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企業法務2022年02月04日 副業をされる側の企業における雇用の問題について 執筆者:大神令子

厚生労働省のモデル就業規則が変更され、副業・兼業を認める風潮が広まっています。その論調の殆どは自社で雇用している正社員か正社員に準ずる勤務形態の契約社員に副業・兼業を認めるかどうか、という論点であるように思います。
しかし、実際には副業側の企業にこそ問題発生の可能性が高いですので、十分な御注意をしていただきたいと思います。

これは実際にあった事例なのですが、週2日のアルバイトを募集したところ、とても良い方が来られたので採用したのですが、その方は他の会社で週5日勤務の正社員(週40時間労働)として勤務している方だったのです。
その会社としては学生アルバイトやフリーターの方を募集したつもりでいましたが、採用した後になって他社で正社員として雇用されていることを知り、とても戸惑われて御相談に来られました。
こういうケースの場合、自社では週2日のみの勤務であったとしても労働基準法違反となる可能性がありますので、十分な注意が必要です。

まず、正社員として勤務する会社で副業禁止となっていないかどうかの確認をした方が望ましいです。副業禁止であるにも関わらずアルバイトとして勤務した場合、最悪の事態として正社員の方の会社を解雇される可能性があります。アルバイト採用をした会社側は知らずに雇ったのだとしても、副業であることがわかった時点で一応の確認はしておくべきでしょう。可能であれば、本業側の会社で副業が禁止されていない旨の書面を受けておいた方が無難です。

しかし、アルバイトとして雇った会社にとって本当に問題なのはここからです。
まず、週40時間を正社員として勤務している以上は、アルバイトとしての労働は全て時間外労働となり割増賃金の対象となります。また、正社員として週5日勤務している人に1週間に2日の勤務をさせた場合は、そのうちの1日は1週間のうちの1日の休日に働かせていることになりますので、2日のうち1日は通常の時間外労働ではなく休日労働としての割増賃金を支払う必要が生じ、より高い額の賃金となってしまいます。
自社では週2日しか働かない人であっても、その全てが割増賃金の対象となってしまいますので想定していたより人件費が高くなります。また、この割増額を支払っていない場合はその額については未払賃金となってしまいます。

そして、もう1点、大きな問題として生じるのが36協定との関係です。
もし、労働基準監督署に提出されている36協定が特別条項のない1ヵ月45時間までのものであった場合、本業の方で毎日1日につき2時間の残業をしている人だと、単純に計算して、それだけで1ヵ月40時間以上の残業をしていることになります。その上に、毎週1日8時間の時間外労働をしていることになります(週2日のアルバイトのうち1日は休日労働になるため)。もしそうなれば、1ヵ月の時間外労働としては45時間を簡単に超えてしまうことになります。
正社員として働いている他社での残業であったとしても、アルバイトとして雇っている側の会社の36協定の対象となる時間外労働として合算してカウントされてしまいますので、36協定に定められた時間外労働の上限を超え、違法状態が発生していることになってしまいます。なお、特別条項付きの36協定であっても1ヵ月45時間を超えて時間外労働をさせることができるのは1年に6回(6カ月)だけですので、超えることができない6カ月については、同様に違法状態となってしまいます。

これらはサービス残業の問題点として度々訴訟が起こされているケースと同じ状態となってしまうこととなります。もしも訴訟を起こされるようなことがあれば、会社にとって大きな負担となってしまうことは判例を調べればすぐにわかることではないかと思います。

世の中の流れとして副業・兼業を容認するようになっているとしても、実務で考えれば、とてもリスクの高い問題であると言えます。以前であれば正社員が副業をすることは通常はありませんでしたので、特に気を遣う必要もなかったことですが、副業・兼業を認める企業が増えてきている現在では、アルバイト・パートとして雇用するのであっても、その方が他にどのような勤務をしているのかは、一番最初の面接の時点で確認し、自社へのリスクが生じる可能性があるのかどうかを検討する必要があると思います。

(2022年1月執筆)
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