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行政・財政2026年01月29日 行政財産の使用許可と住民訴訟 2 執筆者:髙松佑維

1.はじめに

前回の記事では、使用許可事案における住民訴訟の事例を取り上げ、財産の適正管理等の視点について確認しました。
今回は、前回の事例(行政に対して請求権の履行を求めるという4号訴訟)とは異なる形の住民訴訟の中で、住民側の主張が認められなかった一例を取り上げます。

2.事案検討の前提(地方自治法の関係規定の確認)

地方自治法では、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。」(第238条の4第7項)と定められ、各自治体がそれぞれ、その要件等をさらに具体的に示した財産規則や条例等を定めています。
また、使用許可の際の使用料の徴収に関しては、「普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用・・・につき使用料を徴収することができる。」(同法第225条)、「使用料・・・に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。」(同法第228条1項前段)と定められ、各自治体がそれぞれ、使用料に関する条例を定めています。
そのため、使用許可や使用料徴収等に関する住民訴訟等では、通常、上記の各条例や規則等の定めを前提に、具体的事案に応じて、財産の種類や所在等の状態、許可目的や経緯、使用条件、その他の個別具体的諸事情を踏まえ、行政の判断(許可内容や使用料等)に関して裁判所が検討を行うことになります。

3.事案の概要

自治体(町)が、町の行政財産である土地(本件土地)において、公共温泉施設(交流促進センター)を自ら運営していました。その施設の隣には株式会社(A)が経営するホテルがあり、そのホテルの隣には地元農産品等を用いた加工製造品等の直売所(有限会社(B)が自社社屋で開いていたもの)がありました。
町は、A及びBに対し、本件土地の一部(敷地内の駐車場の一部)を駐車場として使用させる目的で使用許可処分(本件許可処分)を行い、同時に、両者に対し、使用料を減免する旨の処分(本件減免処分)を行いました。
町の住民が上記処分に関して監査請求を行ったものの、棄却する監査結果が出たことから、当該住民は、上記処分が違法であるとして同法第242条の2第1項2号に基づき、上記処分の取消しを求める住民訴訟を提起しました。

4.裁判所の判断と事案検討の際のポイント

(1)  裁判では、両処分が別個のものか、住民訴訟の対象となるかも争われましたが、裁判所は、両処分が一つの処分で、住民訴訟の対象(財務会計行為)であると判断した上で、町長の裁量権行使に逸脱又は濫用があるとは認められないため、処分が違法とはいえないとして、住民の請求を棄却しました(札幌高裁平成24年5月25日判決)。
(2)  裁判所は、処分の違法性の判断にあたって、処分根拠となった「直接又は間接に町の便宜となる事業又は施設の用に供するとき」(許可)や「町長が特別の事情があると認めるとき」(減免)という規則や条例の内容のほか、使用許可の経緯や目的、財産状況(位置関係や運用状況)等を詳細に検討し、主に以下のような点に着目しました。
経緯については、①複合文化施設の建設計画時、町商工会、町農業協同組合、町観光協会が揃って、町長や町議会に対し、町の現状を踏まえ、来町者や観光客と交流できる温泉付宿泊施設の併設を要望し、②宿泊部門の併設に関して当初、町主体の建設が検討されたものの、③特別委員会や町議会において、宿泊部門の必要性を認める一方、地域住民主体のまちづくりや町の財政事情の観点から、民設民営等の総合的検討を求める旨の意見が付されて、趣旨採択の決定がされ、④Aの設立、ホテル建設、Aによるホテル営業の開始に至った点に着目しました。
財産状況については、⑤ホテルから渡り廊下にて往来可能な公共温泉施設で、ホテル宿泊客による一定程度の利用・入浴料売上実績があること、⑥B(町の農業者らが設立した会社で、全株主が社員となり、社員が生産した農産物を購入して加工製造販売し、近隣町村の農産物や海産物等の加工製造者等と情報や素材の交換を行い、海産物も取り入れた新製品を開発している会社)が、ホテル隣接の社屋で直売をしていること、⑦ホテル及び直売所の利用者の本件駐車場利用によって、公共温泉施設の利用者の駐車等は妨げられていないこと等に着目しました。
(3)  そして、本件許可処分の目的は“町の経済活性化という行政目的の実現”と解し、さらに、使用料徴収に関して町長に様々な行政目的を考慮した政策的観点からの裁量権が認められていると判断した上で、ホテルの経営安定や利用者増加による町運営施設の利用者増加の経済効果や、Bの各貢献内容(地元農産品を生かした製品販売による町のブランド力向上、地域産業や農業の発展、雇用創出、地元経済活性化、町運営施設の利用者増)、上記⑦の状況、特定の営利法人に対し営業上の便宜を与えるためになされたものではなく、経過やA及びBの性格から公共的団体等の使用に準じるものということができること等を指摘し、裁量権の逸脱濫用があるとは認められず、本件減免処分も含めて違法とはいえないとしました。
(4)  上記裁判例を見ると、普通財産の貸付等の場合と同様、使用許可に関する住民訴訟においても、財産等に関する従前の経緯・経過や具体的状況等が、事案検討において非常に大切な要素になることがよくわかります。
加えて、上記要素に則した諸事情を的確に把握分析すれば、財産の適正管理・適正利用の視点における方向性や適否も自ずと見えてきます。
「用途又は目的を妨げない限度」の原点を合わせて再確認しながら、“その事案における個別具体的事情や許可に至る事実経過、実際の状況”を丁寧に見ていくことが、より良い事案検討には不可欠といえるでしょう。

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

(2026年1月執筆)

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執筆者

髙松 佑維たかまつ ゆうい

弁護士

略歴・経歴

早稲田大学高等学院 卒業
早稲田大学法学部 卒業
国土交通省 入省
司法試験予備試験 合格
司法試験 合格
弁護士登録(東京弁護士会)
惺和法律事務所

大学卒業後、約7年半、国土交通省の航空局に勤務。
国土交通省本省やパイロット養成機関の航空大学校などに配属され、予算要求・予算執行・国有財産業務などに従事。

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