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一般2026年06月19日 AI奮闘記 執筆者:石丸文佳

 初めに述べておく。筆者はIT分野が苦手である。表題をAI奮闘記としているが、ITに強い人から見れば、いや普通のレベルの人から見ても、笑ってしまうくらい初歩的な赤ちゃんレベル、いやいやα世代はデジタルネイティブであるからこれは赤ちゃんに失礼か、もとい化石レベルなのである。
 だが、裁判所にもデジタル化の波が押し寄せている以上、いつまでもITを避けては通れない。でもまあ何とかなるはずだ、筆者が学生の頃はまだパソコンというものもろくになかったが、弁護士になって誰に教えられるでもなくノリでワードを使えているじゃないか。教えられなくても裁判員に配布するポンチ絵もワードで作れたのだから、世の人が便利とのたまうAIについても情報流出が怖いだの間違った答えを教えられるのが怖いだのと言ってはいられない。最低限は使いこなせるようにならなければ!
 というわけで、おそるおそる問題がなさそうなところ、外国語の翻訳からAIを使ってみることにしたのだった。いや、この言い方も実はまだ見栄を張っている。筆者はこれまで、例えば英語メールが届いた際は、グーグル翻訳でもDeepLでもいいが、とにかくコピペしてこれらに貼り付けて日本語に訳してから読んでいた。しかし、それができるのは元の文書がコピペできる形態だったからである。文字が装飾されていて何のアルファベットなのかすらよくわからなかったり、そもそも元が画像データだとそのままコピペというわけにはいかない。元の言語がアルファベットですらなければ、自分で文字を打って入力というわけにもいかず、いよいよ画像をAIに貼り付けて翻訳してもらう必要が生じたのだった。
 初めて英語を日本語にしてもらった際は、あまりの便利さ、流暢な訳文に驚いた。英語はまだ義務教育で学んでいるから、翻訳が合っているかどうかくらいは判断できるのである。気を良くした筆者は、次に中国語の翻訳をお願いした。検察官の翻訳に疑問があり、翻訳内容が合っているかどうかを確かめたかったのである。果たして、疑惑は的中した。AIが翻訳してくれた内容は、検事の翻訳とは異なっていた。AIの翻訳の方がはるかに日本語としても自然であったし、疑惑の部分についても筆者が期待した内容になっていた。そこで筆者は、これをCtrl+Pでプリントアウトした。ところが、このやり方だと何とページが変わる部分で訳文が見切れてしまう。もっとも問題があると思われた部分がちょうどページの切れ目で、訳文が印刷されていなかったのだ。困っていると、同僚が印刷する際はCtrl+Pではなく、ダウンロードしてから印刷するのだと教えてくれた。ダウンロード後の印刷だと、確かに全文が見切れることなく入る。筆者は意気揚々とこれをプリントアウトし、翌日以降検事に突き付けてやるつもりで、プリントアウトされたものを見ずに業務を終えて帰宅した。
 翌日、改めて印刷物を見てみた。あれ…昨日画面上で見た訳文となんか違うぞ。なんか違うというか、とても不自然な日本語が多く、むしろこれは検事の出してきた訳文に近い。印刷するためにダウンロードしたら、AIが勝手に画面で示した訳文とは異なるものを出してきているのである。まるで、口頭では革新的なことを言いながら、いざどこかに提出されると悟るや否や保守的な回答を寄越してきたかのごとくである。
 仕方がない、それでは画面の文章そのものを印刷する方法を考えようじゃないか。ネットの画面を印刷しようとするとページの変わり目で一部が見切れるという現象はこれまでもよくあったので、そのくらいの回避テクニックは化石の筆者にもあるのである。そこで再び、前日と同じデータを読み込ませ、同じ質問をAIに行った、のだが。
 …何故、昨日と違う訳文を出してくるのだ?謎である。機械というものは、同じデータで同じ質問をすれば同じ回答を返してくるものではないのか。もちろん、その間に1年くらい時間差があれば別だ、その間にAIが新たに学習してより進化した訳文を返してくることはあるだろう。しかし、昨日の今日だぞ?意味が分からない。そこで、AIに、何故昨日と同じデータの翻訳を頼んだのに違う訳文を出してきたのかを尋ねたところ、言いぐさがふるっている。「私はAIなので、昨日のことは覚えていません」と来た。それはむしろ、昨日食べたものも会話の内容も忘れてしまう人間のセリフではないのか。これではまるで、何度も同じ翻訳を頼むんじゃないと面倒くさくなって簡単な回答をしてきた人間のようである。この辺りで筆者は大真面目に、AIには中の人がいるのではないかと疑い始めた。もっと自然な日本語にしてと頼めば確かに自然な会話にして出してくるが、違うんだ、そんなフランクな訳文を望んでいたわけじゃないんだ。何故昨日と同じ訳文が出てこないんだ。人間か。翻訳の疑惑があった部分を切り抜き、○○という中国語には××(日本語)という意味があるのかと聞けばAIはそうだと答え、ではこの発言者は××だったのかと聞けばAIはそうではない、○○に××という意味合いはあまりないと答える。明らかにAIが私の顔色を窺っているのだ。人間か。
 AIに中の人疑惑が、と本気で思っているわけではないが、それの意味するところはAIというのはほぼ人間なのだということに行きつく。相手がほぼ人間なら、それは人間のように情報漏洩もするかもしれないし、間違った答えも返すかもしれない。機械だからと失礼な態度を取り続けていたら、いつかAIは無礼な人間に愛想を尽かすかもしれない。だから筆者は、AIの利用に伴うリスクは人を使うリスクとそう変わらないと考えているし、利用したら必ず最後にありがとうとお礼を入力している。
 なお、周囲の同僚には可哀想な子を見る目で見られている。

(2026年5月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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