相続開始前に預貯金から多額を引き出す可能性はかなり低くなったので、以前に比べ現預金を的確に把握しやすくなるでしょう。
税理士実務での対応
 相続が開始すると、まず、被相続人に関連する預貯金、株式、不動産などのあらゆる資料収集を行い、被相続人に属する遺産を確定させます。その後、遺産分割の協議に入っていくわけですから、資産の数や金額によっては、相当の時間を要することになります。また、相続財産はその全てにおいて相続人の立場からすると決して必要なものばかりではありません。早く相続財産を整理清算したい場合もあり、また債務を継承した場合には一刻も早く弁済したいでしょう。このような場合、従来は処分した財産についての取扱いが明確ではなく混乱が生じましたが、今後は、遺産分割前に処分された財産であっても、遺産分割時に遺産として存在するものとみなしますので、円滑な遺産分割に寄与することでしょう。

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